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夜行列車 - Wikipedia

夜行列車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

JR西日本・東海285系電車「サンライズエクスプレス」による寝台列車「サンライズ瀬戸・出雲」
JR西日本・東海285系電車「サンライズエクスプレス」による寝台列車「サンライズ瀬戸・出雲」
EF81形電気機関車牽引、E26系客車による寝台列車「カシオペア」
EF81形電気機関車牽引、E26系客車による寝台列車「カシオペア
JR東海373系電車による座席夜行列車「ムーンライトながら」
JR東海373系電車による座席夜行列車「ムーンライトながら

夜行列車(やこうれっしゃ)とは、夜間から翌日の朝以降にまたがって運転される旅客列車のことである。その性格上、長距離列車となる場合が多い。旅程に夜行列車を組み入れた場合、車中泊と表現される。日本では、夜汽車と呼ばれることもある。

目次

[編集] 特徴

夜行列車の最大のメリットは、深夜という非有効時間帯を利用して目的地に移動できることにある。そのため、他の競合交通機関の(昼行)最終便より遅く出発し、始発便より早く目的地に到着する設定の場合、最もその効果を発揮する。

[編集] 日本

日本では明治時代中期以降、全国の鉄道網の整備が一通り完成し、それとともに夜行列車が運行されるようになっている。1960年代前半(昭和30年代)頃までは夜間に出発して翌々日(すなわち車中2泊3日、運転時間30時間以上)に終点に到着するものもあったが、新幹線が開通し、在来幹線も電化や線路・車両改良などによるスピードアップが図られた昭和40年代以降は、運転時間は長くとも28時間程度に抑えられ、車中1泊の行程で運行するもののみになった。現在では運行距離の短縮により、運転時間は長くとも20時間程度である。

1970年代前半(昭和40年代)頃までの、新幹線や国内航空路線高速道路網などが未発達な時代には、長距離(おおよそ250km以上)の都市間を結ぶ主要な交通手段として活用されていたが、昭和50年代(1980年代)以降、国内航空路線や高速道路網の整備が進んだ結果、現在では、速度(所要時間)面で新幹線・飛行機といった交通機関に押され、運賃面においては高速バスと競合する状態にある。

これは荷物輸送・郵便輸送にも当てはまり、1970年代までは主な幹線の夜行急行列車・普通列車に荷物車郵便車を連結し、旅客とともに新聞の朝刊などの小荷物や郵便物を輸送していたが、現在この任務は高速道路を走るトラックに取って代わられた。なお、1970年代~80年代には郵便荷物専用の夜行列車が多く運行されていた。

[編集] 現状

※別項のブルートレイン (日本)#平成以降の退潮も参照されたい。

現在運行している大半の夜行列車は、寝台車が連結されている寝台列車である。これは、夜間に長距離にわたって運転される夜行列車の性格上、当然のことといえよう。しかし、車両の製造費が高額である割に寝台設備を設けることで1両あたりの定員数が座席車より少なくなり(個室寝台となると開放式寝台以上に定員数が少なくなる)、低料金だと採算が合わないことや、乗務員が長時間勤務になることなどから、寝台料金は一般のホテルの設備・料金に比して高額な設定であり、夜行列車が敬遠される一因ともなっている。

ホテルの宿泊料金は地域やシーズン等により多少異なるものの、開放式2段式B寝台は6,300円であり、ビジネスホテルに普通に宿泊できる金額であり、これより上級となるA寝台開放式下段に至っては10,500円であり、ビジネスホテルはおろかシティホテルにも宿泊可能な金額である。

さらに、実際の乗車には乗車券・上記寝台料金に加え、列車種別によっては特急料金ないしは急行料金まで必要となり、やはりコストパフォーマンスの悪さは否めない。さらに、現在では各種割引航空運賃(特定便割引、早期購入割引、バーゲン型割引など)や、格安料金にて宿泊予約ができる旅行サイト(じゃらん楽天トラベル等)の登場により、航空機で移動して現地のホテルに宿泊した方がJRの寝台特急利用よりも安価、もしくはほぼ同等であるケースが多々ある。従って、料金面ばかりでなく夜行列車利用による時間の有効活用というメリットすらも薄れてきている。

