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ヨコハマ買い出し紀行 - Wikipedia

ヨコハマ買い出し紀行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ヨコハマ買い出し紀行』(よこはまかいだしきこう)は「月刊アフタヌーン」(講談社)に連載されていた芦奈野ひとし作の漫画作品。単行本は全14巻。

目次

[編集] 概要

第1作は同誌1994年4月号に読み切りとして掲載(いわゆる第0話)、作者にとってはこの作品がデビュー作でもある。本作品が同年春のアフタヌーン四季賞四季賞を受賞する。続いて9月号に続編が掲載され、好評を得たことから同年12月号からは連載となり、2006年4月号まで掲載。全140話。物語全体を通して、穏やかな独特の世界を描いていく。

本編の連載終了後、2006年7月号には書き下ろしとして同一の世界を舞台としたものと思われる(時系列的には連載終了から数十年後と推測される)短編『峠』が掲載された。

また、ラジオドラマ椎名へきるラジオ番組で放送され(後にドラマCD化)、二度OVA版が制作されている。

2007年には第38回星雲賞(コミック部門)を受賞した[1]


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


[編集] あらすじ

「お祭りのようだった世の中」がゆっくりと落ち着き、「夕凪の時代」と呼ばれた近未来の日本(主に三浦半島を中心とした関東地方)を舞台に、「ロボットの人」である主人公「アルファ」とまわりの人々の織りなす「てろてろ」とした時間を描く作品。

作中では、具体的な社会的状況は明示的に語られないが、断片的な記述を総合すると、地球温暖化が進行して海面が上昇し、物資も欠乏し(作品中より、米や醤油といった生活必需品も常時入手できるわけではないことがわかる)、治安は現在と比較して悪くなっており(来客の応対や配達時等に護身のために拳銃を携帯する描写がある)、人口も大きく減少していることや文明社会が大きく後退している様子が示されると共に、(物語の最後を締めくくる「人の夜が安らかな時代でありますように」というモノロ-グに象徴されるように)その人間の文明社会自体も徐々に衰退していることが示唆されている。しかし、その世界に悲壮感は無く、ひとびとは平穏な日々を暮らしている。また、結局の所、詳しくは語られなかった「不思議な存在」も多く、そのまま作中の日常世界に組み込まれている。これらの不思議については最終話まで真相が明かされることはなく、そのことによってこの作品がいわゆる「謎解き」を目的としない、まさに「紀行文」であることを示している。

