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独眼竜政宗 (NHK大河ドラマ) - Wikipedia

独眼竜政宗 (NHK大河ドラマ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

独眼竜政宗(どくがんりゅうまさむね)は、NHK1987年1月4日12月13日に放送した大河ドラマ。全50回。原作は山岡荘八の『伊達政宗』で、伊達家を題材にした大河ドラマとしては江戸時代の伊達騒動を描いた『樅ノ木は残った』以来となる。己の知恵と才覚によって仙台藩62万の礎を一代で築いた奥州の戦国武将・伊達政宗の生涯を描いた。

2004年衛星劇場CS初放送となり、その後時代劇専門チャンネルでも全50話が再放送された。

2008年3月2日から、WOWOW民放初放送を行う。

NHK大河ドラマ
通番 題名 放映期間
第24作 いのち 1986年1月5日
~1986年12月14日
第25作 独眼竜政宗 1987年1月4日
~1987年12月13日
第26作 武田信玄 1988年1月10日
~1988年12月18日

目次

[編集] 制作の前段

1984年の『山河燃ゆ』以降の大河ドラマは三年連続で近代路線シリーズが続いていた(『山河燃ゆ』、1985年の『春の波涛』、1986年の『いのち』)。時代劇路線の視聴者のためには「NHK新大型時代劇」が水曜日の枠でつくられた。

しかし近代路線シリーズは最終作の『いのち』を除き視聴率的に評判が悪く(『いのち』29.3%に対し、『山河燃ゆ』21.1%、『春の波涛』18.2%)、その一方で「NHK新大型時代劇」は良作が続き評判がよく、視聴者は時代劇を求めていると判断したNHKは1986年の『いのち』をもって当初五作を予定していた近代路線シリーズを終了し(『いのち』は視聴率的には近代路線シリーズ中で唯一成功し、ドラマ性も評価も高かったものの、登場人物に歴史上の人物が全く登場しない異色作で「大河ドラマではなく、連続テレビ小説だ」という意見もあった)、1983年の『徳川家康』以来4年ぶりに時代劇路線シリーズの大河ドラマが復活した。

[編集] 特徴

[編集] 大河ドラマ最大のヒット作

平均視聴率39.7%は、大河ドラマの歴代トップを誇っており、最高視聴率47.8%は、『赤穂浪士』(53%)、『武田信玄』(49.2%)に次ぐ第3位の記録である(2008年06月現在)。不動明王について教えられた梵天丸(政宗の幼名)がその養育係である喜多に語った「梵天丸もかくありたい」という台詞は流行語となった(本編でこのセリフが出たのはこのシーンと、第11回「八百人斬り」で政宗が刀に映った自分の顔を見て、少年時代を回想したのち、刀を振るいながらこのセリフを繰り返す場面のみ。先述の梵天丸のシーンはこの第11回の回想シーン以外にも、第26回「絶体絶命」で一揆扇動の企てが露見したために政宗が京へ弁明に向かう際の回想シーンにも出てくる)。

また2003年、NHKが放送開始50年を記念して行なった「もう一度見たいあの番組」という一般視聴者によるテレビ番組のリクエストでは、総合部門の第9位、大河ドラマ部門の第1位に輝いた。また、2005年に行われた好きな大河ドラマは?というアンケートで第1位を獲得し、放送から19年経った今でも人気は根強い。なお2004年1月3日・4日に総合テレビで、同年7月26日~30日に衛星第2テレビで総集編が本放送当時の完全ノーカット版で再放送された。

[編集] 画期的なオープニング解説

オープニング前に史実の解説などを行う手法は本作が初の試みとも言われ、以降の大河ドラマの恒例となった。

NHKでの本放送ではアバンタイトルとしてオープニング前に1987年当時の世相などを絡めて史実の解説などが行われていた。以下に具体例を挙げる。

  • 秀吉家康・政宗の年齢差を長嶋清原に置き換えて説明した。
  • 梵天丸役の藤間遼太米沢城の間取りを紹介。
  • 同じく藤次郎役の嶋英二が聚楽第の間取りを紹介。
  • 本能寺の変の説明を、過去の大河ドラマの映像から信長が自刃する場面を交えて行った(これは総集編でも見られる)。
  • 小田原攻めでの解説では、CGを使い豊臣軍20万の兵が北条軍が立てこもる小田原城を包囲している様子を詳しく説明(これも総集編で見られる)。
  • 本物の花押にしか入れていないと政宗が主張した鶺鴒(せきれい)の眼で有名なエピソードでは、当時の中曽根総理の花押を紹介。
  • 47話ではジェームス三木が仙台城大広間のセットに登場し、政宗の有名な五言絶句・「馬上少年過ぐ」の解説を行った。

