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スキャンプ (潜水艦) - Wikipedia

スキャンプ (潜水艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

艦歴
発注:
起工: 1942年3月6日
進水: 1942年7月20日
就役: 1942年9月18日
退役:
除籍: 1945年4月28日
その後: 1944年11月11日に戦没
性能諸元
排水量: 1,525トン(水上)
2,415トン(水中)
全長: 307ft (93.6m)(水線長)
311ft 9in (95m)(全長)
全幅: 27.3 ft (8.3 m)
吃水: 15.3 ft (4.6 m)
機関: ゼネラル・モーターズ278A16気筒ディーゼルエンジン 4基
ゼネラル・エレクトリック2,740馬力発電機2基
最大速: 水上:20.25 ノット (37 km/h)
水中:8.75 ノット (16 km/h)
航続距離: 11,000カイリ(10ノット時)
(19 km/h 時に 20,000 km)
試験深度: 300ft (90m)
巡航期間: 潜航2ノット (3.7 km/h) 時48時間、哨戒活動75日間
乗員: 士官、兵員80名
兵装: 5インチ砲1門、40mm砲1門
21インチ魚雷発射管10基

スキャンプ (USS Scamp, SS-277) は、アメリカ海軍潜水艦ガトー級潜水艦の一隻。艦名はハタに因む。

目次

[編集] 艦歴

スキャンプは1942年3月6日にメイン州キタリーポーツマス海軍造船所で起工した。7月20日にキャサリン・ユージニア・マッキーによって命名、進水し、9月18日に艦長ワルター・G・エバート少佐の指揮下就役する。コネチカット州ニューロンドン沖での整調後、スキャンプは1943年1月19日に出航しパナマ運河を経由、2月13日に真珠湾に到着し、訓練に従事した。

[編集] 第1・第2の哨戒

3月1日、スキャンプは最初の哨戒で日本の本州海域に向かった。途中、ミッドウェー島を視察する予定の太平洋艦隊潜水艦部隊司令官チャールズ・A・ロックウッド少将を便乗させた。3月5日にミッドウェー島に到着しロックウッドを下艦させ、燃料を補給後担当海域に向かった。スキャンプの敵艦に対する最初の攻撃は、マーク14型魚雷の磁気信管の作動不良により失敗に終わった。攻撃が失敗に終わると、スキャンプの魚雷担当班は残る魚雷の磁気信管を無効にし、触発信管のみ作動するようにした。3月20日夜、スキャンプは未確認の目標に対して雷撃し、命中と判断された。翌3月21日にはManju Maru[1]を雷撃して損傷を与えた。3月26日、スキャンプは26日間の行動を終えてミッドウェー島に帰投した。
4月19日、スキャンプは2回目の哨戒でマーシャル諸島およびギルバート諸島方面に向かった。ジョンストン島で燃料を補給した後、オーシャン島ナウル島を偵察した後、進路をビスマルク諸島方面に転じた。道中では3度ほど敵船との接触があったが、うち1隻は病院船だったので攻撃は差し控えられた。5月28日、スキャンプは南緯1度0分、東経150度15分のムッソウ島の東方海域で特設水上機母艦神川丸川崎汽船。6,853トン)を発見した。護衛艦をうまくかわして神川丸に対し魚雷を3本発射し命中させた。反撃をかわすために一旦深深度でじっとした後、潜望鏡深度に戻して観測すると神川丸は依然浮いていたので、魚雷をもう2本発射して命中させ、ついに神川丸を撃沈した。6月4日、スキャンプは46日間の行動を終えてブリスベンに帰投した。

