円 (通貨)
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[編集] 概要
現在の日本の通貨単位である円(えん)は、明治4年5月10日(1871年6月27日)に制定された新貨条例で定められたものである。¥記号(¥記号)も使用される。ISO 4217ではJPYと表記される。ローマ字ではYenと表記される。Enではない理由は、1つには、幕末までは「エ」を[je]と発音したからで、同様の表記にYedo(江戸)、Yezo(蝦夷)、Yebisu(ヱビス)などが見られた。他には、フランス語にすでにen([ɑ̃] アンと読み、場所などを表す前置詞)という単語があったから、「En」は英語圏だと「イン」と読まれかねないからなどの理由がある。尚、当時は「圓」を漢字として充てており現在においても「円=圓」が通用する。
「円」の名前の由来には諸説ある。一説には、人々がお金を表すときに人差し指と親指で円を作ったところから、「『円』ならば誰でもお金だとわかるだろう」と大隈重信が言ったためこの名がついたという。また、貨幣の形状を円形に統一したからとも、当時香港にあった硬貨に「香港壱圓」と刻印があったことから思いついたという説もある[1]。
補助単位としては、
が存在するが、1953年に法律によって小額硬貨が整理された際に、事実上の使用・流通禁止処分が取られており、今日では為替や株式の取引で銭が便宜的に使用されるにすぎない。
なお、円にはいくつか種類があり、第二次世界大戦終戦までは内地で流通した日本円の他、外地通貨である台湾円(台湾で流通)や朝鮮円(朝鮮及び関東州で流通)も存在した(南洋群島は例外的に日本円が流通)。
また、中国の通貨単位である「元」は「円」の同音字を当てたものであり、韓国・北朝鮮の「ウォン」も「円」の朝鮮語読みである。台湾のニュー台湾ドルや香港の香港ドルも、国内での名称は「元」ないし「圓」である。すなわち、これら東アジアの諸通貨は、みな本質的には「圓」という名称を共有しているといえる。なお中国語では日本円を「日圓」「日元」、米ドルを「美元」、ユーロを「欧元」というように、国・地域名を冠してそこで用いられる通貨を指す用法も派生した。
[編集] 流通硬貨・紙幣
現在も発行されているものは硬貨6種類、紙幣4種類である。
[編集] 硬貨
- 一円硬貨 - アルミニウム製。外径20mm、重量1g。1955年発行。表は若木、裏は1と年号がデザインされている。
- 五円硬貨 - 黄銅製。外径22mm、重量3,75g。1959年発行。穴あきで、表は稲穂と水面と五、そして穴の周りに歯車、裏は国名と年号が記されている。
- 十円硬貨 - 青銅製だが、亜鉛も含む。外径23,5mm、重量4,5g。1959年発行。表は平等院鳳凰堂、裏は月桂樹と年号そして10がデザインされている。
- 五十円硬貨 - 白銅製。外径21mm、重量4g。1967年発行。穴あきで、表は菊、裏は50と年号が記されている。
- 百円硬貨 - 白銅製。外径22,6mm、重量4,8g。1967年発行。表は桜、裏は100と年号が記されている。
- 五百円硬貨 - ニッケル黄銅製。外径26,5mm、重量7g。2000年発行。表は桐、裏は笹、橘、500と年号が記されている。
[編集] 紙幣
- 千円紙幣 - E千円券と称され、縦76mm×横150mm。2004年11月1日発行。表は野口英世、裏は富士山と桜がデザインされている。
- 弐千円紙幣 - D弐千円券と称され、縦76mm×横154mm。2000年7月19日発行。表は沖縄県首里城の守礼門、裏は紫式部と源氏物語絵巻がデザインされている。
- 五千円紙幣 - E五千円券と称され、縦76mm×横156mm。2004年11月1日発行。表は樋口一葉、裏は尾形光琳の燕子花図がデザインされている。
- 壱万円紙幣 - E壱万円券と称され、縦76mm×横160mm。2004年11月1日発行。表は福沢諭吉、裏は平等院の鳳凰像がデザインされている。
[編集] 歴史
[編集] 「円」制定の経緯
1871年に明治政府は貨幣の基本単位に円を用いることを決定した。 このとき、純金1500mgを1円(すなわち金平価1500mg)とする 金本位制の導入が試みられ、20円、10円、5円、2円、1円の日本初の洋式本位金貨が鋳造、発行された。 この量目は、米国訪問中の伊藤博文が建言したものであり、当時の国際貨幣制度確立案として米国下院に提案中だった1ドル金貨の金純分と等しい。
また、当時明治政府が鋳造し流通していた明治二分金(重量3g 金純分22.3%)2枚(=1両)の純金含有量に近似でもあり、新旧物価が1両=1円として連結し、物価体系の移行に難が少ないとして採用された(なお、江戸幕府最後の二分金である万延二分金と明治二分金の純金含有量はほぼ同じである)。
[編集] 金・銀本位制
しかし、輸入増加や、西南戦争や日清戦争等による不換紙幣・銀行券の濫発、金流出等により、実際には金本位制は機能せず、事実上銀本位制のままだった。これは当時発行されていた日本銀行券が、本位金貨が存在したのにもかかわらず、兌換銀券であったことでも頷ける。