各話は、登場人物の主観的な日常を軸に展開し、また「ロボットの人」が周囲に「そういう個性のある人」として受け容れられ、生活する様子をとらえている。

[編集] 登場人物

初瀬野アルファ(はつせの あるふぁ)
椎名へきる
主人公。三浦半島にある「西の」で喫茶店「カフェ・アルファ」を営むアルファ型で若い女性の姿をした「ロボットの人」で、髪の色は緑・瞳は紫色。名前は、開発当時まだ珍しかった「アルファ型」ロボットから定着したもの。機種名はA7M2型(量産試作機:なお、この型番は旧日本海軍の試作戦闘機「烈風」と同じである)。オーナーの帰りを何年も待ち続けているが、自身は何年も帰りを待ち続けられることから「私はロボットでよかった」と思っている。オーナーにもらった拳銃H&K P7)と特殊なカメラを宝物にしている。酒に酔うと見たことのない踊りを踊ったり、外へ飛び出していったりするが、本人はよく覚えていない。鶏卵は元より牛乳などの動物性たんぱく質を体内で処理できず、体調不良(めまいなど)を起こしてしまうという癖(体質?)があるが、ミルク入り缶コーヒー程度は平気で、ボーダーラインは「カフェオレ」だという。趣味は月琴と、をあしらった小物の収集・制作。ミカンコーヒー砂糖が好物のようで、特に砂糖に関しては自らマニアとすら言っており、黒糖を貰って食べた時には、あまりの味の複雑さに感動している。初瀬野の姓の由来は、作品の舞台となる三浦市に実在する地名、初声町とされる。この初声の読みは「はっせ」または「はっせい」。カフェ・アルファの所在地「西の岬」は、後述する小網代湾の北側~黒崎の鼻、ないしは荒崎周辺と推測される。該当地域の三浦市側の地番は、前述の初声町となる。
鷹津ココネ(たかつ ここね)
声:中川亜紀子
アルファの妹分で、同じくアルファ型のロボットの人(女性タイプ)。機種名はA7M3型(量産型)で髪の毛は淡い紫・瞳の色は濃い緑。ムサシノ運送で「おてもと便」係として働いており、カメラの配達を通じてアルファと出会う。かつては人間っぽく振舞うことに気を使っていたが、アルファと出会ってからは「気楽になろうとしない」生き方を見つける。その一方で、ロボットである自分のルーツを探し求めている。「ココネ」という名前は、研修所で自分でつけたものらしい。アルファと違い、動物性たんぱく質も摂取できる。行きつけのオープンカフェ「かんぱち辻の茶」のマスターから「片思い」されているらしく、この他にも比較的「都会」であるムサシノの国では、色々と彼女に好感を寄せている友人も多い。ただ、アルファ以外には余り自分をさらけ出そうとはしない所などもあり、ごく親しい間柄では、しばしばそれをネタにからかわれている様子。姓の鷹津は、神奈川県川崎市高津区の高津地区から引いたものとされる。高津は、大山街道(概ね現在の国道246号に相当)で多摩川を渡った神奈川県側(川崎市)の地名であり、彼女が作中で重要な鍵となるレコード盤を発見する児童館が存在する砧は対岸、また作中に度々登場する地名「等々力」も多摩川沿いの両岸に隣接して実在する。丸子はさらに下流となる。
おじさん
声:寺島幹夫飯塚昭三
カフェ・アルファの近所でガソリンスタンドを営む老人。カフェ・アルファの常連客で、アルファの良き話し相手である。アルファの愛用バイク(スクーター)はガソリンエンジンで動いており、そのガソリン代金の代わりにカフェでのコーヒーを飲んでいる(物々交換?)。子海石先生の後輩でもある。畑を持っており、時々はスイカが大豊作だったからなどと言ってはお裾分けしにきたりする。後にスタンドを無人化し、自らは畑仕事に専念することに。自ら漁に出る描写などは無いが、おじさんの喋り方は典型的な浜言葉と秦野弁や江戸弁の混合した、この地方の(特に漁港周辺でよく見られる)独特のものである。
