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秀吉 (NHK大河ドラマ) - Wikipedia

秀吉 (NHK大河ドラマ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

秀吉(ひでよし)は、1996年1月7日 - 12月22日に放送されたNHK大河ドラマ。原作:堺屋太一、脚本:竹山洋、主演:竹中直人

NHK大河ドラマ
通番 題名 放映期間
第34作 八代将軍吉宗 1995年1月8日
〜 1995年12月10日
第35作 秀吉 1996年1月7日
〜 1996年12月22日
第36作 毛利元就 1997年1月5日
〜 1997年12月14日

目次

[編集] 作品内容と反響

[編集] 概要

堺屋太一の原作小説『秀吉』(主人公:豊臣秀吉)、『豊臣秀長』(主人公:豊臣秀長)、『鬼と人と 信長と光秀』(主人公:明智光秀と織田信長)の三作品を物語の基とし、脚本家の竹山洋自身が創作した逸話などを程よく取り入れて、ドラマ化した。

豊臣秀吉を主人公にした大河ドラマは、1965年の『太閤記』、1981年の『おんな太閤記』に続いて3作目。『八代将軍吉宗』の総集編が終わった後の予告で「これがドラマだ!」と強調、蓋を開ければ竹中直人のエネルギッシュな前向きの演技や、厳格ながらも人間味溢れる信長像を演じた渡哲也の名演、おね役の沢口靖子、秀長役の高嶋政伸、なか役の市原悦子、足利義昭役の玉置浩二千利休役の仲代達矢、光秀役の村上弘明などの脇役たちの存在感もそれぞれ光るものがあり、当初の予想を大きく上回る、平均視聴率30.5%、最高視聴率は37.4%と、過去の大河ドラマの中でも上位に位置する高視聴率を記録した。

また、石田三成役の真田広之が事あるごとに、右手で五文字を強調しながら言う決めゼリフ「心配御無用!」は、その年の流行語となった。第1話で、褌(ふんどし)の横から竹中の陰部が見え隠れしたことも、話題になった(大仁田厚演じる蜂須賀小六が竹中を担ぎ上げる場面。なおこの場面は総集編でもモザイクも入らずにしっかりと放送されている)。

一方で当時高級食品だった豆腐を百姓が食べている、当時日本にいなかったはずの犬種が出てくる、秀吉の母・なかが軍議の席にしゃしゃりでるなど、時代考証を完全に無視した描写が少なからず存在した(この傾向は、同じく竹山洋が脚本を手掛けた『利家とまつ』でより顕著になっている)。

[編集] 信長、光秀、秀長

原作の『秀吉~夢を超えた男~』を中心に、織田信長と明智光秀がそれぞれの心中を語る形で物語が展開される『鬼と人と』、秀吉の弟・小一郎秀長を描いた『豊臣秀長~ある補佐役の生涯~』という三本の堺屋太一作品をもとに脚本が書かれている。そのため本作では、秀吉の生涯を人間味を重視して描くとともに、秀吉の弟である秀長にも光が当てられている。秀長が登場する大河ドラマは『おんな太閤記』以来15年ぶりであり、『太平記』でも足利尊氏の弟直義を演じた高嶋政伸が彼の実務面での奮迅振りを好演した(ちなみに『太平記』からは沢口靖子真田広之赤井英和など多くの俳優が再登用されている)。また明智光秀も浪人時代の初回から登場し、秀吉との出会い、信長に仕官後の互いに認め合う良きライバルとしての関係が描かれている。秀吉、信長に次ぐ準主役的な扱いで、その家族・家臣もストーリーの中で大きく取り上げられている。光秀が信長に虐げられて本能寺に至るまでの過程が詳細に描かれており、村上弘明が悲劇的な光秀を好演した。総集編でも登場シーンが多く使用されたが、山崎の戦いのエピソードは省略されたため、その最期も総集編ではあっけない印象を受けるようになってしまった。秀長の死も同様に、本編では1エピソード使って描いたにも関わらず、ナレーションで伝えるのみで省略された。

[編集] 「陰」を隠した物語

織田信長の死までは秀吉の光り輝くサクセスストーリーが展開されるが、天下人となった後は朝鮮出兵千利休の切腹など、秀吉の陰の部分にも注目する展開になっている。しかし、話自体は秀吉が栄華を極めていた時期、史実からすると小一郎秀長や、母・なか(大政所)が亡くなった時点で終了し、甥・秀次一家の惨殺や朝鮮出兵の失敗などの晩年の暗い部分はカットされた。また、竹中直人の秀吉のイメージダウンを避けるためか、朝鮮出兵など晩年の秀吉の失策はみな石田三成の陰謀・讒言にされており、三成が全ての悪事の元凶であるかのように描かれていた。

