JR九州783系電車
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783系電車(783けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流特急形電車。「ハイパーサルーン」の愛称を持つ。1988年(昭和63年)3月13日に営業運転を開始した。
1989年(平成元年)、第29回鉄道友の会ローレル賞を受賞。
目次 |
[編集] 登場の背景
高速道路網と有力バス事業者の存在を背景に拡充を続ける高速バスに対抗するため、従来の485系とは全く異なった新しい設計概念を取り入れて製造された。JR九州としては初の新造特急形電車であるが、車両自体の開発計画は日本国有鉄道(国鉄)時代末期にまで遡ることができる。設計には国鉄末期に開発された新しい技術を多く取り入れている。
JRグループとして初の新系列車両でもあり、登場時は大いに注目を集めた。
[編集] 構造
※ここでは製造当初の構造について述べる。
[編集] 車体
軽量ステンレス車体が採用された。乗降扉およびデッキを車体中央に配置し、各車両の客室を前後に二分割しているため、一般的に車端部に乗降扉を設ける他の特急形車両とは趣を異にしている。客室側窓の上下寸法は従来の485系に比べてグリーン車は70%、普通車は35%拡大されており、乗客の視野角が広がるよう配慮された。先頭車前頭部は普通鋼製で、客室からの前面展望を可能とするため運転台を客室より低い位置に配置し、傾斜角をつけた構造である。
車体断面が特急用のそれではなく211系や415系1500番台等のステンレス製近郊形電車と同一とされ、車内は他の特急形車両と比べて広くなっている。
車体色は無塗装で側面に赤色と白色の帯が入っている。ただし、先頭車はクモハ783形が先頭部正面まで帯が回り込んでいるのに対し、クロ782形およびクロハ782形では側面の運転席下部で帯が途切れており、正面までは回り込んでいない。また、「かもめ」用として製造されたグループ(クモハ783-10、14、クロ782-5、8。4両とも日立製作所製)は、前頭部から乗降扉までの帯色が水色になっている。
[編集] 台車・機器
台車は205系以来採用されているDT50形・TR235形空気ばね式軽量ボルスタレス台車にヨーダンパ追加など若干の変更を加えたDT50Q形(電動車)・TR235Q形(制御車・付随車)を採用している。
主回路制御方式は713系をベースにしたサイリスタ位相制御で、単一電動車 (1M) 方式としている。ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキである。また、勾配抑速ブレーキも備えている。
ブレーキ性能向上によりJR在来線では初めて最高速度130km/hに対応する車両とされたが、実際に130km/h運転を開始したのは東日本旅客鉄道(JR東日本)651系が先である。
運転席まわりの機器配置も211系に準じている(横軸式マスコンハンドル + 縦軸式ブレーキハンドル:常用7段 + 非常)が、マスコンハンドルはT字形となっている。また、ATS電源を含め全ての表示灯をインストルパネル左側の多重表示画面に表示するようになっている。ちなみに、1両単位での多重表示画面は9両までの対応であり、10両以上連結した場合は編成単位での表示となる。現在のところ、編成単位表示に切替わるのは「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」「きらめき」での3編成連結列車の場合のみである。
[編集] 接客設備
前述のように各車両の客室を細分化することで、グリーン席と普通席、喫煙席と禁煙席、指定席と自由席とを需給バランスに応じて柔軟に設定できるようになった。1両を2室に分割したのは当初は短編成での運用を想定していたためで、輸送単位の小さい九州地方の事情への配慮がうかがえる。なお、分割した客室は下り方がA室、上り方がB室と呼ばれ、車内放送でもこの呼称が用いられる。 ただしこの構造により、客室の車端部においては揺れを大きく拾うことにもなっている。
グリーン室の座席は485系クロハ481形で採用された横2列 + 1列の広幅リクライニングシート(AB+C。+は通路)を採用し、各座席は1,200mm間隔で配置している。肘掛にマルチステレオ設備を備え、座席背面には液晶テレビを設置している。ただし、2次車以降では肩部の角を切り落とし、客室からの前方の視認性を向上させている。