その後、日清戦争の賠償金として受け取った金を兌換準備充当の正貨として、1897年に貨幣法が制定され、第2次金本位制度が確立し、ようやく紙幣の金兌換が実現した。
ただし、1円の金平価は750mgと半減、しかも兌換準備充当正貨は英国に置いたままの在外正貨の形で運用された。1871年から発行された最初の本位金貨は、この時から額面の2倍の通用力を有すこととなった。一方新貨幣法による本位金貨は、20円、10円、5円のみとなり、1円金貨は発行されなかった。これらの本位金貨は、戦後も廃止されず、昭和62年6月1日に、官報で本位金貨の流通停止が告知されるまで、名目上は現行通貨であった。
この金兌換は1917年まで継続されたが、第一次世界大戦による金本位制停止で金輸出禁止、兌換も停止された。
終戦後の混乱を経て、1930年に金の輸出を自由化して金本位制度を復活させる措置が取られたが、1931年12月には金輸出・金兌換が再び禁止となり、日本の金本位制は崩壊(金解禁)、その後は管理通貨制度に移行した。
[編集] 金為替本位制
第二次世界大戦以後のIMF体制(いわゆるブレトン・ウッズ体制)下では、米ドルを介した金為替本位制により、1円の金平価は2.4685mgとなった。 この価格は、1ドルの金平価1/35トロイオンスを、当時の対ドル円為替相場である 1ドル = 360円で割って算出されたものである[2]。
この対ドル固定相場制に基づく金為替本位制は1971年のニクソン・ショックにより終結し1973年には変動相場制に移行した。(間接的な)金による裏付けを失う代わりに米ドルを基軸通貨とする体制はこれまでの金本位制に対し「ドル本位制」と呼ばれる。
[編集] ドル本位制
変動相場制への移行後、上下を続けた円相場は1970年代末にアメリカのインフレ対策への失望から急速に円高へ進んだ(ドル危機)。ボルカーFRB議長により新金融調節方式が採用されると、ドルの金利は急速に上昇し、合わせて円相場は円安へ向かった。1985年、高すぎるドル相場の安定的是正を目指してプラザ合意が行なわれると、円相場は一年で二倍の円高となった。バブル経済期に一時的な円安を迎えた後、1995年に掛けて円高が進み1ドル=70円台後半まで円高が進んだ。1990年代後半には「強いドル政策」と日本の金融危機により円安が進行。以後、現在に至るまで1ドル=100~120円の幅で推移している。
現在はハードカレンシーのひとつとして国際的に認知され、信用されているとされてきた。ところが、近年における円の存在感は低下し続け、もはやローカル通貨でしかないという評価もされている[3][4]。 実際、米ドル以外の主要国通貨も含めた通貨の国際的な購買力を示す実質実効為替レートで見ると、1995年頃を境に急激に実質円安に転じ、2007年にはプラザ合意以前の円安水準へと逆戻りしている(右上グラフ青線)。
[編集] 為替レート
米ドル - 円
年 | 月 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
1949年から 1971年まで |
360(固定相場) | |||||||||||
1972年 | 308(1971年12月より切り上げ) | |||||||||||
1973年 | 301.15 | 270.00 | 265.83 | 265.50 | 264.95 | 265.30 | 263.45 | 265.30 | 265.70 | 266.68 | 279.00 | 280.00 |
1974年 | 299.00 | 287.60 | 276.00 | 279.75 | 281.90 | 284.10 | 297.80 | 302.70 | 298.50 | 299.85 | 300.10 | 300.95 |
1975年 | 297.85 | 286.60 | 293.80 | 293.30 | 291.35 | 296.35 | 297.35 | 297.90 | 302.70 | 301.80 | 303.00 | 305.15 |
1976年 | 303.70 | 302.25 | 299.70 | 299.40 | 299.95 | 297.40 | 293.40 | 288.76 | 287.30 | 293.70 | 296.45 | 293.00 |
1977年 | 288.25 | 283.25 | 277.30 | 277.50 | 277.30 | 266.50 | 266.30 | 267.43 | 264.50 | 250.65 | 244.20 | 240.00 |
1978年 | 241.74 | 238.83 | 223.40 | 223.90 | 223.15 | 204.50 | 190.80 | 190.00 | 189.15 | 176.05 | 197.80 | 195.10 |
1979年 | 201.40 | 202.35 | 209.30 | 219.15 | 219.70 | 217.00 | 216.90 | 220.05 | 223.45 | 237.80 | 249.50 | 239.90 |
1980年 | 238.80 | 249.80 | 249.70 | 238.30 | 224.40 | 218.15 | 226.85 | 219.20 | 212.00 | 211.75 | 216.75 | 203.60 |