※この理由としては、NHKが中華人民共和国韓国の国民感情に配慮したドラマ作りをする傾向なったからとも、渡演ずる信長の延命嘆願が殺到しスケジュールが押したからだとも言われるがさだかではない。後者に関しては『太閤記』にも同じこと(信長は高橋幸治)が起こっている。ちなみに、『太閤記』(全52回)での本能寺は第42回(1965年10月17日)、『秀吉』(全49回)での本能寺は第30回(1996年7月28日)である。

本編の最終回は、秀吉がおねのご機嫌を伺う為に大坂城で催した架空の花見と、そこに顔を出した面々(秀吉に殺される秀次、豊臣家に殉じた三成淀殿、豊臣家から天下を奪う家康ら)を華やかに描きつつ、最後には一人となった秀吉が亡き母に辞世を伝え、城の中に現出した桜に向かい一人とぼとぼと歩いていく、という彼自身と一族の最期を暗示する様なラストシーンが描かれた。ただし、総集編では描き方が変わり、ラストの印象自体が本編と総集編とでは大幅に変わったものになっている。

[編集] 「本能寺」

本能寺の変を題材とした第30回の放送では、裏番組のTBS系列でアトランタオリンピック女子マラソンが放送され、その視聴率戦争が話題になった。この影響もあり、常時30%を超えていた視聴率は26%に下がってしまった(放送日程参照)。

本能寺での信長の最期は、自ら太刀を振るっての殺陣で明智軍を震え上がらせ、燃え盛る炎の中で白装束の信長が「人間五十年」で有名な幸若舞「敦盛」の一節を謡った後、「神か…、神が死ぬか!」と叫び頚動脈を自ら斬り、大量の血を吹き出させながら絶命する という、大河ドラマ史に残る壮絶なシーンとなった。この最期は信長を演じた渡哲也自身の発案であると、後に民放番組に出演したとき渡本人が明かしている。数ある本能寺の映像作品の中で、切腹以外の方法で死ぬ信長の描写は初めてであるという。その後、頚動脈を斬る信長は2006年の『功名が辻』でも描かれた[1]

本能寺に至る理由として、本作では信長による光秀への冷遇と共に(いわゆるよく語られる国換えの他、光秀の母・美が八上城に人質に取られているにも関わらず、信長が八上城主・波多野秀治秀尚を殺害してしまう等)、信長によって長男信康と正室築山を失った徳川家康、および信長に茶道を冷遇された千利休の二人が、光秀に謀反をけしかけるという陰謀説を採用している。

また翌週の8月4日男子マラソンはNHKで放送されるため、休止の予告として放送の最後に、鎧姿の秀吉が「がんばれニッポン、心配御無用!ニカッ!」と語り掛ける特別なスポットが放映された。そのため第31話の予告はカットされた。