タカヒロ(たかひろ)
声:陶山章央豊永利行
おじさんと一緒に住む少年(孫とも思えるが両者の間柄は明言されていない)。一頃は「近所の気になるお姉さん」的にアルファに淡い恋心を抱いていた節もあり、カフェ・アルファによく足を運ぶ。内燃機関関係に興味を持ち、110話以後、エンジンの都・浜松(現実の日本においても自動車・バイクメーカーが集中している)へ働きに出る。その後、真月と結婚。
真月(まつき)
声:長沢美樹
タカヒロの幼馴染の少女。みんなからはマッキと呼ばれている(イタリアの航空機メーカー・マッキ社が由来と思われる)。老夫婦(間柄の描写についてはタカヒロと同様、孫のようにも見えるが明言されていない)と暮らしていたが、後にココネの勤めるムサシノ運送で5年間働いて退社、タカヒロの住む浜松へ。
その後、タカヒロと結婚、サエッタを産む。
サエッタ(さえった)
真月とタカヒロの娘で138話に登場。「サエッタ」はタカヒロが命名した(マッキ社が製造した戦闘機と同じ名である)。マッキ曰く「ごちゃごちゃとした林が好きなお転婆」だが、性格は落ち着いている。マッキとともに三浦半島へ帰省し、入り江で母親同様、ミサゴと出会った。
子海石先生(こうみいし せんせい)
声:杉田郁子
かつてロボットの開発にも携わったことがあるらしい初老の女性医師に打たれたアルファを治した。おじさんの先輩。かつて「子海石アルファ」というロボットを預かっていたことがある。若い頃はおじさんとつるんでオートバイで方々を「歩いて見て回って」いたようで、自身のトレードマークとして象形文字とも古代の漢字ともつかない物(篆刻で用いられる篆書体の「子」の字に酷似)を描いたアクセサリを身に付けていたが、自分の「目と足」というそのアクセサリーを、未来を見続けるであろうアルファに託す。姓の由来は、横須賀市久留和の子産石とされる。
ミサゴ(みさご)
小網代の入り江(小網代湾)に棲む謎の女性。常に全裸で言葉を話さず、驚くべき身体能力で水面を走ったりもする。水中を自在に泳ぎ、魚介や昆虫などを取っては生で食べている。基本的に子どもの前にしか姿を見せず、雨に濡れたタカヒロを救ったことがある。アヤセやアルファのオーナーも子どものころ会ったらしいが、その姿はずっと当時から変わらぬままなのだという。ほぼ野生動物のような生活をしており、ほとんど人前には姿をあらわさない事から、近くに住む人からは、半ば伝説扱いされている。名前の由来と生態は猛禽類ミサゴから。なおこの名は子海石先生が実験のために大学時代に乗った地面効果(表面効果)を利用する高速艇の名前と同じだが、関連性は不明。
また、子海石アルファが服を嫌っていたことを考えると、A7M1型、もしくはA7型以前のロボットの可能性もある。ただ、少なくとも一般にロボットの人が認知される前には入り江に住んでいたため、真実は不明。
尚、子供の頃にしか会えないのは、子供が好きで大人には会おうとしない上、人間(の子供)が成長するという概念を理解していないからである。
アヤセ(あやせ)
声:森川智之
ミナミトビカマスという架空の魚を鷹匠のように使い、漁とアルバイトをしながら放浪の旅を続ける若者。数年に一回程度故郷に戻ってきた時にタカヒロやアルファ、マッキたちと出会う。かつてミサゴと会った1人。初瀬野先生とも面識があるらしい。作中世界を歩きながら様々な現象を研究しているようだ。一頃はトビカマスに子供が出来た折に、マッキを弟子に取りたいと考えていた。喋り方がおじさんによく似ており、アルファがそれを指摘するシーンもある。
シバちゃん(しばちゃん)