しかし現在では肖像権や著作権、プライバシー保護などの面から、NHK以外での放送(CSの衛星劇場、時代劇専門チャンネルなど)ではともにカットされている。なお、DVDなどで販売されている「完全版」に関しては、このオープニング前の紹介・解説も完全に収録されている。

[編集] オープニング映像

またオープニング映像自体も大河ドラマの常識を変えた作品であった。それまでの大河ドラマのオープニングは空撮や風景の映像などを延々流す、悪く言えば退屈な映像が多かった。

本作のオープニングはアバンタイトルの映像に被せてテーマ音楽が流れ、それと共に題字が現れる。映像には終始、青色を基調としたトンネル風の背景と、馬に騎乗する政宗に扮した渡辺謙が登場。映像中盤には本物の変わり兜が使われたり、武将たちをシルエットで表現するといった、コンピューターを導入したレーザー光線や特殊効果、合成を存分に使い、大河ドラマだけでなく時代劇の常識をも超えた映像を見せた。映像のラストではスポットライトを浴びて政宗が佇む姿を映しており、これは仙台市内で見られる騎馬像とほぼ同じ構図になっている。
オンド・マルトノを効果的に用いた独特のテンポと、壮大な曲調が特徴の池辺晋一郎作曲のテーマ音楽と共に視聴者へ強烈な印象を与えたことで、大河ドラマのオープニングのなかでは現在でも人気が高い。また、他のテレビ局も含めてテーマ音楽を「伊達政宗」や「仙台」に関する映像を流すときにBGMとする例が現在でも多々見られる。

ちなみに、宣伝用のポスターにも特殊効果を用いたり、あるいはタキシード姿の渡辺謙に兜を持たせ眼帯を着けさせるなど、時代劇の枠を超える様々な工夫が施された。

[編集] 革新的な演出「遺骨映像」

もっとも斬新な演出の一つとして、伊達政宗本人の遺骨が映像として紹介された。政宗墓所・瑞鳳殿第二次大戦時の戦災で焼失、1979年に再建されたが、それに先立ち1974年に行われた発掘調査で発見されたもので、年月が経過していたにもかかわらず、奇跡的に残っており、科学的鑑定により生前の政宗の容貌・体格・血液型なども推定できた。本作ではそれらを第1話のアバンタイトルで紹介し、最終回ラストで発掘調査の映像と政宗本人の頭蓋骨を再び映して物語は幕を閉じる。

[編集] 屈折したヒーロー・政宗

このドラマの特徴の一つは,主人公が必ずしも「完璧なヒーロー」ではないことである。特に幼少時の失明による強いコンプレックス、強烈なマザコン、若い頃、野望を剥き出しにして、思い通りにいかないと妻や周囲に当たり散らし、父や家臣の助言にも耳を傾けず、秀吉に最後まで抵抗しようと試みたりと、とにかく危なっかしい青二才の印象を与えている。秀吉に服従していても一揆を煽動したり、秀次との懇意が仇となり配流の憂き目にあいそうになったりするなど、視聴者をよくハラハラさせていた。しかし、だからこそ物語後半の何かを悟ったような落ち着きと天下をきっぱりあきらめた後、天下のご意見番としての地位を確立してからの堂々とした立ち居振る舞いは、同じ俳優が演じているとは思えないほどのギャップを印象付け、人の一生の変化に強烈なインパクトを与えている。

[編集] 登場人物のイメージを重視した俳優陣

また、渡辺謙=高くはない知名度」、「勝新太郎=衆目の知るところの大御所」という図式が、そのまま「政宗=奥羽の大名」、「秀吉=天下人」にも当てはまるなど、役者の立場・イメージと演じる役の立場がぴったりという印象が強いのも特徴である。奥羽では暴れ放題であった政宗が秀吉を前に平伏する有様は、奔放に振る舞っていた若い俳優が、ベテラン勝を前にして自分の小ささを思い知らされているようであった。このシーンの収録後、渡辺は勝から「いい眼をしていたぞ…」との声をかけてもらったという。まさに「渡辺=政宗」が「勝=秀吉」に認められたという、シーンそのままの構図が実際の収録現場にも当てはまったのである。そしてその「渡辺=政宗」は次第に勝や家康役の津川雅彦とも対等に渡り合うようになり、政宗と共に渡辺も俳優として成長している様子がリアルに感じられた。