普通室の座席は横4列のリクライニングシートを960mm間隔で配置。普通車でもフットレストを設け、床面はカーペット敷きとしているのが特徴である。1988年度製造の2次車からは普通車にもマルチステレオ設備を設けたが、テレビは設置されていない。
また、JR九州の特急形車両として初めて客室にLED式車内案内表示器を備えた。ただし、本系列では客室とデッキとの仕切扉上部のみである。2次車以降では、運転席と客室との仕切上にも設置されている。なお787系以降の特急列車各系列で実施されている、見えるラジオを利用したニュース配信は、本系列では行われていない。
自動放送の設置も本系列が初である。当初はエンドレステープによる放送であったが、のちに現行の放送に変更された。なお、当初の放送では始発直前および終着直前にJR九州社歌『浪漫鉄道』のフルオケ(ハイ・ファイ・セットのボーカル入り。ただし曲順は原曲とは異なる)が流れていたが、普通室・グリーン室ともテレビ・マルチステレオはすべて撤去された(後述)。
[編集] 前照灯、尾灯
前照灯は従来どおりのシールドビーム方式だが、尾灯はLED方式が採用された。本系列以降、JRおよび民鉄の新型車両は新幹線300系電車および新幹線E1系電車を除き、すべてLED方式が採用されている。LED方式は白熱電球方式より低消費電力で長寿命というメリットが主な理由である。
[編集] 乗務員
グリーン車には女性客室乗務員(ハイパーレディ)が乗務していた。
[編集] 形式
※本項では新製形式・番台区分のみ記す。したがって定員や設備内容は、現状とは必ずしも一致しない。
1988年から1991年までの間に計90両が製造された。メーカーは日立製作所、近畿車輛のほか、JR九州小倉工場でのノックダウン生産も行われた。
- クモハ783形(Mc:1~15)
- 全編成に連結される制御電動車である。前位側(B室)は座席設置面が20cm嵩上げされ、客用窓の上下方向も拡大されている。またトイレ・洗面所は設置されていない。パンタグラフを後位側に、主変圧器を床下に備える。2次車(8~)では乗降扉後位側に字幕式行先表示器を備えるほか、運転室と客室との仕切部にも車内案内表示器が設置されている。なお、2次車以降の先頭車は側面運転席側の窓のうち、運転席側の先頭側の三角小窓が省略されている(クロ782形、クロハ782形でも同様)。定員60名(A室32名/B室28名)。
- モハ783形0番台(M0:1~19)
- 中間電動車。当初は「有明」(西鹿児島発着分のみ)「かもめ」編成のみに連結されていたグループ。トイレ・洗面所は全車の前位側に備える。パンタグラフを前位側に、主変圧器を床下に備えるほか、行先表示器は1次車(1~4)ではLED式を前位側、2次車(5~)は字幕式を乗降扉後位側に備える。パンタグラフを撤去し、高圧亘り線を屋根上に設置することで、モハ783系100番台と同等の使用が可能である(実例:モハ783-19→モハ783-116)。定員64名(A/B室とも32名)。
- モハ783形100番台(M1:101~115)
- 全車がクモハ783形と組む中間電動車。車両番号は相方のクモハ783形に100を加えたものである。パンタグラフは設置されず準備工事に留まっているが、特高圧電力をクモハ783形から亘り線を経て受電することから主変圧器は装備されており、亘り線を撤去し、パンタグラフを設置することで0番台と同等の使用が可能である(実例:モハ783-109→モハ783-20)。その他の諸元(2次車は108~)は0番台と同等である。定員64名(A/B室とも32名)。
- クロ782形(T'sc:1~8)
- 当初は「有明」(西鹿児島発着分のみ)「かもめ」編成のみに連結されていたグループ。運転室寄りの客室(A室)の処理は、クモハ783形B室と同等。ただし座席配列に併せ、A/B室ともデッキと客室の仕切扉は若干オフセットされている。後位側(B室)にトイレ・洗面所を備える。また行先表示器は1次車(1、2)ではLED式を後位側、2次車(3~)は字幕式を乗降扉後位側に備える。また床下に電動発電機 (MG)および電動空気圧縮機 (CP) も備えている。定員29名(A室12名/B室17名)。
- クロハ782形(T'hsc0:1~7)
- 当初は「有明」(熊本/水前寺発着分のみ)に連結されていたグループ。運転室寄りの客室(A室)の処理は、クモハ783形B室と同等。ただし座席配列に併せ、A室のデッキと客室の仕切扉は若干オフセットされている。また行先表示器は1次車(1~5)ではLED式を後位側、2次車(6~)は字幕式を乗降扉後位側に備える。また床下にMGおよびCPも備えている。定員40名(A室12名/B室28名)。
