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コンポーネント (自転車) - Wikipedia

コンポーネント (自転車)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コンポーネントとは、とくにスポーツ目的の自転車を構成する主要な部品群をまとめて呼ぶ名前となっている。普通、略してコンポと呼ぶ。英語では『グループセット (Groupset) 』という呼び名が一般的である。コンポーネントにはグレードごとにブランド名があり、同じフレームを使った完成車でも、コンポーネントをいくつかのグレードで用意し、完成車に価格差をつける事ができる。

ここでは主にロードレーサー、マウンテンバイクに使われるコンポーネントを前提として述べる。

目次

[編集] 歴史

この呼び方は本来、シマノが1970年代後半に導入した自転車部品セット販売のためのシリーズのことである。以前は自転車を構成する部品である、クランク、変速機、多段ギア、ハブなどの部品は、各専門メーカが開発・作成・販売しており、完成車メーカは、部品メーカの製品を選択し組み付け製造していた。しかし、ギアやチェーン、変速機などの革新に従い、それぞれの互換性に問題が出ていた。また、部品を発注する側の観点からも、デザインがそろい、互換性問題が少ないセット物での販売は好ましいこともあり、その後の自転車部品はコンポーネント(カンパニョーロでは『グループセット』と呼ぶ)という形で販売されるようになって来たのである。コンポーネントという呼び方は、自転車の構成部品を称する名前ではない。

初期のコンポーネントとして売られていたものは、

などがあったが、現在のシマノのコンポーネントではステムやシートピラー、ヘッドパーツは含まれていない。自社製品をなるべく多く完成車メーカに買ってもらうための戦略がコンポーネントという売り方だった。

シマノのコンポーネントという売り方が功を奏したため、各メーカもこぞって自社製品をシリーズ化し、シマノと同じような売り方をはじめた。ただ、カンパニョーロは同じ名前を使いたくなかったのか「グループセット」と呼んでいる。最初の島野工業のコンポーネント・シリーズはDURA-ACEであるが、変速機は以前から売られていたCraneであった。その後はグループごとに開発が進み、グループごとに特徴があるコンポーネントへと進化していく。

[編集] 各社のコンポーネント

コンポーネントメーカー、つまり自転車部品を広範に作ることが出来るメーカは非常に少ない。現存しているののは前述のシマノとカンパニョーロとSRAMだけである。以前は、日本の前田工業(サンツアー)、イタリアのジピエンメ、レジナ、フランスのマビック、スイスのエドコ、スペインのゼウスなどからもセット販売があった。またイタリアのミケ等のように他社(カンパニョーロ)のパーツと組み合わせてコンポーネントを構成するメーカーも存在する。またMTB用パーツメーカーとして有名なSRAMが、2007年から独自コンポーネントの販売を開始した。この他にコンポーネントを構成しない単体のパーツメーカーは多く存在しており(ブレーキレバー及びキャリパーのダイヤコンペ(吉貝機械金属)、ギヤシステムのスギノテクノなど)、これらのパーツだけを組み合わせてロードレーサーを作成することも可能である。

[編集] カンパニョーロ

イタリアの老舗メーカー。日本語ユーザでは略して『カンパ』、英語でも略して『Campy』と表される事が多い。車輪の脱着を容易にする「クイックリリース」を発明した会社。戦後から変速機でリードを取り、現在でもコンポーネントを製造している。1980年代に低迷していた時期もあったが、いまだに自転車競技では絶対に欠かす事のできない存在で、ツール・ド・フランスなどの世界各国のレースで使用されている。特に最高級コンポーネント「Record」は長年のレースでの実績を背景としたブランドにおいて突出した存在である。現在の傾向としてはチタンやカーボンなど多くの新素材を積極的に採用することによって、変速性能面で優位に立つシマノに重量で対抗している。なおカンパニョーロはマウンテンバイクの部品も一時期製作していたが、現在ではロードレーサーの部品のみである。コンポーネントのブランドは以下の通りである。

