朝鮮語
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韓国語 / 朝鮮語 한국어 / 조선말 |
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発音 | IPA: haːnɡuɡɔ / tsosɔnmal | |
話される国 | 大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、日本、アメリカ合衆国、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタンなど | |
地域 | 東アジア | |
総話者数 | 推定7500万人程度 | |
話者数の順位 | 13 | |
言語系統 | 論争あり 孤立した言語あるいはアルタイ諸語 |
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公的地位 | ||
公用語 | 大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国延辺朝鮮族自治州(普通話と併用) | |
統制機関 | 韓国:国立国語院/국립국어원[1] 北朝鮮:社会科学院語学研究所 |
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言語コード | ||
ISO 639-1 | ko | |
ISO 639-2 | kor | |
ISO 639-3 | kor | |
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朝鮮語(ちょうせんご)あるいは韓国語(かんこくご)は、主に朝鮮民族が使う言語で、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国および中華人民共和国吉林省長白朝鮮族自治県・延辺朝鮮族自治州の公用語。
韓国での正式名称は「韓国語」、北朝鮮での正式名称は「朝鮮語」である。日本においては南北統一名称として一般に「朝鮮語」が用いられるので、ここでは頭記を朝鮮語に統一する。
目次 |
[編集] 概要
その他の地域の話者としては、日本・中華人民共和国(特に延辺朝鮮族自治州)・ロシア(特に沿海州とサハリン)・中央アジア(ウズベキスタン・カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン)・北米(アメリカ合衆国・カナダ)に住む朝鮮民族集団が存在する。世界全体ではおよそ7500万人程度の話者がいると推定され、そのうち7100万人を朝鮮半島の話者が占める。
音韻面では子音に有気音と無気音の対立がある。連音(リエゾン)が起こることも特徴である。音節構造においては、ほとんどが母音で終わる開音節の日本語とは異なり、子音で終わる閉音節も多く現れる。ただし在日朝鮮語では日本語の影響で閉音節の発音はほぼ崩壊している。
言語類型論の観点から見ると、日本語と同じ膠着語であり、修飾語は被修飾語に先行し、前置詞ではなく後置詞を用いる。歴史的に日本語と越南語同様中国語と漢字文化の影響を強く受けてきたが、現在の表記には主にハングルが用いられる。
言語学的な基準からすると韓国で話されている言語と北朝鮮で話されている言語は同一の言語である(つまり、相互の発話が理解可能である)が、南北には発音・語彙・文法・正書法などの違いが存在する。このことから、「朝鮮語」を韓国で話されている言語と区別した「北朝鮮で話されている言語」という狭義の意味で使うこともある。
ISO 639による言語コードは2字がko、3字がkorで表される。
[編集] 言語名
詳細は朝鮮語の呼称問題を参照
北朝鮮においては「朝鮮語」に相当する「조선말,조선어(チョソンマル、チョソノ)」という呼称が用いられており、韓国では「韓国語」に相当する「한국어,한국말(ハングゴ、ハングンマル、韓國語)」という呼称が用いられている。ここで「말(マル)」は「言葉」を意味する朝鮮語の固有語であり、「어(オ、語)」は漢字語である。固有語を好む傾向のある北朝鮮では「말」を用いた「조선말」が用いられることが多く、一方の韓国では公式な場面では「어」を用いた「한국어」が通常用いられる。この他に朝鮮民族どうしの表現として「国語」に相当する「국어(クゴ、國語)」や、朝鮮語の固有語で「我々の言葉」を意味する「우리말(ウリマル)」という表現も用いられる。