- サハ783形0番台(T0:1~7)
- 当初は「有明」(西鹿児島発着分のみ)に連結されていたが、1年足らずで「有明」(熊本/水前寺発着分のみ)に連結されたグループ。トイレは設置されておらず、代わりに自動販売機が当該箇所に設置されていた。行先表示器は2次車(5~)のうち、6以降のみ字幕式を乗降扉後位側に備える。また床下にMGおよびCPも備えている。定員64名(A/B室とも32名)。
- サハ783形100番台(T1:101~111)
- 1989年に、「有明」(西鹿児島発着分のみ)「かもめ」編成用の増結用として製造されたグループ。2次車以降しか存在せず、トイレ・洗面所は設置されていない。床下にMGは備えるがCPは備えられていない。字幕式行先表示器を乗降扉後位側に備える。定員68名(A室32名/B室36名)。
- サハ783形200番台(T2:201~208)
- 1989年に、「有明」(西鹿児島発着分のみ)「かもめ」編成用の増結用として製造されたグループ。2次車以降しか存在しない。B室にカフェテリア(供食設備)を備えるが、トイレ・洗面所は備えられていない。字幕式行先表示器を乗降扉後位側に、床下にMGおよびCPを備えている。定員56名(A室32名/B室24名)。
[編集] 改造
本系列は様々な改造を受けたが、その概要は以下のとおりである。
[編集] 第1次リニューアル改造
787系との格差を是正するため、1994年(平成6年)~1996年(平成8年)にかけて、以下の改造が行われた。改造はまず「有明」用から行われ、後に「かもめ」用にも行われた。
- クロハ782形500番台(T'hsc5)
- クロ782のB室を普通室化し、同時にトイレ・洗面所を拡大、クロハ782形500番台とした。ただしデッキと客室の仕切扉はオフセットされていたことから、11C席は欠番となり、定員は39名(A室12名/B室27名)である。また、B室の座席と窓割りは一致していない。
- 旧番号→新番号:クロ782-1~8→クロハ782-501~508(番号順。原番号+500)
その他の改造は、以下のとおりである。
- 内装材やカラーリングを、787系と同様のもの(客室内:ダークグレー系、クロハ(改造後含む)のデッキ:青系、それ以外のデッキ:シルバー系)に全面変更
- トイレ・洗面所の拡大(共用→男女別)およびトイレ・洗面所使用灯の追設。これによりトイレ・洗面所設置車両(モハ783形、クロハ782形)は定員4名減
- サハ783-0番台B室に車内販売準備室の追加。定員4名減
- フリースペースの追加
- 車体塗装を、銀色と4色(赤・青・緑・黒)のブロックパターンを併用したものに変更
- 旧空調装置のルーバー塞ぎ込み(塞ぎ板のリベット取付による。これが後述の窓ガラス破損事故の原因となった)
- 先頭車の前面下部にフォグランプを、正面中央上部に棒状の尾灯を追設
- 「かもめ」用は乗降扉窓に「KAMOME」ロゴおよびカモメのイラスト(485系「KAMOME EXPRESS」と同様のもの)を追加
ただし、モハ783-14、18、サハ783-111に対しては外観塗装の変更のみ行われ、内装は登場時の原型を留めている。また、クモハ783-5は1995年(平成7年)ごろに運転室ブロックが金色に塗装されていたが、現在は他車同様銀色になっている。
[編集] 第2次リニューアル改造
2000年(平成12年)3月のダイヤ改正では「かもめ」に新形振り子式電車885系が投入され、従前「かもめ」に使われていた編成のうち5編成(旧CM2~4、6、8編成)が玉突きにより「みどり」+「ハウステンボス」用へと転用された。このとき、以下の改造が行われ、中間車の先頭車化改造車も登場した。
[編集] 中間車の貫通型先頭車化改造
「みどり」「ハウステンボス」を併結する際、両編成が貫通するように貫通型先頭車を使用することになったため、サハ783形100番台の後位側8席を撤去し、台枠を残して車体を切断の上、817系類似の貫通型運転室ブロックを接合したものである。分割併合時間を短縮するため、電気連結器と自動幌装置が設けられた。また、同時に塗装も変更された。
- クロハ782形100番台(T'hsc1)
- 「みどり」(CM11~15編成)の早岐側先頭車。種車は2室とも普通車であったが、本形式ではA室がグリーン室に改造された。ただし、座席設置面の嵩上げはされず、座席と窓割りも一致していない。また、B室にトイレが設置された。
- 貫通型の前頭部は緑色に塗装され、自動幌を装備している。外装は「みどり」仕様となっている。定員40名(A室12名/B室28名)。
