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自転車 - Wikipedia

自転車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ロードバイク
ロードバイク
マウンテンバイク
マウンテンバイク
日本のシティサイクル
日本のシティサイクル

自転車(じてんしゃ)とは、一般に、二つの車輪を前後に設置した乗り物で、乗り手自身の人力を主たる動力源として、ペダルなどによりこれを車輪に伝えて走行するものをいう。広義には二輪でないものをも指す。

自動車などと比較して、移動距離あたりに必要とするエネルギーが少ない、排出ガスが発生しないなど、地球温暖化問題が叫ばれる現在、クリーンな移動手段として見直されている。

日本における自転車事情については日本の自転車を、スポーツ競技としての自転車については自転車競技を参照のこと。

目次

[編集] 構造

[編集] 骨幹部分

[編集] フレーム

フレームは自転車を構成する上での最大の部品であり、根幹である。ハンドルやタイヤ、コンポーネントなどは含まないが、フロントフォークを含む。フロントフォークを除いた場合、「フレーム体」という。フレーム体は基本的に8本のパイプ(チューブとも言う)で構成されている。

フレームの詳しい構造については フレームを参照のこと。

フレームの形状は、基本形でありスポーツ車に多いダイヤモンドフレームのほか、シティサイクル(俗にいうママチャリ)に多く採用されているスタッガードやパラレル、U字などの形がある。主な相違点はトップチューブとダウンチューブの位置と形状で、ダイヤモンドフレームではトップチューブ、ダウンチューブともに直線的で、トップチューブは地面に平行、もしくはそれに近い。U字フレームではトップチューブ、ダウンチューブは曲線的または直線的であり、トップチューブは後方が下がるように取り付けられている。以前は、これらのチューブをラグといわれるジョイントを介して繋いでいたが、最近はチューブの端を直接溶接する繋ぎ方が多くなっている。

[編集] フロントフォーク

前輪とフレーム体の間でステアリングコラム(ヘッドチューブを貫いてハンドルまで至るフォークの上部)を中心に操舵可能なフロントフォーク。一般的には高張力鋼やステンレスなどの鉄合金、アルミなどで作られるが、スポーツ車ではチタンやカーボン繊維樹脂製のもの、サスペンション付きのもの等がある。形状としては先端まで直線的なストレートタイプと、先端が前方に湾曲しているベンドタイプがある。一般車では後者が主流。ステアリングコラムは地面に対して垂直でなく、後方に寝かせられている(キャスタ角)。また、ステアリングコラムの延長線が地面に交差する点とタイヤの接地面との距離をトレールと呼ぶ。トレール量とキャスタ角は合わせて走行時の挙動を示す指標となるが一方だけが提示される場合もある(キャスタ角は普通はコラムの角度だが、メーカーによってはステム取り付け部あたりからタイヤの接地点まで引いた線の傾きとする場合がある)。700cサイズの自転車の場合でトレールは45mmぐらいが標準的である。フロントフォークとフレーム体はベアリングを内蔵したヘッドパーツ(ヘッドセット)で結合される。ヘッドセットには、コラムに切ったネジで締め付け調整するノーマルタイプと、コラム内にナットを打ち込み上部からステムごと押し付けて調整するアヘッドタイプの二つがある。ヘッドパーツはフレーム体のヘッドチューブ(ステアリングコラムが入る部分)のパイプ径とステアリングコラムの根元部分(クラウンレースと呼びヘッドパーツのベアリング受けをはめ込む部分)で、JISサイズ、1インチ(ノーマルタイプ)1-1/8インチ(オーバーサイズ)1-1/4インチ(スーパーオーバーサイズ、フィッシャーサイズ)1-1/2インチ (OnePointFive) などの種類がある。古いものにはフレンチ規格 (35mm) など特殊なサイズのものもある。

[編集] 接点部分

人間の身体が自転車と接触する部分はペダル、サドル、ハンドルの3点である。この3点は日本では「三つのル」と呼ばれて、快適性を左右し、非常に乗り手個人の好みが分かれる部分である。主観による判断基準が多いため、技術というよりも趣向で選択する要素が多い。

[編集] ハンドル

ドロップハンドル
ドロップハンドル

操作用のハンドル。形によって、一文字ハンドル、ドロップハンドル、セミドロップハンドル、ブルホーンバーなどがある。ハンドルとステアリングコラムはステムで結合されている。