1981年 | 205.20 | 208.85 | 211.40 | 215.00 | 223.50 | 225.75 | 239.75 | 228.75 | 231.55 | 233.35 | 214.15 | 220.25 |
1982年 | 228.45 | 235.20 | 248.30 | 236.30 | 243.70 | 255.55 | 256.65 | 259.60 | 269.40 | 277.40 | 253.45 | 235.30 |
1983年 | 238.40 | 235.55 | 239.30 | 237.70 | 238.60 | 239.80 | 241.50 | 246.75 | 236.10 | 233.65 | 234.20 | 232.00 |
1984年 | 234.74 | 233.28 | 224.75 | 226.30 | 231.63 | 237.45 | 245.45 | 241.70 | 245.40 | 245.30 | 246.50 | 251.58 |
1985年 | 254.78 | 259.00 | 250.70 | 251.40 | 251.78 | 248.95 | 236.65 | 237.10 | 216.00 | 211.80 | 202.05 | 200.60 |
1986年 | 192.65 | 180.45 | 179.65 | 168.10 | 172.05 | 163.95 | 154.15 | 156.05 | 153.63 | 161.45 | 162.20 | 160.10 |
1987年 | 152.30 | 153.15 | 145.65 | 139.65 | 144.15 | 146.75 | 149.25 | 142.35 | 146.35 | 138.55 | 132.45 | 122.00 |
1988年 | 127.18 | 128.12 | 124.50 | 124.82 | 124.80 | 132.20 | 132.53 | 134.97 | 134.30 | 125.00 | 121.85 | 125.90 |
1989年 | 129.13 | 127.15 | 132.55 | 132.49 | 142.70 | 143.95 | 138.40 | 144.28 | 139.35 | 142.15 | 142.90 | 143.40 |
1990年 | 144.40 | 148.52 | 157.65 | 159.08 | 151.75 | 152.85 | 147.50 | 144.50 | 137.95 | 129.35 | 132.75 | 135.40 |
1991年 | 131.40 | 131.95 | 140.55 | 137.42 | 137.97 | 138.15 | 137.83 | 136.88 | 132.95 | 131.00 | 130.07 | 125.25 |
1992年 | 125.78 | 129.33 | 133.05 | 133.38 | 128.33 | 125.55 | 127.30 | 123.42 | 119.25 | 123.35 | 124.75 | 124.65 |
1993年 | 124.30 | 117.85 | 115.35 | 111.10 | 107.45 | 106.51 | 105.60 | 104.18 | 105.10 | 108.23 | 108.82 | 111.89 |
1994年 | 109.55 | 104.30 | 102.80 | 102.38 | 104.38 | 98.95 | 99.93 | 99.57 | 98.59 | 97.37 | 98.98 | 99.83 |
1995年 | 98.58 | 96.93 | 88.38 | 83.77 | 83.19 | 84.77 | 88.17 | 97.46 | 98.18 | 101.90 | 101.66 | 102.91 |
1996年 | 106.92 | 104.58 | 106.49 | 104.29 | 108.37 | 109.88 | 107.13 | 108.40 | 111.45 | 113.27 | 113.44 | 115.98 |
1997年 | 122.13 | 120.88 | 123.97 | 126.92 | 116.43 | 114.30 | 117.74 | 119.39 | 121.44 | 120.29 | 127.66 | 129.92 |
1998年 | 127.34 | 126.72 | 133.39 | 131.95 | 138.72 | 139.95 | 143.79 | 141.52 | 135.72 | 116.09 | 123.83 | 115.20 |
1999年 | 115.98 | 120.32 | 119.99 | 119.59 | 121.37 | 120.87 | 115.27 | 110.19 | 105.66 | 104.89 | 102.42 | 102.08 |
