ALCM (ミサイル)
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AGM-86 ALCM Series | ||
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概要 | ||
用途 | 長距離スタンドオフ攻撃 | |
開発・製造者 | ボーイング | |
寸法 | ||
全長 | 4.32 m(A型) 6.32 m(B/C/D型) |
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胴体幅 | 69.3 cm | |
翼幅 | 3.65 m | |
重量 | 908 kg(A型) 1,458 kg(B型) 1,750 kg(C型 ブロック0/1A) 1,950 kg(C型 ブロック1) | |
動力 | ||
エンジン | F107-WR101 ターボファンエンジン 1基 |
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推力 | 2.7 kN | |
性能 | ||
最大巡航速度 | 800km/h | |
射程(推定値) | 1,760km(A型) 2,500km(B型) 1,200km(C型) | |
弾頭 | W-80-1熱核弾頭 1~150kt(A/B型) 2,000lb-910kg 通常弾頭(C型 ブロック0) 3,000lb-1,450kg 通常弾頭(C型 ブロック1) 1,200lb級-540kg 貫通弾頭 |
ALCMは Air Launch Cruise Missile の略であり、直訳すると、空中発射巡航ミサイルとなる。
制式採用名称はAGM-86で、SRAMの後継ミサイルとしてアメリカ空軍が長距離攻撃スタンドオフ兵器として採用している兵器である。
目次 |
[編集] 開発経緯
ALCMは極めて特異な開発経緯を持つミサイルである。
アメリカ軍は1960年代に、ADM-20クエイルの後続となる亜音速武装化囮の計画をスタートさせ、研究を開始したが、このプロジェクトは1973年6月時点で中止された。しかし、その開発した囮技術を流用して、空中発射型の巡航ミサイルを開発する案が提案され、翌月7月には開発がスタートした。
こうして開発されたのがAGM-86Aで、1975年6月に初めての投下試験が行われ、翌1976年3月5日には飛翔試験が、同年9月9日には完全な誘導飛行試験を成功させた。
[編集] 制式採用
このようにして開発されたAGM-86Aだが、制式採用はされなかった。
続いて開発されたのが、AGM-86Bで、これは全長を2m延伸し、射程を延ばした型である。このAGM-86Bが米空軍の空中発射巡航ミサイルとして制式採用され、1981年4月から空軍への引渡し(試験機完成は1979年)が始まっている。主契約者はボーイング。
[編集] 外観
ALCMはもともとデコイ(偽標的、囮)として開発されたため、飛行機のような形をしており、主翼、尾翼を備え、大きさもきわめて大きい。三角断面の機体をもち、その下には展開式の主翼がある。この主翼は投下後に伸張され、揚力をミサイルに与える。
誘導には最後尾の水平尾翼(これも展開式)を用いて誘導を行う。この水平尾翼のみが動翼となっており、主翼および垂直尾翼には動翼がない。また上部には固定式の安定用垂直尾翼と、ジェットエンジンの空気取り入れ口をもつ。
[編集] 発射プロセス
ALCMの運用が可能な航空機はB-52G/HとB-1Bである。両機とも、機内8発・機外12発の計20発の搭載能力を持つ。B-1BについてはB型の搭載・運用能力を有し、搭載試験は行われたものの、ALCMの実運用は行われていない。そのため、実運用はもっぱらB-52G/Hによって行われている。ミサイルは発射されると、本体下の主翼を展開し、対地高度135mまで落下する。その後、F107-WR-101ターボファンエンジンが点火され、飛翔誘導を開始する。
AGM-84A/Bでは、慣性航法装置と、TERCOMという地形照合航法装置を使い、アップデートを行いつつ目標へと向かう。AGM-86C/Dの場合はこれらにGPSを加えている。
[編集] 実戦での使用
もちろん核弾頭搭載型のAGM-86A/Bは実戦での使用経験はないが、通常弾頭を搭載したAGM-86C Block1は湾岸戦争の時、アメリカ空軍のB-52に搭載されて出撃し、発射され、85%以上が目標に命中したと言われる。
[編集] 派生型
AGM-86シリーズは、核弾頭搭載型のAGM-86A/B(前記したとおりA型は不採用)のほかにも数々の派生型が存在する。
[編集] AGM-86C ALCM (CALCM)
AGM-86Bに搭載されていたW-80-1熱核弾頭を通常弾頭 (2,000lb 900kg) に置き換えたもので、1986年から極秘裏に開発が行われた。1988年から配備が行われた。以後、ALCMの通常弾頭型は、CALCM(Conventional Air Launch Cruise Missile)と呼ばれている。
1996年からは改良型のGPS、改良型弾頭を使用したタイプが生産され、これらはAGM-86C ブロック1と呼ばれる。また、このブロック1のGPSチャンネル数を8チャンネル(より多いチャンネルを持つほうが、電波妨害に強く、高精度で信頼性が高い)に増やしたブロック1Aも存在する。
[編集] AGM-86D CALCM
AGM-86C ACM (CALCM) の能力向上型で、弾頭を貫通弾頭にし、航法装置にディファレンシャルGPSを採用したもの。