ムサシノ運送で「おてもと便」係として働くココネの同僚女性。ざっくばらんとした性格。付き合っている男性がいるようである。後に他の部署へ異動する。ロボットの人では無いようだが、ココネと感覚的にも通じるものがあるらしく、よくココネとつるんで休日や仕事の合間に遊んだり、だべったりしている。
丸子マルコ(まるこ まるこ)
多摩川のほとり丸子にアトリエを持つアルファ型のロボットの人(ココネと同じA7M3型・女性タイプ)で、ボーイッシュな赤い髪・茶色の瞳をしている。普段は額縁屋で働いており、顧客の評判も「額縁屋の看板娘」的で上々の模様。あまり営業スマイル以外での人付き合いが上手なほうでは無いらしく、自らオーナーのもとから離れたロボットで、苗字も自分でつけたものである。趣味で油絵をしているほか、私生活では昼間からワンカップ片手に町を歩いていたりするなどオヤジ臭い所があり、冗談でココネに妙なモーションを掛けたりもしている。ココネやナイと仲がよく、一度は彼らがアルファとも仲良くなった事に嫉妬したりもしたが、本音でぶつかり合ってからは概ね良好な関係が続いている模様で、憎まれ口を叩き合う仲となった。一度、悪戯心を起こしたアルファに逆襲され、「物凄く美味しい黒糖」を食べさせられて、あまりの旨さに思わず泣いてしまった事がある。姓および名の由来は、川崎市中原区に実在する地名、丸子とされる。中原街道丸子橋によって多摩川を渡った神奈川県側の地名が丸子であり、古来ここに丸子の渡しが存在した。かながわの国に住むアルファとムサシノの国に住むココネを橋渡しするという意味でも、象徴的な命名・ポジションと言える。
ナイ(ない)
声:内藤玲
珍しい男性のアルファ型ロボット。厚木空港(厚木海軍飛行場を指すと思われる)でノースアメリカンレシプロ練習機T-6テキサンを使用した定期便のパイロットをしている。一人旅をしていたアルファと知り合う。朴訥な性格であまり人付き合いを好む性質では無いようだが、丸子マルコとも旧知の仲。写真を取るのが趣味なようで、アルファのものと同型のカメラを所有しており、時々マルコに写真(ただしロボットの人専用のデータで、人間にはその感覚を伝えきれない)を送ったりしている。写真の傾向としてマルコ曰く「コントラストが強い」ものだという。
子海石アルファ(こうみいし あるふぁ)
はるか上空を延々飛び続ける「ターポン」という飛行機に搭乗しているロボットの人で、前出のアルファやココネの直系の「お姉さん」にあたる。ターポン内では「アルファー室長」と呼ばれている。上空から、もう降りられることのない地上世界を見つめている。初登場である第26話のサブタイトル「青のM1」からA7M1型であることがうかがえる。生まれて間もない頃(姿は変わらない)には子海石先生の元で暫らく日常的な常識を学んでいたが、最初の頃は服を着るのも苦手だったりしたようだ。子海石先生に貰ったらしいペンダントをいつも身につけている。
初瀬野先生(はつせの・せんせい)
アルファのオーナー。何年も前にアルファに店を預けたまま旅に出ている。作中では苗字だけしか出てこず、また趣味で模型飛行機をやっていたらしい…などといった断片的な情報も提示されるが、人相や人柄、何の先生なのかといった正体は最後まで不明のままであった。加えて、作中では一度帰ってきたようだが、たまたまアルファがヨコハマへ「買い出し」に出かけている最中だったため、メモ一枚残してまた旅に行ってしまった(0話)。筆不精なようで、前出のカメラを旅先から贈る際には、ココネに情景メッセージを托した。第139話(最終話の1話前)の時点では、既に死去している事を匂わす描写があるが、不明のままに。

