JR東海373系電車
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JR東海373系電車 | |
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JR東海373系電車(名古屋、2007年9月10日) |
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編成 | 3両(1M2T) |
起動加速度 | 2.1km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
編成定員 | 179人 |
全長 | 21,300mm |
全幅 | 2,946mm |
全高 | 3,630mm |
編成重量 | 新製時97t |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
編成出力 | 185kW×4=740kW |
歯車比 | 6.21 |
駆動装置 | TD平行カルダン駆動方式 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(定速運転制御機能付) |
ブレーキ方式 | 発電ブレーキ |
保安装置 | ATS-ST, ATS-P |
製造メーカー | 日本車輌製造、日立製作所 |
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373系電車(373けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の直流特急形車両。
165系急行形電車の老朽取替えを主目的に、普通列車から特急列車までの使用に堪えうる汎用性の高い車両として開発され、1995年(平成7年)から1996年(平成8年)にかけて、3両編成14本(42両)が製作された。開発の主旨は特急「踊り子」などに用いる185系電車に類似する。
目次 |
[編集] 構造・仕様
- 編成体系
東京方から制御電動車クモハ373形、付随車サハ373形、制御車クハ372形の各形式で3両編成を組成する。これを基本単位として、3両・6両・9両編成で運用される。身延線・飯田線などローカル線での短編成運用に多く使用するため、本系列ではグリーン車の設定はない。
- 車体
最大長 21.3 m のステンレス製軽量構体を主構造とし、先頭部分のみ普通鋼製である。客用扉は両開き式で、車両端部の片側2か所に設ける。この扉配置はJRグループの特急車両では唯一のもので、出入台と客室を仕切るデッキ扉は省略され、車内保温対策として客用扉の開閉方式は半自動方式とされた。客用扉の隣接部にドア開閉用の押ボタン[1]を設ける。
運転室正面窓はキハ82形気動車の設計を参考としたパノラミックウィンドウで、後部からの客室照明の映り込みを抑制している。客室との仕切窓は大型のものを用い、運転室越しに前方を展望できる。
- 室内設備
座席は各車とも回転式リクライニングシートで、横 2+2 列で配置され、座席間隔は 970 mm である。各座席にはインアームテーブル(肘掛け内蔵テーブル)・灰皿を装備したが、全車禁煙化に伴い灰皿は撤去された。
クモハ373形・サハ373形では、連結部寄りに4人掛け・固定テーブル付きのセミコンパートメント席を併設する。クハ372形には車椅子対応洋式トイレ、男性専用トイレ、洗面所、テレホンカード式の公衆電話[2]が設けられている。
バリアフリー対応として、客用扉へのドアチャイム追設を後年に実施している。
- 制御系・電装系
制御方式は VVVF インバータ制御を採用し、主変換装置の整流素子には GTO 素子 を用いる。JR東海の在来線電車では383系電車(量産先行車・1994年)に次ぐ採用例である。主電動機は かご形三相誘導電動機 C-MT66 形 (185 kW) を搭載する。
パンタグラフはシングルアーム式で、トンネル断面が極度に小さい身延線への入線ができるよう、最低作用高さを極力下げた仕様である。従来の狭小トンネル対応車両にみられた「低屋根構造」は、本系列では採用されない。
- 台車・ブレーキ装置