これに対応して近年JR各社は、寝台の個室化や女性専用車の連結によるプライバシーへの配慮を図って質的改善を進めている。

一部の列車では、グリーン車に匹敵する設備を普通車扱いで安価に提供するサービスが行われ、利用者の選択肢を広げている。この例としては、「はまなす」の普通車座席指定席として設定されている「ドリームカー」がある。廃止されたものの例では2008年3月14日まで運行された「あかつき」の普通座席指定席として運用された「レガートシート」や定期運行開始時の「ムーンライト」(のちに「ムーンライトえちご」に名称変更している)の座席がある。

また、寝台ではないが横臥できる設備を普通車扱いで提供する例も現れている(寝台車参照)。

「トワイライトエクスプレス」
「トワイライトエクスプレス」

一方、関東~北海道を結ぶ「北斗星」・「カシオペア」や近畿~北海道を結ぶ「トワイライトエクスプレス」のように、個室寝台を基本とし、食堂車ではディナーが提供されるなど、豪華な設備を誇るものがある。単なる旅客輸送であれば、「北斗星」及び「カシオペア」であれば羽田成田仙台新千歳など、「トワイライトエクスプレス」であれば伊丹関空小松~新千歳など飛行機に対抗できないため鉄道旅行を目的とし、車窓を楽しむ、その列車に乗車すること自体が目的とされ、夜行列車の列車速度・所要時間の割に高額な寝台特急券を必要とする代わりに夜行列車の「質」を高めている一種の「リゾート列車」であり、本来の夜行列車の存在意義からはやや離れたものといえる。

「ムーンライトえちご」
「ムーンライトえちご」

かつては普通(快速)列車にも寝台車が連結されるものがあったが、1985年(昭和60年)までに全廃されており、現在運転されている夜行快速列車は、座席車のみである。

定期列車は東京圏発着の「ムーンライトえちご」・「ムーンライトながら」の2系統のみであるが、安価な移動手段として人気があり、毎年4月末から5月初めにかけてのゴールデンウィークや、普通(快速)列車乗り放題の「青春18きっぷ」が発売される夏休み、冬休みの時期には、各方面に臨時列車として多数設定されている。

しかしながら、全体的には夜行列車に使用される車両の多くは国鉄時代の1970年代~80年代に製造されたものであり、老朽化が進んでいる。しかし、夜行列車は現在でも機関車牽引の客車列車が主力であり、機関車の新型車両への置き換えも考えられるが、新型の機関車を所有しているのはJR貨物のみで、夜行列車を運行するJR旅客鉄道6社は置き換えをする機関車の開発すら行っていない。

前述のようなてこ入れなどの処置を講じてはいるものの、速度(所要時間)では飛行機に遠く及ばず、運賃でも圧倒的に有利な高速夜行バス(バス事業が免許制から許可制に規制緩和された2000年頃からは、さらに運賃の安い観光バスによる会員制夜行ツアーバスも台頭)はもちろんのこと、飛行機の運賃も航空会社の努力により安価になっているため、これらに乗客を取られており、モーダルシフトとは逆の現象が生じている状況である。深夜運行できない新幹線と異なり、深夜時間帯を有効に使えるメリットはあるが、新幹線のスピードアップや飛行機の利便性向上などによりそのメリットが薄らいできており、加えて現在では車中泊が敬遠される傾向が現れてきていることなどから、新幹線・飛行機・高速夜行バスなどの競合相手がある夜行列車の客数落ち込みには歯止めがかかっていない。

このような事情から、国鉄分割民営化後は専用の新車を投入した列車は客車は14・24系の後継となるE26系を用いた「カシオペア」、電車は581・583系に類似する285系の「サンライズ出雲」・「サンライズ瀬戸」以外にはなく、全体的には夜行列車の縮減傾向が進んでいるのが現状である。

また、新幹線整備新幹線)の開業によって、夜行列車が通る並行在来線がJR旅客鉄道会社から第三セクター鉄道会社へ移管されることにより、第三セクター鉄道会社との直通運転が発生し、第三セクター鉄道会社との調整が必要になったり、乗り入れにより運賃・特急料金が余分に掛かるようになることも夜行列車の運行を難しくしている。現在第三セクター鉄道会社に乗り入れている夜行(準)定期列車は「北斗星」・「カシオペア」のみである。

