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B-29 (航空機) - Wikipedia

B-29 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

B-29 スーパーフォートレス

B-29 Superfortress

B-29 Superfortress

B-29は、第二次世界大戦末期から朝鮮戦争期のアメリカの主力戦略爆撃機。中型爆撃機構想から発展したB-17と異なり、最初から長距離戦略爆撃を想定して設計された。当初は陸軍戦略航空軍所属であったが、1947年空軍の独立と共に空軍に移管。

設計・製造はボーイング社、中翼単葉プロペラ4発の大型爆撃機である。爆弾の搭載量は最大9トン。航続距離は4,585km。ニックネームは「超空の要塞(スーパーフォートレス /Superfortress)」 。初出撃は1944年6月。

目次

[編集] 開発の経緯

アメリカ陸軍の航空部門は、第二次世界大戦が始まる5年前の1934年5月に超長距離大型爆撃機開発計画「プロジェクトA」を発足させた。これは1トンの爆弾を積んで8,000km以上を飛ぶことができる爆撃機を作る計画で、長距離渡洋爆撃を想定していた。B-29はこの構想の中から生まれた機体で、1938年に完成した試作機(ボーイングXB-15)から得られた種々のデータや、新しい航空力学のデータをもとに設計製作された。1940年6月27日(ヨーロッパでの戦争は始まっていたが、真珠湾前なのでアメリカは参戦していなかった)XB-29が発注され、1942年9月21日に初飛行した。なお、当初は中南米が主なターゲットとされていたとされる[要出典]。中南米にナチス・ドイツの同盟国が出現したりナチス・ドイツの占領下におかれた場合への、アメリカ本土の防衛策として開発された[要出典]。その航続距離は、ベネズエラ赤道ギアナ付近を想定したものであった[要出典]

[編集] 技術的特徴

B-29は同時代の爆撃機と比べて非常に進んだ設計になっている。

排気タービンの採用 
B-17B-24に続き過給機として排気タービンを装備。排気タービンは現在乗用車に使用されているターボチャージャーと同じ原理で、排気のエネルギーを利用してエンジンに圧縮された濃厚な空気を送り込む装置。空気が希薄な高空でのレシプロエンジンの性能を確保するのに不可欠だが、タービンには排気ガスと回転による高温高圧がかかる。日本側は捕獲したB-17のそれを形だけはコピーしたものの焼入れがうまくできず(当時は高温の油で行なう方法)、タービンの分子レベルでの均一が保てずに、そこから破損した。その結果、排気タービンを持たない日本の機械式の過給機の迎撃機は、高空の薄い空気の中ではエンジンの出力が極端に落ちる機種が多かった。大戦中に実用化したのはアメリカのみであった。ただしこれは軽量化優先のマグネシウム合金製で燃えやすい欠点があり、また強度に劣り部品寿命も短く、交換を前提とした消耗品であった。
与圧室の全面採用 
従来の飛行機は高空を飛ぶ場合、空気が薄くなる対策として乗員・乗客に酸素マスクの装備が必要であった。B-29は現在の旅客機のように、室内を海面に近い空気圧に保ち快適に飛行できる与圧室を装備しており、乗員は通常酸素マスク無しで搭乗していた[2]。アメリカは同じ時期に設計された民間機ロッキード・コンステレーションでも与圧室を採用している。また寒気に対する対策も充分にとられ、空調も完備されていた。
防御砲火の遠隔操縦 
遠隔操作により、機銃操作員が銃塔内から窓越しに見える敵迎撃機に向かって機銃を操作する事はなくなった。その結果機銃砲塔が非常にコンパクトになっている。また、火器管制装置の搭載により非常に高い練度を必要とする見越し射撃を誰でも行えるようになった。敵迎撃機を照準機のレティクルの中に捉えるだけで、火器管制装置が自動的に弾道計算して発砲するという優れたシステムであった。この結果、従来の爆撃機に搭載された防御砲火と比較して命中率が驚異的に向上し、敵迎撃機はうかつに接近する事もできなかった。(後にB-29の強敵となるMig-15戦闘機ですら、この強力な防御砲火は極めて脅威であったという)