その他にも、「お東=烈女=岩下志麻」、「輝宗=優しさと男気=北大路欣也」、「小十郎=忠義者=西郷輝彦」など、役者のイメージを最大限発揮した生き生きとした演技に多くの視聴者が魅了された。また、これまでは「『赤いシリーズ』における山口百恵の相手役」としての性格が強かった三浦友和が、無骨な頑固者である伊達成実を見事に演じ、中堅俳優として脱皮するきっかけとなった番組ともいえる。

主演の渡辺謙は1984年の「山河燃ゆ」以来、2度目の大河ドラマ出演であり、本作の前年(1986年)に同じNHKで放映されていた連続テレビ小説はね駒」出演中に「眼がいい」と言われ、抜擢されたという。彼は当時必ずしも知名度のある俳優ではなかったが、本作で一躍一流スターの仲間入りを果たした。ただ、野心みなぎる政宗を好演しあまりにはまり役であったために、渡辺謙=伊達政宗 の固定イメージが定着してしまい、彼はその後苦労したようである。十数年後、渡辺は映画「ラストサムライ」でアカデミー賞助演男優賞候補に挙げられるが、その時の記者会見でも「これでようやく伊達政宗から卒業できるかな」と発言している。

渡辺は本編すべてにわたって右目を閉じた状態で出演。ただし、第11回「八百人斬り」での夢の中のシーンにて、かつ鏡に映った姿でのみ両目を開いた状態で登場している。最終話の脚本段階では、政宗臨終の幻想シーンで両目が開かれるという演出が盛り込まれていたが、本編では用いられなかった。

[編集] 大河バブルの先駆け

また、本作の大ヒットの結果、仙台市を初めとした縁の地には、東北新幹線(1982年開業)により観光客が殺到し、渡辺謙や桜田淳子が参加した仙台・青葉まつりも過去最高の観光客数となって「大河バブル」のさきがけとなった。この作品以降、各地の自治体は地元でインフラを整備したり、オープンセットを作ったりしてでも、大河ドラマの舞台地の誘致をするようになる。

しかし、本作はバブル景気(1986年12月~1991年2月)初期に放送され、好景気による国民の高揚感と、受け入れ側の仙台市の政令指定都市化(1989年)前の関連インフラ整備(仙台市営地下鉄南北線開通など)や各種イベントの開始(「青葉まつり」再開、「SENDAI光のページェント」開始、「未来の東北博覧会」開催など)等々が重なった結果であり、降って湧いたような「バブル」であった。

一方、政宗にとって最大の敵役となる最上義光があくどく描かれてしまったことや[1]、意図の有無にかかわらず各種イベントが用意されていた仙台市や宮城県側に観光客が集中してしまったことなどに、山形県の関係者らからは不満が上がった。ただし、当時は山形新幹線山形自動車道も開通しておらず、特に東北地方以外からの観光客には山形県へのアクセスが悪かった背景もある。

また、本作の「大河バブル」で特徴的なのは「時代錯誤」(時代認識のズレ)である。すなわち、本作の時代である戦国時代の伊達氏の版図(山形・福島)よりも、江戸時代の伊達氏の版図(仙台)の方が「伊達政宗ゆかりの地」のイメージが強く、それが観光客側にも受け入れ側にもあったことである。仙台は江戸時代の「政宗の城下町」、宮城県を中心とする旧仙台藩領は「伊達の国」のイメージを打ち出した観光戦略を採り、米沢市は江戸時代の米沢藩ゆかりの上杉景勝上杉鷹山に代表される「上杉の町」をアピールしており、両者とも戦国時代の歴史を観光化していない。結局、観光客は、本作前半の中心舞台となる山形県・福島県よりも、後半の十数話の舞台に過ぎないが伊達政宗のイメージが強い仙台の方に集中することになり、仙台はまさに「バブル」となった。

