パプアニューギニア
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パプアニューギニア独立国(パプアニューギニアどくりつこく)、通称パプアニューギニアは、南太平洋にあるニューギニア島の東半分及び周辺の島々からなる国。オーストラリアの北、ソロモン諸島の西、インドネシアの東、ミクロネシア連邦の南に位置する。イギリス連邦加盟国。首都はポートモレスビー。英連邦王国の一国。
- パプアニューギニア独立国
- Independent State of Papua New Guinea
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(国旗) 国章 - 国の標語 : なし
- 国歌 : O arise all you sons of this land
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公用語 英語、トク・ピシン、ヒリモツ語 首都 ポートモレスビー 最大の都市 ポートモレスビー 独立
- 日付オーストラリアの信託統治より
1975年9月16日通貨 キナ(PGK) 時間帯 UTC +10(DST: なし) ccTLD PG 国際電話番号 675
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[編集] 国名
正式名称は、Independent State of Papua New Guinea(英語: インディペンデント・ステイト・オブ・パピュア・ニュー・ギニー)。通称、Papua New Guinea。略称は、PNG。
日本語の表記は、パプアニューギニア独立国。通称は、パプアニューギニア。他に、パプワニューギニア、パプアニューギニヤ、パプワニューギニヤ、という表記もされる。「パプア」と「ニューギニア」の間に、中黒(・)を入れることも多い。
パプアニューギニアは、元々あったパプアとニューギニアが合併してできた国である。 パプアは、メラネシア人の縮れ毛を指すマレー語の言葉から来ている。 ニューギニアは、メラネシア人がアフリカのギニア人に似ているところからスペイン人の探検家が名付けたものである。
パプアは領土の南側で旧イギリス領(のちにオーストラリア領)、ニューギニアは北側で旧ドイツ領(後にオーストラリア委任統治領)であった。
[編集] 歴史
この地域において、約6万年前の東南アジア方面から来たと思われる人類の痕跡が見つかっている。 約5000年前、ニューブリテン島中央部のタラセアにおいて、貝の貨幣「シェルマネー」が作られた。これが最古の貝貨とされている。
1526年ポルトガル人のメネセスが来航、パプアと命名した。 19世紀の植民地主義の時代、1828年ニューギニア島の西半分を東西に分割し、1848年に西半分をオランダが併合、1884年には東半分をオーエン・スタンレー山脈、ビスマルク山脈で南北に分け、ニューブリテン島などを含んだ北半分をドイツ、南半分をイギリスが獲得した。南部は1901年にイギリスから独立したオーストラリアに継承された。
1914年からの第一次世界大戦にドイツが敗北すると、ドイツ領であった島の東北部は、国際連盟によりオーストラリアの委任統治領となった。
1941年からの太平洋戦争では、南太平洋からオーストラリアの占領を狙った日本軍が1942年1月22日、ニューブリテン島ラバウルに上陸、ニューブリテン、ニューアイルランド、ブーゲンビルなどの島嶼部やニューギニア本島の北岸を占領し、ポートモレスビー攻略を狙った。 しかし、1942年5月のサンゴ海の海戦で敗れて海からのポートモレスビー攻略を諦め、1942年8月には太平洋岸から山越えでポートモレスビーを陸路攻略する、と言う作戦が実行された。ここでも飢えとマラリアの為に多くの死者を出して撤退し、その後、制海権、制空権を失い補給を絶たれたニューギニアは、「ジャワの極楽、ビルマの地獄、死んでも帰れぬニューギニア」と謡われた凄惨な戦場となった。
1949年、オーストラリアは南東部と北東部を一行政単位に統合してパプアニューギニアとした。1964年、自治政府初の選挙が行われ、54名が当選、1968年、自治政府2回目の選挙で、84名が当選。同年、それまでオーストラリア政府によって禁じられていた現地人の禁酒法が廃止となる。 1971年 自治政府が、国旗、国歌、国家のエンブレムなどを採択。 1972年、第3回自治政府選挙で100名が当選。この選挙で、マイケル・ソマレが連立政権を樹立。 1975年9月16日、独立の丘でオーストラリアの国旗が降ろされ、パプアニューギニア国旗が翻るという儀式を経て、「パプアニューギニア独立国」として独立。それまでの自治政府議会が国会となった。初代首相:マイケル・ソマレは紛争を行うことなく平和的に独立を成し遂げた、独立の父として「チーフ」と呼ばれ、現在でも崇められており、通貨(50キナ札)にもその似顔絵が描かれている。
1983年に各州における自治の失敗を受けて、中央政府の権力が強化。1985年、民族的緊迫により、ポートモレスビーで非常事態宣言発令。