[編集] 戦歴

B-29はその卓越した能力により日本の継戦能力を喪失させた、太平洋戦争における戦略爆撃機の代表と言える。

1944年4月にヨーロッパ経由でインドに集結、1944年6月から中国内陸部の成都基地より九州満州国東南アジア方面に爆撃を行った。膨大な燃料を必要とするB-29に対して成都への燃料輸送は膨大な労力を必要とし現実的なものではなかった。1944年11月以降は、マリアナ諸島のサイパン島テニアン島およびグアム島から日本本土のほぼ全域に対する戦略爆撃を行った。最初は爆撃対象を軍施設や軍需工場に限定して高高度からの精密レーダー照準爆撃であったがジェット気流の影響により目標からはずれることも多かった。

1945年に入りアメリカ空軍のカーチス・ルメイが、アーノルドに消極的と判断された前任のヘイウッド・S・ハンセルに代わり指揮官となると、「日本の継戦能力を根本から絶つ」として、爆撃対象は軍・民間を問わなくなり、低高度からの夜間無差別絨毯爆撃を開始した。総計14万から17万トン(諸説あり)の爆弾を東京大阪をはじめ、日本各地の都市に対して絨毯的に投下し、主要都市を焦土化した。

原爆投下後のエノラ・ゲイ
原爆投下後のエノラ・ゲイ

都市の住民8万人近くが焼死あるいは重傷・罹災等になった東京大空襲や、大阪大空襲は、B-29の重要な戦果とされる。さらに日本各地の港湾・航路に空中投下機雷を散布して海上封鎖を行い、国内航路に大打撃を与えた。特に関門海峡はじめ主要な港湾や海峡に多くの機雷が投下された。当初は数十機編隊で、1機あたり爆弾の搭載量も2~3トンであったが、1945年になると5~6トンを搭載するようになり、終戦近い頃にはB-29とそれを護衛する戦闘機の集団約500機(戦爆連合とも)で来襲するようになった。

また、広島市長崎市に、原子爆弾(新型爆弾)を投下し、数十万人の市民が被災した。広島市に原子爆弾を投下したB-29はエノラ・ゲイ、長崎市に原子爆弾を投下した機はボックスカーと呼ばれる。広島にはウラン型の「リトルボーイ」が、長崎にはプルトニウム型の「ファットマン」が投下された(詳細は広島市への原子爆弾投下長崎市への原子爆弾投下参照)。

アメリカではこれら戦果により、日本の終戦を早め「本土決戦」(日本上陸戦・オリンピック作戦)という大きな被害が予想される戦いを避けることができたと評価している。原爆機の搭乗員はヒーローとして戦後各地で公演を行い、広島市に原子爆弾を投下したエノラ・ゲイは、退役後、分解されて保存されていたが復元されスミソニアン博物館に展示されることとなった。また、ボックスカーは国立アメリカ空軍博物館に実機が保管されている。

初期以来の精密爆撃や末期の原子爆弾投下および偵察飛行において、B-29は本来の性能を発揮できる高高度(9000~10000m)で行われた。早乙女勝元の著書「白魚」では、B-29は高空に伸びてゆく飛行機雲の先の小さな粒であった、と描かれているが、日本で「白魚」のようにB-29が描かれることは非常に少ない。

[編集] 日本の対B-29戦闘

日本を空襲するB-29
日本を空襲するB-29

航空機の品質が低下した上、高オクタン価の航空燃料の入手が困難になった戦争後期の日本にとり、高空を飛行するB-29を迎撃する事は至難であった。迎撃には単座戦闘機鍾馗飛燕雷電紫電改などが使用されたが、1万m以上の高空では排気タービンを装備したB-29の方が高速であり、追いつくのも困難であった。このため待ち伏せの体当たりも行われた。夜間爆撃は低空侵入だったので斜め20mm砲を装備した双発の月光屠龍等が撃墜の成果を挙げた。

さらに、1945年3月に硫黄島がアメリカ軍に占領され、護衛戦闘機P-51が随伴するようになると、双発機は使用できず日本軍迎撃機によるB-29の撃墜は一段と困難になった。しかし、これは逆に米側にとって日本戦闘機の迎撃が熾烈だった事の証左でもある。誤解されがちだが、300機以上に達するB-29の日本本土作戦による喪失機の半数以上(硫黄島陥落前の大半)は日本軍戦闘機の通常攻撃(体当たりではない)によるもの、もしくはその損傷によって途中飛行不可能となり不時着したものである。旧型の零戦から銃撃を受け損傷したケースも確認されている。