台車は211系電車などに使用された DT50 系ボルスタレス台車の仕様を踏襲した C-DT63 形(動力台車) C-TR248 形(付随台車)である。円錐積層ゴムを用いた軸箱支持装置、ダイアフラム形空気バネをダイレクトマウント方式にて搭載した枕バネは DT50 系と共通の仕様であり、本系列特有の装備として、蛇行動抑制のためのヨーダンパ・空転防止のための砂箱(動力台車のみ)を装備する。
ブレーキ装置は電気指令式で、回生ブレーキ・抑速ブレーキを装備するほか、列車本数の少ない区間で回生失効の発生を防ぐため発電ブレーキも併設する。基礎ブレーキ装置は踏面片押し式のほか、付随台車ではディスクブレーキを併設する。
- 運転・保安装置
保安装置は ATS-ST 形を全編成に装備する。
1996年3月ダイヤ改正用に製作した F6 編成以降は、東日本旅客鉄道(JR東日本)管内乗入れ運用のため当初から ATS-P 形(以下 P 形と略記)を併設する。「ふじかわ」用として製作した初期の F1 - F5 編成では P 形の準備工事のみなされていたが、同改正で F4・F5 編成に P 形が追設された。F1 - F3 編成は「ふじかわ」に限定運用の後、後年に P 形追設工事を施工した。全編成が P 形併設化され、共通運用が可能となっている。
車内:デッキ・客室間に扉がない(奥の扉は連結部のもの)。座席のリネンは特急と一部の「ホームライナー」に限り装着。 |
[編集] 形式別概説
F1 - F12 編成までの36両 (1 - 12) は日本車輌製造、F13・F14編成の6両 (13・14) は日立製作所で製作された。
- クモハ373形
- 制御電動車で、編成の東京方に連結される。室内の連結面側車端部にセミコンパートメント席をもつ。
- 屋根上にパンタグラフを搭載し、主変換装置・補助電源用静止形インバータ (SIV) を床下に装備する。
- サハ373形
- 中間に連結される付随車で、室内の両車端部にセミコンパートメント席をもつ。
- 床下には発電ブレーキ用抵抗器などを搭載する。
[編集] 運用
1995年10月1日、静岡運転所(現・静岡車両区)に配置され、身延線の特急「ふじかわ」で運用を開始した。次いで1996年3月16日には東海道本線特急「東海」・飯田線特急「伊那路」、夜行快速「ムーンライトながら」での運用を開始し、同所の165系を淘汰した。
また、一部の普通列車にも使用されている。2008年現在「ムーンライトながら」の東京駅への送り込み・また静岡車両区への返却として東海道本線の東京 - 静岡間で1日1往復(9両編成)、大垣 - 米原間で平日午前中に2往復(全て3両編成)運用されている。このうち東京 - 静岡間の1往復は東海道本線東京口の普通列車で唯一のグリーン車非連結列車である。さらに、特急列車の間合い運用として東海道本線の「ホームライナー」にも使用される。「ホームライナー豊橋」上り2本(いずれも3両編成)は名古屋・大垣から飯田線特急「伊那路」に使用するための豊橋への送り込み、「ホームライナー大垣」(6両編成)は昼間「伊那路」に使用した車両をその日の上り「ムーンライトながら」に使用するための返却列車である。
以前は身延線でも普通列車として運用されていた時期があったが、こちらは313系の投入に伴い消滅している。2000年(平成12年)には予想外の好評により車両不足となった中央西線「セントラルライナー」にも313系増備車落成までの間、一時的に運用されたことがある。また、かつてダイヤが乱れたときに突発で新快速の運用にも入ったこともある。
- 特急列車
- 快速・ホームライナー
- ムーンライトながら:東京 - 大垣(9両(下り名古屋→大垣間は6両)編成、1日1往復)1996年3月16日 -
- ホームライナー(大垣・豊橋・浜松・静岡・沼津):(3両編成・6両編成)1996年3月16日 -
- 普通列車
- 東京 - 静岡(9両編成、1日1往復)1996年3月16日 -
- 大垣 - 米原(3両編成、1日2往復(平日のみ))2006年10月1日 -
- 過去の定期列車
- 臨時列車
- 特急「ごてんば」:浜松 - 御殿場(3両編成、1日1往復・一部は上り谷峨行き、下り山北発)
- 特急「日本GPごてんば号」(富士スピードウェイでF1グランプリが開催された際の臨時列車):静岡→御殿場(6両編成、1日1本…片道のみの運転 返却は御殿場→沼津の臨時快速列車)
- 特急「下曽我梅観号」(臨時列車):浜松 - 下曽我(3両編成、御殿場回り)
- 特急「80周年みのぶ号」:静岡 - 身延(3両編成、1往復)2008年3月30日