[編集] スタッフ

  • 脚本:ジェームス三木
  • 原作:山岡荘八(「伊達政宗」より)
  • 音楽:池辺晋一郎
  • 演奏:東京コンサーツ
  • テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
  • テーマ音楽指揮:岩城宏之
  • 監修:伊達泰宗(伊達氏34代当主、初代仙台藩主となった政宗からは18代目)
  • 時代考証:鈴木敬三
  • 風俗考証:磯目篤郎
  • 衣装考証:小泉清子
  • 殺陣:林邦史朗
  • タイトル刻字:長揚石
  • 能楽指導:喜多六平太(本編にも出演)
  • 笛・太鼓指導:福原百之助
  • 作調:杵屋正邦
  • 茶道指導:渡辺潤
  • 華道指導:杉浦共漱
  • 禅指導:細川景一
  • 協力:仙台藩志会、仙台市博物館福島県猪苗代町原町市、相馬野馬追執行委員会、日本甲冑武具研究保存会、若駒、丹波道場、劇団いろは、劇団ひまわり、鳳プロ、国際プロ
  • 語り:葛西聖司アナウンサー
  • 制作:中村克史
  • 美術:小林喬、藤井俊樹
  • 効果:高橋美紀、浜口淳二、菅野秀典
  • 技術:菊池惇二、横山隆一
  • 撮影:白井政治、後藤忠、吉岡慎悟
  • 照明:佐野鉄男、小野寺政義
  • 音声:伊藤善則、山崎彰、加村武、小林健一
  • 記録・編集:那須正尚
  • 演出:樋口昌弘、吉村芳之/西村与志木、木田幸紀、諏訪部章夫

[編集] キャスト・登場人物

独眼竜政宗の登場人物を参照。

[編集] 放送

[編集] 放送日程

放送回 放送日 演出
第1回 1987年1月4日 誕生 樋口昌弘
第2回 1987年1月11日 不動明王
第3回 1987年1月18日 親ごころ 吉村芳之
第4回 1987年1月25日 元服
第5回 1987年2月1日 愛姫 樋口昌弘
第6回 1987年2月8日 侍女成敗
第7回 1987年2月15日 初陣 吉村芳之
第8回 1987年2月22日 若武者
第9回 1987年3月1日 野望 樋口昌弘
第10回 1987年3月8日 男の器量
第11回 1987年3月15日 八百人斬り 吉村芳之
第12回 1987年3月22日 輝宗無残
第13回 1987年3月29日 人取橋 西村与志木
第14回 1987年4月5日 勝ち名乗り 樋口昌弘
第15回 1987年4月12日 めごとねこ 吉村芳之
第16回 1987年4月19日 南北の敵
第17回 1987年4月26日 宮仕え 木田幸紀
第18回 1987年5月3日 お東、居座る 樋口昌弘
第19回 1987年5月10日 大移動 西村与志木
第20回 1987年5月17日 決戦、摺上原 吉村芳之
第21回 1987年5月24日 修羅の母
第22回 1987年5月31日 弟を斬る 樋口昌弘
第23回 1987年6月7日 小田原へ
第24回 1987年6月14日 天下人 吉村芳之
第25回 1987年6月21日 人質、めご
第26回 1987年6月28日 絶体絶命 西村与志木
第27回 1987年7月5日 黄金の十字架
第28回 1987年7月12日 知恵くらべ 樋口昌弘
第29回 1987年7月19日 左遷
第30回 1987年7月26日 伊達者 吉村芳之
第31回 1987年8月2日 子宝
第32回 1987年8月9日 秀次失脚 西村与志木
第33回 1987年8月16日 濡れ衣 樋口昌弘
第34回 1987年8月23日 太閤の死 吉村芳之
第35回 1987年8月30日 成実失踪
第36回 1987年9月6日 天下分け目 西村与志木
第37回 1987年9月13日 幻の百万石 諏訪部章夫
第38回 1987年9月20日 仙台築城 木田幸紀
第39回 1987年9月27日 五郎八、嫁ぐ 吉村芳之
第40回 1987年10月4日 大船造り
第41回 1987年10月11日 海外雄飛 樋口昌弘
第42回 1987年10月18日 大阪攻め
第43回 1987年10月25日 ねこ、宇和島へ 木田幸紀
第44回 1987年11月1日 大阪夏の陣 吉村芳之
第45回 1987年11月8日 ふたりの父 諏訪部章夫
第46回 1987年11月15日 離縁状 樋口昌弘
第47回 1987年11月22日 天下の副将軍 木田幸紀
第48回 1987年11月29日 伊達流へそ曲がり 吉村芳之
第49回 1987年12月6日 母恋い
最終回 1987年12月13日 大往生 樋口昌弘

[編集] 総集編

  1. 「梵天丸もかくありたい」
  2. 「男は一生 父とたたかう」
  3. 「母の愛は海より深く」
  4. 「難波のことも夢のまた夢」
  5. 「楽しまずんばこれいかん」

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

他の言語


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