カーチス・E・ルメイが戦術変更して以来、B-29の空襲は主に夜間に行われるようになり、夜間は日本側の単座戦闘機が飛べないので2~3千メートルまで降下して絨毯爆撃を加えるようになった。センチメートル波の小型機上レーダーはおろか、各機を管制する防空システムがない日本側では効果的な迎撃を行うことができず、パイロットは寒さの中で、夜間戦闘機が爆撃の火災に照らし出されるB-29を発見・攻撃する状態であり、灯火管制の中止を要求する飛行隊もあった。日本側の戦闘機による迎撃能力が問題にならないことに気づいたアメリカ側は、東京大空襲の際には、有効な対空兵器のない日本の首都にたいして、高度300mで進入爆撃した。B-29の後部銃座以外の防御火器を撤去し、砲塔の跡はジュラルミンで塞ぎ通常より多い6トンの高性能焼夷弾を搭載し攻撃した(ただし、この際にはF-13による偽装飛行も行われており、日本軍の戦闘機はそちらに注力していた)。

もっとも、このように武装を撤去して軽量化する羽目になったのは、「カンザスの戦い」と呼ばれるB-29強行生産計画で作られた、ライト・サイクロンR3350型発動機の信頼性に問題があった為でもある。インドではオーバーヒートの為に冷却装置の改良を余儀なくされたが、時々離陸時に十分な推力が得られず墜落した。これはロールス・ロイス社製エンジンに換装されないかぎり解決されない問題であった。

被弾・故障したB-29の不時着地と護衛戦闘機の基地として硫黄島が選ばれ、アメリカ軍は多大な犠牲を払って日本軍からこの島を奪った。同島までたどり着けないB-29のためには東京湾近辺に潜水艦が配置されて乗員の救助にあたった。

日本は、撃墜できたB-29を分別し、ジュラルミンを融解して、再利用した。

[編集] 第二次大戦後

冷戦構造が顕在化した1948年のベルリン封鎖の折には、ソ連の西ベルリンへの包囲網に対抗して西側諸国が空輸作戦を展開し、B-29もその作戦に参加した。

[編集] 朝鮮戦争

B-29(左)と後継機B-36
B-29(左)と後継機B-36

1950年6月に始まった朝鮮戦争でも、戦争初期においてはソビエト連邦の支援を受けた北朝鮮軍(共産軍)は旧式な戦闘機のみであり本格的な航空戦力を持っていなかったので、制空権を有していた国連軍のB-29は自由に爆撃を行っていた。しかし共産軍にMiG-15が登場すると形勢が逆転しはじめた。第二次世界大戦の対日戦で無敵を誇っていたB-29もMiG-15の強力な37mm機関砲によって次々に損害が続出し、爆撃機を護衛する筈の戦闘機までもが自らの身を守るのが精一杯という状況に陥ってしまった。プロペラ爆撃機ではジェット戦闘機にかなわないことは明らかだった。これに驚いた米空軍は急遽、後退翼を持つ当時最新鋭のF-86Aセイバーを投入し制空権の回復に努めた。朝鮮戦争では、基地までの距離が短いことやF-86セイバーなどの強力な護衛戦闘機があったこと、B-29の強力な防御砲火などにより撃墜された機体こそ24機に過ぎなかった(着陸できれば撃墜寸前であっても被害にはカウントされないため)が、着陸できてもスクラップになる機体も多く発生した。F-86セイバーを護衛戦闘機としてつけても被害を食いとどめられず、1951年には昼間爆撃任務から外されるようになった。

[編集] その後

B-29の後継機は、改良型のB-50およびB-36だが、上述のジェット戦闘機による撃墜が増えたことやB-52などのジェット爆撃機が戦略爆撃機の主力となったことなどで、朝鮮戦争後は次第に旧式機とみなされ主力から離れていった。しかし、1954年頃の対ソ連核攻撃シナリオでは、B-29も主力とみなされていた。

1950年代に超音速機の開発の際にX-1などの超音速機を吊り下げる(上空で切り離す)役目を果たしたことが末期の活躍(ライトスタッフに登場)である。その後1960年代に入る頃には退役した。

なお、末期のB-29については、1953年テックス・アヴェリーにより擬人化し妻子を持たせた米国製アニメにもなり、日本でもテレビ放映された(主にトムとジェリーとの併映)。そこでは当時の不遇とともに、父であるB-29が息子に名機としての飛びっぷりを披露するシーンがある(詳細は「ぼくはジェット機」を参照されたい)。