南北の言語には多少違いがあるが、北朝鮮における「조선말,조선어(朝鮮語)」には大韓民国の言語も含まれ、韓国における「한국어,한국말(韓国語)」にも北朝鮮の言語が含まれる。
中央アジアの朝鮮人の間では「高麗語」(고려말、Корё мар、コリョマル)という呼称が用いられている。但しこの「高麗語」は朝鮮半島の言語とは別の言語とされる場合がある。詳細は当該事項または本記事後述を参照。
日本では伝統的には「朝鮮半島」、「朝鮮民族」等と同様に「朝鮮」の名を冠した「朝鮮語」という呼称が用いられており、学術的な場面や専門家の間でも主に「朝鮮語」と呼ばれる。その一方で、日本語の話者のほとんどが居住する日本においては、大韓民国との交流関係に比べて北朝鮮との交流関係が非常に疎遠であることを反映し、一般的な場面では「韓国語」と呼ばれることが増えつづけている。日本において、そのどちらかの名称を用いることは公平ではないとし、「コリア語」、「高麗語」、「韓国・朝鮮語」、言語名を避け文字名称である「ハングル(語)」を用いた間接的な表現が中立性を保つために用いられることもある。ただし、「ハングル」自体が韓国での朝鮮文字の名称で北朝鮮の朝鮮語では「조선글/조선글자、朝鮮文字」なので中立的でないといわれることもある。
なお、日本においては韓国での言語名を「朝鮮語」ということはあっても北朝鮮の言語を「韓国語」ということは極めて稀である。言語の呼称問題は様々な理由で混沌としている(詳細は言語や自然言語を参照)。
一方、中華人民共和国は、1949年の建国から社会主義陣営に所属しており、当初から北朝鮮を朝鮮半島全体の唯一の正統政府としていた立場から、朝鮮民族の国家、民族や言語、文化に冠する呼称に「朝鮮」を使用、「朝鲜语」という呼称が使用されてきた。しかし1992年に韓国と中国が国交を樹立してからは、韓国との直接交流が進展、韓国資本の裏付けにより、韓国式の語彙や文字配列をそのまま移植した語学テキストや辞典類が「韩国语」の名称を冠して発行されるようになった。その結果「韩国语」という呼称は、新たに、中国の延辺朝鮮語とも、北朝鮮の朝鮮語とも異なる特徴をもつ、韓国のことばに対する呼称として、「朝鲜语」という呼称とともに併用されるようになってきている。
多くのヨーロッパ言語では高麗に由来するKorean(英語)等の名称を用いており、中立性の問題は提起されていない。
上記のように、漢字文化圏言語は朝鮮語または韓国語、その他は高麗から由来した名称を用いているが、唯一モンゴル語では「ソロンゴス」(Солонгос)という名称を用いている。この名称の由来については様々な異説がある。
[編集] 系統
一般的には分類上孤立した言語と見なされることが多いが、アルタイ諸語との関係、また日本語との関係もしばしば議論の的となる。学者によっては、日本語と共にアルタイ諸語に含める場合もある。
[編集] 日本語との関係
統語面では、基本語順はSOV型であり、日本語と類型論的に同じ語順を持つが(インド・イラン語派、ラテン語など世界の言語の約50%がこのSOV型)、否定や法の表現では逆位となる場合やいわゆる「かばん語」によって否定表現が一語となっているものがある。助詞で主題を表示する点は日本語と共通している。
音韻的な面では、異なる点が多いが、共通点をあげるとすれば、古い時代では語頭に流音(ラ行)・有声阻害音(濁音)が立たない点、母音調和が見られる点、母音連続を避ける点などである。これはアルタイ諸語に共通して見られる特徴でもある。
その一方で、語彙・助詞は、漢字語及び字音語を除き、奈良時代の日本語に古代朝鮮語の音訳と見られるもの(「曽之毛利」など)があったり、翻訳借用(calque, loan translation)と見られる語彙がごく少数見られるものの、一定の音韻対応によって同一の祖形にあてはまることはない。
