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ホームライナー - Wikipedia

ホームライナー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ホームライナーは、国鉄時代に回送列車の有効活用策として客扱いを開始し、現在に至るまでJRグループ各社(JR四国を除く)で運行している座席定員制列車である。種別としては普通列車である。名称の由来は「定期便」としての意味のライナーというよりも、「停車駅を少なくし、一直線に走る速達性の高い列車」という意味合いの名称であると考えられている。故にライナーは快速列車の一種と捉えることもできるが、例外的に団体専用列車の扱いとしている場合もある。

なお、路線や運転時間帯によって「おはようライナー」や「ホームライナー○○」など名称が異なる。首都圏や中京圏、関西圏に多く設定されているが、近年は地方都市圏でも運転されることが多くなった。

また、本来は通勤時間帯に着席乗車のニーズに応えるための目的で設定されているが、中央本線の「セントラルライナー」のように収益確保・近距離利用客との分離を図るために日中に設定される列車も現れている。

185系によるホームライナー(写真は高崎線の「ホームライナー鴻巣」)
185系によるホームライナー
(写真は高崎線の「ホームライナー鴻巣」)

目次

[編集] JR

[編集] 乗車時

駅構内に設置されているライナー券専用自動券売機(東京・八王子駅にて)
駅構内に設置されているライナー券専用自動券売機(東京・八王子駅にて)

この列車に乗車するには、乗車券定期券を含む)の他に乗車整理券またはライナー券が必要である。これらの券の特性上、乗車する車両や座席の列などが指定される場合が多いが、ともに座席分しか発売されないため、その切符を購入すれば1人で2座席を確保したり(ただし旅客営業規則違反)、禁煙席・喫煙席に拘らなければ必ず座れる。

必ず座れるため、到着前に着席整理券が売り切れになるほど人気のある列車もある。また一部のホームライナーにはグリーン車が併設されている。これも列車により扱いが異なるが、グリーン車が恒常的に連結されている地域ではグリーン車としてグリーン料金を別途徴収する場合がある。また、総じて座席定員が少ない列車の場合には普通車扱いにする場合がある。

乗車整理券またはライナー券を発売していない停車駅は言わば「降車専用駅」の扱いであり、一部の列車を除き原則として乗車することはできない。

なお、この列車の扱いは普通列車であることから、特別企画乗車券急行列車に乗車できない「青春18きっぷ」などでも乗車整理券またはライナー券を購入すれば乗車可能となっている。

また、「湘南ライナー」など一部の朝間時に運行されるホームライナーでは、定期券と併用することが前提にされた1か月分のライナー券が1枚になった「ライナーセット券」が発売される場合もある。

JR九州では、「エクセルパス」で乗車する場合、乗車整理券を不要としている。

[編集] 使用車両

元々、車両基地まで回送される特急列車の車両を使用したことから、一般に特急列車の車両が使われることが多い。しかし、特に利用者の多い東海道本線東京口湘南ライナーは特急用車両の他に全車2階建電車215系を使用して混雑緩和を図っている。

また、JR東海の「セントラルライナー」は、この列車のために近郊形車両である313系8000番台電車を新造し、運用に充てている。

[編集] 経緯

先の定義に挙げた「ホームライナー」として運行されたものの初出は、1984年6月1日東北本線上野駅大宮駅間を回送する特急用電車を活用し、乗車整理券を徴収して旅客輸送したものとされる。同列車は同年7月1日に「ホームライナー大宮」と命名された。運行開始当時は1編成のうちの数両(グリーン車が含まれていたが普通車扱いとされた)の客扱いであった。1編成すべての客扱いを取り扱うようになったのは、それから数年を経過してからである。

しかし、1970年代より短距離ながらも通勤時間帯に運行される特急列車急行列車が設定されていることから、これがホームライナーの源流の一つともされている。これらの例として、「水郷」「犬吠」「あかぎ」が挙げられる。

また、「フレッシュひたち」「おはようひたち」びわこエクスプレス」「きらめき」のように元々ホームライナーであったものが特急列車に格上げされるケースもある。この場合は使用車両の変更によることもあるが、その他に「北近畿」「くろしお」などのように運行区間を伸ばして特急列車に格上げするケースや「おはようとちぎ」「ホームタウンとちぎ」あやめ」のように昼間時には利用客が伸び悩むものの朝夕の時間帯の利用者が期待できる場合には特急列車として運行するケースもある。

だが、JR化以降、JR東日本の東京圏内を除いてホームライナーとして運行されていた列車が、使用車種の置き換えにより特急列車へ格上げされた事に伴い、安価かつ定員制重視である乗車整理券から料金が自由席でも倍近くなった。また、座席確保が必ずしも行われない特急料金が適用される事例が多いことから、利用者から批判される面もある。

この理由は、国鉄型車両の経年劣化による陳腐化から割安な料金設定をしてでも着席サービスを優先させるか、JR化以降に新製した新型車両に置き換えを行うとともに運行距離を延長するなど運用の変更もある。この点については、乗車整理券も参照されたい。


