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崇源院 - Wikipedia

崇源院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

崇源院すうげんいん天正元年〔1573年〕- 寛永3年9月15日1626年11月3日〕)は、天正時代から江戸時代初期の女性。お江小督(おごう)もしくはお江与(おえよ)とされるが、再婚時に改名した可能性もあり、どの名が正しいのかは確定できていない。従一位の位階を賜った際には朝廷から「達子」(さとこ)の諱を受けた。生年には異説もある。

浅井長政の三女。母は織田信秀の娘・お市(小谷の方)織田信長の妹)。長姉の淀殿(茶々)は豊臣秀吉側室、次姉・常高院(初)は京極高次正室。

最初の婚姻相手は佐治一成で、その後離縁させられる。2度目の婚姻相手は豊臣秀勝、のち死別。三度目は江戸幕府二代将軍徳川秀忠に再々嫁し、秀忠の正室継室)となる。

目次

[編集] 生涯

天正元年(1573年)、浅井長政の三女として近江国小谷(滋賀県湖北町)に生まれる。母は織田信秀の娘・お市の方(小谷の方)。

9月1日(1573年9月26日)、父・長政が妻・お市の兄・織田信長と対立し、小谷城が攻め落とされ、父・長政、祖父・久政が自刃すると母・お市、姉・茶々とともに城を逃れ信長に保護される。この時、兄・万福丸は信長の命により殺されている。

天正10年(1582年)、6月2日本能寺の変で伯父・信長が家臣・明智光秀に殺され、6月27日後継者を決める清洲会議により母・お市は信長の家臣・柴田勝家と再婚し越前国北ノ庄城へ移る。

天正11年(1583年)、賤ヶ岳の戦いで北ノ庄城が落城、勝家とお市の自害後は豊臣秀吉の元へ保護される。

天正12年(1584年)、秀吉の命により母の姉(織田信長妹お犬の方)の子・佐治一成へ嫁ぐ。だが一成が小牧・長久手の戦いで伯父・信長の跡継ぎのことで秀吉と不和になった母の甥・織田信雄織田信長次男)を擁立した徳川家康に味方したため秀吉の怒りに触れた一成は秀吉から所領を没収されるとともに離縁させられた。

文禄元年1592年、再び秀吉の命により秀吉の甥・秀勝(小吉秀勝。関白秀次弟)の元へ嫁ぎ、同年完子九条忠栄室)を産むが、文禄の役で秀勝は死去。

文禄4年(1595年)9月17日家康の三男・秀忠に嫁す(再々婚)。なお、前夫・秀勝との子である完子は長姉・茶々(淀殿)の猶子として引き取られる。

慶長2年(1597年5月26日)、千姫豊臣秀頼室、のちに本多忠刻室。池田光政室の勝姫の母で、光政の嫡男・池田綱政の母方の祖母)出産。秀頼の母は秀吉の側室となった長姉・茶々である。また、再嫁した本多忠刻の母は義父・家康の長男で秀忠の長兄松平信康と信長の長女・徳姫の娘である。

慶長4年(1599年)、珠姫前田利常室。前田光高の母で前田綱紀の祖母)出産。

慶長6年(1601年6月12日)、勝姫松平忠直室)出産。松平忠直は義父家康の次男・秀忠次兄の結城秀康(松平秀康)の長男。

慶長7年(1602年8月25日)、初姫京極忠高室)出産。京極家は次姉・お初(常高院)の嫁ぎ先。だが、忠高は常高院の実子ではなく側室の子。

慶長9年(1604年)8月12日、家光出産。

慶長11年(1606年)、忠長出産。

慶長12年10月4日(1607年11月23日)、和子出産(後水尾天皇中宮の東福門院、明正天皇母)を出産。

寛永3年(1626年)9月15日、江戸城西の丸で死去、享年54。法名は「崇源院昌誉和興仁清」。この時、秀忠・家光・忠長は上洛中であった。

寛永3年(1626年)11月28日、従一位を追贈される。

徳川将軍御台所(正室)で将軍生母となったのは後にも先にも彼女だけである。親族の死、政略や実家の跡継ぎ争いに巻き込まれた前半生とは違い、将軍御台所・将軍生母として安定した後半生を過ごした。

死後、お江与は二男・家光が増上寺東京都港区)に埋葬した。なお、お江与は身分が高かったのにもかかわらず、火葬にされている。

戦後、鈴木尚が中心となって行なわれた増上寺の徳川家墓所発掘調査の際に、崇源院の墓も発掘され、その遺骨も調査された。それによると、火葬にされており、生前の崇源院はかなり小柄で華奢な美女であったようである。

[編集] 人物像

淀殿(茶々)・常高院(初)・崇源院(江)のいわゆる「浅井三姉妹」は、「戦国一数奇な運命を辿った姉妹」として知られる。いずれも母・お市の方の美貌を受け継いだ美女で、幼い頃からたいへん仲の良い姉妹だったと伝えられる。

だが実のところ、これほど身分が高く歴史的にも重要な人物でありながら、崇源院の容貌・性格などを含めた人物像を伝える確たる史料は少ない。小説・ドラマなどでは、前述のイメージや、夫・秀忠との関係から類推して、美貌で誇り高いがヒステリックで嫉妬深い性格の人物として描かれる事が多い。が、作家永井路子は彼女を母や姉達ほど美人でもなく機転が利く訳でもないが、どんな運命に巻き込まれても平然と受け流し、その度に魅力を増していく女性という、全く別の解釈をしている。

夫・秀忠はお江与と結婚して以降、浮気はあったが正式な側室は1人ももたなかった。彼女が秀忠より年上で、嫉妬深い性格であったため、律義な性格であった秀忠は頭が上がらなかったとされるが、それだけ魅力のある女性ではあったようだ。

また、春日局との対立から、「自ら養育した」三男・忠長を溺愛し二男・家光を疎み廃嫡を企てる悪女のイメージも強い。かつては実子でもお気に入りの子だけをあからさまに贔屓するのは普通の事で、実際に三男の方を可愛がっていた可能性はあるが、近代以前高貴な女性は決して我が子に自ら授乳し育児をする事は無い(それは乳母の役目。事実、忠長にも乳母が付いている)という常識からして、それは有り得ない。「嫡子(長子)相続制」を定めた家康の政治的意図や、春日局が彼女の死後に大奥で絶対的権力を握った背景も考慮すべきであろう。

二男・家光よりも三男・忠長を可愛がったのは、忠長が母・崇源院の伯父・織田信長によく似ていたためであるという。忠長の妻は織田信長の次男・織田信雄の孫娘であり、母・崇源院がいかに織田家との血筋を重んじていたのかが伺える。家光が実母より春日局になついていた事もあり、春日局の権力拡大を止めるため忠長を重んじていたとも考えられるので、一概にお江与を批判できないのは確実である。

[編集] 崇源院を描いた作品

[編集] 関連

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