江戸時代から、様々な側面から日本語と朝鮮語の類似性を指摘する研究者はたびたび現れている(金澤庄三郎など)。小倉進平は対馬方言と朝鮮語の関係を研究したが、対馬方言への朝鮮語の借用以上のものは見出していない。漢字の呉音は古くは「対馬音」と呼ばれ、研究者の中には朝鮮字音から直接輸入されたと考える者もあったが、河野六郎の研究などによりその重層性が明らかにされていった。
かつてのような単純な説は出されることはなくなったが、現在も様々な資料と方法によって親族関係を見出そうという研究が韓国や欧米では続けられている。音韻や語彙が大きく違うために根本的に異なる可能性が高く、同系語としての関係を考えた場合でも相当な過去にまで遡らなくてはならないと考えられる。共通点については言語連合(Sprachbund, language union、例:バルカン言語連合)の可能性も考えなければならない。
[編集] アルタイ語族
韓国の学会では、朝鮮語が孤立した言語でないとしたらアルタイ語族に属すであろうという考え方が主流である。なお、テュルク語群、モンゴル語群、ツングース語群が共通の祖語を持つアルタイ語族であるという考えは完全には証明されていない仮説である。朝鮮語はアルタイ語のうち、ツングース語族との関係が最も深いと考えられており、唯一まとまった文字資料をもつ満州語との比較研究が行われている。
[編集] 方言・変種
[編集] 標準語
朝鮮語を公用語と定めている韓国と北朝鮮は、それぞれ別々の標準変種を規定している。韓国における標準変種は「표준어(標準語)」であり、「ソウルの教養ある人々が使用する言語」と規定される。また、北朝鮮における標準変種は「문화어(文化語)」であり、「平壌の労働者階級が使用する言語」と規定される。
韓国と北朝鮮の言葉の違いに関しては朝鮮語の南北間差異を参照。
[編集] 方言
詳細は朝鮮語の方言を参照
朝鮮語の方言は大きく本土方言と済州方言に分けられ、そのうちの本土方言は西北方言(平安道方言)、東北方言(咸鏡道方言)、中部方言(黄海道、江原道、京畿道、忠清道方言)、西南方言(全羅道方言)、東南方言(慶尚道方言)の5つに分類される。韓国の標準語の基礎になったソウル方言は中部方言に属し、日本においても比較的知られている釜山方言は東南方言に属する。
- 本土方言
- 済州方言
[編集] 他言語との接触によって生じた朝鮮語の変種
- 在日朝鮮語
- 在日韓国・朝鮮人が家庭内や仲間内で用いる朝鮮語。ただし、生まれた時から日本人とほぼ同じ生活をしてきたため、語彙や発音の面で日本語の影響を強く受けている。したがって、日本人の朝鮮語学習者と同じような発音となる傾向が非常に多く、また日本語からの借用語が極めて多い(ソニン、アユミなど)。また、在日朝鮮人は慶尚道・全羅道・済州道などの南部地方出身者が多いため、中部方言であるソウル方言とは相違がある場合が多い。
- 在米朝鮮語
- 韓国系アメリカ人がコリアン・スクール等で習う韓国語。こちらは英語なまりの韓国語になる場合が多く、英語からの借用語を多く使う傾向がある。
- 中国朝鮮語
- 中国東北地区の少数民族である朝鮮族の使用する朝鮮語。四つの言語変種の中で最も本国の言葉に近く、本国人とほぼ問題なく理解しあえる。違いとしては北朝鮮、韓国でそれぞれ行われた「日本語語彙の追放」運動が無く、また1945年以降、近代文明の科学技術に関する語彙、共産主義体制における政治的用語などが中国語経由でもたらされるようになった。中国朝鮮語のうち、北朝鮮と地続きの吉林省延辺朝鮮族自治州で行われる延辺朝鮮語が最大の話者を擁する。延辺州の住民は地続きの朝鮮北部からの移住者の末裔が多数をしめるため、ベースは隣接する咸鏡道の方言に近い。そのほか、中国朝鮮族のうち、黒龍江省、遼寧省等に分布する諸集団のなかには、日本の植民地だった時期の満蒙開拓団に起源を有する朝鮮南部出身者の集落もあり、言語的にはきわめて多彩である。近年は、青島、天津などの沿海部でも使用されている。
- 高麗語 (コリョマル)
- 高麗人(旧ソ連、中央アジアに住む朝鮮民族)が用いる朝鮮語。中国朝鮮語同様、ベースは近代化以前の地方方言であり、音韻・語彙・統語全ての面でロシア語の影響を強く受けている。現在では若年層が習得することのほとんど無い、絶滅危機に瀕した言語変種である。
