南風 (列車)
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南風(なんぷう)とは、四国旅客鉄道(JR四国)が岡山駅~高知駅・中村駅・宿毛駅間を、宇野線・本四備讃線(瀬戸大橋線)・予讃線・土讃線・土佐くろしお鉄道中村線・宿毛線経由で運行するエル特急。
また本稿では、下り土佐山田駅~須崎駅間、上り高知駅~土佐山田駅間で運行する臨時特急列車ウィークエンドエクスプレス高知についても記述する。
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[編集] 運行概況
[編集] 運転本数
[編集] 使用車両
現在は、2000系気動車・N2000系気動車(いずれも振り子式)が2~4両編成で運転されている(多客時には最大8両)。一部列車は宇多津駅で「しまんと」・「うずしお」との分割・併合も行われる(多客期には「しまんと」を併結せず単独運転となる時がある)。
「しまんと」併結時、下り基準で「南風」が先に宇多津駅に入る。
[編集] 停車駅
岡山駅 - 児島駅 - (宇多津駅) - 丸亀駅 - (多度津駅) - 善通寺駅 - 琴平駅 - 阿波池田駅 - 大歩危駅 - (大杉駅) - 土佐山田駅 - 後免駅 - 高知駅 - (旭駅 - 朝倉駅) - 伊野駅 - 佐川駅 - 須崎駅 - 土佐久礼駅 - 窪川駅 - 土佐佐賀駅 - (土佐上川口駅) - 土佐入野駅 - 中村駅 - 平田駅 - 宿毛駅
- ()内の駅は一部列車が停車。
- 「しまんと」併結時、大歩危駅・大杉駅において駅ホームの長さが不足するためドアカットが行われる。
- 土佐上川口駅において、駅ホームの長さが不足するためドアカットが行われる場合がある。
[編集] 列車番号
- 列車番号は30D+号数である。
[編集] 利用状況
- 高知自動車道の開通や、1998年(平成10年)に土讃線の繁藤~新改間で発生した路盤崩落で約3か月間不通になったことで乗用車や高速バスに利用者が流れ、また、高知空港~伊丹空港間の航空便がボーイング737やエアバスA320などの小型ジェット機からDHC-8-400プロペラ機に機種変更されて増便されたことや、高知~京阪神間だけでもJRバスグループのJR四国バス・西日本JRバスや土佐電気鉄道・高知県交通・阪急バス・神姫バス・京阪バスの運行する高速バスが合計26往復(2007年5月現在)運行されており、これらとのシェア争いもある。その対策として、2000系車両にアンパンマンのキャラクターを描いた「アンパンマン列車」を運行したり、京阪神方面の利用回復を狙った「阪神往復フリーきっぷ」などの特別企画乗車券の発売、岡山駅での新幹線接続の改善などを行い、減少には一応の歯止めがかかってきている。しかし、高知道開通前に比べるとかなり落ち込んでおり、同じく四国と本州を結ぶ特急「しおかぜ」(宇和島・松山・伊予西条~岡山間)と比べると利用者は4割程度となっている。
- 高知駅~岡山駅間には高速バス(龍馬エクスプレス)も運行されており、所要時間はこの列車と同じか少し短い約2時間30分であり、運賃に関しても高速バスとほぼ同額で利用できる往復割引のトクトクきっぷがあるものの、四国山地を3kmを越える長大トンネルを何本も掘ってほぼ一直線で貫く高知道に対し、昭和初期の土木技術で造られて小さなトンネルでくねくねと山を越し、吉野川を縫うように進む土讃線では振り子式の2000系気動車を導入して高速化を進めたが、それでも高速バスの利用客には及んでいないのが実情である。
- 比較的長距離を走る特急列車であるが、車内販売は廃止され、清涼飲料水の自動販売機はグリーン車のみに設置されている。弁当や雑誌などは、乗車前にあらかじめ買っておくか高知駅で数分間停車する間に買うしかない。また、カード式の公衆電話がかつては2000系グリーン車のデッキに設置されていたが携帯電話の普及等による利用減少のため、現在は撤去されている。
