反米
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反米(はんべい、英:Anti-Americanism)とは、アメリカ合衆国に対して文化的あるいは政治的な反感を持つこと。
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[編集] 素地・理由
反米となる素地はさまざまであり、その理由もさまざまとなる。かつては全体主義・共産主義を掲げる独裁者がアメリカの民主主義やユダヤ主義に対する反発から反米になっていたが、第二次世界大戦後の現在における主な反米の原因は、アメリカが「世界の保安官」(「世界の警察官」)を自認し「資本主義(自由主義)陣営の防衛」を名目に、諸外国に対し軍事・経済他多様な分野で介入などを行なっている事などである。
実際アメリカの先進的な文化に憧れを抱く人々も多いが一方で、冷戦時代における中南米諸国への軍事クーデター支援などによる反共的な独裁者・軍事政権に対する支援、冷戦終結以降のアラブ諸国・イスラーム諸国に対する軍事介入や「民主化」(=アメリカ化)要求に対する反発は根強い。冷戦時代には共産主義を理念とした大国(ソビエト連邦・中華人民共和国)が、各国の市民団体や反戦団体を反米運動の隠れ蓑として利用していたケースもある。
なお、現在においては、オサマ・ビンラディン率いるアルカーイダなどのイスラム原理主義の過激派勢力が最も先鋭な反米グループであるとされている。
[編集] 日本に於ける反米感情
日本に於ける反米意識は、以下の要因によるものである。
- 黄色人種が人類(白人)に不幸をもたらすという黄禍論
- 戦間期の排日移民法問題
- 戦時中のABCD包囲網やハル・ノートなどの日本への挑発
- 無差別な戦略空襲や原子爆弾の使用などのアメリカの戦争犯罪行為
- 東京裁判の判決やGHQの占領政策における逆コース
- 上記のようなアメリカの15年戦争への関与や、従軍慰安婦問題などの日本の戦争犯罪など、先の大戦をめぐる歴史認識の対立(アメリカ合衆国下院121号決議など)
- 主権回復後の暴力団や右翼を利用した学生・労働運動の弾圧[要出典]
- 沖縄県や奄美諸島・小笠原諸島に対する事実上の植民地政策的統治
- 在日米軍将兵の犯罪(ジラード事件、沖縄米兵少女暴行事件、横須賀殺人事件)
- アングロサクソンの価値観に基づいた捕鯨問題
- 京都議定書への非調印など環境問題での国際協調に反する態度
- アフガニスタン戦争やイラク戦争など米国の覇権主義・侵略行為やそれに対する追従要求
- 日米地位協定や年次改革要望書など日本政府への内政干渉的諸要求
- 米軍への資金提供の強要(思いやり予算)
- 親中派や共産主義者の立場などの党派的な問題
- BSEの食肉輸入再開問題
反米意識は、主に反米保守(真正保守)派・青年民族派右翼・左翼・新左翼などの思想の持ち主に多い。
また、歴史認識や捕鯨問題をめぐる対立は、アメリカ側においても反日感情・意識を呼び起こす要因となっている。
[編集] アメリカの反応
世界の反米感情に対してのアメリカ人の認識は様々であるが、一部に存在するこのような反米感情に対する感情的な反発、無理解や無知、身勝手な解釈をメディアが取り上げ報道することが、さらに反米感情を煽る結果になっている。
[編集] 具体的な反米事例とその原因となる事件
「反米」は、アメリカの国力の増大とそれに伴う他国への軍事的・経済的介入の増加に従い歴史に登場する。
- アメリカ独立戦争における宗主国イギリス(大英帝国)との対立
- 1812年米英戦争後のカナダ
- メキシコとの戦争によるカリフォルニア、テキサスなどのメキシコ北部の帝国主義的侵略
- フィリピンの植民地化、軍事基地化
- 太平洋西部における日本との覇権衝突。広島、長崎への原子爆弾投下と都市への爆撃
- 冷戦時代のソ連、東ヨーロッパ諸国との緊張関係
- 朝鮮戦争の際の爆撃と、以降の北朝鮮との緊張関係
- イランのモハンマド・モサッデク政権をCIAがクーデターで倒す(en:Operation Ajax、アーバーダーン危機も参照)
- キューバ危機以降のキューバへの経済制裁
- ベトナム戦争時の腐敗した南ベトナムへの軍事的支援と北ベトナムとの戦争と北爆
- チリの民主的に誕生したアジェンデ政権に対する軍事クーデター、およびその後のピノチェト独裁政権への援助
- ニカラグアのソモサ及び親米右翼ゲリラ「コントラ」への支援、サンディニスタ派政権への抑圧(イラン・コントラ事件も参照)
- イランとの1979年のイスラム革命後の関係悪化
- パレスチナ問題への偏向的介入とイスラエルのみを善と見做す二重基準
- 1980年代のジャパンバッシング
- 『麻薬戦争』と称するパナマへの軍事介入、指導者マヌエル・ノリエガ将軍の逮捕・拘留
- リビアへの、テロ支援国家と指定しての空爆
- 1992年に行われたソマリアへの軍事介入
- 98年アジア経済危機における被害国への画一的なIMF型経済政策の押し付け、及び日本が呼びかけたAMF構想への妨害・圧殺
- 98年のアフリカ駐留公館爆破に対する報復を口実とした、スーダンとアフガニスタンへの巡航ミサイル攻撃
- アメリカ同時多発テロ以降の『対テロ戦争』を称してのアフガニスタンのタリバーン政権に対する武力行使、関連してイラクのサダム・フセイン政権に対する武力行使と政権打倒
- イラク武装解除問題において国連にて査察の継続を訴えた前後のフランス、ドイツ、ロシア、中国との対立
- 民主化を要求しながらイスラム諸国の腐敗した絶対王政を支援する二重基準へのイスラム国民の反発
- 金大中政権以降、太陽政策と反米政策を取る大韓民国との摩擦
- ベネズエラのウゴ・チャベス政権に対する内政干渉とその後の対立
[編集] 反米思想の著名人
[編集] 外国人
- アドルフ・ヒトラー
- ヨシフ・スターリン
- ニキータ・フルシチョフ
- 金日成
- 金正日
- 毛沢東
- サッダーム・フセイン
- ムアンマル・カッザーフィー(※2007年現在、反米政策は終息中)
- ヤセル・アラファト
- アヤトラ・ホメイニ
- アリー・ハーメネイー
- マフムード・アフマディーネジャード
- フィデル・カストロ
- エボ・モラレス
- チェ・ゲバラ
- ウゴ・チャベス
- サイド・サイード
[編集] 日本人
その他、言論の自由が許される先進国においてはハリウッドスターをはじめ多くの俳優・歌手、あるいは一部のアメリカの著名人やアメリカ国内の市民団体が現代アメリカの諸海外政策を非難することがある。一方で、アメリカでは政治的な発言によって訴訟を起こされる危険性を伴うため、インタビューのような公式の場においては政治的なコメントを一切しないという芸能人も多い。