- 旧番号:サハ783-101~104、110→クロハ782-101~104、110(改番無し)
- クハ783形100番台(Tc1)
- 「ハウステンボス」(CM21~25編成)の博多側先頭車。自動幌受を装備している。外装は「ハウステンボス」仕様となり、前頭部は前面が黄色、乗務員室まわりが上半赤色、下半青色となっている。方転改造も併施されている。定員60名(A室36名/B室24名)。
- 旧番号:サハ783-105~109→クハ783-105~109(改番無し)
[編集] 電動車のパンタグラフ撤去
新製当初は、クモハ783形の隣に連結されていた車両を除いて、モハ783形には菱形パンタグラフが搭載されていたが、「ハウステンボス」編成では電動車同士が隣り合う組成となるため、片方の電動車からパンタグラフを撤去し、もう片方から亘り線引き通しにより給電を受けるよう改造が行われた。
種車はすべてモハ783形0番台で、モハ783形200番台と同300番台の組み合わせとなっており、隣接する電動車間で亘り線を引通している。
- モハ783形200番台(M2)
- 中間電動車。パンタグラフが残され、亘り線引き通し用の引通し線が新設されている。
- 旧番号:モハ783-1~3、9、11→モハ783-201~203、209、211(番号順、原番号+200)
- モハ783形300番台(M3)
- 中間電動車。パンタグラフが撤去された。隣接する車両から亘り線を引き通すため、引通し線が新設されている。
- 旧番号:モハ783-4~7、16→モハ783-304~307、316(番号順、原番号+300)
[編集] 外装の変更
「みどり」「ハウステンボス」編成全車に対して車体塗装の変更およびエンブレムの取付が実施された。「ハウステンボス」は非貫通先頭車の前頭部が赤色に変更された。
ただし、車体塗装の変更は2000年ダイヤ改正の時点では全車に対して完了しておらず、しばらくは旧塗装(現在の標準色)との混成が見られた。なお、この改造は当初4編成(旧CM2、4、6、8編成)に対して行われたが、翌2001年(平成13年)には残る1編成(旧CM3→CM12編成(2代))にも行われた。
[編集] グリーン室の改装
クロハ782形500番台では同100番台と同様、グリーン室の内装を木目調のものに変更する工事が実施された。
[編集] その他の改造
- 普通席フットレストの撤去
- 1993年(平成5年)年末までに実施。
- オーディオ・ビデオサービスの廃止・設備撤去
- 同じく1993年末までにグリーン室・普通室ともに実施。液晶テレビ、オーディオ機器をすべて撤去した。当初は操作盤を板で塞ぎ、グリーン車のテレビ設備の跡にはロゴ入りプレートを埋め込んだ。
- 空調装置の移設
- 1993年末までに実施。空調装置はヒートポンプ式で床下に設置されていたが、冷房時の冷却効率が悪かったため屋根上に移設された。
- フリースペースの設置
- 2000年頃に、「にちりん」系統に充当されるクロハ782形(6、7、501、505、507)に対して実施された。B室のうち11CDおよび12CD席を撤去してフリースペースとし、定員は36人とされた。ただし、クロハ782-7(→クロハ782-407)は2003年に座席を再設置し、定員40人に戻された。
- 座席の取替
- 2003年(平成15年)頃より実施。暖房容量の強化を目的に、座席を485系の廃車発生品に取り替えている。
- 強化形スカート(排障器)への交換
- 2003年頃より実施。
- 停車駅接近予告装置の設置
- 2004年(平成16年)頃より、全先頭車に対して実施。チャイムおよび音声は787系以降のものと同じであるが、以下の点でこれらの系列とは異なる。なお、本系列と同種の装置は同時期に485系先頭車にも設置された。
- 停車パターンを、乗務員交代のたびに、テンキーで入力する必要がある(787系以降では、ICカードから停車パターンを読み出し、選択すれば自動的に設定される)。
- 「停車」表示は、追設された「停車」表示灯(路線バスの運転席と同様の表示灯)に表示・点滅される。
- 行き違いのための停車駅や臨時停車駅など、通常客扱いを行わない停車駅では告知されない。
- 客扉脇のエンブレムおよびルーバー塞ぎ板の撤去および再取付