[編集] 描写中に見られるその他の要素

スクーター
アルファのスクーターはガソリンを燃料とするレシプロエンジンだが、ココネのスクーターは電気式である。しかしこの電気式スクーターは電磁気を使うモーターではなく、電気的刺激で収縮する人工筋肉が動力らしい。
アルファのカメラ
作中では記憶を象徴する重要なアイテムのひとつとしてしばしば登場する。オーナーがアルファに贈ったもので、本来は拳銃用に作られたポーチの中にしまわれ、しばしば方々を出歩くアルファのお供をしている。同型のカメラはナイも所有しているが、アルファがオーナーから貰ったものの方が上位の(ナイによれば「並でない」)仕様であるらしい。このカメラはいわゆるスチル写真をプリントするための銀塩カメラではなく、「ロボットの人」専用の今で言うデジタルカメラに近いものであり(連載時における登場時期は、現実においても民生用デジタルカメラの黎明期であった)、記録媒体は「キャラメルのようなもの」(「一粒300枚」ほど)であり、口にくわえたケーブルで情景をリアルに記録・再生する機能がある。おじさんの言によると、テレビプリンターに繋げば、ロボットの人以外の人間でも単純な画像として一応見る事は出来るらしい。カメラのレンズないしは撮像素子には、アルファたち「ロボットの人」に使われているものと近い構造を持つが使われているようだという言及もある。なお、作者のインタビューでは、人間の五感を記録する実験がアルファ型のもとにあったことが語られており(例えば聴覚の実験成果は、A2と標記されたレコードである)、このカメラもまた「ロボットの人」と共通の感覚をもつ存在であることが示唆されている。
街灯
人工物の街灯が、かつて市街地や自動車道の名残として海中から突き出しており、海面上昇が偲ばれる。好事家の中には、この海上に立つ街灯を眺めながら酒を飲む人もいる。この他、一種の植物のような街灯がありこれらはかつての主要道に沿って自生している。巨大な農産物やキノコ様の謎の物体、果てはロボットの人なども含め、作品世界においてかつて何らかの形で遺伝子などを操作した生物の実験とある程度の成功(とその途上の様々なモノ)が実現していたことを覗わせる。
巨大なヒマワリ
作中には、バイオテクノロジーの成果と考えられる巨大な実が登場する。単行本では巨大な桃と栗は実を結ぶまでに三年、柿は八年かかるとする解説(いわゆる桃栗三年柿八年)や、パワー桃(?)の実のつけ方などが提示されているが、パワー梨(?)については言葉を濁している(梨の馬鹿めが十八年?)。その大きさは一抱えほどもあり、特に栗は非常にワイルドな調理をする人もいる。味は良いらしい。ヒマワリのほうは、パワーヒマワリという品種が登場し、5mほど(推定)にまで成長、巨大な花を付ける。ただし種は、量が多いことを除けば普通のヒマワリサイズである。
水神さま(人型キノコ?)や巨大直方体
俗に人型キノコとも呼ばれるものは作中では稀に水辺で発見されるらしい。脳波もあるらしいが、実体は不明で、地元の人からは水神さまとして大切にされている。巨大直方体は白いのっぺりした物体で、山の中に唐突に生えたりするものらしい。表面はコルクみたいに柔らかいのだとか。
ターポン
高高度を飛行する巨大飛行機。地上にはもう降りることも出来ないらしく、長いあいだ無補給で飛び続けている。6年周期の航路があり、北半球と南半球を往復しており、その機体は上に挙げた存在のような一種の生物的なところもあり、完全に閉鎖した独自の循環環境を機内で構築していることを覗わせる描写もある。内部にはクルー達の部屋の他、膨大な本を納めた図書室らしきところもある。地上との連絡も一切行えず、地上からは見上げられるばかり、機内からはただ下を眺めるばかりとなっている。作品世界においてラジオ放送が健在であることから、無線通信や発光信号などを用いた連絡手段をとることは十分に考えられるにも関わらず、そのような手段を用いて地上と連絡を取っている描写が一切なく、地上の様子を精細に観察しながらその結論を推測に甘んじる必然性や合理性についての言及も無い点が謎として残る。
マックスコーヒー
月刊アフタヌーン1996年7月号表紙にアルファが登場した際、アルファの横にさり気なく置かれていた缶コーヒー。ちなみに、マックスコーヒーは実際に利根コカ・コーラボトリングが販売している商品であり、千葉県茨城県を中心に地域の名物コーヒーとして親しまれている。このような「遊び」がさりげなく描かれていることも、当作品の魅力のひとつである。
ひょうちゃん
第40話でアヤセが持っていた陶器製のしょうゆさし。現実世界では、崎陽軒のシウマイの箱の中に封入されており、多種多様な表情が描かれていることからコレクターも多い。