1988年にブーゲンビル島でフランシス・オナを中心とするグループが、パングナ銅山の閉鎖、ブーゲンビルの分離・独立を求めて、ブーゲンビル革命軍(BRA)を構成し、鎮圧を試みた政府軍との間に内戦が始まった。1992年にはソロモン諸島ショートランド諸島を、革命軍(BRA)への支援を理由に政府軍攻撃。 当初、容易に鎮圧可能と見られていたブーゲンビル紛争は長期化、休戦、再開を繰り返し、1997年には紛争鎮圧を狙って雇ったイギリスの傭兵部隊の存在が海外のメディアでリークされ、現役軍司令官,ジェリー・シンギロックがジュリアス・チャン首相の退陣を求めてクーデター騒ぎを起こし、全国で戒厳令が発令されるなど泥沼化した(サンドライン・クライシス)。 2001年8月30日、武器の放棄、紛争中の戦争犯罪に対する恩赦、ブーゲンビル自治政府の容認、将来のパプアニューギニアからの独立に関しては住民投票で決定する、などの条項を盛り込んだ「ブーゲンビル平和協定」がアラワで調印され、平和への歩みが再開された。2005年にはブーゲンビル自治領で初の大統領選挙が行われ、元ブーゲンビル革命軍のジョセフ・カブイが初代大統領に就任した。
[編集] 政治
国家元首は、イギリスの女王。象徴的地位であり、任命などの権限は、議会や内閣の決定に従い行使される。その職務は、総督が代行する。
行政府の長である首相は、議会総選挙後、第1党党首が総督により指名される。閣僚は、首相の推薦に従い総督が任命する。
議会は、一院制。全109議席で、全国を89の小選挙区に分けられ、20議席は州の代表として、選挙によって選出される。州代表の議席を獲得した国会議員は、国務大臣にならない限り、自動的に当該州の知事となる。任期5年。
政党は全て小規模で、単独で組閣が出来ないため、常に連立内閣となっている。2007年の総選挙で最大の国会議員を当選させ、連立の中心となって組閣した国民同盟党(NAP) でさえ、27議席であった。
政治は男性中心で、女性議員はこれまで数えるほどしか当選していない。2007年総選挙でも多くの女性候補が男性中心の政治に挑戦したが、現職のキャロル・キドゥのみが再選され、現在女性国会議員は1名のみである。2008年には、選挙とは別に女性の代表を国会に参加させる法案が審議されている。
外交においては、旧宗主国であり、現在でも最大の援助国であるオーストラリアとの関係が最重要であるが、近年、オーストラリアから派遣の警察官のパプアニューギニアにおける治外法権が違憲と判決されて即時撤退を余儀なくされたり(ECPの撤退)、オーストラリアの依頼によってポートモレスビーで逮捕された隣国ソロモン諸島の検事総長を夜間、軍用機でソロモンまで逃がした事件(モティ事件)などの問題で関係がこじれていた。2007年12月にオーストラリアで誕生したラッド政権は関係改善に取り組み、就任早々の2008年3月、ラッド首相のパプアニューギニアへの公式訪問が実現した。(なお、前任のハワード前首相は11年の任期の内で一度もパプアニューギニアへの公式訪問が無かった)
[編集] 行政区画
詳細はパプアニューギニアの地方行政区画を参照
19の州 (province) 首都区から成る。各州は4つの地方 (Region) に分ける事が出来る。州都を後ろに記した。
- 山岳地方
- シンブ州 (Simbu; チンブ州とも) - クンディアワ
- 西部山岳州 (Western Highlands) - マウントハーゲン
- 東部山岳州 (Eastern Highlands) - ゴロカ
- 南部山岳州 (Southern Highlands) - メンディ
- 島嶼地方
- 西ニューブリテン州 (West New Britain) - キンベ
- ニューアイルランド州 (New Ireland) - カヴィエン
- 東ニューブリテン州 (East New Britain) - ココポ
- ブーゲンビル州 (Bougainville; 北ソロモン州とも) - アラワ
- マヌス州 (Manus) - ローレンガウ
- モマセ地方
- サンダウン州 (Sandaun; 西セピックとも) - ヴァニモ
- 東セピック州 (East Sepik) - ウェワク
- マダン州 (Madang) - マダン
- モロベ州 (Morobe) - ラエ
- パプア地方
- 首都区 (National Capital District) - ポートモレスビー
- エンガ州 (Enga) - ワバック
- オロ州 (Oro; 北部州とも) - ポポンデッタ
- 西部州 (Western; フライ州とも) - ダル
- 中央州 (Central) - ポートモレスビー
- ミルン湾州 (Milne Bay) - アロタウ
- 湾岸州 (Gulf) - ケレマ
[編集] 地理
パプアニューギニアはアジアとオセアニアの2つの州にまたがっている。また、ニューギニア島東半分とビスマルク諸島、ルイジアード諸島、アドミラルティ諸島、ダントロカストー諸島など1万近くの島で成り立っている島嶼国家である。
ニューギニア島中央部は3000メートルから4500メートル級のビスマーク山脈およびオーエンスタンレー山脈となっている。高山部分以外は熱帯雨林に覆われており、島嶼部も含め、海岸にはサンゴ礁が発達している。なお、ニューブリテン島などは火山島である。
[編集] 経済
都市部の貨幣経済と村落部の自給自足経済の二重構成で鉱業が輸出の中心をなしている。その他コーヒーやカカオを生産している。最大援助国はオーストラリアで影響力が非常に大きい。対外債務は2007年12月31日時点で18億1400万米ドルである。GDP(国内総生産)成長率は2007年は4%を記録している。
[編集] 工業