[編集] サドル

人の臀部を乗せる部分で乗り手の体重のほとんどをここで受け止める。よってサドルの相性は自転車の選択には重要である。初期には一枚革をサドルフレームに鋲で張った革サドルから始まり、現在では人間工学からアプローチをして多様なサドルが出回っている。しかし数々の革新が自転車の姿を変えてきたのにもかかわらず、サドルには基本形を大きく変える革新が起こっていない。伝統的な革サドルが現在も市場の一角を占め、愛好する人々も多い。また素材が違っていても現在のサドルのほとんどが、革サドルとほぼ同じ形状をしている。またプロの自転車選手はサドルに関しては保守的で、慣れたものを使い続けることが多く、時として所属チームの契約メーカー以外のものを使うこともある。

[編集] ペダル

なおペダルに関しては駆動部分も兼ねているので次項目の駆動部分で説明する。

[編集] 駆動部分

人間の筋力を推進力として変化させる部分。安全型自転車の確立以降、この部分に技術更新が形となって現れることが多い。

外装型変速機の外観 横型パンタグラフ式
外装型変速機の外観 横型パンタグラフ式
内装型変速機の内部構造
内装型変速機の内部構造

駆動系の部品は

の順で動力が伝わる部分と

のような動力の効率を変える部分とに分かれる。

[編集] 動力伝達部分

ペダル
最初に動力を受ける部分。人間の足の上下運動をペダルの軸が回ることによってクランクの回転運動に変化させる。競技用車両などのペダルには脚や靴をクリップ(トウクリップとトウストラップ)や専用の金具(クリート)で固定するもの(ビンディングペダル)もある。
クランク
フレームのボトムブラケットシェルを中心に回転する部分。クランクはボトムブラケット(BB、ハンガー)という軸受けによりフレームに接続され、回転運動及び左右方向の位置決めをしている。
チェーン
クランクで伝えられた動力を後輪に伝達する重要な役割をする。ローラーチェーンの原理が発明され、自転車には安全型自転車になってようやく登場し、それまでは前輪の軸がクランクと直結していた。
スプロケット
正確に言えばクランクのチェーンホイールも含め歯のついたギア板のことを「スプロケット」と呼ぶが、ここでは後輪軸についたものに限定する。チェーンで伝えられたクランクからの動力を後輪軸のハブに伝える役割をする。スプロケットには一つしかないもの(固定ギア、BMXなどのシングルスプロケット)と大小のスプロケットが重ね合わさったものがあるが、後者の中で一つの部品として束ねられているものを「カセットスプロケット」と呼ぶ。
ホイール
中心部のハブ、そこから伸びるスポーク、円形のリム、リムを固定しているニップルからなる。自転車のホイールには前輪、後輪2種類ある。
  • 前輪:フロントフォークに軸が固定され、ステアリングラムを固定したステム、ハンドルより走る方向を決める。
  • 後輪:フレーム本体に軸が固定され、動力を駆動させる。
上記の役割が決まったのは安全型自転車の登場以来で、それまでは動力の駆動と操舵双方を前輪で行っていた。現在ではリカンベントの一部のみこの方式を取られている。
ハブ
ハブには前輪用、後輪用と2種類あり、動力を伝える後輪用は固定ハブ、フリーホイールの2種類ある。
  • 固定ハブとは後輪軸とハブ本体が直径しているハブのことで、初期の自転車には使用されていた。現在ではトラックレーサーに使われる。ペダルの動きに合わせて、前転もすれば後転もする。固定ハブを使用した自転車で急にペダルの動きを止めると転倒するので注意を要する。
  • フリーホイールとは一定の方向のみペダルの動きに合わせてハブ本体が動くハブのことで、ほとんどの自転車はこのハブを使用している。
スポーク
ハブとリムとつなぐ棒状のものであり、ハブ本体とリムをつなぐ役割を果たす。スポークの先端は直角に曲がっており、先端は潰されている。もう片一方の先端はネジ状になっている。
リム
車輪の円周部分。穴が開いており、ここからニップルというナット状の細短い管でリムに開いている穴を通して止められハブ本体と固定される。またリムがタイヤをつなぎとめる役割も果たしている。つなぎとめる方法はタイヤの種類によって変わる。(自転車用タイヤを参照)
タイヤ
動力を路面に伝える部品。ここでペダルより与えられた動力は推進力となる。自転車の全てのタイヤはゴム製品でできており、走行効率、快適性において非常に重要な役割を担う。詳しくは自転車用タイヤを参考のこと。

[編集] 変速部分

自転車のギア比を変える装置のこと。自転車には必ずしも必要な機能ではないが、動力の効率を大幅に向上させるので、ほとんどの競技用自転車には取り付けられている。大まかな分類としては外装式と内装式がある。一般に内装式は「ハブギア」、外装式のものはとくに「ディレーラー」と呼ぶ。