[編集] スペック

アラバマ川上空で訓練中のB-29
アラバマ川上空で訓練中のB-29

出典National Museum of the USAF - BOEING B-29 SUPERFORTRESS

  • 全幅:43.1m
  • 全長:30.2m
  • 全高:8.5m
  • 翼面積:161.5m²
  • 自重:32.4t
  • 全備重量:61.2t
  • 最大離陸重量:60,6t
  • エンジン:ライト R-3350-57 エンジン 2,200馬力 4基
  • 最大速度:574km/h
  • 巡航速度:350km/h
  • 航続距離:爆弾4.5t搭載時 5,200km
  • 上昇限度:10,200m
  • 最大爆弾搭載量:9t
  • 武装:12.7mm機関銃 10門、20mm機関砲 1門

[編集] 主な派生型

  • XB-39 - アリソンV-3420-11換装型。実用化には至らず、その後はエンジンテストベット機として使用された。
  • XB-44/B-29D/B-50 - P&WR-4360-33換装型。エンジンテストベット機のXB-44の性能は良好で、生産型B-29Dとして200機が発注されたものの対日戦の終結により60機に縮小され、更には一旦全機がキャンセルされてしまうが、後にB-50として復活。
  • P2B - 海軍の長距離偵察型。
  • ワシントン Mk.I - イギリスに貸与したB-29。88機。
  • F-13/FB-29/RB-29 - 写真偵察型。
  • KB-29 - 空中給油機型。
  • C-97 - 主翼・尾翼・エンジン類を流用して胴体を太い2階建てにした輸送機。
  • KC-97 - C-97の空中給油機型。KC-135が実用化されるまで使用された。
  • ボーイング377 - C-97の旅客機型。「空飛ぶホテル」の異名を持つ。

[編集] コピー機・Tu-4

Tupolev Tu-4
Tupolev Tu-4

スターリンは再三再四にわたりアメリカに長距離戦略爆撃機を供与してくれと要望していた。しかしアメリカとしては対日戦重点投入という目的もあった上に、ソビエトが戦略爆撃機を持つということに難色を示していた。 そんな折、1944年の7月、8月及び11月に日本及び満州を爆撃した3機のB-29が機体の故障などによりソ連領内に不時着した。パイロット達は抑留された後にアメリカに送還されたが機体は没収され、スターリンの命により解体調査された。そしてアンドレイ・ニコラエヴィッチ・ツポレフらにより解体した部品に基づく設計が行われて1946年夏に完成したのがツポレフTu-4NATOコードネーム:ブル)である。

その後1947年8月3日モスクワで行われた航空記念日パレードで初披露されたTu-4はその後もエンジンやプロペラなどの改良が行われ、1949年半ばにはソ連戦略爆撃軍で本格的に運用された。1950年代の終わりまでに約1,200機が製造され、そのいくつかは中華人民共和国人民解放軍に引き渡された。

一方、アメリカ空軍はTu-4にアメリカ本土への攻撃能力があることを理解してパニックに陥り、レーダーや地対空ミサイルなどの防空設備の開発を急ぐこととなった。また、アメリカ人はB-29のあからさまなコピーなのをみてTu-4を「ボーイングスキー」と呼んだという。

インチ法とセンチ法の違いもあること、そしてスターリンの命令ですべてコピーせよとの命令に忠実に従い、日本の対空砲火で受けた弾痕まで忠実に再現したと言う伝説を持つ(真相は不明だが、再現しないと命令無視として粛清される、だからといって弾痕まで再現すると兵器に対する不義として粛清される、というスターリンの恐怖政治を皮肉ったアネクドートではないか、と見る説もある)またこれは弾痕ではなく、製造時のミスでリベット用として空けられたものではないか、とする資料もある。

[編集] 脚注

  1. ^ Knaack, Marcelle Size (1988). Post-World War II bombers, 1945-1973. Office of Air Force History. ISBN 0-16-002260-6. 
  2. ^ 実際には気圧は1気圧ではなく海面1000位の圧力に調整されていた。このため前後の交通を確保するため爆弾倉の上には交通パイプが設置され本機の特徴のひとつとなっている。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] B-29が違う用途で使われている作品

劇中終盤で新型爆撃機の登場により不要となったB-29が、対戦車用のガンシップに改造され、ナチスドイツ軍の戦車隊と一戦を交える場面がある。また劇中後半で日米が和睦して以降は日本に多数のB-29が払い下げられている。

[編集] 外部リンク

B-29による日本本土空襲


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