三島由紀夫賞
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三島由紀夫賞(みしまゆきおしょう)は、新潮社が主催する三島由紀夫を記念した文学賞。新潮社は新潮社文学賞(1954-67年)、日本文学大賞(1969-87年)を主催してきたが、それに代わるものとして1988年に創設。略称は「三島賞」。対象は当初、小説(特に純文学長編)・評論とされたが、小林秀雄賞の創設に伴い小説のみとなった。選考会は5月中旬頃。選考委員は任期制で5年ごとに入れ替わる。
三島は新潮社と付き合いが深く、書き下ろしの小説を何冊も出し、晩年は『豊饒の海』四部作を『新潮』に連載した。没後は新潮社から全集が出され、小説と戯曲の多くが新潮文庫に収録された。文庫において文藝春秋に優位を保ちつつ、文学賞の権威において同社に勝てない新潮社が、芥川賞・直木賞に対抗して打ち出したのが、本賞と山本周五郎賞である。
芥川賞に比べ、純文学以外のジャンル出身作家の受賞も多く(舞城王太郎、古川日出男など)、芥川賞ではあまり評価されない現代文学的な作品にも賞を与えるのも特徴である(高橋源一郎、中原昌也など)
目次 |
[編集] 来歴
[編集] 第1期
第1回(1988年)
- 受賞作:高橋源一郎『優雅で感傷的な日本野球』
- 候補作:井口時男『物語論/破局論』、朝吹亮二『OUPS』、松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』、小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』、中沢新一『虹の理論』、佐伯一麦『雛の棲家』、岩森道子『雪迎え』、高瀬千図『『嵐の家』、島田雅彦『未確認尾行物体』、山田詠美『風葬の教室』、吉本ばなな『キッチン』(海燕新人文学賞受賞作)
- 解説:最終候補に全12作が残る大混戦で花々しく幕が開け、票はばらけた。大江と江藤が高橋に入れる。高橋は賞金の100万円を全額日本ダービーにつぎ込み、一瞬にして使い果たす。
第2回(1989年)
- 受賞作:大岡玲『黄昏のストーム・シーディング』
- 候補作:富岡幸一郎『内村鑑三 偉大なる罪人の生涯』、いとうせいこう『ノーライフキング』、中村和恵『内陸へ』、長野まゆみ『少年アリス』、島弘之『感想というジャンル』、佐藤泰志『そこのみて光り輝く』
第3回(1990年)
- 受賞作:久間十義『世紀末鯨鯢記』
- 候補作:荻野アンナ『ドアを閉めるな』、島田雅彦『夢使い レンタルチャイルドの新二都物語』、鷺沢萠『果実の船を川に流して』、奥泉光『滝』、比留間久夫『YES・YES・YES』
第4回(1991年)
- 受賞作:佐伯一麦『ア・ルース・ボーイ』
- 候補作:松村栄子『僕はかぐや姫』、矢作俊彦『スズキさんの休息と遍歴』、いとうせいこう『ワールズ・エンド・ガーデン』、芦原すなお『青春デンデケデケデケ』(第27回文藝賞受賞作)、奥泉光『葦と百合』
- 解説:同年7月、芦原は『青春デンデケデケデケ』で直木賞を受賞した。
[編集] 第2期
選考委員:石原慎太郎、江藤淳、高橋源一郎、筒井康隆、宮本輝(中上は1992年死去)
第5回(1992年)
第6回(1993年)
第7回(1994年)
- 受賞作:笙野頼子『二百回忌』
- 候補作:伊達一行『妖言集』、松浦理英子『親指Pの修行時代』(女流文学賞受賞)、別唐晶司『メタリック』、島弘之『小林秀雄 悪を許す神を赦せるか』、柳美里『Green Bench』
第8回(1995年)
- 受賞作:山本昌代『緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道』
- 候補作:飯嶋和一『雷電本紀』、保坂和志『猫に時間の流れる』、阿部和重『アメリカの夜』(群像新人文学賞受賞作)、三浦俊彦『蜜林レース』、山城むつみ『文学のプログラム』
[編集] 第3期
選考委員:青野聰、石原慎太郎、江藤淳(第10回は欠席。第10回まで)、筒井康隆、宮本輝
第9回(1996年)
- 受賞作:松浦寿輝『折口信夫論』
- 候補作:石黒達昌『94627』、水村美苗『私小説 from left to right』(野間文芸新人賞受賞)、角田光代『学校の青空』、辻仁成『アンチノイズ』、野中柊『ダリア』
第10回(1997年)
第11回(1998年)
第12回(1999年)
- 受賞作:鈴木清剛『ロックンロールミシン』(河出書房新社)、堀江敏幸『おぱらばん』(青土社)
- 候補作:東浩紀『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』(新潮社) (サントリー学芸賞受賞)、大塚銀悦『久遠』、辻征夫『ぼくたちの(俎板のような)拳銃』、赤坂真理『ヴァニーユ』
- 解説:筒井は東の『存在論的、郵便的』を絶賛するが、他の委員から「難解過ぎて分からない」「学術書を文学賞の候補に入れるのはおかしい」と拒否される。