[編集] 第3・第4の哨戒

6月22日、スキャンプは3回目の哨戒でビスマルク諸島方面に向かった。7月14日にショートランド諸島近海を通過した後、7月27日に輸送船団を発見した。スキャンプは船団に接近する途中護衛艦に発見され、爆雷を2発投下された。しかしスキャンプはなおも接近し続け、特務艦風早に対し魚雷を6本発射。魚雷は風早に命中したが、スキャンプはそれを確認する間もなく反撃から逃れるために深深度潜航で退避していった。1時間後に潜望鏡深度に戻って観測したときには、船団の姿は消えていた。風早は損傷を受けただけで沈没はしなかった[2]。スキャンプは浮上し、ニューアイルランド島とニューハノーバー島の間にあるステファン海峡に向かった。17時54分、スキャンプは1隻の潜水艦を発見したが、相手もスキャンプを発見したようであり、魚雷を発射してきた。スキャンプは67メートルの深さに潜ってやり過ごし、10分後に潜望鏡深度に戻って魚雷を4本発射した。魚雷は潜水艦に命中し、物凄い爆発を起こして沈没していった。かつては、この潜水艦は伊24であると言われ、アメリカ側の記録で長くそう信じられてきた。しかし、日本側の記録を参照した結果、スキャンプが撃沈したのは伊168だったことが分かった。伊168は、ミッドウェー海戦空母ヨークタウン (USS Yorktown, CV-5) を撃沈した潜水艦であった。8月8日、スキャンプは47日間の行動を終えてブリスベンに帰投した。
9月初旬、スキャンプは4回目の哨戒でビスマルク諸島方面に向かった。9月18日、スキャンプは北緯1度3分、東経146度27分のマヌス島北西400キロ地点でラバウルからパラオ諸島に向かっていたオ602A船団を発見した。スキャンプは関西丸原田汽船。8,618トン)に対し雷撃を行い、魚雷を命中させて関西丸を航行不能に陥らせた。関西丸には陸軍部隊1,024名が乗船していたが、犠牲者24名以外は僚船摩耶山丸(三井船舶。9,433トン)に移乗し、関西丸は無人となった。護衛の第38号駆潜艇が爆雷攻撃を行い、深度96メートルの海底にいたスキャンプは爆雷攻撃により浸水と火災が発生し、一時は復旧のめどすら立たなかった。しかし、なんとか修理を行い浮上すると、関西丸がまだ浮いていたので、魚雷を撃ち込んでようやく撃沈することに成功した。9月21日朝、スキャンプは物々しい輸送船団を発見した。巧みに接敵し、日没時に攻撃を開始。魚雷を3本発射し、2つの爆発音が聞こえた。2度目の攻撃はスコールにより機会を逸した。翌9月22日を追跡に費やしたスキャンプは、9月23日に再度攻撃を行って魚雷を4本発射。さらに攻撃を加えようとしたが、上空にいた航空機の妨害を受けて攻撃を諦めざるを得なかった。スキャンプは9月24日に帰投命令を受領し、10月1日に30日間の行動を終えてブリスベンに帰投した。

[編集] 第5・第6の哨戒

10月22日、スキャンプは5回目の哨戒でビスマルク諸島方面に向かった。10月28日から30日までは、トレアジュリー諸島での特殊部隊の活動を支援した。任務完了後にカビエントラック諸島の交通路に移動した。11月4日、スキャンプは貨客船を発見し魚雷を3本発射。少なくとも1本が命中したようであったが、航空機の制圧を受けて確認はできなかった。11月10日には、北緯4度6分、東経150度19分の地点で輸送船団を発見し、東京丸(摂津商船。6,484トン)に対して魚雷を4本発射。東京丸は3本回避したものの1本が右舷機関室に命中。航行不能に陥った。スキャンプは東京丸に向けて魚雷をもう3本発射したが命中しなかった。21時ごろに観測すると、東京丸は曳航されようとしていた。東京丸はこのあと、11月12日14時55分に沈没した。その11月12日朝、スキャンプはカビエンの北北西250海里の地点で、11月11日のラバウル空襲で損傷を受けトラックに戻る途中の軽巡洋艦阿賀野を発見し、魚雷を3本発射。阿賀野は後進をかけたが、魚雷1本が右舷艦橋下に命中した。この手負いの阿賀野を撃沈すべく、アルバコア (USS Albacore, SS-218) などが差し向けられたが、いずれも撃沈はならなかった。11月18日には、水上偵察機から2初の爆弾を投下され損傷を受けた。12月6日、スキャンプは35日間の行動を終えてブリスベンに帰投した。
12月16日、スキャンプは6回目の哨戒でビスマルク諸島方面に向かった。1944年1月6日夜、スキャンプは小型タンカーを発見して攻撃すべく接近したところ、2隻の駆逐艦と思しき艦船からの探索音を聴取。しかし、スキャンプは護衛艦をうまくまいて、23時23分に浮上してその場を去った。7.3キロ離れたところにいた護衛艦はこれに全く気付かなかった。1月14日、スキャンプはパラオ諸島東方でアルバコア、ガードフィッシュ (USS Guardfish, SS-217) と会合し、付近を日本の重要なタンカー船団が通過するので即席のウルフパックを組んで攻撃することとした。まずガードフィッシュが攻撃を仕掛け、これに驚いた駆逐艦が反撃に出ると、アルバコアが漣を撃沈した。その間にスキャンプはタンカー日本丸(山下汽船。9,971トン)に対して魚雷を6本発射し、魚雷の命中を受けた日本丸は2分で沈没していった。この後、スキャンプはニューアイルランド島を攻撃するB-24の支援に従事し、2月6日に52日間の行動を終えてミルン湾に帰投し、修理を受けた。また、艦長がジョン・クリスティ・ホリングスワース中佐に代わった。