- 2005年(平成17年)7月11日、本系列を博多発長崎行き特急「かもめ3号」に運用中に窓ガラスが破損し、乗客6人が負傷する事故が発生した。車両のルーバー塞ぎ板(リベット留め)が脱落し、窓ガラスに当たり破損したと推定されたことから、事故発生当日中に急遽全編成のエンブレム(CM11~15、21~25編成のみ)とルーバー塞ぎ板が取り外された。その後2006年(平成18年)3月までに塞ぎ板の再取付が、同年度末までにエンブレムの再取付(ただし、ステッカータイプに変更)が実施された。
- 流線型先頭車の貫通型改造
- 2006年3月、クロハ782-7に対して施工され、車両番号はクロハ782-407(T'hsc4)に改められた。本区分番台は新規区分であるが、流線型先頭車を貫通型に改造したこと(ゆえに、側面窓ガラスの天地方向寸法やデッキ周りのレイアウトも不変である)、前頭部と車体の色が統一されていないことから、クロハ782-100番台と容易に識別できる。
[編集] 編成の変遷
旧CM1~8編成は「かもめ」用、旧CM10~16編成は「有明」用だったが、2000年3月改正で編成内容は大幅に変わった。その概要は以下のとおりである。
- 旧CM1、5、7編成→現CM31~33編成(旧編成時のサハ783-100は減車)
- 旧CM2、4、6、8編成→現CM11+21、13+22、14+23、15+24編成(ただし、旧編成時から引き継いでいるのはクロハ782-500、サハ783-200、モハ783-100、クモハ783のみ)
- 旧CM3編成→旧CM12編成(2代)→現CM12+25編成(同上)
- 旧CM10~14編成→現CM1~5編成(旧編成時のモハ783-0は減車。ただし、2007年3月改正で5両編成に戻された)
- 旧CM15、16編成→現CM34、35編成(ただしCM35編成は、再度南福岡に転入(後述)後にモハ783-8を減車)
現在、5両編成9本、4両編成11本、予備車1両の合計90両体制となっている。廃車は今のところない。
[編集] 沿革
- 1988年(昭和63年)
- 1989年(平成元年)
- 3月11日 ダイヤ改正。2次車7両編成2本、9両編成1本、サハ783形5両(0番台1両、100番台およびカフェテリア付きの200番台2両ずつ。いずれも1次車向け)が南福岡電車区に配属され、改正にあわせて使用開始。「有明」に加え「かもめ」2往復にも充当。「かもめ」には9両編成を充当。1次車7両編成のサハ783形0番台4両は、新造された1両と共に3両編成に連結され、4両編成化。代わりにサハ783-100番台および同200番台を連結(2次車に同区分番台は新造時より連結)。「有明」(西鹿児島発着分)および「かもめ」では、カフェテリア営業を開始。
- 1990年(平成2年)
- 1991年(平成3年)
- 3月16日 ダイヤ改正にあわせ、4次車(「有明」「にちりん」用)6両編成1本が南福岡電車区に配属。これをもって783系の増備終了。
- 1992年(平成4年)
- 6月 「有明」(西鹿児島発着分)および「かもめ」のカフェテリア営業を休止。
- 7月15日 ダイヤ改正。西鹿児島発着の「有明」を「つばめ」に改称。「つばめ」14往復中7往復に使用(他の7往復は新製の787系を使用)。
- 1993年(平成5年)
- 「つばめ」「かもめ」用とも、通年7両編成となる。余剰車は「有明」用の増結車となる。
- 年内に普通室のフットレストおよび全室のオーディオ・テレビ設備の撤去と、冷房装置の改造を実施。
- 1994年(平成6年)
- 7月1日 ダイヤ改正。
- 「有明」用の第1次リニューアル工事完了、同列車はリニューアル編成(5両編成7本)のみを使用。「有明」の水前寺乗入れは廃止。
- 「つばめ」14往復中本系列の使用列車は3往復に減少し、代わりに「にちりん」にリニューアル未施工車(「つばめ」用の7両編成を、5両に減車した編成)を充当。
- 7月1日 ダイヤ改正。
- 1995年(平成7年)
- 4月20日 ダイヤ改正。「ドリームつばめ」に投入。
- 年内にリニューアル未施工車に対してもリニューアル工事を実施。
- 1996年(平成8年)
- 3月16日 ダイヤ改正。
- 「つばめ」「ドリームつばめ」は全列車の787系化により撤退。
- 「にちりん」は883系の増備により撤退。
- 従前これらの列車で運用されていた車両は「かもめ」の増発・パターンダイヤ化のため転用された。これにより運用列車は「有明」(5両編成7本)「かもめ」(6両編成8本)に集約された。
- 5月 第1次リニューアル工事完了。クロ782形は廃形式となった。
- 3月16日 ダイヤ改正。
- 2000年(平成12年)
- 2月 「みどり」「ハウステンボス」転用に向け、第2次リニューアル工事を実施。
- 3月11日 ダイヤ改正。
