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第三セクター - Wikipedia

第三セクター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

第三セクター(だいさんセクター)とは、国および地方公共団体が経営する公企業を第一セクター、私企業を第二セクターとし、それらとは異なる第三の方式による法人という意味である。略して三セク(さんせく)とも言う。

第三の方式という意味にも、

  1. NPO市民団体などの非営利団体。(日本では第4セクターとされる場合もある)
  2. 国や地方公共団体と民間が合同で出資・経営する企業。

という2通りの使われ方がある。

目次

[編集] 国際的に用いられる意味(1の意味)

国際的には、第三セクター(サードセクター)とは、NPO、市民団体その他の民間の非営利団体を示し、また、英語圏(特にイギリス)では、NPOや慈善団体など、公共サービスを提供する民間団体のことを指す。

第一セクターが公益目的の公的団体、第二セクターが営利目的の私的団体(営利企業)なのに対して、第三の方式としての非営利(公益)目的の私的団体という意味である。

en:Third_Sector」の項を参照のこと。

[編集] 日本でよく用いられる意味(2の意味)

日本においては、または地方公共団体(第一セクター)が民間企業(第二セクター)と共同出資によって設立した法人を指すことが多い。その場合、多くは設立が比較的容易でその運営方式も自由な株式会社の形態を採る。半官半民の中間的な形態が、第三の方式という意味である。この理解は国際的に見れば特殊である。

当初は、旧国鉄およびJR各社の赤字ローカル路線(特定地方交通線)を引き受ける事業主体としての第三セクター鉄道が有名だったが、それ以外にも1980年代後半以降、「民間活力の活用」というスローガンのもと、地域振興などを目的とした第三セクター会社が政策的に各地に設立された。

なお、この意味での第三セクターという用語が日本で公式文書に初めて用いられたのは、1973年に田中内閣の元で閣議決定された「経済社会基本計画」であるが、日本初の第三セクターといえる企業は、佐渡汽船である(1932年)。

[編集] 範囲

第三セクターは法的に概念が規定されているわけではなく、株式会社財団法人など、それぞれの法人形態に従った制度が適用されることになる。

したがって、論者によってその意味するところには若干の差異がある。

  1. 一つの整理方法では、自治体の出資する特別法人(土地開発公社地方道路公社地方住宅供給公社の地方3公社)、民法法人、商法法人の3類型とするものである。ただ、官とほぼ同一の特別法人(これらは用地造成・売却など行政の特定の政策目的の遂行のため設立され、一般会計とは区分される、いわば行政の別の「財布」である)や公益事業の色彩の強い民法法人(これも事業目的が限定される)と、株式会社等の自由度の大きい「企業」とは大きく制度が異なり、一括りにした議論はしづらいという見方もある。
  2. また一つの見方では、官民が共同して出資している法人とするものもある。この場合、地方自治体のみならず政府機関の出資も含む場合がある。総務省でも、ほぼこの見解に沿って「第三セクターに関する指針の改定」という平成15年12月12日付けの文書において、(この文書における)「第三セクターとは、地方公共団体が出資又は出えん(以下「出資」という。)を行っている民法法人及び商法法人をいう」としている。また、これらを「狭義の」第三セクターと呼ぶこともある。
  3. 一般に赤字累積等の問題点が指摘される場合、会社形態(商法法人の株式会社又は有限会社)のものを指していることが多い。

[編集] 法人数

全国で、株式会社又は有限会社形態のものが3000社、財団法人が4000法人、社団法人500法人あるとされる。(いずれも概数)

(注記)以下は、もっぱら会社形態の第三セクターについて述べる。

[編集] 特質

宮木康夫による第三セクターの効用

  • 利益追求を目的とする手法ではなく、もっぱら公共的事業をコストミニマムに実行するための手法である。
  • 株式会社形態である利点を活用することにより、第一セクターに係る収支改良(多くの場合赤字軽減)が可能となる。
  • 施主(自治体)から付託された仕事(公共領域)を、もっとも効果的・効率的には実行するための、自主性をもったプロ集団である。

[編集] 行っている事業

  • 地域・都市開発
  • 観光レジャー
  • 農林水産 - 農業・林業の作業受託、特産品開発・製造など
  • 運輸 - 鉄道、航空、空港ビル会社、マリーナなど
  • 情報処理 - 共同コンピュータ事務処理など
  • 商工
  • 放送 - 独立UHF局など地方局に多い
  • 産業廃棄物処理
  • その他

国有地である河川港湾海岸など、民間による開発が制限されている場所のマリーナの新規開業には、第三セクターの設立が求められる。

[編集] 誤用

1980年代には特定地方交通線鉄道として存続させる際、そのほとんどにおいて第三セクター方式で新規設立した鉄道企業により引き受ける方式がとられ、それと同時に「第三セクター」という言葉がマスメディアを通じて世間一般に広く浸透し、さらに大畑線黒石線のように既存民間企業が引き受ける場合も「第三セクター化」と誤用されたため、「第三セクター会社」があたかも「特定地方交通線を引き受ける企業」を指し示す言葉であるかのような誤解がまかり通った。