この事例を端的に示すものとしては、西鹿児島駅(現鹿児島中央駅)まで運行されていた「なは」は、九州新幹線開業に際して転換された肥薩おれんじ鉄道に乗り入れを行わず、熊本駅までに運行短縮した。

ただし、第三セクター鉄道との直通運転を行なう昼行列車は現状でも多数存在していることから、運行短縮の根本的な原因は運賃・特急料金ではなく、前述の通り夜行列車の利用者数が少ないことにある。夜行列車をフリーゲージトレイン化して、新幹線開業で並行在来線の第三セクター鉄道へ移管または廃止になった部分を新幹線に迂回走行させることが考えられるが、新幹線は保線のため24時〜6時の間は走行できず、夜行列車の機能が発揮できないなど、別の問題が発生する。

[編集] 夜行列車の削減へ

以上のような状況から、在来線の夜行列車は一部を除き他の交通機関に対する競争力を失い、利用率が減少している。このため、2008年から2009年にかけてJR各社は夜行列車の大規模な削減を計画していることが報道された。その一環として、2008年3月15日のダイヤ改正により、関西方面と九州方面を結ぶ寝台特急「なは」・「あかつき」および、JR唯一の寝台急行「銀河」が廃止され、2往復設定されていた「日本海」や「北斗星」が1往復に減少された。それ以降も、東京駅発着の九州方面を結ぶ寝台特急「富士」・「はやぶさ」の全廃もささやかれている。また、JR北海道は2008年夏をもって北海道内発着の夜行列車を全廃することを発表した。[1]

[編集] 日本の夜行列車

本稿での記号は以下の通り。

「まりも」
「まりも」

[編集] 北海道内

[編集] 青森~北海道

「北斗星」
「北斗星」

[編集] 東京方面~北海道・東北方面

「能登」「北陸」
「能登」「北陸」

[編集] 東京方面~信越・北陸方面

「日本海」
「日本海」
「きたぐに」
「きたぐに」

[編集] 日本海縦貫線

[編集] 大阪方面~長野・北陸方面

[編集] 東海道本線

「富士・はやぶさ」
「富士・はやぶさ」

[編集] 東京~山陽・九州方面

[編集] 大阪方面~山陽・九州方面

[編集] 東京・大阪方面~山陰・四国方面

[編集] 九州内

[編集] 私鉄

「あさかぜ」
「あさかぜ」
「さくら」
「さくら」
2008年3月14日の運行をもって廃止された「銀河」
2008年3月14日の運行をもって廃止された「銀河」

[編集] 廃止された列車

(列車愛称のないもの・イベント列車に類するものは略)

列車名の後ろの記号。[特]:特別急行列車、[急]:急行列車、[急]・[特]:急行・特急で運行(種別は順不同)、[普]:普通列車・快速列車

[編集] 海外

[編集] 北米

アメリカ合衆国
アムトラック列車「Sunset Limited」
アムトラック列車「Sunset Limited」

アメリカ合衆国は、その国土の広さから、長距離列車のほとんどは夜行列車である。かつては大量の夜行列車が運行されていたが、現在では国内の移動の主流が飛行機となってしまったためにその本数を大きく減らしている。アメリカには複数の鉄道会社が存在するが、夜行列車はアムトラック(全米旅客鉄道公社)が運行する。しかし、その本数はそれほど多くない。夜行列車は毎日、もしくは週3日運行され、全行程は2日(1泊2日)から長いものでは4日(3泊4日)を要するものまでさまざまである。座席車のみの列車も存在するが、多くは寝台車と座席車を併結し、主に観光客を対象としている。他の長距離路線同様、ダイヤは乱れやすく、単線区間でのすれ違いや車両到着の遅れからくる時間の運行の乱れが大きいため、ビジネス目的の移動には適さない。寝台車の場合、食事料金は料金に含まれており、乗車区間によって数回の食事が供される。

カナダ

カナダではアメリカのアムトラックに相当するVIA鉄道が夜行列車を運行している。その形態はアメリカと似ているが、二大都市圏であるトロントモントリオールを結ぶ夜行列車ではビジネス客を意識したサービスを提供している。