[編集] 作中に登場する地域・地形・風景・街道など

この節は執筆の途中です この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。
小網代湾
作中では、タカヒロやマッキがミサゴに幾度となく出会う「小網代の入り江」として登場する。現実の小網代湾は、特に北岸~湾奥にかけて広がる「小網代の森」が一度人手によって開発された後に自然に還りつつある貴重な里山環境として保全され、保護運動なども展開されている。アカテガニの放仔が行われることでも有名。作中ではこのアカテガニをミサゴが捕食し、さらにタカヒロにプレゼントする描写もある。
城ヶ島
三浦半島南端に位置する島で、城ヶ島大橋によって渡ることができる。作中では年始のご来光を待つ場所として登場した。
荒崎
小網代湾の北に位置する岬。荒崎の駐車場の先にある「夕日の丘」は日没のビューポイントとしても有名である。
岩堂山
三浦市における最高峰。とはいえ標高はわずか80mほどであり、山頂直下まで畑とゴミの処分場が迫る、丘と言った方が適切な場所でもある。観光地としては魅力に乏しいが、三浦半島南部を一望できるビューポイントでもあり、具体的に岩堂山と言及されることは無かったものの作中においても何度か登場した。
野毛町(野毛商店街)
JR桜木町駅の山側から野毛山にかけての地域。横浜みなとみらい21地区が再開発される以前はこちらの方が賑わっており、ヨコハマ本来の猥雑で活気のある町としての雰囲気は現在も健在である。作中においては第0話(の読み切り)の時点でアルファがコーヒー豆を買い出しに来た「ヨコハマの町」は野毛山からMM地区へと降りる紅葉坂(もみじ坂)の途中から見たランドマークタワー(の基部が水没した姿)などから野毛の町であることが明らかにされ(紅葉坂商店街という看板も登場している)、その後も度々登場し、最終回においてはコーヒー豆を扱う雑貨屋の店員として、転職したと思われるマルコが登場している。
横浜ランドマークタワー
みなとみらい地区のシンボルとして1993年に開業した超高層建築物。作品世界においては海面上昇によってその基部が水没しているものの構造物自体は健在であり、アルファ自身も「いつか一番上まで登ってみたい」と言わしめている。結局最終回までに登る描写は無かったものの、いざ登るとなればその道程は岩堂山に登るよりは明らかに困難なものとなるであろう。なお頂上(?)部には人の生活があるらしき描写も見える。
馬堀海岸
国道16号沿いの護岸の絵は何度かTVなどのメディアにも登場している。天候次第では東京湾奥部を一望できるロケーションとしても有名。作中においては過去に小海石先生がミサゴと名付けられた水面効果艇を駆る様子が描かれており、ここから東京湾最奥部の千葉県船橋市沖合いを目指していた。
ららぽーとスキードームSSAWS(ザウス)
かつてバブル景気華やかなりし頃に建造され、1993年より千葉県船橋市で営業していた全天候型スキードーム。上記の水面効果艇ミサゴを駆るエピソード(28話)において、その特徴のある姿が目的域近傍のランドマーク(冠水遺構の類)として登場する。ただし、現実におけるザウスは同話が1996年に掲載された後、2002年に経営不振によって閉鎖され、20032004年に施設も解体されてしまったため、ヨコ出し世界は「ザウスが倒産または取り壊されなかった未来」を描いた「ifもの」と見ることも可能である。
横須賀市街
古くは旧帝国海軍鎮守府がおかれ、現在も米軍自衛隊基地防衛大学校などがおかれる軍都であるが、作品世界においてはその市街地はほぼ全域が水没している。また横須賀の地名も残らず「北の町」として登場する。水没した横須賀市街の光を見てアルファが涙を流すエピソードでは横須賀中央公園が登場した。
大崩
長者ヶ崎から国道を挟んで山側の崖。作中では「北の大崩」として登場する。作中においては、アルファとアヤセ(とカマス)、またアルファとターポンが初めて対面した場所でもある。小海石先生の姓の由来とされる子産石もすぐ近くにある。
道志みち
国道413号。アルファが徒歩旅行において歩いた山道であり、この道を通って山中湖畔の三国峠まで至ったものと考えられる。道志みちは、宮ヶ瀬ダムによって水没する以前の中津川渓谷と並び、南関東圏におけるドライブおよびツーリングコースとして定番の地域であり、宮ヶ瀬ダム竣工以前はダート(未舗装路)や線形の急な個所も残る山道であった。ダム建設と連動する形でのちの宮ヶ瀬湖周辺では大規模な道のつけ替えや改修などが進行し、道志みちもこれに前後して舗装の進行や一部の線形改修などが行われ「道が変わってゆく」ことになるのだが、作中において道の付け替えについては言及されるものの、厚木方面から清川村を経由して道志村を目指す以上は必ず湖畔を通るはずの宮ヶ瀬湖は登場しないなど、「現実には既に無いはずのものが登場する」ザウスとは逆に「あるべき筈のものが登場しない」宮ヶ瀬湖など、幾つかの疑問を残す形となっている。
