笙野頼子
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笙野 頼子(しょうの よりこ、1956年3月16日 - )は日本の小説家。本姓・市川。三重県出身、立命館大学法学部卒。
自らアヴァン・ポップ作家と称する。笙野の作品のテーマは、世界への違和感・夢・幻想・フェミニズム・猫などのテーマにまとめることができる。初期の作品は一般に難解といわれるものが多く、発表できても一部のファン以外からの反応はほとんどなかった。1990年代になってしだいに評価が高まり、野間文芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞を受賞したことで「新人賞三冠王」と呼ばれた。1990年代のいわゆるJ文学作家の一人と言われることもある。
目次 |
[編集] 来歴・人物
1956年、三重県四日市市に生まれ、伊勢市に育つ。 伊勢市立修道小学校、伊勢市立五十鈴中学校、三重県立伊勢高等学校卒業後、二浪して立命館大学法学部に入学。大学在学中より小説を書き始める。大学卒業後も他大学受験の口実のもと予備校に通いながら執筆していた。1981年、「極楽」で第24回群像新人文学賞を受賞し、小説家デビュー。しかしその後10年の間担当編集者からの没を受け続ける不遇の時期を過ごす。1991年、『なにもしてない』で野間文芸新人賞受賞。1994年、「二百回忌」で第7回三島由紀夫賞、「タイムスリップ・コンビナート」で第110回芥川賞を立て続けに受賞し一気に注目を集める。また上記三賞を受賞したことから「新人賞三冠王」などとも言われた(この三賞を一人ですべて受賞しているのは2008年現在まで笙野のみ)。その後1996年に『母の発達』で第6回紫式部文学賞候補に、1998年に『東京妖怪浮遊』で女流文学賞候補となるが、いずれも女性作家のみを対象にした賞であることから「自分が取れば『女は得だ』と言われると思った」(自筆年譜より)という理由でいずれも辞退している。
2001年、『幽界森娘異聞』で第29回泉鏡花文学賞受賞、2004年、『水晶内制度』で第3回センス・オブ・ジェンダー賞受賞。この頃より日本の社会制度への風刺をこめたスケールの大きな作品を書くようになる。2005年、『金比羅』で第16回伊藤整文学賞受賞。近作に2006年より三部作の構想で発表されている『だいにっほん、おんたこめいわく史』『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』がある。
[編集] 文学賞選考委員歴
- 文藝賞(第35回から第36回/1998年 - 1999年)
- 群像新人文学賞(第43回から第46回/2000年 - 2003年)
- 野間文芸新人賞(第22回から第26回/2000年 - 2004年)
- すばる文学賞(第26回から第30回/2002年 - 2006年)
[編集] 作品リスト
- 極楽 笙野頼子・初期作品集1
- 極楽(『群像』1981年6月号)
- 大祭(『群像』1981年11月号)
- 皇帝(『群像』1984年4月号)
- 1994年11月30日、河出書房新社、ISBN 9784309009476
- 『極楽・大祭・皇帝―笙野頼子初期作品集』2001年3月10日、講談社文芸文庫、ISBN 9784061982529
- 夢の死体 笙野頼子・初期作品集2(1994年11月30日、河出書房新社、ISBN 9784309009483)
- 海獣(『群像』1984年8月号)
- 冬眠(『群像』1985年4月号)
- 夢の死体(『群像』1990年6月号)
- 虚空人魚(『群像』1990年2月号)
- 呼ぶ植物(『群像』1989年5月号)
- なにもしてない
- なにもしてない(『群像』1991年5月号)
- イセ市、ハルチ(『海燕』1991年2月号)
- 1991年9月27日、講談社、ISBN 9784062055338
- 1995年11月15日、講談社文庫、ISBN 9784062631587
- 居場所もなかった
- 居場所もなかった(『群像』1992年7月号)
- 背中の穴(『群像』1991年10月号)
- 1993年1月14日、講談社、ISBN 9784062062015
- 1998年11月15日、講談社文庫、ISBN 9784062637992
- 硝子生命論(1993年7月15日、河出書房新社、ISBN 9784309008486)
- 硝子生命論(『文藝』1992年冬季号)
- 水中雛幻想(『すばる』1991年9月号、初出時タイトル「アクアビデオ―夢の装置」)
- 幻視建国序説(『ブックTHE文藝 1』1993年3月)
- 人形暦元年 (書き下ろし)
