保坂和志
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保坂 和志(ほさか かずし、1956年10月15日 - )は、日本の小説家。
何気ない日常を描くことを得意とし、静かな生活の中に自己や世界への問いかけを丁寧に記述していく作風。愛猫家であり、ほとんどの作品に重要な要素として猫が登場する。
目次 |
[編集] 来歴
山梨県に生まれ、鎌倉で育つ。栄光学園高校、早稲田大学政治経済学部卒業。6年間の大学在学期間のうちの5年目から小説の習作を始め、6年目に同人誌『NEWWAVE』を発行、メンバーには大崎善生、松沢呉一、長崎俊一などがいたが、1号で廃刊となる。大学卒業後の1981年、小説を書く時間のありそうな職場として西武百貨店のコミュニティ・カレッジに就職、哲学や現代思想のワークショップを企画する。30歳を目前にして尻に火がつく思いで書いたという「ヒサの旋律の鳴り渡る」「グノシエンヌ」(ともに未発表)の制作を経て、1990年、「プレーンソング」を『群像』に発表しデビュー。1993年「草の上の朝食」で野間文芸新人賞受賞。同年に会社を退職する。
1995年、『新潮』に発表した「この人の閾」で芥川賞受賞。友人である「ぼく」を視点として、平凡な女性の静かな日常を描き、選考委員の日野啓三より「明日世界が滅ぶとしたらこんな最後の一日を過ごしたい」と絶賛された。1997年、『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞、平林たい子文学賞をW受賞。穏やかな生活を描くこれまでの作風に子供の視点を加えて、日常の中に時間や自然への問いかけを織り込み高い評価を受けた。2003年、2年半の歳月を費やした『カンバセイション・ピース』を刊行。古い家を舞台に死や記憶への思考を展開し最高傑作とうたわれた。
2003年より長編の論考『小説をめぐって』を『新潮』に連載開始。カフカをはじめ小説作品を実際に読み解きながら、小説の現状やその可能性を考察している(『小説の自由』『小説の誕生』として書籍化)。
[編集] 人物
妻の清水みちは英文学者で、昭和女子大学人間文化学部英語コミュニケーション学科准教授。『週刊朝日』(2006年2月24日号)の連載「夫婦の情景」にて夫妻で紹介された。
カルチャーセンターに勤務していた1989年12月から、41歳年上である作家の小島信夫との交遊を持ち、青山ブックセンター本店や世田谷文学館にて対談イベントを催したり(05年7月、06年3月)、20年近くも絶版状態だった小島の著書『寓話』を、保坂が自身のホームページで仲間を集い個人出版するなどもしている(2006年2月完成)。
学生時代より、矢崎仁司監督、長崎俊一監督らの映画に関わる。2006年には映画『ストロベリーショートケイクス』にデリヘルの客役で出演した。
また、将棋も趣味で、最強のプロ棋士である羽生善治の将棋が、いかに画期的であるかを論じた本、『羽生~21世紀の将棋~』も刊行している。
[編集] 著書
- 『プレーンソング』講談社、1990年 のち文庫
- 『草の上の朝食』講談社、1993年 のち文庫
- 『猫に時間の流れる』新潮社、1994年 のち文庫
- 『この人の閾』新潮社、1995年 のち文庫
- 『季節の記憶』講談社、1996年 のち中公文庫
- 『羽生~21世紀の将棋~』朝日出版社、1997年 『羽生—「最善手」を見つけ出す思考法』と改題、光文社・知恵の森文庫
- 『残響』文藝春秋、1997年 のち中公文庫
- 『アウトブリード』朝日出版社、1998年 のち河出文庫
- 『<私>という演算』新書館、1999年 のち中公文庫
- 『もうひとつの季節』朝日新聞社、1999年 のち中公文庫
- 『生きる歓び』新潮社、2000年 のち文庫
- 『世界を肯定する哲学』ちくま新書、2001年
- 『小説修業』小島信夫共著、朝日新聞社、2001年
- 『明け方の猫』講談社、2001年 のち中公文庫
- 『書きあぐねている人のための小説入門』草思社、2003年
- 『カンバセイション・ピース』新潮社、2003年 のち文庫
- 『小説の自由』新潮社、2005年
- 『途方に暮れて、人生論』草思社、2006年
- 『小説の誕生』新潮社、2006年
- 『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』草思社、2007年
[編集] 関連人物
[編集] 外部リンク
- パンドラの香箱(公式)
- 『季節の記憶』
- 執筆前夜(インタビュー)
- カンバセイション・ピース(インタビュー・『ほぼ日刊イトイ新聞』内)