[編集] その他エピソード

  • 本能寺の変の放送日、ANN系列ではプロ野球「阪神 - 巨人」が放送され、NHKで秀吉が始まる8時の直前に、実況のABCテレビ武周雄アナウンサーが「間もなく8時、我々の敵はアトランタ本能寺にあり!」と言った。その後、8時を回った直後に「ここから見て頂いている方は本当のプロ野球ファン!」とコメントしている
  • オープニングは実際に京都にある秀吉の墓(豊国廟)でロケ撮影が行われたが、何故か秀吉に寄り添う犬は戦国時代安土桃山時代の日本にいないはずのパグであった。
  • このドラマで初めて秀吉の妻の名前が「ねね」ではなく「おね」として呼ばれた。この呼び名は6年後の『利家とまつ』でも引き続いて使用され、2006年の『功名が辻』でも当初は「おね」が使われる予定であった(ただし原作に即して「寧々(ねね)」となった)。
  • 番組終了後、渡哲也が大阪の舞台で大阪新歌舞伎座公演・渡哲也特別記念公演『信長』で信長役を2回演じ、一時期信長役を当たり役としていた。その後、2002年には松竹梅のCMにおいて、渡が織田信長のような役を演じてもいる。
  • また大泥棒石川五右衛門は秀吉の幼馴染のがんまくの後の姿という設定で、終盤での釜茹で処刑のエピソードに一週丸々費やした事も話題になった。この回は全シーンが処刑場のセット内で撮影されている。しかし、光秀と秀長の死と同様、このエピソードも総集編では割愛されている。
  • 本編の最終回では竹中直人演じる秀吉が花吹雪の舞う道を少し寂しげに歩く後ろ姿で終わるが、総集編の最終回では秀吉が同じ道を「さよなら!あぁ~~~!(花吹雪で飛ばされる)来年の大河ドラマ・毛利元就もよろしく!心配ご無用!」と爽やかなアドリブを入れたバージョンで完結した。奇しくも、その毛利元就役だった中村橋之助が2006年のテレ朝系太閤記の秀吉役を務めている。また、この時の信長役は本作で光秀を演じた村上弘明だった(橋之助は同じ年の大河ドラマ功名が辻』では石田三成を演じている)。
  • 消費者金融のモビットのCMで竹中直人と桃井かおりが出ていたが、竹中が本作に出ていたこともあってか、二人の格好は本作を意識した戦国時代の侍夫婦といういでたちであり、二人の姿が途中でアニメで描かれたものに変わるというものであった。
  • 秀吉の母、なかは最初から最後まで尾張弁で演じ通した。
  • 基本的に語り役は宮本隆治アナウンサーだが、所々になかを演じる市原悦子のナレーションも入り、なかの死後はおね役の沢口靖子も(かなり少ないが)語りを行った。このように語り役が三人もいるという珍しいドラマでもある。ただし宮本アナは状況説明、市原・沢口は心情説明と役割分担がされており、違和感・不自然さは感じさせない語りになっている。
  • DVD化は未だに実現していない。(信長役の渡の所属事務所の圧力と言われている)
  • ストーリーブックに収録されていたあらすじでは、明智光秀が小栗栖で死なずに天海と名を変え徳川家康に仕えたことを示唆する展開がなされていたが、実際に放映された作品では史実どおりに光秀は小栗栖で死んでいる。なお、作中で石川五右衛門が光秀の首を坂本城に届け、届けられた光秀の首を抱えてひろ子が琵琶湖へ入水自殺するという顛末となってる。

[編集] テーマ音楽、タイトル映像

出だしからアップテンポでエネルギッシュな旋律からはじまる楽曲は、主人公・秀吉がまさしく出世街道を躍進する姿を象徴するかのようであった。中盤から後半にかけては、一転して重厚でスローなテンポとなり、黄金の茶室や聚楽第などに例えられる栄華を誇った豊臣政権の様子を音で表すようなメロディで一気に完結した。軽快な要素と昔話に似合いそうな純邦楽、そしてクラシック音楽が結びついた独特な音楽は物語と時代感にマッチしていた。更に、映像では終始、百姓姿の少年が田園風景を疾走し、長い階段でひと休みしながらも再び駆け上がるなど、まるで秀吉の幼き日の姿をモデルにしたかのような人物が登場。水溜りの飛沫が金色に映えるなど、細かい工夫もある。ラストは荘厳な城の一室から一気に冒頭の農村の風景にCG処理され、少年の後姿が遠ざかってゆく様は、秀吉の辞世にもある、「夢のまた夢」を彷彿とさせるようで興味深く、歴代の作品の中でも、よりテーマ性の濃い演出であった。

[編集] あらすじ

尾張国中村の百姓の子として生まれた日吉(後の秀吉)は諸国流浪中の明智光秀に出会い、光秀に触発されて武士になる夢を抱く。

やがて織田信長の下に足軽として仕官した秀吉は、弟・秀長との絶妙なコンビネーションで一夜城の建設や竹中半兵衛の調略等に成功し、織田家中の中でめきめきと頭角を現す。

一方、一浪人にすぎない光秀の才能を嗅ぎ分けた信長は光秀を破格の厚遇をもって家臣として迎える。秀吉はそんな光秀にライバル心を燃やし、二人の出世競争が始まった。

[編集] スタッフ

  • 脚本:竹山洋
  • 原作:堺屋太一(「秀吉~夢を超えた男~」「鬼と人と」「豊臣秀長」より)
  • 音楽:小六禮次郎
  • テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
  • 指揮:大友直人
  • 演奏:ダッド・ミュージック
  • トランペット演奏:津堅直弘
  • 題字:森繁久弥
  • 語り:宮本隆治アナウンサー/市原悦子沢口靖子
  • 時代考証:小和田哲男(大河初参加作)、下山治久
  • 風俗考証:二木謙一
  • 建築考証:平井聖
  • 衣装考証:小泉清子
  • 所作指導:猿若清三郎
  • 茶道指導:鈴木宗卓、秋山宗和
  • 芸能考証:野村万之丞
  • 殺陣武術指導:林邦史朗
  • 馬術指導:日馬伸
  • 華道指導:杉本康子
  • 撮影協力:岩手県江刺市(現・奥州市)、西本願寺
  • 方言指導:芦沢孝子山崎海童(本作にも出演)、井上裕季子
  • 蹴鞠指導:小谷博義
  • 鷹匠指導:富田俊夫
  • 書道指導:小池欣仁、望月暁云
  • 剃髪指導:中川勝利
  • 制作統括:西村与志木
  • 美術:深井保夫、山下恒彦、小林喬
  • 技術:林田茂夫、八木悟、高橋邦彦
  • 音響効果:林幸夫、岩崎進、野下泰之、野村知成
  • 記録編集:阿部格、石川真紀子
  • 撮影:熊木良次、佐藤彰
  • 照明:小野寺政義、中山鎮雄
  • 音声:加村武、長谷川忠昭
  • 映像技術:太田司、吉田賢治
  • 美術進行:諏訪公夫、吉沢隆、大野輝雄、柿崎恒明
  • 演出:佐藤幹夫、黛りんたろう、柴田岳志