一般に南北朝鮮人との意思疎通の容易さは、中国朝鮮語>在米朝鮮語>高麗語 (コリョマル)、在日朝鮮語だとされている[要出典]。
[編集] 音韻
詳細は朝鮮語の音韻を参照
朝鮮語の音節は (C) V (C) の構造を持つ。
短母音は本土方言/a, ɛ, e, i, ɔ, o, u, ɯ/の八つであり、ソウル方言では/ɛ/と/e/の区別はなくなり(融合・合流)、母音音素が7つになっている。二重母音は/ɰi/のみである。母音調和は中期朝鮮語には存在したが、現代語ではその痕跡を残すだけにとどまる。
子音は破裂音/p, pʻ, pʰ, t, tʻ, tʰ, k, kʻ, kʰ/、破擦音/ʨ, ʨʻ, ʨʰ/、摩擦音/s, sʻ, h/、鼻音/m, n, ŋ/、流音/l/が存在する。破裂音及び破擦音は平音/濃音/激音が対立し、摩擦音のsは平音/濃音が対立する。
語頭においては/l, ŋ/が立つことができず、/i, j/の前に/n/が立つこともできない。音節末においては平音/濃音/激音の対立が中和され、また破擦音及び摩擦音が/t/に中和されるため、/p, t, k, m, n, ŋ, l/しか現れることがない。また音節末の破裂音/p, t, k/は内破音(無開放閉鎖音)として発音され、多くの日本語母語話者にとって聴き取りの難しいものである。
また、様々な同化規則が存在する。
[編集] 表記
詳細は朝鮮語の正書法を参照
韓国における漢字も参照
朝鮮半島に漢字が伝えられて以来、吏読や郷歌など漢字を用いて朝鮮語を表記する方法がいくつか試みられた。しかし朝鮮語と中国語の言語構造の違いから普及度は小さかった。本格的な表記が始まったのは1443年の訓民正音制定以降である。最初期の表記法は一部の例外を除いて文字を発音どおりにつづる表音主義的な表記法であった。16世紀からは形態主義的な表記法も徐々に取り入れられはじめたが、知識人の書く文章では形態主義的綴り、庶民の書く文章では表音主義的綴りが多く見られた。19世紀末期には漢字ハングル交じりで書かれた朝鮮語が文言(漢文)と並ぶ行政語の地位を獲得し、正書法も徐々に固まりつつあったがそれが根付く前に朝鮮は植民地時代へと突入することになる。
朝鮮総督府は植民地時代初期に「普通学校用諺文綴字法」(1912年)を定めたが、これはそれまでの民間の慣習的表記法を整理し成文化したものである。正書法は「朝鮮語綴字法統一案」(1933年)など更に数度の修正を経て、2006年現在、韓国では「ハングル正書法」(1988年)、北朝鮮では「朝鮮語規範集」(1966年制定、1987年改正)が用いられている。南北の正書法共通の最大の特徴は、形態主義をとることと分かち書きをすることである。朝鮮語には連音や同化などの音韻規則が豊富であり、一つの形態素が音韻的な環境によって別々の音声として現れることが多々ある。音声が異なっていても同じ形態素であれば、可能な限り同じ文字で表記しようというのが形態主義である。分かち書きの単位は日本語における文節に近いが、南北の現行の正書法では分かち書きの規定が互いに若干異なる。概して南は分かち書きを多用する傾向にあり、北は分かち書きが少ない傾向にある。
また、朝鮮語をラテン文字で表記する方法については朝鮮語のローマ字表記法を参照。
[編集] 文法
詳細は朝鮮語の文法を参照
[編集] 形態論
印欧語やセム語に見られる性・数の概念は無く、性・数・格の一致の概念もない。
- 名詞の格は格助詞によって表わされる。話し言葉では格を明示しなくても文脈上明らかであれば省略する。
- 一つの名詞が複数の格助詞をとることができる。二つの格助詞が組み合わさって新しい意味を持つこともある。
- 動詞は語幹のみでは文節を形成することができず、必ず終結語尾を必要とする。
- 動詞と終結語尾の間には時制やアスペクト、主体敬語を表す先語末語尾を挿入することができる。
- 形容詞は動詞とほぼ同じ活用をする。また、日本語のように形容詞と形容動詞に分かれていない。
- 冠形詞は名詞を修飾する不変化詞で、日本語の連体詞に相当する。