パプアニューギニアは起伏に富んだ地形であること、熱帯という気候条件にあるため、畑作には向かない。しかしながら、ヤシの栽培には適しており、工業もヤシを中心に形成されている。ココヤシの胚乳から作るコプラとコプラを圧搾して抽出するパームオイルは、いずれも世界第6位の規模である。2004年時点の生産量はコプラ(8.5万トン、世界シェア1.6%)、パームオイル(33万トン、世界シェア1.2%)。国内市場が小規模であること、輸送インフラの問題があるため、ヤシ以外の工業はいずれも自給をまかなう小規模なものである。中でも、粗糖、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、ビールなどの食品工業が充実している。
[編集] 鉱業
鉱業はパプアニューギニア経済にとって重要な部門である。2002年時点の輸出額15億ドルのうち7割以上を鉱物資源が占めるからだ。上位3品目は金 (35.9%)、石油 (21.0%)、銅 (14.7%) である。化学工業、金属精錬はいずれも未発達であるため、全量が未精製の状態で輸出されている。
鉱業の主軸はまず金と銅から始まり、次いで1992年に輸出を開始した原油に移行してきた。生産量、生産額が最も大きかった銅は、1988年に勃発したブーゲンビル島の独立運動のため、最盛期の1/3の生産量にとどまっている。
有機鉱物資源では、原油(399万トン)のほか、天然ガス(3.3千兆ジュール)も採掘されている。 2008年5月22日には、パプアニューギニア政府とエクソン・モービルを始めとする事業会社との間で液化天然ガス(LNG)工場の建設に向けての基本合意が取り交わされた。これが実現すれば、年間生産量630万トンと言う、世界最大規模のLNGプラントとなる見込みである。
金属鉱物資源では、フェルシックな火成岩に伴って産出する銅(21万トン、世界シェア1.6%)、銀(75トン)、金(65トン、世界シェア2.6%)が有力。
[編集] 国民
パプアニューギニアでは、「ワントーク」と呼ばれる、伝統的に少人数の部族に分かれて生活していた。たいていの部族は数十、数百人程度であり、それぞれの部族ごとに言語、習慣、伝統が異なっている。かつては各部族同士で戦いを行うことがよくあり、その習慣は今も一部残っている。
住民は多様な民族から成っており、主にメラネシア人、パプア人、ネグリト人、ミクロネシア人、ポリネシア人などで構成される。
[編集] 言語
言語は英語が公用語で、教育、テレビ、ラジオ、新聞などは基本的に全て英語が使用されている。 また、共通語として、旧ニューギニア地域(ニューギニア本島北岸、ニューギニア高地や島嶼部)で主に使われているトク・ピシンと、旧パプア地域(セントラル、オロ、ガルフ州など)で主に使われているヒリモツ語(ともにピジン言語)がある。首都ポートモレスビーはモツ語圏であるが、他地域からの移住者の増加に伴い、トク・ピジンの使用が広まっている。
パプアニューギニアは、険しい山岳地帯、湿地帯に阻まれて部族間の交渉が少なかった事もあり、 小さなコミュニティが独自の文化・言語を発達させ、人口が600万人に対して、言語の数は800以上にもなる。約16%はオーストロネシアン言語に属し、他の南太平洋の言語と共通する単語や文法を持つ。これらの言語は島嶼部やニューギニア本島の海岸沿いに多く見られる。その他の84%は一般的に非オーストロネシアン言語と呼ばれ、大きく13のグループに分けられるが、単語や文法など、相互関連性は殆ど皆無に近い。これらの言語がどの時代にどこから入ってきてどのように発達したのかは大きな謎である。
国会では、英語、トク・ピジン、ヒリモツの3つの共通語を使うことが許可されており、 それぞれの言語に同時通訳される。
宗教は95%以上がキリスト教であり、主な宗派は ローマ・カトリック27.1% ルーテル教会19.5% ユナイテッド11.5% アドベンチスト教会10.1% ペンテコスタル8.6%
などとなっている。(2000年国勢調査による)
[編集] 文化
日付 | 日本語表記 | 現地語表記 | 備考 |
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移動祝日 | 聖金曜日 | Good Friday | |
移動祝日 | イースターマンデー | Easter Monday | 復活祭の日曜日の翌日 |
7月12日 | 女王誕生日 | Queen's Birthday | エリザベス2世の誕生日とは異なる。 |
7月24日 | 戦没者記念日 | National Remembrance Day | |
9月16日 | 独立記念日 | Independence Day | |
12月25日 | クリスマス | Christmas Day | |
12月26日 | ボクシング・デー | Boxing Day |
[編集] 関連項目
- パプアニューギニアの野鳥一覧
- パプアニューギニア関係記事の一覧
- イリアンジャヤ
- インドネシア
[編集] 外部リンク
- 政府
- パプアニューギニア独立国政府 (英語)
- パプアニューギニア首相府 (英語)
- 在日パプアニューギニア大使館
- 日系機関
- 旅行
- パプアニューギニア - ウィキトラベル
- パプアニューギニア政府観光局 (日本語)
- その他
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