- レストレス・ドリ-ム
- レストレス・ドリーム(『すばる』1992年1月号)
- レストレス・ゲーム(『すばる』1992年10月号)
- レストレス・ワールド(『すばる』1993年3月号)
- レストレス・エンド(『文藝』1994年春季号)
- 1994年2月25日、河出書房新社、ISBN 9784309008899
- 1996年2月2日、河出文庫、ISBN 9784309404714
- 二百回忌
- 大地の黴(『海燕』1992年7月号)
- 二百回忌(『新潮』1993年12月号)
- アケボノノ帯(『新潮』1994年5月号)
- ふるえるふるさと(『海燕』1993年1月号)
- 1994年5月25日、新潮社、ISBN 9784103976011
- 1997年8月1日、新潮文庫、ISBN 9784101423210
- おカルトお毒味定食(松浦理英子と共著)
- 1994年8月25日、河出書房新社、ISBN 9784309009285
- 1997年4月4日、河出文庫、ISBN 9784309404974
- タイムスリップ・コンビナ-ト
- タイムスリップ・コンビナート(『文學界』1994年6月号)
- 下落合の向こう(『海燕』1994年1月号)
- シビレル夢ノ水(『文學界』1994年9月号)
- 1994年9月20日、文藝春秋、ISBN 9784163151205
- 1998年2月10日、文春文庫、ISBN 9784167592011
- 言葉の冒険、脳内の戦い(1995年7月5日、日本文芸社、ISBN 9784537050394)
- 増殖商店街(1995年10月27日、講談社、ISBN 9784062078993)
- 増殖商店街(『群像』1993年1月号)
- こんな仕事はこれで終りにする(『群像』1994年11月号)
- 生きているのかでででのでんでん虫よ(『群像』1995年7月号)
- 虎の襖を、ってはならなに(『海燕』1995年1月号)
- 柘榴の底(『海燕』1988年8月号)
- 母の発達
- 母の縮小(『海燕』1994年4月号)
- 母の発達(『文藝』1995年秋季号)
- 母の大回転音頭(『文藝』1996年春季号)
- 1996年3月29日、河出書房新社、ISBN 9784309010496
- 1999年5月6日、河出文庫、ISBN 9784309405773
- パラダイス・フラッツ(1997年6月20日、新潮社、ISBN 9784103976028)
- 初出 :『波』1996年1月号 - 1997年1月号
- 太陽の巫女(1997年12月20日、文藝春秋、ISBN 9784163173900)
- 太陽の巫女(『文學界』1995年10月号)
- 竜女の葬送(『文學界』1997年11月号)
- 東京妖怪浮遊(1998年5月、岩波書店、ISBN 9784000241083)
- 東京すらりんぴょん(『毎日新聞』日曜版1996年4月7日 - 6月23日)
- 単身妖怪・ヨソメ(『へるめす』1997年5月号)
- 触感妖怪・スリコ(『へるめす』1997年7月号)
- 団塊妖怪・空母幻(『世界』1998年1月号)
- 抱擁妖怪・さとる(『世界』1998年2月号)
- 女流妖怪・裏真杉(『世界』1997年3月号)
- 首都圏妖怪・エデ鬼(『世界』1998年4月号)
- 説教師カニバットと百人の危ない美女(1999年1月20日、河出書房新社、ISBN 9784309012582)
- 説教師カニバット(『文藝』1997年冬季号)
- 百人の危ない美女(『文藝』1998年冬季号)
- 笙野頼子窯変小説集 時ノアゲアシ取リ(1999年2月1日、朝日新聞社、ISBN 9784022573438)
- 時ノアゲアシ取リ(『一冊の本』1998年11月号)
- 人形の正座(『群像』1995年11月号)
- 一九九六、段差のある一日(『三田文学』1996年夏号)
- 使い魔の日記(『群像』1997年1月号)
- 壊れるところを見ていた(『文學界』1997年1月号)
- 夜のグローブ座(『一冊の本』1997年3月号)
- 魚の光(『新潮』1997年4月号)
- 蓮の下の亀(『すばる』1998年1月号)
- 全ての遠足(『群像』1998年1月号)
- 一九九六・丙子、段差のある一年(書き下ろし)
- ドン・キホーテの「論争」(1999年11月27日、講談社、ISBN 9784062099141)
- てんたまおや知らズどっぺるげんげる(2000年4月20日、講談社、ISBN 9784062100953)
- てんたまおや知らズどっぺるげんげる(『群像』1998年7月号)
- 文士の森だよ、実況中継(『群像』1999年1月号)