キハ261系「ホームライナー」(手稲駅にて)
キハ261系「ホームライナー」(手稲駅にて)

[編集] ホームライナーの設定路線・区間

※詳細な運行状況は各運行路線で記載を行っているため、本節では運行概要のみを記載するにとどめる。

[編集] JR北海道

愛称 路線 運行区間 使用車両 備考
札幌付近
ホームライナー 函館本線 小樽札幌
手稲〜札幌間
785系
789系1000番台
キハ261系1000番台
キハ281系
キハ283系
運行当初は会員制を採用していた。
乗車整理券も参照のこと。
185系「湘南ライナー」(大船駅にて)
185系「湘南ライナー」(大船駅にて)
215系「湘南ライナー」(大船駅にて)
215系「湘南ライナー」(大船駅にて)
E257系「中央ライナー」(神田付近にて)
E257系「中央ライナー」(神田付近にて)
489系「ホームライナー鴻巣」(上野-尾久間にて)
489系「ホームライナー鴻巣」(上野-尾久間にて)

[編集] JR東日本

愛称 路線 運行区間 使用車両 備考
首都圏
湘南ライナー 東海道線 東京
平塚小田原
185系
215系
おはようライナー新宿
ホームライナー小田原
東海道線
山手貨物線
新宿
茅ヶ崎・小田原
215系
251系
185系200番台
おはようライナー逗子
ホームライナー逗子
横須賀線 東京~逗子 E257系500番台
中央ライナー 中央快速線 東京・新宿
八王子高尾
E257系
E351系
青梅ライナー 中央快速線
青梅線
東京~青梅 E257系
ホームライナー鴻巣 高崎線 上野鴻巣 185系
489系
ホームライナー古河 宇都宮線
東北線
上野・新宿→古河 185系
489系
ホームライナー千葉 総武線 東京・新宿→千葉 183系
(検査時は255系)
-
長野都市圏
おはようライナー 篠ノ井線信越線 塩尻長野 183・189系 土曜・休日運休
新潟都市圏
らくらくトレイン村上 白新線羽越線 新潟村上 485系
らくらくトレイン長岡 信越線 新潟→長岡 485系 土曜・休日運休
383系「ホームライナー中津川」(名古屋駅にて)
383系「ホームライナー中津川」(名古屋駅にて)
キハ85系「ホームライナー太多」(小泉-根本間にて)
キハ85系「ホームライナー太多」(小泉-根本間にて)

[編集] JR東海

愛称 路線 運行区間 使用車両 備考
名古屋都市圏
ホームライナー豊橋 東海道線 大垣名古屋豊橋 373系 朝運転
ホームライナー大垣 大垣→名古屋
豊橋→大垣
683系2000番台
373系
上りは朝運転
下りは夜運転
ホームライナー関ヶ原 名古屋→関ヶ原 683系2000番台 平日夜運転
ホームライナー中津川 中央西線 名古屋→中津川 383系
313系8000番台
平日夜運転
ホームライナー瑞浪 瑞浪→名古屋 383系 平日朝運転
ホームライナー多治見 多治見→名古屋 383系 平日朝運転
ホームライナー太多 中央西線~太多線 名古屋~美濃太田 キハ85系 下りは夜運転
上りは朝運転、
下りは平日のみ
ホームライナー四日市 関西線 四日市→名古屋 キハ85系 平日朝運転
静岡地区
ホームライナー沼津 東海道線 静岡沼津 371系
373系
ホームライナー浜松 三島浜松 371系 平日のみ
静岡→浜松間 373系
ホームライナー静岡 三島→静岡間 371系 休日のみ
浜松→静岡 371系、373系

[編集] JR西日本

愛称 路線 運行区間 使用車両 備考
大阪圏(アーバンネットワーク)
はんわライナー 阪和線 天王寺和歌山
やまとじライナー 大阪環状線大和路線(関西線) 木津JR難波 381系 休日運休
大阪加茂 381系 平日のみ

[編集] JR九州

「ホームライナー」(鹿児島中央駅にて)
「ホームライナー」(鹿児島中央駅にて)
愛称 路線 運行区間 使用車両 備考
さわやかライナー 鹿児島本線 川内鹿児島中央
日豊本線日南線宮崎空港線 延岡宮崎空港 783系、485系5両
都城宮崎 485系3両
ホームライナー 鹿児島本線 鹿児島中央→川内
日豊本線・日南線・宮崎空港線 宮崎空港→延岡 485系5両、485系3両
宮崎→都城 485系3両

[編集] 私鉄

私鉄において有料特急有料急行を運転する鉄道会社では、定期券の利用客に対して利用しやすい特急・急行列車を設定している場合がある。これを、JR各社のホームライナーになぞらえる場合もある。運行形態として以下のように類型する。