三国峠
山梨県南都留郡山中湖村に存在する、富士山および山中湖を一望できる峠。峠の手前にはつづら折れとともに駐車スペースが設けられ、地図によってはパノラマ台として載っている。作中でアルファはここで焼きトウモロコシ屋台のアルバイトをして路銀を稼いでおり、富士山を望む風景と道の曲がり具合は現実そのままである一方、噴火したかあるいは永久凍土の大幅な縮小によると思われる富士山の変貌ぶりなど、現在と異なる姿も描写されている。
大垂水峠
甲州街道国道20号)の峠。神奈川県相模湖町と東京都八王子市の境でもある。眺望などは得られず特に見るべきもののない峠だが、バイクの走り屋にとってここは1980年代には西東京地域の走り屋小僧のメッカ的な存在であった。特に観光地という訳でもなく、また古来の甲州街道はここではなく小仏峠の方を通っていた筈であるが、作中にこの峠を登場させアルファに徒歩で越えさせた理由としては、あるいは作者本人のバイク乗りとしての拘りや愛着を覗わせるものとして解釈すべきなのかもしれない。
環状八号線
東京都道311号環状八号線。現代では都内有数の渋滞路線として有名であるが、作品世界においてそのような描写は無い。甲州街道と交差する上高井戸一丁目交差点を環八側はオーバーパスによって抜けるが、作中ではこの高架部分が撤去され、基部のみとなった姿で描写されている。
甲州街道
国道20号。作中に度々登場するココネの行き着けのオープンカフェ「かんぱち辻の茶」は、この甲州街道と環状八号線が交差する上高井戸一丁目交差点、乃至はその付近に存在すると考えられ、生活圏とするココネの行動範囲もこの周辺を中心としているものと考えられる。作中では巨木と化したケヤキ並木が登場するが、現在の甲州街道沿いにもケヤキが植えられており、それらが巨木となった姿を想像してみるのも楽しいかもしれない。
第三京浜道路
国道466号上野毛において環状八号線と接続し、保土ヶ谷インターチェンジへ至る自動車専用道路であるが、作中では既に道路としては供用されておらず、路盤上に軌道を敷設しLRTが運行している様子が描かれている。第一話でココネがカフェ・アルファを目指す際に登場した。おそらく環八から第三京浜線(路面電車?)で保土ヶ谷まで、そこから同僚の車に便乗し横浜横須賀道路で衣笠、以後は下道を徒歩で南下したものと推測される。同ルートを法定速度で巡航した場合に上野毛から三崎へ至るまでの所要時間は2~3時間程度であるが、これを全て下道を使い、凡そ準じる経路で移動した場合には実に半日がかりとなり、もはや単なる通勤や配送業務の域を越え、立派な小旅行といった風情を帯びてくる。
またこの距離を下道で移動したと仮定した場合の距離感や所要時間を考慮した上で、自ら電動スクーターまで購入し度々アルファのもとを訪れるココネの積極性や、買い出しに出たヨコハマの町からココネの家まで行ってみようと「ふと思い立つ」アルファの発想の飛び具合、またその思いつきを実際に行動に移して走って来てしまうバイク乗りならではの(誉め言葉としての)バカさ加減など、その発想の根底には南関東に居住し最小排気量の原付スクーターからステップアップして次第に行動範囲を広げていったこの地域のバイク乗りの生態(すなわち作者本人の実経験)が濃厚に反映されていると言える。
関越トンネル
関越自動車道谷川岳を貫く長大なトンネル。作中ではアヤセが徒歩で踏破した。中間地点には懐中電灯や軽食などを販売する店がある。トンネルを抜けた瞬間にアヤセ(とカマス)が新潟平野関東平野の空気の匂いの違いを知覚する描写があるが、これなどもバイク乗り、あるいは自転車乗りに特有の感覚といえる(徒歩では移動速度が遅すぎるため、を越した瞬間の温度や湿度・匂いの変化をバイクや自転車ほど顕著には感じ難い)。
箱根峠
東海道(国道1号)の峠。本編には登場しないが、連載終了後に掲載された短編『峠』において、もはやその存在すら定かではないカフェ・アルファを目指す主人公の少女が、この峠を越えて「東国入り」した。この際の背景には、箱根峠から眺めた二子山の特徴ある稜線の形が忠実に描写されている。
黒崎の鼻
三浦半島から相模湾に突き出した部分が、その形状から黒崎の鼻と呼ばれている。隆起した岩が侵食されて出来た切り立った崖は背の低い植物に覆われ、作中を思わせる風景を見ることが出来る。
黒崎の鼻
黒崎の鼻

