ジュラルミン
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ジュラルミンとは、アルミニウムと銅、マグネシウムなどとの合金である。
[編集] 概要
ジェラルミンには、JIS規格で A2017(ジュラルミン)、A2024(超ジュラルミン)、A7075(超々ジュラルミン)と呼ばれる3つの種類がある。
2017と2024は、JIS規格では"2000系"と呼ばれる系統に属し、主にアルミニウムと銅の合金である。一方7075は、同様に"7000系"と呼ばれる系統で、主にアルミニウムと亜鉛、マグネシウムの合金であり、アルミニウム合金の中で最高の強度を誇る(引っ張り強度:約570N/m²)。特徴としては3種とも切削性に富むが、後述するように耐食性や溶接性に劣る面がある。7000系には、他に溶接に向いている7N01がある。
アルミニウムは軽量であるが、純アルミニウム("1000系")の強度は大きくない。これに銅などを加え、熱処理(溶体化処理)を加えることにより、軽量でありながら十分な強度を持たせることができる。
その強度と軽さから家屋の窓枠、航空機、ケースなどの材料に利用される(ジュラルミンケース)。また、最近では一部の携帯電話の端末本体の装飾に用いられる(2008年現在、au向けのソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製端末「W62S」がこれに該当する)場合もある。
[編集] 来歴
ジュラルミンは、1906年ドイツのデュレン (Düren) で、ウィルム (Alfred Wilm) によって偶然に発見された。このデュレンとアルミニウムの合成語が、ジュラルミン (duralumin) である。また、ウィルムによって、ジュラルミンの時効硬化現象が見出された。もともとは薬莢の材料として、銅と亜鉛の合金の黄銅を用いていたが、「もっと軽いアルミニウムを銅と混ぜたらよいのではないか」という発想から得られたものである。結果としてその試みは失敗したが、思わぬ大きな成果を得た。
1910年代、ツェッペリン飛行船やユンカースの輸送機への導入を機に、航空機用資材として広く用いられるようになった。日本の零式艦上戦闘機をはじめとする軍用航空機にも、住友金属が開発した超々ジュラルミン (ESD) 等のジュラルミン材が多用された。
もっとも、このジュラルミンには水、特に海水に対する耐食性に問題があり、飛行艇のフロート(舟といった)の喫水下部分には、「銅を含まないアルミニウム材」を使用せねばならなかった。
第二次世界大戦後、航空技術の禁止で余剰となったジュラルミン部材が、川崎航空機と縁の深い川崎車輌が製造を担当した国鉄向け新製鉄道車両の一部(国鉄63系電車や国鉄オロ40形客車など)に使われ、特に63系電車の場合は「ジュラ電」などと呼ばれて注目を集めたが、耐食性が低い材料である上に塗装を施さなかったことから、電装品の絶縁が不十分であったことなどもあって急速に腐食が進行し、このため製造後わずか7-8年程度でいずれも鋼製車体に置き換えられ、短命に終わっている。また、東京駅の戦災復興に際しても、軽量であることからドーム部の骨組にジュラルミン材が使用された。
日本が戦後唯一製造した国産旅客機YS-11は総ジュラルミン製である。