- 「みどり」「ハウステンボス」全列車、「きらめき」の一部列車に充当。「有明」は787系への統一により撤退。「かもめ」には引き続き充当されたが、885系1次車投入によりパターンダイヤからは外れ、「有明」で使用されていた編成に変更された。これにより「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」の3階建て列車と「きらめき」が485系から本系列に置き換えられた。4両編成×3本 = 12両編成(多客時には13両編成)を組む。
- 「にちりんシーガイア」「ドリームにちりん」および「ソニック」(佐伯発着分含む)「にちりん」「ひゅうが」の一部列車にも充当。これらの列車に投入される編成および予備車は大分鉄道事業部大分運輸センター(現・大分鉄道事業部大分車両センター)に転属した。
- 2001年(平成13年)
- 3月3日 ダイヤ改正。
- 「みどり」「ハウステンボス」用の第2次リニューアル工事完了。
- 885系2次車投入により「ソニック」からは撤退し、再び全車南福岡電車区に集約。
- 3月3日 ダイヤ改正。
- 2003年(平成15年)
- 3月15日 ダイヤ改正。「ひゅうが」本数削減に伴い撤退。宮崎県内での滞泊運用がなくなる。
- 2004年(平成16年)
- 2005年(平成17年)
- 3月1日 ダイヤ改正。「かもめ」(2・202号を除く)以外での車内販売を廃止。
- 7月11日 「かもめ3号」に使用中のCM34編成で窓ガラス破損事故発生。同編成は通常より1両減車。
- 2006年(平成18年)
- 3月 宮崎空港線開業10周年を記念し、記念ステッカーが、CM31・CM32および34編成各車両の出入台脇に貼付された(現在は剥離)。
- 9月 CM1~5編成にモハ783形0番台を連結し、5両編成に戻した(ただし、2007年3月までは増結扱い。市販の時刻表でも4両編成のまま案内されていた)。
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)
- 3月15日 ダイヤ改正
- 佐世保線の普通列車運用終了。
- 3月15日 ダイヤ改正
[編集] 現況
以下は現況について記す。
[編集] 使用列車
本系列は、一時はJR九州における主要特急列車で運用されたフラッグシップ的存在であった(2008年6月現在運転されているJR九州の電車特急は「リレーつばめ」(九州新幹線開業前の在来線特急「つばめ」には使われた)「かいおう」「きりしま」を除いてすべて783系が定期列車に使われた時期がある)。その後787系以降の新形特急電車の運用開始にともない、現在は以下のとおり長崎本線・佐世保線での運用が主体である。この2路線では1990年代後半の485系電車の運用をそのまま引き継いでいるが、車両数の関係で日豊本線の485系の置き換えは進んでいない。
[編集] 現在使用されている列車
- 「かもめ」(1989年3月~):「みどり」併結列車、1・101・103号、106・108・202号
- 1990年~1994年は「ハイパーかもめ」の愛称で運転された。
- 「みどり」(2000年3月~):全列車
- 「ハウステンボス」(2000年3月~):全列車
- 「きらめき」(2001年3月~):1号、10・12号
- 「にちりん」(1990年3月~1996年3月・2001年3月~):13・19号、8・14号
- 1990年~1995年は「ハイパーにちりん」の愛称で運転された。
- 「にちりんシーガイア」・「ドリームにちりん」(2000年3月~):全列車
- 「ひゅうが」(2001年3月~2003年3月・2004年3月~):2号
- 宮崎~延岡間の「さわやかライナー」:1号
- 宮崎・南宮崎~宮崎空港間普通列車:一部列車
[編集] かつて使用されていた列車
- 「つばめ」(1992年7月~1996年3月)
- 「ドリームつばめ」(1995年4月~1996年3月)
- 「有明」(1988年3月~2000年3月)
- 1994年までは「スーパー有明」や「ハイパー有明」の愛称で運転された。
- 「ソニック」(2000年3月~2001年3月)
- ただし運用編成数に余裕がないため、現在でも本系列が代走を行う場合もある。
- 早岐~佐世保間普通列車:一部列車(2007年3月~2008年3月)
[編集] 所属、編成および運用
[編集] 所属
全車南福岡電車区(略号・本ミフ→北ミフ)所属。