[編集] 第4期
選考委員:島田雅彦、高樹のぶ子、筒井康隆、福田和也、宮本輝
第13回(2000年)
- 受賞作:星野智幸「目覚めよと人魚は歌う」(『新潮』2000年4月号)
- 候補作:角田光代『東京ゲスト・ハウス』、デビット・ゾペティ『アレグリア』、伊井直行『服部さんの幸福な日』、宮沢章夫『サーチエンジン・システムクラッシュ』
第14回(2001年)
- 受賞作:青山真治『ユリイカ EUREKA』(角川書店)、中原昌也「あらゆる場所に花束が……」(『新潮』2001年4月号)
- 候補作:大鋸一正『緑ノ鳥』(河出書房新社) 、佐川光晴『生活の設計』(新潮社)、黒川創『もどろき』(新潮社) 、堂垣園江「ベラクルス」(『群像』2001年2月号)
第15回(2002年)
- 受賞作:小野正嗣「にぎやかな湾に背負われた船」(『小説トリッパー』2001年秋号)
- 候補作:横田創『裸のカフェ』(『群像』2001年8月号)、舞城王太郎「熊の場所」(『群像』2001年9月号) 、阿部和重『ニッポニアニッポン』(新潮社) 、平出隆『猫の客』(河出書房新社) 、綿矢りさ『インストール』(河出書房新社。第38回文藝賞受賞作)
第16回(2003年)
- 受賞作:舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮社)
- 候補作:嶽本野ばら『エミリー』(集英社)、有吉玉青『キャベツの新生活』(講談社)、黒田晶『世界がはじまる朝』(河出書房新社)、佐藤智加『壊れるほど近くにある心臓』(河出書房新社) 、野中柊「ジャンピング・ベイビー」(『新潮』2003年4月号)
- 解説:覆面作家・舞城は公の場に出たくないため、授賞式を欠席。島田は「失礼だ」と不快感を示す。
[編集] 第5期
選考委員:第4期と同じ
第17回(2004年)
- 受賞作:矢作俊彦『ららら科學の子』(文芸春秋、『文學界』連載)
- 候補作:いしいしんじ『プラネタリウムのふたご』(講談社)、安達千夏 「おはなしの日」(『すばる』2003年12月号)、嶽本野ばら『ロリヰタ。』(新潮社)、鹿島田真希「白バラ四姉妹殺人事件」(『新潮』2004年3月号)
- 解説:「レベルが違う」「近代日本文学の傑作」と賞賛され、矢作が満場一致で受賞。「新人賞である筈の三島賞に、何故ベテランの矢作が候補に挙がるのか」との疑問も出た。受賞の記者会見で矢作は「文学に新人やベテランとの区分は、特に重要ではない」と答える。
第18回(2005年)
- 受賞作:鹿島田真希「六〇〇〇度の愛」(『新潮』2005年2月号)
- 候補作:中村文則「悪意の手記」(『新潮』2004年5月号)、青木淳悟「クレーターのほとりで」(『新潮』2004年10月号)、本谷有希子 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(『群像』2004年12月号)、三崎亜記 『となり町戦争』(集英社。第17回小説すばる新人賞受賞作)、黒川創「明るい夜」(『文學界』2005年4月号)
第19回(2006年)
- 受賞作:古川日出男『LOVE』(祥伝社)
- 候補作:いしいしんじ 『ポーの話』(新潮社)、西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社)、宮崎誉子『少女@ロボット』(新潮社)、前田司郎「恋愛の解体と北区の滅亡」(『群像』2006年3月号)
- 解説:筒井は「見せかけの新しさ」と古川を批判し、「もっとも面白く読めた」といしいを推した。福田は「退屈の一言」といしいを最も低く評価、「頭一つ抜けている」と前田を推した。その前田には福田以外、全員が×をつけた。票が割れ、最後に福田、島田、宮本が古川を推し受賞が確定。
第20回(2007年)
- 受賞作:佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』(新潮社)
- 候補作:西川美和 『ゆれる』(ポプラ社)、本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮社)、柴崎友香『また会う日まで』(河出書房新社)、いしいしんじ『みずうみ』(河出書房新社)
- 解説:宮本輝を除く4人の選考委員が票を入れ受賞決定。宮本は「文字だけで書かれたドタバタコミック」と酷評。メフィスト賞出身の作家としては舞城王太郎以来二人目。
[編集] 第6期
第21回(2008年)
- 受賞作:田中慎弥『切れた鎖』(新潮社)
- 候補作:本谷有希子『遭難、』(講談社)、藤谷治『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、日和聡子『おのごろじま』(幻戯書房)、田中慎弥『切れた鎖』(新潮社)、前田司郎『誰かが手を、握っているような気がしてならない』(講談社)、黒川創『かもめの日』(新潮社)
[編集] 外部リンク
- 三島由紀夫賞(公式)