[編集] 車窓風景
- 四国への玄関口・始発の岡山を出発してから、高知県の最西端・終点の宿毛まで、所要時間はおよそ4時間40分、新幹線を使えば、岡山から宇都宮まで行くことのできる時間である。走行距離は318km、岡山からだと大垣までの距離に匹敵する。長距離を走るだけあって、車窓も様々に変化する。岡山を出て約30分後に渡る瀬戸大橋から眺める瀬戸内海の多島美、ため池となだらかな小山が点在する讃岐平野、琴平を過ぎ、讃岐山脈を猪ノ鼻トンネルで超えると徳島県三好市の町並みを眼下に眺めつつ山を下り吉野川を渡る。この後は吉野川に沿って四国山地に分け入り、真下に小歩危・大歩危峡、急峻な山の上にへばり付くように建つ家々が見える。この辺りは急なカーブが連続し振り子式車両は左右に何度も傾く。高知県に入り、大杉を過ぎると吉野川と別れ、四国山地を小さなトンネルを幾つもくぐって越えると、米の二期作も行なえる南国、香長平野に入り、15分ほどで高知に到着する。高知を過ぎると、土佐和紙の町伊野や漁業基地のある須崎を過ぎ、トンネルをいくつか抜けると、窓いっぱいに太平洋が広がる。窪川からは土佐くろしお鉄道に入り、それから約1時間で、終点宿毛に到着する。
[編集] ウィークエンドエクスプレス高知
金曜・土曜のみ運行する臨時列車で、高知駅を起点としてまず土佐山田駅まで運行し、折り返し高知駅を経由して須崎駅まで運行する。それぞれ1本ずつの運行である。車両は「しまんと9号」として高知駅まで運行されるN2000系気動車3両編成を充当。全車自由席の設定で、ヘッドマークは「臨時」となっている。ちなみに土佐山田行きの運転距離は15.3㎞で、博多南線を除くJRグループの特急列車としては最短となっている(毎日運転の特急列車の最短は、徳島駅~阿南駅間運行の「ホームエクスプレス阿南」の24.5㎞)。
この列車が最初に運行されたのは2006年12月の金曜・土曜である。この年の8月25日に起こった福岡海の中道大橋飲酒運転事故で飲酒運転が社会的な問題になった中、忘年会シーズンに合わせて土佐山田行き、須崎行きとも本来の最終列車の後に運行された。利用客からは概ね好評であったため、2007年3月1日からは日曜・休日を除く毎日運転の臨時列車「ホームエクスプレス高知」として運行された。この列車は運行期間を延長しつつ2008年3月14日まで運行されたが、3月15日からは名前を「ウィークエンドエクスプレス高知」に戻し、運転日も最初の金曜・土曜のみとなった。
停車駅は、土佐山田行きが高知駅 - 後免駅 - 土佐山田駅。須崎行きが土佐山田駅 - 後免駅 - 高知駅 - 旭駅 - 朝倉駅 - 伊野駅 - 佐川駅 - 多ノ郷駅 - 須崎駅である。
なお「ホームエクスプレス高知」時代は土佐山田行きに接続する形で、土佐くろしお鉄道阿佐線(ごめん・なはり線)の臨時普通列車が後免駅から安芸駅まで運行されていたが、「ウィークエンドエクスプレス高知」に変更したのと同時に廃止された。
[編集] 沿革
- 1950年(昭和25年)10月1日 高松桟橋駅~須崎駅間を運行するSL牽引の客車準急列車として「南風」の名称が使用された。
- 1958年(昭和33年)11月1日 「南風」運転区間を窪川駅まで延長。
- 1962年(昭和37年) 「南風」上り列車のみキハ58系により気動車化され、スピードアップする。これにより高松桟橋駅~高知駅間の所要時間は、3時間41分となる。
- 1965年(昭和40年)10月1日 「南風」急行列車に格上げ。急行「黒潮」を統合して2往復となる。
- 1966年(昭和41年)10月1日 急行「浦戸」を吸収して「南風」3往復となる。
- 1968年(昭和43年)10月1日 高松駅~窪川駅間急行の名称を「あしずり」に変更し、「南風」の名称を西鹿児島駅(現・鹿児島中央駅)・宮崎駅~鹿屋駅間を運行する急行列車に使用。→にちりん_(列車)も参照されたい。
