独裁者
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独裁者(どくさいしゃ)とは、独裁政治において国政を一人で操ることができる人物である。いくつもの権力が集中している人物を指す言葉とも言われる。
[編集] 概説
近代に入って、法律上国民または有識者に選ばれた形になっているが、現実には一人の人物に権力が集中し、その者が国政を操っている状態を独裁制、そしてその権力が集中した人物のことを独裁者と呼ぶ。
多数決の原則によるとされる民主主義であるが、多数派の意見を尊重するがゆえに、大衆迎合主義に堕す可能性が常にある。また実際の政策を決める際には多くの話し合いや手続きを要する。
独裁制は、独裁者が有能な場合は多数派意見による民主制より高所に立った合理的判断をすることができ、また民主主義に付き物の数々の煩雑な手続きが無くなるため、目的を達成する効率が良い。実際にトルコ共和国の初代大統領ケマル・アタテュルクの様に、後世でも称えられる独裁者もいる。
問題は独裁者の判断が偏狭または不合理であっても、それを止める方法が合法的に存在しないことにある。システムとしての独裁制には、独裁者の暴走へのチェック機能が存在しないことが問題点となり、常に暴政に変貌する危険を秘めている。
独裁者が暴政を行った場合、その国は非常に不安定となる。またそうなった場合、その国全体が人の命の危険に晒される。それは独裁者も例外ではない。独裁国家の場合、独裁者本人(つまりその国のNo.1の人間)は常に政敵からの暗殺の危険に怯えなくてはならない。独裁者に次ぐ人間(No.2やNo.3の人間以下政権中枢の人間)は常に独裁者からの粛清の危険に晒される。
そして、そういった暴政には多くの場合言論の自由の侵害が付き物である。報道機関は管制され、一般国民も自由に意見を述べる権利が大幅に削られることが多い。
独裁者は一般的に民族や国家を自分と同一視させる。そして自分に反対する者を民族、国家の裏切り者として弾圧する傾向にある。また、国民の不満を逸らすためにも意図的に反対派や少数民族を弾圧することも多い。そのように独裁者によって引き起こされた悲劇は、粛清、民族浄化など枚挙に暇が無い。イギリスの政治家ウィンストン・チャーチルは独裁制に魅力を感じる風潮を戒め、次のように述べている。「民主主義は最悪の政治体制といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除いた場合だが。」
英:Dictatorの語源共和政ローマの官職の一つ、独裁官(どくさいかん、羅:dictator、ディクタートル)は国家の非常事態に任命され、6ヶ月間に限り、国政を一人で操ることができた。 紀元前44年、ガイウス・ユリウス・カエサルは自らを終身独裁官に任命したことにより、共和政は解体し、一人支配が常となる帝国に似た元首政が誕生する礎となった。
独裁者と専制君主の違いは諸説あるが、独裁者は選挙や委任などで選出された人物であり、専制君主は世襲や軍事力で地位についた人物であるという分け方がある。ただし独裁者の中には、明らかに世襲や軍事力で地位についた、実質上の専制君主と言える者も存在する。ただしそれら独裁者は、不正選挙、あるいは議会の議決を暴力で強制するなど、多数意見を反映しているという偽装を行っているケースが多い。
[編集] 集団による独裁
特定個人が国政を握るのではなく、特定集団が国政を握る寡頭制による独裁もある。独裁者として扱うか意見が分かれている歴史上の人物については、「独裁権力を持った集団の第一人者に過ぎない」という場合がある。