フラットバーロード
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フラットバーロードとは、ロードバイクをその特徴的なドロップハンドルをフラットバーハンドルに変更した自転車のこと。ただし、純粋なロードバイクのフレームではない、専用設計のフレームを使ったものでも、その趣向が前記のものに非常に近い場合はフラットバーロードと呼ばれる。しばしばクロスバイクと混同、あるいはその1ジャンルとして認知されることもあり、明確な区別は無い。メーカーにより、スピードバイク、メッセンジャーバイク、コミューターなどともよばれる。
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[編集] 歴史
ロードバイクのハンドルをフラットバータイプのものに交換するということは以前から可能であり、特にロードバイク用デュアルコントロールレバー(ブレーキとシフターを統合したもの)が一般化する前は、技術的にも容易であった。また、ラインナップとして、バーハンドルやドロップハンドルを含む複数の種類を用意するメーカーやビルダーもあった。ただ、こうした改造はさほど一般的なものではなかった。
日本では、映画『メッセンジャー』を始め、雑誌やテレビドラマなどの小物としてフラットバータイプのハンドルをロードバイクのフレームに装着した自転車がマスメディアに登場するようになったこともあり、ドロップハンドルに抵抗感のある人々や、頻繁なストップ&ゴーを繰り返す都市部での移動が多い人々を中心に普及していった。
[編集] 特徴
その成り立ちから分かるように、フラットバーロードはいわゆるクロスバイクとは異なり、ハンドルとシフターを除くほとんどの部分がロードバイクそのものである。ただ、スペシャライズド社のシラス・シリーズやジャイアント・マニュファクチャリングのエスケープ・シリーズなどMTB系の部品を使用したクロスバイクが爆発的に普及した2007年現在では、そうしたものをフラットバーロードに含める見方も存在する。また、通常のドロップハンドルを装着したロードバイクが競技を前提に設計されているのに対し、フラットバーロードは街乗りを前提に設計されている。レース用ウェアに抵抗感のあるユーザーや通勤通学に利用したいユーザーを意識し、服を汚さないためにMTB競技などで用いられるバッシュガードやチェーンガードなどを装備する例も多い。
[編集] フレーム
- ドロップハンドルとフラットバーハンドルを比較した場合、握り位置はフラットバーハンドルの方が体に近くなる。そのためドロップハンドルの車体での巡航姿勢と同様のポジションを確保するためには、フレームのトップチューブ長かステム長を通常のロードバイクより長くする必要がある。メーカーによってはドロップハンドルのモデルと共通のフレームを使っていることもあるが、このようなモデルでは長めのステムが使用される。またMTBやクロスバイクのようなアップライトなポジションを前提としたフレーム設計になっているものもある。
[編集] ホイール
- 基本的には一般的なロードバイクと同じ700Cのホイールを装着するような設計となっている。女性用、あるいは小さいサイズのものでは650C、26インチHEのものが用いられるモデルもある。市販の状態ではワイヤードオン用のホイールが装着されていることが多いが、チューブラー・タイヤ用のホイールも無改造で装着可能である。
[編集] タイヤ
- 市販の状態では25C、28Cのタイヤといった比較的太めのタイヤが装着されていることが多いが、細めの23Cや21Cを採用しているものもある。
[編集] ブレーキ
- 基本的にはロードバイクなので、デュアルピポット・キャリパーブレーキを使用することが多いが、安価なものではシングルピボットのサイドプル・キャリパーブレーキが装着されている場合もある。
- カンチレバーブレーキやショートアームVブレーキを採用したモデル(スペシャライズド社のシラス・シリーズなど)をフラットバーロードに含める事もある。クロスバイクとフラットバーロードを分けて考える場合、2007年現在ではドロップハンドルのロードバイクにキャリパー以外のブレーキを装着することがあまりないため、通常キャリパーブレーキを装着したモデルのみをフラットバーロードに含める。
[編集] ハンドル
- 一般的にはアルミ、カーボンなどを用いた、ストレートなバーハンドルが使用される。バーハンドルはドロップハンドルとは異なり、ハンドルの変更でポジションを変えることは実質不可能であるので、専らアヘッドステムとクロスカントリーMTB用のハンドルの組み合わせが用いられる。MTBに比べるとハンドル周りの剛性を求められないので、角度を自由に調節できるタイプのステムが用いられることもある。リフレクターやベル、ライトなど保安装備(多く標準装備)のスペースを確保するため、ハンドルは標準で広めに取ってあることが多い。
[編集] コンポーネント
- 基本的に駆動系はロードバイクである。しかし、街中でのゴーアンドストップも考慮してスプロケットは大きめであり、ロー側で26Tや27T、28Tというものも珍しくない。クランクセットはコンパクトクランクやトリプルクランクの採用率が高い。2007年現在では各コンポメーカーがフラットバーロード用のシフターセットを販売しているので、それを利用する事例も多い。
[編集] クロスバイクとの相違点について
基本的に、クロスバイクはオフロードでの走破性能とオンロードでの巡航性能を両立させるための車種で、もともとフラットバーロードとはコンセプトが異なっている。
しかし、MTBを700C(ロードバイクで用いられてきたホイール径)化し、軽量フレームを採用したクロスバイクと、ロードバイクのハンドルをフラットにし、それに合わせて各部の仕様を変更したフラットバーロードでは、構成・性能が似通ったものとなってしまっているのも事実である。また、クロスバイクにしろフラットバーロードにしろ近年になって出現した分野であり、絶対的な基準というものは存在しない。
ただ、「使用しているブレーキの種類(サイドプル・キャリパーブレーキか、ショートアームVブレーキやカンチレバーブレーキか)」「純正装着されているタイヤの太さ」「キャリア用ダボの有無」「採用されているコンポーネントがロードバイク用かMTB用か」などに注目することで、そのモデルがロードバイク・ベースのものなのかMTBベースのものなのかを大まかに判別することは可能である。
一般的に言えばフラットバーロードはクロスバイクよりも車重が軽く、高速走行に向いている。一方クロスバイクはフラットバーロードよりも路面状況を選ばずに走ることが出来、泥よけやキャリアも容易に装着出来るという利点がある。