- ここ難解過ぎ軽く流してねブスの諍い女よ(『群像』1999年7月号)
- リベンジ・オブ・ザ・キラー芥川(『群像』2000年1月号)
- 渋谷色浅川(2001年3月30日、新潮社、ISBN 9784103976035)
- 渋谷色浅川(『新潮』1996年2月号)
- 無国籍紫(『新潮』1998年1月号)
- 西麻布黄色行(『新潮』1999年1月号)
- 中目黒前衛聖誕(『新潮』2000年3月号)
- 宇田川桃色邸宅(『新潮』2001年1月号)
- 愛別外猫雑記
- 『文藝』2000年冬季号 - 『文藝』2001年春季号
- 2001年3月30日、河出書房新社、ISBN 9784309014043
- 2005年12月20日、河出文庫、ISBN 9784309407753
- 『文藝』2000年冬季号 - 『文藝』2001年春季号
- 幽界森娘異聞
- 幽界森娘異聞(『群像』2000年3月号 - 10月号)
- 幽界森娘異聞後日譚 神様のくれる鮨(『群像』2001年1月号)
- 2001年7月10日、講談社、ISBN 9784062107273
- 2006年12月15日、講談社文庫、ISBN 9784062755894
- S倉迷妄通信(2002年9月10日、集英社、ISBN 9784087746051)
- S倉迷妄通信(『すばる』2001年3月号)
- S倉妄神参道(『すばる』2001年11月号)
- S倉迷宮完結(『すばる』2002年4月号)
- 水晶内制度(2003年7月30日、新潮社、ISBN 9784103976042)
- 初出 :『新潮』2003年3月号
- 片付けない作家と西の天狗(2004年6月30日、河出書房新社、ISBN 9784309016405)
- 胸の上の前世(『Vogue 日本』2002年8月号)
- S倉極楽図書館(『図書館の学校』2002年3月号)
- 素数長歌と空(『群像』2002年1月号)
- 五十円食堂と黒い翼(『河南文藝』文学篇2003年夏号)
- 箱のような道(『群像』1996年10月号)
- 猫々妄者と怪(『文藝』2004年春季号)
- 越乃寒梅泥棒(『新潮』1996年9月号)
- 雑司が谷の「通り悪魔」(『東京新聞』1999年6月26日夕刊、初出時タイトル「墓地脇の『通り悪魔』」)
- 片付けない作家と西の天狗(書き下ろし)
- 金毘羅(2004年10月10日、集英社、ISBN 9784087747201)
- 初出 :『すばる』2004年4月号
- 徹底抗戦!文士の森(2005年6月30日、河出書房新社、ISBN 9784309017129)
- 絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男(2006年4月30日、河出書房新社、ISBN 9784309017587)
- 絶叫師タコグルメ(『文藝』2005年春季号)
- 百人の「普通」の男(『文藝』2005年夏季号)
- センカメの獄を越えて
- 八百木千本様へ笙野頼子より
- だいにっほん、おんたこめいわく史(2006年8月18日、講談社、ISBN 9784062135245)
- 初出 :『群像』2006年1月号
- 一、二、三、死、今日を生きよう! 成田参拝(2006年10月10日、集英社、ISBN 9784087748246)
- 成田参拝(『すばる』2003年5月号)
- 一、二、三、死、今日を生きよう!(『すばる』2005年1月号)
- 語、録、七、八、苦を越えて行こう(『すばる』2005年6月号)
- 羽田発小樽着、苦の内の自由(『すばる』2006年4月号)
- 笙野頼子三冠小説集(2007年1月20日、河出文庫、ISBN 9784309408293)
- タイムスリップ・コンビナート
- 二百回忌
- なにもしてない
- だいにっほん、ろんちくおげれつ記(2007年10月31日、講談社、ISBN 9784062139434)
- 初出 :『群像』2006年8月号
- 萌神分魂譜(2008年1月10日、集英社、ISBN 9784087748994)
- 初出 :『すばる』2007年9月号
- 姫と戦争と「庭の雀」(『新潮』2004年6月号)
- この街に、妻がいる(『群像』2006年10月号)
- 竜の箪笥を、詩になさ・いなくに(『新潮』2006年12月号)
- だいにっほん、ろりりべしんでけ録(『群像』2007年12月号)
- おはよう水晶――おやすみ水晶(『ちくま』連載中、2006年6月号 - )
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 青土社『現代思想』2007年3月号 特集・笙野頼子
- 河出書房新社『文藝』2007年冬号 特集・笙野頼子