[編集] 第7・第8の哨戒

3月3日、スキャンプは7回目の哨戒でニューギニア、ビスマルク諸島を経てパラオ諸島方面に向かった。しかし、魚雷データコンピューターが故障したため、その修理のため3月29日にランゲマク湾に入って3日かけて修理を行った。修理後再出撃し、4月4日に200トンクラスのトロール船を発見して浮上砲戦で炎上させたが、備砲が故障したため撃沈には至らなかった。この頃、司令部から「ダバオから日本艦隊が出撃してくる」という情報がもたらされた。察知された日本艦隊とは、第58任務部隊の攻撃を避けるべく、パラオからリンガ泊地に向かっていた第二艦隊の一部であり、司令官は栗田健男である。スキャンプは日本艦隊を捕まえるべくダバオ湾に向かった。3日後の4月7日、スキャンプはダバオ湾北口でついに日本艦隊を発見した。前日にはダーター (USS Darter, SS-227)とデイス (USS Dace, SS-247)、奇しくもこれより半年の後に再び栗田とあいまみえる2隻が雷撃を行ったが、艦隊は22ノットの高速で航行中だったため命中しなかった。スキャンプは潜航して艦隊に忍び寄ったが、駆逐艦春雨磯風がスキャンプを発見し爆雷攻撃を行ったため、スキャンプは深海に潜んだ。やがて艦隊が去り、14時5分に浮上して艦隊発見の旨を打電した。その時、スキャンプの死角を突いて水上偵察機がスキャンプを爆撃。スキャンプは潜航したが、深度12メートルのときに爆弾が左舷側で炸裂し、艦首を上にした状態で一気に91メートルの深度に沈んでしまった。衝撃で動力が絶たれ、火災も発生し毒性の煙が充満してきた。スキャンプは釣り合いをうまく保つために水中で何度も上下し、深度46メートルになったところでようやく釣り合いを回復した。スキャンプは油と気泡を放出して17度の角度で21時3分に浮上し、損傷のため哨戒を打ち切って帰投することとなった。スキャンプの護衛にデイスが差し向けられ、デイスの護衛の下、4月16日にマヌス島ゼーアドラー湾に到着。マヌス島で緊急修理を受け、4月22日にミルン湾へ向かい、その後51日間の行動を終えて真珠湾に帰投。メア・アイランド海軍造船所に回航され[3]完全オーバーホールを行った。
10月16日、修理なったスキャンプは8回目の哨戒で小笠原諸島および日本南東方面に向かった。10月20日にミッドウェー島で燃料を補給し、その後担当海域に到着。11月9日に硫黄島周辺を航行中に哨戒区域の変更命令を受け取り、スキャンプは「24発の魚雷と290,000リットルの燃料がある」と返信し小笠原諸島北方280kmの海域に向かった。11月14日にスキャンプに対して房総半島沖で、本土空襲の下準備で何度も日本を偵察していたB-29の乗組員救助支援任務に当たるよう命令が下されたが、応答はなかった。その後もスキャンプからの通信は無く、司令部から何度も隣り合う区域の潜水艦などに対しスキャンプの安否を問う通信が送信されたが、芳しい返事はなかった。11月29日に空母信濃を撃沈するアーチャーフィッシュ (USS Archer-fish, SS-311)[4]はスキャンプの担当海域の西隣が担当海域だったが、やはり芳しくない返事を送らざるを得なかった。11月26日まで捜索は続けられたが、ついに打ち切られた。艦長ジョン・クリスティ・ホリングスワース以下全乗員が死亡と判定され、スキャンプは1945年4月28日に除籍された。