- 1972年(昭和47年)3月15日 「南風」キハ181系による特急列車として、高松駅~中村駅間に1往復登場。「しおかぜ」とともに、四国初の特急列車設定。
- 1975年(昭和50年)3月10日 「南風」3往復に増発。
- 1986年(昭和61年)11月 「南風」キハ185系投入。併せて4往復に増発。
- 1988年(昭和63年)4月10日 「一本列島」のキャッチフレーズで行われたダイヤ改正により、「南風」瀬戸大橋線経由岡山駅発着に変更し、3往復に増強。これに伴い、従来の高松駅発着列車は「しまんと」に改称。
- 1989年(平成元年)3月11日 このときのダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
- キハ181系、キハ185系特急の瀬戸大橋での減速運転開始、一部列車は児島駅を通過するようになる。
- 「南風」2000系試作車「TSE」を岡山駅~高知駅間1往復の臨時列車として投入。1990年夏までにTSE2000系が故障や試験、検査などで運用を外れたときはキハ185系2両または3両編成が代走で使用された。
- 7月 「南風」2往復増発、5往復に。土讃線の速度向上により所要時間が10分程度短縮された。TSE2000系の代走のキハ185系運転の際は「南風5号」が坪尻駅で「南風52号」の通過待ちをするなど、一部ダイヤの変更が行われるようになった。
- 1990年(平成2年)7月30日 一部列車に2000系量産車を先行投入。ダイヤは従来のまま。
- 11月21日 「南風」1往復増発、6往復に。2000系量産車を増備。4往復が2000系での運行便となり大幅にスピードアップされる。2往復はキハ185系を使用し、キハ181系の「南風」がなくなった。
- 1991年(平成3年)11月 2000系量産車を増備。「南風」1往復増発され、7往復に。全列車が2000系になる。
- 1992年(平成4年)7月 「南風」全列車が児島駅停車になる。
- 1993年(平成5年)3月 「南風」1往復増発され、8往復に。
- 1997年(平成9年)10月1日 「南風」土佐くろしお鉄道宿毛線開業により一部列車が宿毛駅発着となる。
- 1998年(平成10年)3月 多度津駅~高知駅間で「しまんと」と併結となる列車が2往復設定され、2往復増発、10往復に。
- 1999年(平成11年)3月 「南風」、「しまんと」の併結がなくなり全列車が単独運転となる。
- 2001年(平成13年)3月3日 岡山駅~宇多津駅間で岡山駅~徳島駅間運転の「うずしお」と併結となる列車が2往復、多度津駅~高知駅間で「しまんと」と併結となる列車が下り3本、上り2本設定される。2往復増発し、12往復に。
- 2002年(平成14年)3月 「しまんと」と併結・分割を宇多津駅に変更する。
- 2003年(平成15年)10月 宇多津駅~高知駅間で「しまんと」と併結となる列車が上り2本増え、下り3本、上り4本に。2往復増発し、14往復に。
- 2005年(平成17年)3月2日 宿毛駅構内にて「南風17号」(JR四国2000系気動車3両編成)が暴走し先頭車と中間車が大破、乗客・乗員合わせて11人が死傷(土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故)。これにより宿毛駅~中村駅間が運休となる。
- 2007年(平成19年)3月18日 宿毛駅発着の列車が下り2本、上り1本となる(削減分は中村駅乗り換えの普通列車で対応)。
- 2008年(平成20年)3月15日 健康増進法第25条により、喫煙ルームを除き全車両禁煙となる。
- 同時に下り終発時刻の繰り下げも実施。
[編集] 備考
- 「南風」の愛称名は、運行区間や列車種別の違いこそあれ、新設されてから定期列車として最も長く使われている。