JR九州キハ71系気動車
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キハ71系気動車(キハ71けいきどうしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)がキハ58形およびキハ65形を「ゆふいんの森」用に改造した特急形気動車。
1989年(平成元年)にグッドデザイン商品(当時)に選定された。
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[編集] 製造の目的
久大本線沿線の湯布院町(現・由布市)・日田市・九重などの観光地と福岡市・北九州市を結ぶ観光特急として1989年3月11日のダイヤ改正にあわせて登場した。当初は中間車1両の3両編成だったが、利用が好調だったことから1990年(平成2年)4月29日より中間車を1両追加して4両編成とされた。
[編集] 構造
ここでは落成時の構造について述べる。
[編集] 外装
1930年代のヨーロッパ(特にドイツ)の流線型気動車を彷彿とさせる、レトロ感覚の曲線的デザインを取り入れた車体構造である。先頭車・中間車とも客室部はハイデッカー構造とされ、側面窓も大型になっている。また、窓の部分は内側に10度傾斜している。先頭部は非貫通構造で、前面窓は上下2段に配置されている。塗装はオリーブグリーンのメタリック塗装を施し、金色の帯が入っている。
[編集] 内装
客室部はハイデッカー構造で、乗降デッキ部分とは60cmの高低差がある。座席はすべて前後間隔96cm、インアームテーブル(肘掛内蔵テーブル)設置のリクライニングシートである。床材に難燃性木材を使用し、荷棚などの金属部分は金メッキ処理として豪華さを演出している。ハイデッカーであるため天井を高くすることができず、荷棚に大きな荷物を置くことができないので、荷物置き場やコインロッカーが設置されている。
[編集] その他のサービス設備など
中間車のキハ70 1にビュッフェを設置している(大型時刻表での表記はカフェテリアとされていた)。ビュッフェには冷蔵庫や電子レンジ・電気ポット・コーヒーメーカー・アイスクリームストッカーなどを設置し、軽食や飲み物を販売できるようになっている。増備中間車のキハ70 2は客室の一部がアートギャラリーとされた。
[編集] 駆動装置
製造コスト低減のため台車・エンジンはキハ58・65形から流用し、車体のみを新製した。キハ65形改造のキハ71形はDT39B・TR218B形空気ばね台車でDML30HSD形エンジン (500PS/1600rpm) 1台、キハ58形改造のキハ70形はDT22C形コイルばね台車でDMH17H形エンジン (180ps/1500rpm) 2台を装備する(なお、キハ70形以外のJR特急用車のコイルばね台車装備車には、同じJR九州で「はやとの風」用に改造されたキハ140形・キハ147形・キハ47形も存在する)。冷房用電源エンジンはキハ65形以来の4VK電源装置をキハ71形に搭載するが、ハイデッカー構造とされたため冷房装置は床下設置方式のものを新製している。
走行機器やブレーキ装置は機関更新後に95km/hから120km/hに引き上げられた。
[編集] 改造元の車両
- キハ71 1(1号車)<キハ65 51
- キハ70 1(2号車)<キハ58 490
- キハ70 2(3号車)<キハ58 436
- キハ71 2(4号車)<キハ65 19
[編集] 落成後
落成後は一貫して特急「ゆふいんの森」に使用されている。
1992年(平成4年)に最初のリニューアルが実施され、座席モケットを交換した。
1995年(平成7年)には二度目のリニューアルが実施され、床材と座席モケットの交換と同時に、キハ70 2については方向転換の上でアートギャラリーとビュッフェが隣接するように改められた。またトイレの処理方式は従来の循環式から真空吸引式に改造された。
2003年(平成15年)に三度目のリニューアルが実施され、老朽化・陳腐化の著しいエンジン・変速機は新型直噴式エンジン・多段変速機に交換されたが、台車についてはキハ71形の軸周りが多少改修された以外は従来のままとされている。キハ70 2のアートギャラリーはサロンスペースに改め、キハ70 1のビュッフェはショーケースとビールサーバーを新設して内装材を木材に変更し、ビュッフェ隣に4人掛けセミコンパートメント席を設けた。