ブリーム (潜水艦)
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艦歴 | |
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発注 | |
起工 | |
進水 | 1943年10月17日 |
就役 | 1944年1月24日 |
退役 | 1969年6月28日 |
除籍 | 1969年11月7日 |
その後 | 標的艦として海没処分 |
性能諸元 | |
排水量 | 1,526トン(水上) 2,426トン(水中) |
全長 | 307ft (93.6m)(水線長) 311ft 9in (95m)(全長) |
全幅 | 27.3 ft (8.3 m) |
吃水 | 19.3 ft (5.9 m) |
機関 | ゼネラル・モーターズ278A16気筒ディーゼルエンジン 4基 ゼネラル・エレクトリック発電機2基 |
最大速 | 水上:20.25 ノット (37 km/h) 水中:8.75 ノット (16 km/h) |
航続距離 | 11,000カイリ(10ノット時) (18.5 km/h 時に 20,400 km) |
試験深度 | 300ft (90m) |
巡航期間 | 75日 |
乗員 | 士官6名、兵員54名(平時) 士官、兵員80 - 85名(戦時) |
兵装 | 3インチ砲1基、21インチ魚雷発射管10基 |
ブリーム (USS Bream, SS/SSK/AGSS-243) は、アメリカ海軍の潜水艦。ガトー級潜水艦の一隻。艦名はヨーロッパに生息するコイ科の淡水魚に因む。
目次 |
[編集] 艦歴
ブリームはコネチカット州グロトンのエレクトリック・ボート社で起工する。1943年10月17日に艦長のウルフォード・G・チャップル夫人によって進水し、ウェフォード・G・"ムーン"チャップル少佐の指揮下1944年1月24日に就役する。ニューロンドンを発ち、太平洋戦線に向かった。
[編集] 第1・第2・第3の哨戒
6月1日、ブリームは最初の哨戒でバッショー (USS Bashaw, SS-241) 、フラウンダー (USS Flounder, SS-251) とともにハルマヘラ島近海に向かった。6月16日、ブリームは北緯2度23分、東経128度43分の地点で陸軍輸送船雄基丸(大連汽船。5,704トン)を撃沈した。6月29日、ブリームは29日の行動を終えてマヌス島に帰投した[1]。
7月21日、ブリームは2回目の哨戒でミンダナオ海方面に向かったが、この哨戒で戦果を挙げることはなかった。9月6日、ブリームは48日間の行動を終えてブリスベンに帰投した[1]。
10月2日、ブリームは3回目の哨戒でルソン島近海に向かった。10月23日朝、ブリームは北緯14度0分、東経119度27分の地点でマニラに向けて航行中の日本艦隊を発見した。この時発見したのは、レイテ島への輸送作戦を命じられた第十六戦隊(重巡洋艦青葉、軽巡洋艦鬼怒、駆逐艦浦波)であった。3隻は青葉を中心に右舷側に浦波、左舷側に鬼怒を配してマニラに向かっていた。4時32分、ブリームは青葉に向けて魚雷を3本発射し、うち1本が青葉の前部機械室に命中。青葉は機械室等を破壊され兵器等も使用不能となり、右に傾斜して大破した。その後もマニラ近海で哨戒を続け、11月3日、ブリームはレイ (USS Ray, SS-271) 、ギターロ (USS Guitarro, SS-363) と合流してウルフパックを編成。翌11月4日、このウルフパックは北緯15度55分、東経119度44分のルソン島沿岸ダソル湾沖でタマ31A号船団を発見した。この船団は元水上機母艦香久丸(大阪商船。6,806トン)と二等輸送艦4隻で構成されていた。ウルフパックは二等輸送艦には目もくれず、香久丸を攻め立てた。夕刻17時48分、まずブリームが香久丸に魚雷を命中したようであり、次いでギターロも命中と判断。レイも魚雷2本を発射し命中と報告した。香久丸の記録では船尾方向から6本発射され回避、船首方向から発射された8本のうち1本が命中し、船体が2つに折れて20時10分に沈没したとある[2]。戦果判定で、どの艦の魚雷が香久丸を撃沈したのか判然としなかったため、結局3隻の合同戦果となった。その後、レイトン (USS Raton, SS-270) がウルフパックに合流し、11月6日にはルソン島サンタクルーズ沖でタマ31船団を発見した。この船団の中には、ブリームが大破させ日本本土に回航中の青葉の他、レイテ沖海戦で損傷しこれまた日本本土に回航される途中だった重巡熊野もいた。ウルフパックは熊野めがけて合計23本の魚雷を発射。うち2本が熊野に命中したが、今回もどの艦の魚雷が無化のに命中したか分からなかった。ブリームは4本発射して2本命中と判断し、ギターロは9本発射し3本命中を報告。レイトンは6本発射して成果不明で、レイは発射したものの命中しなかった。11月22日、ブリームは50日間の行動を終えてフリーマントルに帰投した[1]。また、艦長がジェームズ・L・P・マッカラムに代わった。
[編集] 第4・第5・第6の哨戒
12月19日、ブリームは4回目の哨戒でブルーギル (USS Bluegill, SS-242) 、バーベル (USS Barbel, SS-316) らとともにスールー海から南シナ海に向かった。1945年1月7日、ブリームは南シナ海上の砂堆であるティザードバンクを偵察。2月10日、ブリームは52日間の行動を終えてフリーマントルに帰投した[1]。