  • Record
  • Croce D'Aune
  • Chorus
  • Centaur
  • Veloce
  • Mirage
  • Athena
  • Xenon

[編集] シマノ

日本のメーカーである。1980年代より頭角を表し、マウンテンバイクの急速な進歩によって現在では世界の最高級部品を製造するメーカーとして存在している。マウンテンバイクの部品ではほぼ独占に近い存在で、1990年代からはロードレーサーの部品でほぼ独占状態だったカンパニョーロと競合するようになり、現在では少なくとも日本国内での売り上げにおいてカンパニョーロを完全に追い越している。とくに「STI」の開発によりカンパニョーロより一歩抜きん出た存在となり、正確な操作機能には定評がある。高品質・低価格であることから世界中で発売されているロードレーサーの多くはシマノのパーツを採用している。最上位機種の「DURA-ACE」は軽量ながらも抜群の耐久性を誇り、レースからトライアスロンまで、幅広く利用できる。ツール・ド・フランスで前人未到の7連覇をしたランス・アームストロングは「DURA-ACE」を使用している他、各賞受賞者の使用率が高い[要出典]ことからも、信頼性の高さがうかがえる。

[編集] ロードレーサー

[編集] マウンテンバイク

  • Saint:ダウンヒル競技用
  • Hone:フリーライド用
  • SLX:フリーライド用

[編集] SRAM(スラム)

アメリカのメーカーである。主にマウンテンバイク用のコンポーネントを展開していたが2007年からロードバイク向けの製品も展開するようになった。マウンテンバイク用製品ではグリップを回すことで変速するグリップシフトが有名でだったが現在はシマノに近い指でレバーを押して変速するタイプに変更している。マウンテンバイク市場ではシマノの圧倒的優位に対して一部の好事家の心をつかみある程度のシェアを確保している。ロードバイク市場では競合するシマノ、カンパニョーロの製品と比較してこれといったアドバンテージが無いにもかかわらず高めの価格設定をしていることから小売市場では一部のマニアにしか受け入れられていない。しかし一部のマスプロメーカーの完成車に採用されていることから僅かながらシェアを確保しつつある。またプロチームに供給するなどしてブランド力強化に取り組んでいる。

[編集] ロードレーサー

[編集] マウンテンバイク

[編集] 前田工業(サンツアー)

サンツアーは、90年代の初めまでは、シマノと並ぶ一大ブランドであった。現在シマノやカンパニョーロの後変速機に使われている、斜めに移動する構造「スラントパンタ」はサンツアーの特許であった。しかし、MTBの爆発的普及による部品需要の急増に対応出来なかったことによりシェアを奪われ、現在では生産されていない。ブランド名はのちに合同した栄輪業ごと、台湾のメーカーに「SR Suntour」として引き継がれたが、日本では非常にマイナーである。

旧サンツアー製品は真面目かつ独創的なもの造りの姿勢や、性能面でもシマノに勝るとも劣らない面を持っていたことから、現在でも一部の愛好家に支持されており、特に最上位機種であった「Superbe Pro」は根強い人気がある。特筆すべきは使用されている素材の質が極めて良好であった事で、同時代のシマノ製品と比較して格段に良質な素材、仕上げを実現していた。塗装仕上げされていたデュラエースに対し、無塗装で磨き上げられ、金属の輝きで魅せるSuperbe Proは、自転車パーツとして一つの頂点を極めていた。しかしその過剰なまでの理想主義が経営と結びつかなかったことが悲劇的であった。「機能(Function)のシマノ、品質(Quality)のサンツアー」と言えよう。90年代半ば、会社倒産に際し整理品が投売りのような形で廉価販売されたが、現在ではネットオークションで高値で取引されている。

  • Superbe Pro
  • SL(旧名Sprint)
  • Olé
  • Cyclone
  • GPX

[編集] ロードレーサーのコンポーネントが二社にしぼられた理由

かつては多くのメーカーが製造していたコンポーネントであるが、現在は三社のみが製造しており、事実上シマノカンパニョーロの二社で市場を独占している。ここまでメーカーが減少した理由は、シマノとサンツアーによるシェア争いによるところが大きい。