- 敬語には対者敬語、主体敬語、客体敬語の三つがあり、日本語の丁寧語、謙譲語、尊敬語にほぼ相当する。
- 名詞、助詞、動詞には敬語を表す特別な語彙(補充形)があり、敬語を表す名詞接尾辞、敬語を表す動詞(主体敬語を表す語尾先語末語尾と対者敬語を表す終結語尾)がある。
- 対者敬語を表す終結語尾は敬意の程度が6段階に分かれるが、そのうちよく使われるのは4段階のみである。
- 日本語の敬語はウチとソトの概念に関して相対的であるが、朝鮮語の敬語は序列(血縁的なものも含む)に関して相対的である。
- (母に対して)아버지께서 오셨어요.(お父さんがいらっしゃいました)
- (祖父に対して)아버지가 왔어요.(お父さんが来ました)
[編集] 語彙
朝鮮語の語彙集も参照
朝鮮語の語彙は大きく分けて固有語、漢字語(古典中国語系語彙)、外来語の三つの階層から成り立っている。特に韓国における朝鮮語の外来語のほとんどは英語であり、固有語の上に漢字語(古典中国語系語彙)と英語などの欧米系借用語の二つの上層を持つという意味において日本語やベトナム語に似た語彙構造を持っているということができる。
一層目の固有語は古来からの朝鮮語である。全ての品詞に広く分布しており、朝鮮語の語彙の核であるが、日本語と同じく基本語彙の中にも漢字語に侵食されているものがあり、その比率は日本語よりも高めである。例えば、山を表す산/san/、川を表す강/gaŋ/はそれぞれ「山」、「江」であり、元々あった山と川を表す固有語(뫼, 가람)は残存しているものの、意味の縮小と非日常語化を余儀なくされた。
二層目の漢字語は中国語由来の言葉である。まず伝統的な語彙に見られる漢語は中国との長い間の接触によって時々の中国語から直接に借用され、または国内で韓国製漢語として造語された。また日本による植民地時代には日本語を経由した漢語の借用が行われた(和製漢語の流入)。それゆえ韓国で使われる現在の漢語の字義と日本語の漢語の字義との一致率は日本語と現代中国語のそれを上回る。漢字語は名詞、動詞、形容詞に見られる。名詞はそのままとりこまれたが、動詞、形容詞は朝鮮語の活用体系に合わせるため、-하다/hada/をつけてとりこまれた。日本語において動作性漢語名詞に「~する」をつけて活用するのと同じである。
漢字の読音は日本語の場合とは異なり、ほぼ1つに統一されている。稀に一つの漢字が複数の音を持つ場合があるが、それは日本語の漢音・呉音のように複数の時代の中国音を反映しているのではなく、中国語における一字多音を反映していることが多い。例えば、悪には악/ak/と오/o/の二つの読音があるが、악/ak/は「悪い」という意味であり、오/o/は「憎む」という意味である。なおこの場合、日本語ではアク・オ、普通話では è ・ wù に、それぞれ対応する。入声は保持されているが、語末の t が l に変化している。
三層目は(漢字語以外の)外来語である。韓国においては英語、北朝鮮においてはロシア語が主な輸入源となった。外来語をとりこむ方法は漢字語に準ずる(名詞はそのまま、動詞、形容詞は하다をつける)。
それぞれの階層の語が語彙全体の中で占める割合を日本語と比べた場合、固有語と外来語は割合がやや少なく、漢字語は割合がやや高い。
その他の外来要素としては、元朝支配時代に流入したモンゴル語と植民地時代に流入した日本語がある。モンゴル語は当時はかなりの影響力があったとする学説もあるが、現代ではごく僅かな特殊語彙に痕跡をとどめるのみである。ここでいう日本語とは、和製漢語(朝鮮漢字音読み)とは区別される。例えば「勝負」は漢字を介して승부/sɯŋbu/という形でも流入し、同時に日本語音そのままで쇼부/sjobu/という形でも流入した。このようにして朝鮮語にとりこまれた日本語には、弁当、バケツ、袖(소매/somɛ/)などがあるが、韓国・北朝鮮の両方の政府はこのような日本語からの借用語を排除する政策を採ったため、現在では高齢者を中心に限られた範囲で俗語として扱われていることが多い。品詞は名詞、副詞が多く、副詞は本来の日本語が持っているニュアンスとは微妙に異なることが多い。これらの語彙は朝鮮語の語彙全体からして非常に低い割合でしかないが、日本植民地統治時代の残滓と考えられたため問題視されたのである。
