大阪市問題
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大阪市問題(おおさかしもんだい)とは、大阪市職員(大阪市役所とその各部局と区役所)のカラ残業、厚遇問題などの総称である。全国でも大きく取り上げられ、また、これがきっかけとなり、全国の他の自治体でも職員厚遇などが発覚したため、改革の動きは大阪市だけでなく全国に波及しつつある。
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[編集] 概要
毎日放送のニュース番組VOICE内のコーナー「闇の正体」で取り上げられた「カラ残業問題」が発端となった。その後も、VOICEが率先してこの問題を取り上げ、報道関連の賞を受賞した。その後、大阪市は改革に取り組み始め、2005年4月1日に市政改革本部を設置し、2005年、2006年度の2年間で集中的に抜本的な市政運営の改革を進めている。
[編集] 経過
- 2004年秋頃 - 大阪市職員厚遇問題が発覚する。
- 2004年12月19日 - 大阪市福利厚生制度等改革委員会が設置される。[1]
- 2005年4月1日 - 市政改革本部を設置。2005年、2006年度の2年間で集中的に抜本的な市政運営の改革を進めると発表。
- 2005年4月27日 - 市政改革本部の活動方針(案)を公表。[2]
- 2005年9月27日 - 市政改革基本方針(市政改革本部案、市政改革マニフェスト)を公表。[3]
- 2006年1月12日 - 局長・区長改革マニフェスト(局・区改革実施方針)(案)を公表。[4]
- 2006年2月 - 局経営方針(案)を策定。
- 2006年2月22日 - 大阪市が2006年度当初予算案を発表。今後5年間の予算の削減目標2,250億円のうち、約37%にあたる832億円分を削減する内容になっている。
- 2006年3月3日 - 職員削減数を市政改革基本方針で示した7,000人から5,500人追加し1万2,500人を削減すると発表。
- 2006年3月10日 - 4月から実施する組織改正案を発表。市政改革室などを新設。
- 2006年8月31日 - 2005年度の普通会計決算見込みで、全会計ベースの市債残高が前年度比174億円減の5兆5,022億円となり、戦後初めて減少した。
[編集] 主な問題
[編集] 職員厚遇問題
市長を助役や市職員の中から輩出する伝統が続いているが、こうした閉鎖的体質には経済界などからの批判も強い。市役所内の所在フロアから地下1階(職員組合)と5階(市長室)が方針を決めて、8階(市会)が追従するとまで言われるほど、強力な発言力を持つ職員組合の影響で、職員の給与水準は政令指定都市の中で川崎市に次いで2番目に高い。また、政令指定都市中最悪という深刻な財政危機にもかかわらず福利厚生は政令指定都市の中で最高で、市民から強い反発を受けたため、現在、その厚遇見直しについて論議されている。そして2007年11月に行なわれた市長選では元助役だった現職が民間出身の新人に敗れ、長年続いた助役・市職員出身市長が途切れたことになる。
[編集] 第三セクター問題
1990年代から、湾岸地域開発の先行投資等として計画調整局が所管する株式会社湊町開発センター(OCAT)、株式会社大阪シティドーム、経済局が所管するアジア太平洋トレードセンター(ATC)株式会社、建設局が所管するクリスタ長堀株式会社、港湾局の所管する株式会社大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)、の第三セクター各社が相次いで経営破綻し、交通局の土地信託であるフェスティバルゲートの破綻などいわゆる5K(所管局の名称の頭文字から)問題がある。現在、これらの第三セクターは経営再建に取り組んだ結果、2004年度にOCATが、2005年度にWTC・ATCがそれぞれ黒字を達成している。また、大阪ドームは2006年9月1日付けでオリックス不動産が買収している。また、大阪府内にある第三セクターの2005年度の経常収支は前年度比340億300万円増の387億5,700万円の黒字で全国最高だった[5]。
[編集] 行財政改革
- 市職員数は約4万6,000人で、他の政令市と比べても多かった。また、市債残高は約5兆5,022億円(平成17年度末)にのぼり財政再建団体への転落が危惧されているため、事務事業の見直しや業務委託、外郭団体の統廃合など改革が進められている。
- 2006年時点で人口一人当たりの市の負債額が、全国政令指定都市中最高である。実質公債費比率は17.5%で、全国政令指定都市中10番目である、[6][7]。
- 近年、大阪府が府と大阪市の合併を提唱したいわゆる「『大阪都』構想」に反発し、地方自治法黎明期に存在し、都道府県から独立した行政主体である特別市と同様に、政令指定都市より強い権限を持ったスーパー指定都市構想を掲げている。
[編集] 同和行政問題
芦原病院(浪速医療生活協同組合)への不明瞭な補助金や、飛鳥会の幹部の横領問題等、同和行政にも大きな問題点があったと指摘された。
[編集] 大阪市労組の「ヤミ専従」問題
- 2005年、大阪市の労働組合幹部が市から給与を受け取りながら勤務をせず、自治労府本部などに一定期間「出勤」をするなど組合活動をしていた「ヤミ専従」が発覚[8]。ヤミ専従が発覚したことを受け、大阪市労働組合連合会が自主調査をしたところ、大阪市の組合役員が正規の手続きをせずに(2005年から)過去3年間に不正に受給した給与総額は約1億5400万円であり、この自主調査の不正受給分は市へ返還すると発表した。[9]
- また、大阪市労働組合の分会幹部が、「ヤミ専従」や「カラ残業」をしているとして、大阪市の職員7人が公益通報を扱う外部委員会に告発をし、市民団体「見張り番」も、2001年以降のカラ残業代などを中心に、大阪市労組分会幹部3人に給与など計7800万円余りの返還を求め、住民監査請求した。監査請求書などによると、労組幹部3人はいずれもほとんど出勤せず、出勤しても「組合活動だ」と言って職場を出て行く状態だったにもかかわらず残業代を受け取っていたり、同僚と山登りに参加した日も帳簿上は出勤扱いになっていたと伝えられた[10]。
- 結果的に、大阪市の全庁調査では、公務時間内の組合活動に対し、年10億円が給与として支出されていた実態が浮き彫りになり、また条例(ながら条例)では、公務時間内に認められる組合活動として、労使の団体交渉に加え、その「準備行為」が盛り込まれたが、それが次第に拡大解釈されて不正な運用の「根拠」になっていたと批判を受け、大阪市議会はこの再発防止をするため、有給の組合活動は労使の団体交渉だけに限定する条例改正案を可決するに至った。[11]
[編集] 市政改革
実行したもの
計画・策定中のもの
- 大阪市交通局の民営化。
[編集] 脚注
- ^ 大阪市経営企画室 (2004~). 大阪市福利厚生制度等改革委員会について.
- ^ 大阪市役所 市政改革本部 (2005). 市政改革本部の活動方針(案).
- ^ 大阪市経営企画監所管組織 (2005). 市政改革マニフェスト.
- ^ 大阪市経営企画監所管組織 (2006). 局長・区長改革マニフェスト(局・区改革実施方針)(案)について.
- ^ 毎日新聞大阪本社版2007年4月5日(木)付朝刊10面 東京商工リサーチ関西支社調べ
- ^ 総務省 (2006). 平成18年度 実質公債費比率の算定結果(速報)PDF.
- ^ 総務省 (2006). 平成18年度 実質公債費比率の算定結果(速報)HTML.
- ^ 2005年9月1日 朝日新聞
- ^ 2005年9月1日 毎日新聞
- ^ 2007年9月27日 京都新聞
- ^ 2005年9月13日 共同通信