  1. 有料列車の通勤列車化
    • 通勤時間帯に通常の料金で列車を設定し、その上で通勤客を誘導する形態。種別などはすべて通常の列車と同等ないしはそのために列車自体を設定する。定期券に特急券急行券などを追加するだけで乗車を認める場合を指すこともあるが、特に顕著なものを示す。
  2. ホームライナーとしての運用
    • 専用車両の回送を兼ねて運行されるが、通勤客を誘導する場合に料金体系などを別に定めた別種別を設ける。国鉄→JRのホームライナーの形態とほぼ同じ。
  3. 通勤列車の有料化
    • 「着席サービスの徹底」を主眼とした列車設定であり、かつそのための種別を設け、着席整理券などの別料金を設定している場合。

[編集] 有料列車の通勤列車化

[編集] 小田急電鉄

ホームウェイ (列車)も参照

小田急ロマンスカー「ホームウェイ」(於:新宿駅)
小田急ロマンスカー「ホームウェイ」(於:新宿駅)

小田急電鉄特急ロマンスカーの場合には、1967年、朝夕時間帯に新宿~新原町田(現・町田)間に特急「あしがら」を設定。同時に定期券に特急券を追加するだけで乗車を認めることとした。その後、夕方の特急「えのしま」の運転開始など、夕方の特急が増発がされ続けている。

1999年には、新宿駅を18時以降に発車する下りの特急列車をすべてホームウェイに名称統一した。2000年には朝→日中に特急列車が1本も運行されない多摩線へ直通する「ホームウェイ」(新宿多摩線唐木田間を運転)も登場した。2008年3月15日からは、東京地下鉄千代田線から小田急線方面への特急「メトロホームウェイ」が新設された。

なお、朝の上りでも特急列車が運行されているが、こちらは「さがみ」「えのしま」の通常の名称で運転されている。

[編集] 東武鉄道(東武本線)

スペーシアも参照

東武鉄道では、1993年より日光線宇都宮線で運転している急行(当時)「しもつけ」「きりふり」を定期券利用客が利用できるように定期券と急行券で乗車可能な列車として「ビジネスライナー」という設定を行った(それ以前にも1988年から快速急行「しもつけ」がビジネスライナーの扱いを受けていた)。1995年には伊勢崎線で運転している急行(当時)「りょうもう」の上り早朝浅草着・下り19時以降浅草発列車にまで「ビジネスライナー」の扱いを拡大した。だが、1997年よりこれらを含めたすべての特急・急行列車に定期券でも利用できることになったことから、「ビジネスライナー」を名乗った列車による特例措置は廃止された。

その後、2003年から特急「けごん」の下り最終列車(「けごん41号」)を浅草→春日部間の運行とし、JRのホームライナーのような運用として運行を開始。また、2006年3月18日ダイヤ改正以後浅草→南栗橋間で運行している特急「きりふり283号」(平日のみ運行)では春日部→南栗橋間で料金を徴収せず、東武動物公園→南栗橋駅は各駅に停車するなど、通勤列車の有料化とホームライナー運用を掛け合わせた列車が運行されている。

[編集] ホームライナー運用

[編集] 京成電鉄

京成電鉄では、「スカイライナー」のうち朝の上り列車を「モーニングライナー」として、夜間下り列車を「イブニングライナー」として、停車駅を増やして運行している。

これらは、スカイライナー専用車両を使用しながらライナー料金をスカイライナーに比べ割安に設定している。乗車券は列車・車両指定で乗車整理券扱いと同じであるなど、JRのホームライナーに近い性格がある。

スカイライナーの項目も参照。

[編集] しなの鉄道

しなの鉄道では、1997年の転換以前より運行されていた「ホームライナー」を使用車両を自社のものに変更して、運行時刻などはそのままの形で運行している。

この列車は小諸長野間で運行されており、名称は朝の長野行が「しなのサンライズ号」、夜の上田行が「しなのサンセット号」と名が付けられ、上田~長野間は無停車で運行されている。停車駅などについてはしなの鉄道線を参照されたい。

[編集] 土佐くろしお鉄道

土佐くろしお鉄道では、2007年のダイヤ改正からごめん・なはり線後免安芸間に「ホームライナーあき」を運行している。休日運休で、安芸行は各駅停車、後免行は快速列車として運行されている。

[編集] 通勤列車の有料化

[編集] 京浜急行電鉄

京浜急行電鉄では、定期列車として元々有料特急を設定していなかったが1992年から京急ウィング号を運行している。運転形態については列車項目を参考されたい。

[編集] 東武鉄道(東上線)

東武東上本線#TJライナーも参照

東武東上線では、2008年6月14日に予定されているダイヤ改正に合わせて、夕方以降の坂戸・東松山方面への速達性を高め、「座席定員制」として快適な車内環境を確保する目的で池袋発夕方以降に運転を開始することになった。愛称は「TJライナー」である。

この度停車駅が発表された。池袋を出ると、ふじみ野、川越、川越市、坂戸、東松山と停車し、以降は小川町まで各駅停車である。 特急が和光市停車でふじみ野通過なのに対し、TJライナーは和光市通過、ふじみ野停車という逆転現象が発生している。 しかし、6月14日より、特急は快速急行に種別を変更する。 現在の特急停車駅に「志木」を追加する形になる。 和光市の逆転停車はある程度緩和されるが、ふじみ野の逆転停車は変わらない。


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