内装変速機は後輪のハブに内蔵され、遊星歯車機構の原理によりギア比を変更する。

外装変速機はクランク、後輪のハブに取り付けられた大小のスプロケットをチェーンをずらすことによってギア比を変更する装置のことで、クランク上のスプロケットを変更させるものを「フロントディレーラー」と、後輪のスプロケットを変更させるものを「リヤディレーラー」と呼ぶ。前者は一般車には取り付けられていないことが多い。外装型は大きさが異なる複数のスプロケットの間でチェーンを移動させ、ギア比を変更する。登場当時はシャフト型とパンタグラフ型の二つの形式があったが、現在はパンタグラフ型のみ。詳しくは変速機を参照のこと。

[編集] 制動部分

推進力を制御する装置で、自転車の安全性を司る。例外的に自転車の制御は固定ハブ(後述)ではペダリングで制御する方法もあるが、ここではフレーム外部に独立した制御装置「ブレーキ」について説明する。

キャリパーブレーキ
キャリパーブレーキ

前後輪の動きを止めるために双方につけられたブレーキ。ブレーキには、ゴム製などのブレーキパッドをリム側面に押し付け、回転を止めて制動するリムブレーキ、ハブに取り付け、直接ハブの回転を止めるハブブレーキと2種類がある。

形式によってキャリパーブレーキ、カンチレバーブレーキ、Vブレーキ(シマノの商標)、インターM(通称ローラーブレーキ。内拡式ハブブレーキの改良版で、シマノの商標)、コースターブレーキなどがある。一部のスポーツ車にはディスクブレーキを採用したものもある。軽快車(いわゆる「ママチャリ」)の後輪ブレーキは安価なバンドブレーキが採用されることが多いが、ブレーキ鳴きがひどいことと水が入った時にほとんど効かなくなることから、徐々にローラーブレーキが普及しつつある。

詳しくはブレーキを参照のこと。

[編集] その他

走行機能とは関係のない装備。自転車本来の機能とは関係はないが、安全面から装着することが法令で義務付けられているものもある。

  • 前照灯・尾灯・反射器材(リフレクタ)
  • ベル
  • どろよけ(マッドガード)
  • スタンド
  • バックミラー

[編集] 部品・素材の進化

一般的な自転車の基本的な構造についてはほぼ完成されたものとなっているが、構成する個々のパーツについては素材の変化などさまざまな進化が続いている。それらは更なる速度・安全性などの要求から生まれたものであるが、自転車にもまだまだ進化の可能性が残っていることをしめしている。

  • フレームの素材
  • 車輪の変化
  • ブレーキ
  • サスペンション
  • タイヤ・チューブ
  • バルブ - 虫ゴムをなくし、空気漏れを軽減した英式

[編集] 自転車の歴史

ドライジーネ
ドライジーネ
オーディナリー型自転車
オーディナリー型自転車
安全型自転車
安全型自転車

[編集] 安全型自転車の出現まで

自転車の祖先に当たる乗り物、またその着想についてはこれまでもさまざまな説が浮上しては否定されてきた。現在ではドライジーネ (Draisine) が、実際に製作されたことが確認できる自転車の始祖とされる。これは、1817年ドイツカール・フォン・ドライス男爵によって発明された木製の乗り物で、ハンドルと前後同じ直径の二輪を備えている。クランクやペダル、チェーンといった駆動装置は付かず、足で直接地面を蹴って走るものであった。

1860年にはフランスでミショー型が発明された。これは現在の小児用の三輪車と同じようにペダルを前輪に直接取り付けたものであった。オリバー兄弟がピエール・ラルマンの発明に商機を感じ取り、ピエール・ミショーと組んで製造販売を始めた(詳細はベロシペード参照)。

1870年頃、英国のジェームズ・スターレーが、スピードを追求するために前輪を巨大化させたオーディナリー型自転車を発明。前輪は拡大を続け、直径が1.5メートルを超えるものも出現した。当時盛んに行われたレースなどスポーツ用に特化したもので、長距離のクロスカントリーライドまで行われた。しかし安定性が悪く、通常用としては乗車が困難であり、転倒すれば頭から落ちるようなものであった。日本では「だるま車」と呼ばれた。

1879年にローソンにより後輪チェーン駆動車が発明され、1884年ハンバー、マッカモン、BSAなどが後輪をチェーンで駆動し、低く長い車体の自転車を発売する。1885年にジェームズ・スターレーの甥ジョン・ケンプ・スターレーが「ローバー安全型自転車 (Rover Safety Bicycle)」の販売を開始する。車体の中心付近にペダルとクランクを設け、後輪とチェーンで連結することで動力を伝える現在の形である。このローバー安全型自転車が現在の自転車の原型とされている[1]1888年ジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを実用化。その後フリーホイール機構が発明され、現在の自転車がほぼ完成された。