[編集] キャスト

[編集] 豊臣家

[編集] 豊臣家臣

[編集] 織田家

※信長の正妻の濃姫は本作に登場せず。

[編集] 織田家臣

[編集] 明智家

[編集] 諸大名・武将

[編集] その他

[編集] 放送日程

放送回 放送日 視聴率 演出
第1回 1996年1月7日 26.6% 太陽の子
第2回 1996年1月14日 29.2% 桶狭間の奇跡
第3回 1996年1月21日 33.5% 運命の花嫁
第4回 1996年1月28日 33.2% 黄金兄弟
第5回 1996年2月04日 34.6% 男の値段
第6回 1996年2月11日 35.0% 一夜城
第7回 1996年2月18日 33.7% 妻の秘密
第8回 1996年2月25日 33.2% 知らぬ顔の半兵衛
第9回 1996年3月03日 32.0% 猿のかく乱
第10回 1996年3月10日 37.4% 浮気いたし候
第11回 1996年3月17日 34.7% 絶体絶命
第12回 1996年3月24日 31.2% 比叡山焼き打ち
第13回 1996年3月31日 30.7% 極秘情報
第14回 1996年4月07日 28.4% 小谷落城
第15回 1996年4月14日 32.7% どくろの盃
第16回 1996年4月21日 33.5% 隠し子発覚!
第17回 1996年4月28日 28.0% かあちゃんと母御前
第18回 1996年5月05日 29.4% 切腹命令
第19回 1996年5月12日 31.7% 父の家出
第20回 1996年5月19日 32.4% 軍師の条件 真銅健嗣
第21回 1996年5月26日 31.2% 命の重さ
第22回 1996年6月02日 30.6% 母御前、はりつけ
第23回 1996年6月09日 36.6% 半兵衛の死
第24回 1996年6月16日 32.8% 左遷寸前
第25回 1996年6月23日 33.9% 温泉に行きたく候
第26回 1996年6月30日 33.2% 史上最大のお歳暮
第27回 1996年7月07日 31.3% 三成登場
第28回 1996年7月14日 33.5% 高松城水攻め
第29回 1996年7月21日 31.3% 敵は本能寺
第30回 1996年7月28日 26.4% 信長、死す
第31回 1996年8月11日 26.8% 天下への道
第32回 1996年8月18日 29.7% 夢を継ぐ者
第33回 1996年8月25日 29.9% 光秀の首
第34回 1996年9月01日 31.8% 女の天下獲り
第35回 1996年9月08日 33.1% 美しき刺客
第36回 1996年9月15日 29.5% 家康VS秀吉
第37回 1996年9月22日 31.8% 天子様の御落胤!?
第38回 1996年9月29日 23.9% 黄金の茶室
第39回 1996年10月06日 22.2% かあちゃん、人質
第40回 1996年10月13日 27.9% 誘惑
第41回 1996年10月27日 29.1% 決別の朝顔 黛りんたろう
第42回 1996年11月03日 25.0% 淀の子、誕生
第43回 1996年11月10日 27.2% 花戦さでござる
第44回 1996年11月17日 29.1% 秀長、逝く
第45回 1996年11月24日 30.0% 利休切腹
第46回 1996年12月01日 30.5% 母の悲しみ
第47回 1996年12月08日 25.9% かあちゃんの死!
第48回 1996年12月15日 27.3% 五右衛門、釜ゆで
最終回 1996年12月22日 27.1% 夢のまた夢 黛りんたろう
平均視聴率30.5% (視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)

[編集] 総集編

  1. 「太陽の子」
  2. 「天下布武」
  3. 「本能寺の変」
  4. 「夢のまた夢」

※総集編はNHKアーカイブスで視聴可能。

[編集] 脚注

  1. ^功名が辻』の信長役は渡哲也と同じ事務所舘ひろしである


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