3月7日、ブリームは5回目の哨戒でジャワ海に向かった。3月10日にエクスマウス湾で給油した後、3月13日には2隻の監視艇を撃沈[3]。翌3月14日には特設駆潜艇京浜丸(神奈川県。76トン)を撃沈した[4]。また、この日にはブリームはジャワ海の一小島から日本軍の捕虜になっていた2人のオペレーターを救出。しかし、次の日にブリームは爆雷攻撃を受け損傷し、やむを得ず哨戒を打ち切って帰投することとした。3月22日、ブリームは19日間の行動を終えてフリーマントルに帰投した[1]。
4月20日、ブリームは6回目の哨戒でジャワ海、南シナ海方面に向かった。4月29日、ブリームはボルネオ沖で帝珠丸(元ドイツ掃海母艦キト。1,230トン)を撃沈した[5]。5月8日にはインドシナ半島沖に機雷を敷設した。ブリームは5月14日にスービック湾に寄港した後、台湾沖で救助任務に従事し、6月5日にブリームは54日間の行動を終えてサイパン島に帰投した[1]。翌日、ブリームはサイパン島から真珠湾に向かい、その後6月24日にサンフランシスコに到着する。サンフランシスコでオーバーホールの後、1946年1月31日に予備役となり太平洋予備役艦隊入りした。
[編集] 戦後
ブリームは1951年6月5日に現役復帰し、太平洋艦隊第3潜水艦隊に配属される。1951年6月から1952年8月までブリームはサンディエゴの艦隊ソナー学校での訓練任務に従事する。1952年9月10日にサンフランシスコで予備役となり、対潜潜水艦へ改修される。1953年2月18日に SSK-243 に艦種変更された後6月20日に再就役し、ブリームは平時における太平洋での全ての作戦活動に参加した。1954年9月にはアラスカでの訓練巡航を行い、真珠湾を経由して11月5日にサンディエゴに帰還した。その後はカリフォルニア沖で活動し、1955年5月7日から24日まで真珠湾へ向かう。西海岸からの次の任務は1956年3月6日に始まり、太平洋西部で巡航した後1957年前半にサンフランシスコで終了し、1964年2月1日には AGSS-243 (実験潜水艦)に再変更された。その後、ブリームは1969年6月28日に退役、11月7日に標的艦として原子力潜水艦ドラゴネット (USS Dragonet, SSN-590) によって撃沈された。
ブリームは第二次世界大戦の戦功で4個の従軍星章を受章した。また、ブリームは2隻の日本艦艇を撃沈し、そのトン数は6,934トンに上る。
[編集] 脚注
- ^ a b c d e f 出撃日と帰投日はBream (SS-243)による
- ^ 野間恒『商船が語る太平洋戦争』による
- ^ Bream (SS-243)による
- ^ The Official Chronology of the U.S. Navy in World War IIによる。船舶データは林寛司、戦前船舶研究会「特設艦船原簿」「日本海軍徴用船舶原簿」による
- ^ The Official Chronology of the U.S. Navy in World War IIによる。船舶データはThe Naval Data Base.近代世界艦船事典による
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 軍艦青葉戦闘詳報 第六号 昭和十九年十月二十三日 菲島西方海面対潜水艦戦闘(昭和19年10月23日~昭和19年10月29日 軍艦青葉戦闘詳報(菲島西方海面対潜水艦戦闘 マニラ湾 対空戦闘(1))アジア歴史資料センター レファレンスコード:C08030748400
- Theodore Roscoe "United States Submarine Operetions in World War II" Naval Institute press、ISBN 0-87021-731-3
- 財団法人海上労働協会編『復刻版 日本商船隊戦時遭難史』財団法人海上労働協会/成山堂書店、1962年/2007年、ISBN 978-4-425-30336-6
- Clay Blair,Jr. "Silent Victory The U.S.Submarine War Against Japan" Lippincott、1975年、ISBN 0-397-00753-1
- 駒宮真七郎『戦時輸送船団史』出版協同社、1987年、ISBN 4-87970-047-9
- 木俣滋郎『敵潜水艦攻撃』朝日ソノラマ、1989年、ISBN 4-257-17218-5
- 瀬名堯彦「パラワン水道における米潜の活躍」『写真/太平洋戦争 第4巻』光人社、1989年、ISBN 4-7698-0416-4
- 野間恒『商船が語る太平洋戦争 商船三井戦時船史』私家版、2004年
- 林寛司、戦前船舶研究会「特設艦船原簿」「日本海軍徴用船舶原簿」『戦前船舶 第104号』戦前船舶研究会、2004年
[編集] 外部リンク
- history.navy.mil: USS Bream
- hazegray.org: USS Bream
- navsource.org: USS Bream
- Sinkings by boat: USS Bream
- Bream (SS-243)
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