[編集] 自転車の利用

オランダデンマークドイツをはじめ西ヨーロッパ諸国では自転車の利用が非常に盛んである。自転車利用の進んだ国の多くでは、平坦な地形、雨が少ないなど自転車に適した環境がある。このほか欧米諸国では、1990年代以降自転車が環境や健康にもたらす効果を重視し、自転車を都市交通の重要な担い手と位置づけている。鉄道車両などの公共交通機関にそのまま自転車を持ち込むことができる場合も多い。

[編集] 自転車と職業

自転車でパトロールするイギリスの警察官
自転車でパトロールするイギリスの警察官

自転車を使う職業の代表は郵便配達だが、英国では1880年に自転車による郵便配達が始められ、現在でも約3万7000人の配達員が自転車を利用している。また新聞配達や出前など、自転車を使う職業は多い。自転車便など、都市部における輸送手段として利用されることもある。

英国の警察1896年から自転車によるパトロールを始めた。日本の警察は自動車とバイクによるパトロールに切り替えているが、交通渋滞の激しい都心部では自転車の機動性を鑑みてあえて自転車によるパトロールをおこなっている場合もある。国によっては交通渋滞の多い都市で自転車パトロールを復活させるところもある(アメリカではニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの各市警に「バイシクルユニット」という専従のチームがあり、「POLICE」のマーキングを入れた警察専用のMTBも製造されている)。

[編集] 自転車と軍隊

米空挺レンジャー制式車PARATROOPER(オプション装着車)
米空挺レンジャー制式車PARATROOPER(オプション装着車)

自転車が戦争に利用されたのはボーア戦争が始まりで、英軍・ボーア軍ともに斥候に自転車を使った。第一次世界大戦ではドイツ軍、フランス軍が軍隊の移動に自転車を利用した。第二次世界大戦ではイギリス陸軍空挺部隊が輸送機内でかさばらない折り畳み自転車を使用していた。日本軍は日中戦争で5万人の自転車部隊を動員し、マレー半島攻略作戦でも銀輪部隊が活躍した。スイスの軍隊では長期にわたって自転車部隊を存続させた。また、北朝鮮には現在も自転車部隊が存在する。現在も航空自衛隊の災害救助の現場で折り畳み自転車が使われている。

[編集] スポーツとしての自転車

詳細は自転車競技を参照

競走に使用できる物が発明されると、競技が行われるようになるが、自転車もさまざまな形の競技が行われている。また各競技に最適化される形で自転車の構造も細分化されてきている。

[編集] さまざまな形態

用途によりさまざまな種類の自転車が作られている。

[編集] 一般用

日常用途のための自転車。

[編集] スポーツ用

競技以外のスポーツ用に使われる車種。主にサイクリングを楽しむことを主眼において設計され、走行性能が高くなっている。競技用車両とは違い、走行には関係のない二次的な要素(快適性、積載能力など)が加味されて設計されている。

[編集] 特殊な自転車

特殊な機能、用途のためにほかの自転車と異なる形状あるいは機能が附随している。

[編集] 競技用

自転車競技に使われる車種。それぞれの競技に最適化して、特有の機能を盛り込んでいる。

[編集] 性能

自転車による移動は生物と機械の両方の中で、その移動に要するエネルギーの量に関して突出して効率的であり、人間がある距離を移動するのに必要なエネルギーの量で比べると自転車がもっとも効率的な機械であることが実証されている。自転車で1kgの物体 (車体を含む) を1km移動させるのに必要なカロリーは、おおよそ自動車の6分の1、徒歩の5分の1、ジャンボジェット機の4分の1程度しか必要ない (瀬戸圭祐『自転車生活スタートガイド』あとがき)。特にロードバイクやリカンベントの場合はさらに必要カロリーが少なくなる。

[編集] 速度記録

平地での単独走行での最高到達速度記録はカナダのサム・ウィッティンガムが2002年にカウリング(風防)をつけたストリームライナーで達成した130.36km/hで、これは人力駆動の乗り物による自力最高速度記録でもある。なお、下り勾配での重力加速度を利用したケースでは2007年8月オーストラリアのマルクス・ストエケルがマウンテンバイクで達成した210km/hが記録されている。平地での公式最高速度記録は1995年10月3日オランダのフレッド・ロンベルバーグが記録した268km/hである。これは、一時的に自転車が高速鉄道に匹敵する速度に達したということを示すものである。ただし、この記録達成に当たっては、前方に風よけ板を付けた車を走らせ、スリップストリームに入り込んで走るという策が用いられた為、自転車単独での純粋な能力を示す記録とは言い難い。

[編集] 脚注

  1. ^ 自転車博物館サイクルセンター シマノによる運営。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ


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