80年代の初めまでは、前2段、後ろ5段といったところが変速機の主流であった。シフトレバーもフリクションタイプ(無段階)、ダウンチューブに取り付けられたレバーを操作するというものであった。また、日本での高級品のシェアはサンツアーが優位であった。そこにシマノが82年、SIS(Shimano Index System、カムを組み込んだステップドシフトレバー)を投入、初めは「子供のおもちゃ」といわれ敬遠されたが、初心者、経験者問わず容易な操作性が評価され、徐々に支持を集めるようになった。更にシマノは、多段化(84年には後ろ8段に)などを成功させ、シェアをのばしていった。決定的だったのは90年のSTI(Shimano Total Integration)コンセプトを打ち出し、その製品群の中で革新的なアイテムとなったデュアルコントロールレバー(手元のブレーキレバーともう一本のレバーを横に倒すことによって変速できる)の投入である。これにより手元でのシフトチェンジが可能になり、操作性が大幅に向上、従来からのものに比較して重量面でのデメリットがあったものの、結果的にはプロのレーサーからも圧倒的な支持を得ることになった。

カンパニョーロは後年、デュアルコントロールレバーと同じ機能を持った「エルゴパワー」を投入し、シェアを維持した。これに対して、サンツアーはコンポーネントαシリーズや「Olé」にインデックスシステム「AccuShift」を投入。またノーマルブレーキレバーの横にウイングナットのような形状のシフトレバーを取り付け手元変速を可能にする「コマンドシフト」を発表したもののそこまでで、またその他のメーカーは技術革新について行けず、シェアを落とし、ついには生産を停止してしまった。

しかし2005年の秋になってこの状況に変化の兆しが見えてきた。これまでMTB用のコンポーネントを供給してきたSRAM社が2006年末からロード用コンポーネント、FORCE、RIVALの市販を開始したほか、2007年のプロチームへの供給を発表した。後発の利点を生かした機構・デザインを盛り込んでおり、シマノ、カンパニョーロに続く第三の勢力として一定のシェアを確保することも考えられる。しかし、2007年の段階では生産コストの都合からか、二大メーカーに比べて高価であり、大きく市場に食い込むまでには至っていない。

[編集] 現在のコンポーネント

レースで使う機材としては前2段、後ろ9段という変速機が一般的であった。2004年頃から後ろ10段が台頭し、2005年頃からは後ろ9段は廉価モデルでしか用いられなくなった。2007年からは、カンパニョーロはすべてのグレードにおいて後ろ10段となった。変速を行う方法も、旧来のフリクションタイプ(摩擦でレバー位置を決める)の変速レバーから、シマノが導入した、インデックスタイプへと完全に移行されている。

変速レバーの位置も、以前はフレームのダウンチューブに取り付けるダブルレバーが一般的であった。ドロップハンドルのバーエンドに取り付けるバーエンドコントロール(略称:バーコン)もシクロクロスなどで用いられていたが、現在ではブレーキレバーと変速レバーが一体化されたデュアルコントロールレバーを使用するのが一般的である。これにより走行中にハンドルから手を放す必要がなくなり、悪路や登坂路でも変速が容易となるほか、レースの高速化にも貢献している。また初心者でも扱いやすくロードレーサーへの敷居を低くした効果は大きい。

ダブルレバーはシマノ、カンパニョーロとも製品ラインナップには残っているが、最新のロードレーサーフレームではダブルレバー用台座が用意されていないものも多いため、利用できない場合がある。シンプルかつ軽量なため、変速頻度の低い前変速機用の左側のみブレーキレバーとダブルレバーを組み合わせて利用する選手がいるなど、一部に根強いファンも多い。(ツール・ド・フランスを7連覇したランス・アームストロング選手も山岳ステージではフロントのみダブルレバーに変えていたことで知られる。)

[編集] 参考


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