スキャンプは第二次世界大戦の戦功で7個の従軍星章を受章した。

[編集] スキャンプの最期

スキャンプが司令部に返信を送った2日後の11月11日、父島を出航し館山に向かっていた4108船団を護衛中の第4号海防艦は、上空警戒機からの報告で潜水艦に対する警戒を強めていたところ、八丈島北方沖で自艦の右前30度の方向に潜水艦を探知した。この潜水艦がスキャンプであった。第4号海防艦は輸送船を退避させたのちスキャンプに向首していった。目標まで1,000メートルになったとき、突然スキャンプから2本の魚雷が発射された。第4号海防艦は魚雷を回避し、爆雷攻撃を実施。爆雷投下点に目印の発煙筒を投下し、3度にわたって合計70発の爆雷を投下。攻撃後、10数メートルはあろう大きな気泡が何個もわき出し、また重油も大量に湧出してきた。探信の結果、なんら反応がなかった。これがスキャンプの最期であった。第4号海防艦は館山入港後の11月15日に、海上護衛総司令部司令長官野村直邦から、「敵潜水艦4隻を撃沈した[5]」戦功により、海防艦単艦としてはじめての感状を授与された。なお、殊勲の第4号海防艦は1945年7月28日に、鳥羽第38任務部隊機の攻撃を受けて沈没した。

[編集] 脚注

  1. ^ uboat.net Scamp (SS-277)に掲げられている「6,541トン」を信用するなら、タンカー満珠丸(日本油槽船。6,515トン)か
  2. ^ The Official Chronology of the U.S. Navy in World War IIおよび伊達久「第二次大戦 日本海軍作戦年誌」による
  3. ^ 木俣滋郎『敵潜水艦攻撃』による
  4. ^ ホリングスワースとアーチャーフィッシュ艦長のジョゼフ・F・エンライトは、潜水学校の級友だった(『信濃!日本秘密空母の沈没』)
  5. ^ スキャンプ以外は該当戦果はない

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • Theodore Roscoe "United States Submarine Operetions in World War II" Naval Institute press、ISBN 0-87021-731-3
  • 財団法人海上労働協会編『復刻版 日本商船隊戦時遭難史』財団法人海上労働協会/成山堂書店、1962年/2007年、ISBN 978-4-425-30336-6
  • Clay Blair,Jr. "Silent Victory The U.S.Submarine War Against Japan" Lippincott、1975年、ISBN 0-397-00753-1
  • 海防艦顕彰会『海防艦戦記』海防艦顕彰会/原書房、1982年
  • 木俣滋郎『日本水雷戦史』図書出版社、1986年
  • 駒宮真七郎『戦時輸送船団史』出版協同社、1987年、ISBN 4-87970-047-9
  • 木俣滋郎『敵潜水艦攻撃』朝日ソノラマ、1989年、ISBN 4-257-17218-5
  • 伊達久「第二次大戦 日本海軍作戦年誌」『写真 日本の軍艦14 小艦艇II』光人社、1990年、ISBN 4-7698-0464-4
  • 木俣滋郎『日本潜水艦戦史』図書出版社、1993年、ISBN 4-8099-0178-5
  • J・F・エンライト/J・W・ライアン、千早正隆監修、高城肇訳『信濃!日本秘密空母の沈没』光人社NF文庫、1994年、ISBN 4-7698-2039-9
  • 木俣滋郎『日本海防艦戦史』図書出版社、1994年、ISBN 4-8099-0192-0
  • 松井邦夫『日本・油槽船列伝』成山堂書店、1995年、ISBN 4-425-31271-6
  • 野間恒『商船が語る太平洋戦争 商船三井戦時船史』私家版、2004年

[編集] 外部リンク


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