現CM31~35編成、モハ783-8・14・18、サハ783-110・111は、2000年3月に大分鉄道事業部大分運輸センターに転出したが、2001年3月に再び南福岡電車区に転入した。その他の車両は新製時以来転属していない。
編成記号「CM」の「C」は783系を、「M」は南福岡電車区所属を示す記号である(大分所属時は「O」だった)。
[編集] 編成および運用
2008年6月現在の編成および運用は、以下のとおりである。
- CM1~5編成
- 5両編成(Mc-M1-T0-M0-T'hsc0)・標準色、行先表示器は全編成1・4号車がLED式、2号車が字幕式で、3・5号車には設置がない。登場時はDE10形の牽引・推進により豊肥本線に入線していたグループ。
- 「かもめ」(「みどり」併結列車および1号、202号)および「みどり」(29号、4号。号車番号は11~15号車)に充当。CM34編成と同様の編成内容。
- 2000年3月~2006年9月頃までは、2号車のモハ783形0番台は4編成のみに、多客期に限り連結されていた(8・13・14・18)。ただし組込先は一定でなく、このとき残りの1編成は「かもめ」運用に入らなかった。
- CM11~15、21~25編成、ごく稀であるがCM31~34編成の代走にも充当される。なお、CM11~15、21~25編成の代走に使う際は2号車を切り離し、4両編成で充当される。
- CM1編成の2号車であるモハ783-20は、2003年7月まではCM13編成の13号車でみどり色のモハ783-109だったが、モハ783-19に置き換えられていた(後述)。しかし2006年9月に、新製時には未搭載であったパンタグラフを搭載し、標準色に戻し、エンブレムも撤去した上で本編成に連結され、さらに2007年に、同番号(同区分番台ラストナンバーの追番だが、外観や車内設備の変更なし)に改番された。ただし、乗降扉周辺は緑色のままで、他の車両と容易に識別可能である。
- 滞泊は、長崎駅2編成、早岐駅1編成である。
- CM11~15編成
- 4両編成(Mc-M1-T2-T'hsc1)・みどり色、行先表示器は字幕式だが、CM11編成は13号車のみLED式で、14号車には設置されていない。
- 29号、4号を除く「みどり」全列車、「きらめき」(1号、10号)に充当。いずれの列車でも号車番号は11~14号車である。
- 予備編成がないため、ダイヤが乱れた際や検査時にはCM1~5・21~25・35編成が代走する。
- CM15編成を除き、公衆電話は設置されていない。
- CM13編成の13号車であるモハ783-116は、モハ783-109に代わって標準色のまま、モハ783-19として、パンタグラフ撤去等改造を受けた上で連結されていた。同車は、2006年10月頃に標準色のままステッカーエンブレムも貼付され、さらに2007年には同番号に改番(同区分番台ラストナンバーの追番)され、外装もみどり色に変更された(車内設備の変更はなし)。
- 滞泊は、早岐駅3編成、門司港駅1編成である。
- CM21~25編成
- 4両編成(Tc1-M2-M3-T'hsc5)・ハウステンボス色。行先表示器は、CM21編成の7・9号車、CM22編成の8・9号車、CM24編成の9号車はLED式、その他の車両は字幕式。定期列車での単独運転は早岐~ハウステンボス間のみ(臨時列車では博多までの単独運転がある)。
- 「ハウステンボス」全列車(9号、24号は早岐駅で増解結する場合は「みどり」として運転)、「みどり」(21・23・25・31号、2・6・8・32号。23号は早岐駅までの運転)、「きらめき」(1・10号)に充当。いずれの列車でも号車番号は7~10号車である。
- CM11~15編成の代走にも充当。
- 滞泊は、早岐駅3編成、門司港駅1編成である。
- CM31~34編成
- 5両編成(Mc-M1-T2-M0-T'hsc5:CM34編成以外、Mc-M1-T0-M0-T'hsc0:CM34編成)・標準色。大分運輸センターに転出していた時期がある。行先表示器は字幕式だが、CM31編成は1・4号車のみLED式で、5号車には設置されていない。
- 「にちりん」(13・19号、8・14号)・「にちりんシーガイア」・「ドリームにちりん」、「ひゅうが」(2号)および宮崎地区の「さわやかライナー」や宮崎・南宮崎~宮崎空港間普通列車に充当。この他、多客期のみ運行される佐賀または肥前山口止まりの「かもめ」にも充当。
- ごく稀に、CM1~5編成の代走にも充当される。2006年9月までは、1両減車し4両編成として代走した場合があった。ただし、その確率はCM1~5編成による本グループの代走よりも高いようである。さらに、多客期にはクロハ782形500(0)番台とモハ783形0番台の間にサハ783-111を連結した6両編成で運転される。