2000年 | 106.90 | 110.27 | 105.29 | 106.44 | 107.30 | 105.40 | 109.52 | 106.43 | 107.75 | 108.81 | 111.07 | 114.90 |
2001年 | 116.38 | 116.44 | 125.27 | 124.06 | 119.06 | 124.27 | 124.79 | 118.92 | 119.29 | 121.84 | 123.98 | 131.47 |
2002年 | 132.94 | 133.89 | 132.71 | 127.97 | 123.96 | 119.22 | 119.82 | 117.97 | 121.79 | 122.48 | 122.44 | 119.37 |
2003年 | 119.21 | 117.75 | 119.02 | 119.46 | 118.63 | 119.82 | 120.11 | 117.13 | 110.48 | 108.99 | 109.34 | 106.97 |
2004年 | 105.88 | 109.08 | 103.95 | 110.44 | 109.56 | 108.69 | 111.67 | 109.86 | 110.92 | 105.87 | 103.17 | 103.78 |
2005年 | 103.58 | 104.58 | 106.97 | 105.87 | 108.17 | 110.37 | 112.18 | 111.42 | 113.28 | 115.67 | 119.46 | 117.48 |
2006年 | 117.18 | 116.35 | 117.47 | 114.32 | 111.85 | 114.66 | 114.47 | 117.23 | 118.05 | 117.74 | 116.12 | 118.92 |
2007年 | 121.34 | 118.59 | 118.05 | 119.41 | 121.63 | 123.48 | 118.99 | 116.24 | 115.27 | 114.78 | 110.29 | 113.12 |
2008年 | 106.63 | 104.34 |
日本銀行ホームページの時系列データにある「外国為替相場 / text」を元にした。
[編集] 円の流通高
円の流通高は、現金で考えると2006年3月末現在において79兆4,283億円であり、このうち日本銀行が発行する紙幣が74兆9,781億円、財務省が発行する硬貨が4兆4,502億円である。国の借金が751兆1,065億円(2004年12月末現在・国債等を参照の事)、家計の金融資産の合計が1,500兆円とも言われるが現金である円の流通高は思いのほか小さい。金利が低いことなどから家計が「タンス預金」として保有している現金が多いため、家計の保有している現金は42兆650億円もある。
「円の通貨流通高」とは現金の総額と捉えることもできる。紙幣は国立印刷局が印刷・製造しており、製品そのものは市中に出回っている紙幣以外に日本銀行の金庫内にも保管されており、必要に応じて発行される。個人や企業への支払に使う紙幣を調達するために、金融機関が日本銀行に保有している当座預金から資金を引き出して、日本銀行の窓口で紙幣を受け取ることによって日本銀行券は発行される。
経済活動に使われる資金としての円は、現金以外にも銀行に個人や企業が保有している当座預金や普通預金などほとんど現金と同様に日々の取引の決済に利用できる資金などもある。日本では、金融機関以外の民間企業、個人や地方公共団体などが保有している現金に当座預金、普通預金、定期性預金などを加え、さらにCD(譲渡性預金)を加えたM2+CDが市中にある円資金の流通量の指標として使われることが多い(詳しくはマネーサプライを参照)。
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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基本情報 | 日本銀行 - 日本銀行券 - 円(日本円) - 国立印刷局 - 造幣局 |
日本の硬貨 | 一円硬貨 - 五円硬貨 - 十円硬貨 - 五十円硬貨 - 百円硬貨 - 五百円硬貨 |
発行中の 日本銀行券 |
千円紙幣 - 二千円紙幣 - 五千円紙幣 - 一万円紙幣 |
発行は停止したが 有効券のある紙幣 |
一円紙幣 - 五円紙幣 - 十円紙幣 - 五十円紙幣 - 百円紙幣 - 五百円紙幣 |
全てが失効した紙幣 | 五銭紙幣 - 十銭紙幣 - 二十円紙幣 - 二百円紙幣 |
明治以降の日本銀 行券以外の紙幣 |
太政官札 - 民部省札 - 明治通宝 - 国立銀行紙幣 - 改造紙幣 - 小額政府紙幣 - B円 |
関連項目 | 新貨条例 - 記念貨幣 - 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律 - 日本銀行法 - 通貨偽造の罪 - 貨幣損傷等取締法 - すき入紙製造取締法 - 通貨及証券模造取締法 - 偽札 - 円相場 |
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