[編集] ヨーロッパ諸国

CNLの朝食サービス
CNLの朝食サービス
ユーロナイト
ユーロナイト

ヨーロッパでは、高速夜行バスが日本ほど発達していないために、現在も夜行列車が多く運行されている(国際夜行バスとしてユーロラインズ社のネットワークはあるが、国内完結の夜行バスは少ない)。多くの国が陸続きにあり、かつそれぞれの国があまり大きくないという地理的事情から、国際夜行列車も多い。ほとんどの夜行列車には寝台車と座席車の双方が連結されている。利用者は観光旅行者およびビジネス客の双方にわたる。国際夜行列車の場合には、乗車時に車掌がパスポートを回収し、夜中の出入国手続きを旅客に代わって行い、翌朝の国境通過後に返却する。区間設定は大都市を結び、実際の走行距離があまり長くない場合もある。その場合国境付近の町で時間調整のため長時間停車することが多い。

ヨーロッパの夜行列車は、それぞれの国の国内列車と国際夜行列車の二つに大別される。鉄道が民営化し、夜行列車運行の独立会社が設立された関係もあり、サービスの質はさまざまである。たとえば、ドイツ鉄道オーストリア鉄道ではウェルカムドリンクおよび朝食は料金に含まれるが、イタリア国鉄では朝食は別料金となる。飛行機の普及以降、1980年代までは夜行列車の食堂車のサービスは削減される一方であったが、1990年代以降はユーロナイトなど復活の傾向も見られ、ドイツ国内やドイツと周辺各国を結ぶシティナイトラインなどの夜行列車や、フランスイタリア(アルテシアナイト)・スペイン(タルゴ・トレンホテル)を結ぶ夜行列車では、食堂車やビュッフェ車の連結が見られる。

ヨーロッパの多くの国の国内夜行列車は、廉価な長距離列車として運転されている列車が少なくない。こうした夜行列車はクシェット(Couchette)と呼ばれる簡易寝台車を連結している。クシェットの寝台料金は20ユーロ弱と極めて安価であり、庶民の気軽な長距離旅行手段として親しまれている。クシェットは、日本で言えば3段式のB寝台車であり、一部屋6名となっている(一部、2段式4名のクシェットもある)。クシェット寝台は、多くの場合は男女同室となるが、スペインでは男女別に部屋が分かれている。フランスの国内夜行列車はコライユ・ルネアの名称で統一されており、Web限定の安価なクシェットの切符などを発売している。国土が広く、高速化が遅れているスペインでは、クシェットをつないだ夜行急行が数多い。バカンスのシーズンとなると、国内・国際列車問わずクシェット寝台は盛んに利用されている。


中国の2階建て寝台客車
中国の2階建て寝台客車

[編集] アジア

中国インドでは航空路線網や高速道路網が十分に発達しておらず、現在でも鉄道輸送の占めるシェアは大きく、多くの夜行列車が運行されている。アメリカ・カナダ同様、国土が非常に広大であるため、3~4日間をかけて運行するものも目立つ。

韓国では主要幹線に夜行列車(ムグンファ号車両使用)が運行されている。国土面積の関係で国内移動の際の移動距離が概ね500km以内であり、運転時間が短いため、座席車が主体であるが、寝台車を連結した列車もある。

またそのほか東南アジアなどの発展途上国でも、やはり高速道路網が未発達のために、1960年代の日本同様に鉄道輸送が主力で、夜行列車も多い。

南アフリカのブルートレインダイニングカー
南アフリカのブルートレインダイニングカー

[編集] アフリカ

アフリカは、先進国のように鉄道が発達している国は少ないが、長距離路線を中心に夜行列車の運行がかなり見られる。 南アフリカ共和国では、世界で一番豪華といわれるブルートレイン (南アフリカ)等多くの夜行列車が運行しているほか、モザンビークへの国際ローカル列車などもある。 その他、ザンビアのカピリムポシとタンザニアダルエスサラームを結ぶタンザン鉄道(TAZARA、タンザニア・ザンビア鉄道)等で夜行列車が運行している。


[編集] 関連項目


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