- 南福岡電車区所属の特急電車編成で、終日滞泊以外で丸1日以上博多駅に発着しない編成があるのは、このグループのみである。博多駅基準で見た場合、一旦下り「ドリームにちりん」で博多を出ると、暦日で3日後の上り「ドリームにちりん」到着まで戻らない。
- 滞泊は、延岡駅1編成のみだが、終夜走行(「ドリームにちりん」)が2編成ある。
- CM35編成
- 4両編成(Mc-M1-T0-T'hsc4)・クロハ782-407の運転室ユニットのみみどり色、他は標準色。行先表示器は字幕式。
- CM31~34編成と同様大分に転出していた時期がある。大分では5両編成であったが、2号車だったモハ783-8を減車し、4両編成とされた。また2006年3月ダイヤ改正時に、クロハ782-7が運転台ユニットを貫通型のものに交換され、クロハ782-407とされた。
- 「かもめ」(101・103号、106・108号)および「きらめき」(1・12号)に充当。号車番号は「きらめき1号」のみ15~18号車(最上り方に連結)、他は1~4号車である。ちなみに2007年3月改正までは「きらめき」(12号は当時10号として運行)専用だった。
- CM11~15編成の代走にも充当される。
- 常に門司港駅に滞泊。
[編集] 行先表示器および愛称表示器
[編集] 行先表示器
行先表示器は車両上部に設置され、字幕式とLED式の2つがある。内容は、運用が上記のように5つに分かれているものの、全編成とも共通である(例:CM11~15編成、CM21~25編成に「にちりんシーガイア」「ドリームにちりん」や普通列車用の「南宮崎」、「宮崎空港」表示が、CM31~34編成に「みどり」「ハウステンボス」表示が見られる)。
[編集] 字幕式
おおよそ787系電車登場以前および登場以後のタイプ、「みどり」「ハウステンボス」タイプの3つに分かれる。
787系登場以前のタイプは白地に黒文字で、左側およそ1/3に列車名、右側およそ2/3に行先を記し、その下に英語表記がある。ただし「有明」では列車名が黒地に白文字になっており、「にちりん」では左半分に列車名と行先、右半分に英語表記である。このタイプの表示には「有明」「かもめ」「にちりん」がある。
787系登場以後のタイプは787系のスタイルに準じている(詳しくはこちらを参照)。このタイプの表示には「つばめ」「ソニック」「にちりんシーガイア」「ドリームにちりん」「ひゅうが」「きらめき」などがある。
「みどり」「ハウステンボス」タイプは485系時代の「ハウステンボス」の行先表示をベースにした黒地のもので、左約1/3は列車名およびハウステンボスのロゴマーク、右約2/3は行先が表記されている。
この他、普通列車用は白地黒文字の日本語・英語並記、回送や団体など非営業列車用は、白地黒文字で日本語のみの表記である。
[編集] LED式
字幕式の787系登場以前のタイプとほぼ同じ形式になっているが、「特急」の文字がなく列車名の日本語表記と英語表記のみのもの(「有明」「にちりん」「かもめ」「ドリームにちりん」等が該当)と、上に「特急」の文字、下に列車名を記し、英語表記がないもの(「みどり」「ハウステンボス」「にちりんシーガイア」「ひゅうが」「きらめき」等が該当)の2種類がある。また、普通列車用や非営業列車用は字幕式と同様である。当初は視認性が劣っていたり、すぐ故障したりしたが、「みどり」「ハウステンボス」への投入後に新しいタイプのものに交換されている。なお、走行中でも常時表示しており、この点で885系とは異なる。
ちなみに行先表示器がLED式で、かつクロハおよびモハの上り方に設置されているのは1次車のみであり、2次車以降では全車車体中央部に字幕式のものが設置されている。ただし、2次車でもサハ783-5は準備工事のみで設置はされていない。なお、JR九州の電車でのLED式行先表示器は本系列1次車以降303系まで採用されなかった。
[編集] 愛称表示器
貫通型先頭車に設置されているLED式愛称表示器は、当該車両が編成端の場合のみ充当列車の愛称とイラストが表示されるようになっている。通常運用では「MIDORI EXPRESS」および「HUIS TEN BOSCH」のみが表示されている。
[編集] 今後の動向
九州新幹線博多~新八代間開業後、「リレーつばめ」はその使命を終えるため、同列車に使用されている787系や本系列を含めた車両動向の変化が予想されるが、現時点では転用などについては何も発表されていない。