[編集] 「紀行もの」としてのヨコハマ買い出し紀行

本作品は概ね主人公アルファの暮らす三浦半島周辺を中心とした関東圏を舞台としており、環境が大きく変化した未来を描いていながら、実在する(あるいは、実在した)地名や地形・風景・構造物などが随所に登場する。水没した横浜市街中心部を除くと、現在観光地として有名な地域が現れることはめったに無いものの、地域に密着した文字通りの「紀行もの」としても見ることができる。

そしてそのような「現地に行った人でないとほとんど気付かない」という細やかな描写がたっぷり盛り込まれた「絵柄とは裏腹に濃厚な情景描写」は、過去の漫画に類を見ない魅力を与えている。

[編集] 時間の流れ

物語には、主人公を含め何らかの手段・形で旅をしている・あるいはかつて旅をしていた人物が多数登場する。また全ての人物が年月によって移ろいゆく(その内面の変化も含めた)人生という旅を、「見て歩く者・または者たち」というテーマの表現に際し、彼らを取り巻く情景をリアリティをもって捉える描写を抜きにしては語ることはできない。

長期連載された漫画の場合、物語の進行を通じて登場人物の性格付けが変化して行く事は少なくは無いが、この作品の10年を超える連載における「移ろい」では、肉体的にはほぼ変化のない「ロボットの人」を含めて、その内面的な成長あるいは変化までもが描写されており、単なるストーリーの都合上に拠らない味わいを与えている。

[編集] 現実世界との接点

往々にして「台詞が極度に少ない」「線が少なすぎる」「白すぎる」「ただの雰囲気漫画」などとさえ揶揄されがちな本作ではあるが、こと薄明薄暮の、時に濃淡を、時にざっくりとした線を使い分けた描写や、移動にまつわる距離感や時間、あるいは緩々と過ぎゆく日々の表現などは、作者の実体験に基くとも見られる。

ちょっとした出来事や仕草の表現など、一見するとのんびりとした雰囲気の中にあっても、そこに盛り込まれている情報量は意外なほど多く、読み返すたびに見落としていた描写に気付くことも少なくない。これらは類似する経験をもち共感できる感性を持つ読者には、登場人物の主観とは別の視点から、「紀行文」としての楽しみ方ができる漫画である。

特にこれと言って現地を知らない、あるいはそういった経験の無いファン層の中には、幻想的ともいえる作中の風景描写を、完全なる作者の創作や、遠い異国の風景などと捉えられることもある。事実、初期のファンダムにおいてはこれらの風景を北海道沖縄、あるいは海外などに求める見解が主流であった。だが、単行本でも作者がそのようなファンレター等の存在を取り上げて「(どこにでもある)ありふれた風景です」と訂正した例がある。

作品世界の設定によって水没した横浜横須賀の市街、馬堀海岸、三崎周辺の海岸線付近の描写なども、実在の風景をベースに描かれており、土地鑑さえあれば現実との連続性とギャップの両側面を楽しめるという意味でも、紀行ものとしての面白さを膨らませているといえる。

[編集] 出版物

[編集] 単行本

[編集] アニメ

vol.1,2はゴンチチ、-Quiet Country Cafe-はChoro Clubがそれぞれ音楽を担当している。

  • 『ヨコハマ買い出し紀行 vol.1』(1998年3月・VHSおよびLD)
  • 『ヨコハマ買い出し紀行 vol.2』(1998年12月・VHSおよびLD)
    なお、2000年7月に『vol.1』『vol.2』をまとめて収録したDVDが発売されている。
  • 『ヨコハマ買い出し紀行-Quiet Country Cafe-#1』(2002年12月・VHSおよびDVD)
  • 『ヨコハマ買い出し紀行-Quiet Country Cafe-#2』(2003年3月・VHSおよびDVD)
    こちらは1期とはかなり違う作風で作られている。

[編集] 主題歌

  • ヨコハマ買い出し紀行-Quiet Country Cafe-

エンディングテーマ「ふわふら」、song by:アルファ、作詞:山田ひろし、作曲:岩崎琢、Cho:松浦有希、Guitar:笹子重治

[編集] CD

  • 『ヨコハマ買い出し紀行』(1996年2月)-FMラジオ番組『HOLY Shine In Naked(Shine in Naked)』内で放送されたラジオドラマなどを収録したCD。2002年10月に廉価版発売。
  • 『ヨコハマ買い出し紀行 2』(1997年3月)-ドラマCDの第二弾。2002年10月に廉価版発売。
  • 『ヨコハマ買い出し紀行 ベスト・サウンドトラックス』(1998年7月)-1998年OVA版のサウンドトラックゴンチチが作詞作曲を担当。2002年10月に廉価版発売。
  • 『ヨコハマ買い出し紀行 3』(2002年12月)-ドラマCDの第三弾。新シリーズ。
  • 『ヨコハマ買い出し紀行-Quiet Country Cafe-オリジナル・サウンド・トラック』(2003年1月)-2003年OVA版のサウンドトラック。

[編集] その他

  • 『ポストカード・ブック ヨコハマ買い出し紀行』ISBN 4063300412(1997年9月)
  • 『ヨコハマ買い出し紀行-芦奈野ひとし画集-』ISBN 4063301966(2003年3月)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

星雲賞コミック部門
第37回 2006年度
陰陽師
夢枕獏岡野玲子
第38回 2007年度
ヨコハマ買い出し紀行
芦奈野ひとし
第39回 2008年度
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