韓国と北朝鮮ではそれぞれ別々に言語政策を取ったため、二つの地域では語彙にも差が見られる。詳しくは朝鮮語の南北間差異を参照のこと。中国の朝鮮語の語彙も中国語の強い影響を受けている。中国語を朝鮮語音で読んで取り入れる場合もあれば、中国語音をそのまま取り入れる場合もある。例えば、「卒業」は韓国において同じ漢字語を用いて졸업/ʨorɔp/というが、中国では「毕业(畢業)」を朝鮮語読みして필업/pʰirɔp/という。また、「コンピューター」は韓国では컴퓨터/kʰɔmpʰjutʰɔ/だが、中国では「电脑(電脳)」の発音そのままに띠엔나오/t'iennao/であるようだ。中央アジアにおいてもロシア語の動詞стрейть(建てる)から不定詞語尾-тьをとって代わりに-하다をつけて스트레이하다/sɯtʰɯreihada/とするなどのロシア語流入が行われている。
[編集] 朝鮮語に関する資格試験
- 「ハングル」能力検定試験
- 日本の特定非営利法人ハングル能力検定協会が主催する資格試験で、6月頃と11月頃(年に2回)実施される。日本の朝鮮語学習者によく知られている試験である。5級が最も低く、4級・3級・準2級・2級・1級の順にレベルが上がる。日本国内でのみ通用かつレベルアップの段階が英検とほぼ同じであるため、しばしば英検と比較対照されることがある。2006年より「準1級」が無くなった。2級と1級は、問題文など全てが朝鮮語で表記されている。なお、この試験は、解答する際に南北どちらかの言い回しに統一されていれば正解となる。また、近年の韓流ブームなどで初級受験者はかなりの増加傾向にあるが、逆に2級や1級レベルでは受験者は極端に少なく、会場に一人もいないという場合も珍しくない。2004年前後に上級の試験問題は難易度が増す一方、3級以下で各級とも合格率が90%前後にまで易化するという現象が起こった。しかし2006年に出題基準が見直され大幅な改正が行われた結果、低い級でも難易度が一気に高くなって現在に至っている。このような難易度の乱高下のため、資格としてはいささか信頼性に欠ける。
- 韓国語能力試験(通称:TOPIK)
- 韓国教育課程評価院が主催し、教育科学技術部が認定する資格試験。毎年4月と9月に実施される(韓国などでは2007年から、日本では2008年から年2回になった)。1級と2級が初級で、続いて3級と4級が中級、5級・6級が高級(上級)であり、「ハングル」能力検定試験とは逆に数字の大きい級ほどレベルが上がる。韓国・日本を含むアジアだけでなくヨーロッパ、北・南米、オーストラリアなど世界28か国で実施されている。受験者の最も多い国が中国で、2番目が日本である。韓国において外国人が大学、大学院に入学するにあたっては、この試験の成績証明書が要求される場合もある。韓国の多くの語学堂が韓国語能力試験の級と同様のクラス分けである。
- 世界韓国語認証試験(通称:KLPT)
- ハングル学会が主催する資格試験で、4月と10月に実施される。2006年までは、1月、4月、7月、10月の計4回実施されていたが2007年より年2回の実施に変更された。これは、毎回の受験者が少ないことが要因であると推測されている。評価は500点満点のスコア形式で、TOEICと同じような形態である。
- 韓国語レベルテスト(通称:KLT(Korean Level Test))
- 評価はスコア形式で、TOEICと同じような形態で1000点満点である。試験時間が90分と、比較的短時間で受験することができる。韓国や日本の他、中国やアメリカでも受験できる。2004年に始まったばかりの試験である。
ここで掲載した4つの語学試験のうち、日本でよく知られているのは『「ハングル」能力検定試験』と『韓国語能力試験』である。「ハングル」能力検定試験を除く試験は全て“韓国語”の試験とされているため、韓国における正書法以外(例:北朝鮮での正書法など)では不正解となる。
[編集] 脚注
- ^ 国立国語院. "국립국어원 누리집에 오신것을 환영합니다 (韓国語)" 2007年9月29日閲覧.
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク