巡航ミサイル
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巡航ミサイル(じゅんこうミサイル - Cruise missile)とは、飛行機のように翼とジェットエンジンを装備し自律的に飛行するミサイルのこと。一言で言えば「飛行する爆弾」である。
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[編集] 特徴
・主翼を備えており、一定の揚力を利用しながらジェットエンジンで飛行する。通常のミサイルが姿勢制御用の小面積ラダーのみ備え、純粋にロケットエンジンの推進力のみで浮いているのと著しい相違をなす。このため大射程を得ることが比較的容易であり、数千kmに及ぶ有効射程を持つミサイルもある。
・一般に弾体が大きく、搭載する炸薬量も多いため威力に優れる(通常爆弾・核爆弾いずれも装着可能)。また大スペースを利用した高性能の制御機器を内蔵するため、着弾位置の精度が比較的高い。
・発射場所は、陸上、水上(艦船)、水中(潜水艦)、空中(航空機)など多岐にわたる。
[編集] 巡航ミサイルと軍事衛星
巡航ミサイルは、対地ミッションにおいても飛行の初期段階においては、目標地点の緯度経度さえ分かっていれば、専ら慣性誘導と電波高度計によりセンサで得られた情報だけで飛行可能である。が、敵の制空圏内に入ってから撃墜されないためには、レーダーで捕捉されないよう低い高度をとる必要があり、高速度で飛んでいるためセンサによるリアルタイム情報だけでは地上の構造物などを避け切れない。よって、最新且つ詳細な地表地図情報(稜線や崖、送電線や鉄塔などの位置情報)を予め入力しておく必要があり、この地表情報を得るには軍事衛星等による偵察が必要とも言われる。よって、敵領域の奥深くを確実に攻撃できる巡航ミサイルを運用できるのは偵察衛星網を持つ国々に限定される、ともされる。
ただし、最近は、自国で偵察衛星網を保有していなくても、民間企業から高精度の衛星画像等を購入することが可能なので、実際のところどの程度まで上記のような限定があるのか、不明確である。 また途中でレーダーで補足され数割程度撃墜されてもかまわないということであれば、多少高めの高度を飛ばせば、地表情報無しで敵国の深部を巡航ミサイルで攻撃可能であるし、相手がよほどの大国でなければ、そもそも巡航ミサイルをレーダーで補足し撃墜する能力を全く備えていない国のほうが多い。また、海岸線近くの都市を攻撃するのには地表情報は必要ない。さらに対地ミッション以外ならば、もとより地表地図情報は無くても行うことができる。
[編集] 日本の巡航ミサイル保有に関する動き
技術的には、日本は巡航ミサイルの開発の前提となる諸技術は全て備えているので、比較的短期で開発は可能であるとされるが、専守防衛等の観点もあって、実際には不明である。開発となれば、88式地対艦誘導弾(SSM-1)等といった国産の対艦誘導弾をベースにして、射程延長や誘導装置の対地用転換等を実施しながら開発していくものと推測される。
日本では平成16年の新大綱、中期防衛力整備計画時に射程300キロの巡航ミサイルの導入が検討されたが、公明党の反発により見送られている。
2007年11月7日に行われた第10回日米安全保障戦略会議にて玉沢元防衛庁長官がボドナー元米国防副次官に対して「中国の膨大な数のミサイルを考えた場合、発射されたこれらすべてを撃ち落とすことは不可能。ミサイル攻撃を受けた場合、まず重要施設をミサイル防衛で防護し、すかさず米軍機による相手発射施設の破壊を期待するより他ない。今後、わが国の防衛力を高めるには戦術抑止システムの配備を検討しなければならない」と延べ、具体的には「巡航ミサイルだ。米国の協力を得てわが国も保有したい」と述べた。
同会議に於いてレイセオン社は日本に対してトマホーク の導入を提案している。
日本の周辺では、中国、ロシア、韓国、台湾が巡航ミサイルを保有している。
[編集] 歴史
世界初の巡航ミサイルは第一次世界大戦時にアメリカで開発されたケタリング・バグである。 初めて戦争で使用された巡航ミサイルは第二次世界大戦時にナチス・ドイツで開発されたV1飛行爆弾である。V1はパルスジェットエンジンを用い、イギリス本土の攻撃に用いられた。詳しくはそちらの記事を参照のこと。 ドイツ敗戦後、この飛行爆弾の研究およびそれに携わっていた人は西側、東側どちらにも流れ、それが双方ともにほとんどすべてのミサイル技術に適用されていくようになった。米国ではV1の破片などを鹵獲、研究し、命中精度を上げる研究を特に熱心に大戦末期に行っていた。この頃、「巡航ミサイル」という言葉の概念がまだなかったため、ニュース映画などでは「ロボット爆弾」などと呼ばれていた時期もあった。
二次大戦後は米ソとも巡航ミサイルを開発したが、ソビエトが一連の核弾頭搭載の大型対艦ミサイルをシリーズ化したのに比較して、アメリカは専用潜水艦から発射する核弾頭搭載の戦略巡航ミサイルレギュラスを実用化したほかは、実験試作の範囲を出るものではなかった。 その後、SALTの制限に囚われない投射手段としてトマホークが開発され、核弾頭、非核弾頭、対地、対艦ミッション等バリエーションを増やし、冷戦以降は「ならず者国家への挨拶状」代わりに多用されるようになる。
[編集] 巡航ミサイル一覧
[編集] アメリカ合衆国
項目名 (制式番号、名称)
- レギュラス (RGM-6)
- Snark (SM-62、Snark)
- ハウンド・ドッグ (AGM-28、Hound Dog)
- ALCM (AGM-86B/C、ALCM/CALCM)
- トマホーク (BGM-109、RGM-109、UGM-109、Tomahawk)
- AGM-129 ACM (AGM-129、ACM)
[編集] ロシア連邦(ソビエト連邦)
ハイフン以降はDoD番号とNATOコードネームを表す。
- Kh-55 グラナト(Granat) - AS-15 ケント(Kent)。
- 3K-10 - 同潜水艦発射型。SS-N-21 サンプソン(Sampson)。
- RK-55 - 同地上発射型。SSC-X-4 スリングショット(Slingshot)。
- Kh-90 - AS-19 コアラ(Koala)。
- Kh-65
- Kh-101/102
- Kh-555
[編集] フランス共和国
[編集] 中華人民共和国
- 紅鳥3 (HN-3)
- 天箭1 (TJ-1)
- 東海10 (DH-10)
[編集] 台湾
[編集] 大韓民国
- 天竜
- 若鷹
- 玄武III A
- 玄武III B
- 玄武III C:日本のほぼ全域と中国沿岸部の大半が射程内に入ると見られる。
[編集] パキスタン・イスラム共和国
[編集] 国際共同
- ブラモス (PJ-10 Brahmos) (ロシア・インド)
- TAURUS KEPD 350 (ドイツ・スウェーデン)
- Storm Shadow (イギリス・フランス・イタリア)
[編集] 個人
- ブルース・シンプソンによる個人製作。2006年現在も製作中。
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
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