その後1990年代から鉄道以外に各種の第三セクター企業が全国各地に設立されたため、現在ではこの誤解はそれほどみられない。

[編集] おかれた状況

膨大な債務を抱え破綻する第三セクターが続出している。東京都大阪市の臨海開発関連の会社などがその代表格である。また、2006年に表面化した北海道夕張市の財政破綻には観光開発を担う第三セクターの赤字も関係している。

平成の市町村合併は、ある一面では市町村行政の総点検というべき作業でもあったが、第三セクターの点検・処理については「先送り」されることが多かった。結局、その進路を根本的に問うことにはならなかった。市町村合併は特例法に定める期限があったことから、市町村合併の成就を何よりも優先させた結果、他の自治体の事務にくちばしを挟むのを遠慮した傾向もある。

公共施設の管理委託を受けている第三セクターも多いが、指定管理者制度の導入においても、住民にとってのサービスの向上、低コスト化といった本質よりも、当面の処理として既存の委託先として第三セクターを選定した自治体も多い。 その意味では、まだまだ行政改革のメスは入っていない。

しかしながら、地方財政の逼迫度は増しつつあり、行政改革の一つとして第三セクターについてもそのあり方から含めた検討が求められている。

なお、地方行政から見ると第三セクターは「身内」であり、この意識こそが甘えを生んでいると言える。

[編集] 問題点

自治体等の「信用力」と民間企業の「柔軟性、増収意欲」の双方の利点を持った組織として、成果を期待されたが、実際に事業が始まってみると、自治体等の「経営理念の欠如」や、「無責任」、「先送り」、民間企業の「不安定性」を兼ね備えるという、双方のマイナス要素ばかりが目立つ結果となっている。地域金融機関をはじめとした地元主要企業に「奉加帳方式」で出資させ、行政からの天下り職員が牛耳るといった運営が続いた結果、多くの第三セクター企業が破綻、又は自治体からの運営費補助という生命維持装置で生きながらえている状態に陥っている。

官の縛り
官にとっては自分の会社、監督するのが当たり前という意識が強く、法的には通常の会社ではあるものの、運営全般に官のルールを押し付けがちであり、企業として本来期待された機動力を削いでいる。
民の官への依存
民の側も、お上意識から、あえて波風を立てず、多くの場合は最大出資者である行政に「お任せ」という姿勢になりがちである。
長期的展望の欠如
行政職員はローテーションで2~3年で転任するため、第三セクターの運営について長期的な展望を持ちづらい。これを回避するには民間出身の優秀なトップを据えて運営していくことが考えられる。しかしながら、先の官のルールにより、がんじからめに手足を縛ったうえ、民ならではの成果を出すように求めるなど、矛盾した要求をしがちである。結局、優れた人材も本来の力を発揮しづらい。
官と民とのもたれあい
上記の互いのもたれあいの結果、出血停止措置が有効に機能しない恐れがある。
赤字が当たり前という意識
本来、収益的に成り立つ事業であれば民間企業が行うはずであり、高リスクにより第三セクター方式にせざるを得ない場合がある(鉄道・汽船・バス・航空などの交通事業などがその典型)が、民間のよさを生かすという意味での改善意欲、増収意欲(コスト意識)をすらスポイルしてしまいがちである。
地域金融機関の甘い認識、横並び意識
地元の金融機関が出資していることも多いが、採算性など見込めないのに地方政界、財界との「お付き合い」で仕方なく、しかも横並びで出資しているようなケースが多い。付き合いで(金融機関にとっては)小額を出資しているだけであって、あとは行政にまかせきりとなっている。加えて職員も手弁当で派遣しているケースがある。指定金融機関指定代理金融機関として首根っこを押さえられている結果、株主としての当然果たすべき役割のみならず、本来果たすべきメインバンクとしての役割も自ら放棄している。
チェック体制の欠如(監査部門、議会のチェック力不足)
行政の監査も及ぶ場合も一部あるが「身内」であり、機能しているとは言いがたい。議会の追及も一応一民間企業ということから鈍りがちとなる。
行政の縦割り意識
行政の性として、たとえ問題と認識してはいても他の部門の事柄には干渉しようとしはない。
自治体と第三セクターの資金のやりとりのルール欠如
資金のキャッチボールのチェックが甘くなりがちである。
行政OBの天下り先化
豊富な行政経験を生かすという名目のもと、都合のいいOBの送り込み先となっているケースもある。現役の行政職員はOBに遠慮し「先輩」に自己改革を迫りづらい。一方、OBの方は、「地域貢献のためにしているのであって、少々の赤字は仕方ない。それを埋める行政の資金支援は当然」、さらには「今は環境が悪い」、「経営成績が上がらないのは自分の代になってのことではない」といった開き直り(責任転嫁)と取れることすらある。期待されるプロ意識どころか、腰掛け意識は拭えない。
第三セクター方式が適切か吟味不十分なままの見切り発車
バスに乗り遅れるな、他の自治体に負けるなといったいささか不純な動機からの設立など、本来必要な事業や法人形態についての吟味検討が不足している。
人材の欠如
関連会社子会社というものが無能な人材の押し付け先になるということは、社会一般によく見られることである。
情報公開不十分
民間法人であることを言い訳・隠れ蓑にして、ブラックボックス化させている。

[編集] 関連項目


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