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缶コーヒー - Wikipedia

缶コーヒー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

UCC COFFEE ミルク&コーヒー
UCC COFFEE ミルク&コーヒー

缶コーヒーかんコーヒー)とは、に入っていて、すぐに飲むことのできるコーヒー飲料である。主に自動販売機などで販売されている。郊外のスーパーマーケットディスカウントストアなどでは、24~30本入りの箱単位で売られることも多い。

目次

[編集] 歴史

1958年(昭和33年) 外山食品が『ダイヤモンド缶入りコーヒー』を発売したとされる[1]。しかし同社は1964年に倒産してしまったため詳細は不明。

1965年(昭和40年) 島根県浜田市のコーヒー店主・三浦義武によって開発された『ミラ・コーヒー』が世界初の缶コーヒーともいわれるが短期間で生産中止となっており、これも詳細は不明である[2]。当時、浜田市中において盛んだった製缶技術を駆使して製造されたもので、半年後に開缶しても混濁する事がなかったという。

1969年(昭和44年) 上島珈琲本社(現:UCC上島珈琲)が、コーヒー牛乳にヒントを得て日本初のミルク入り缶コーヒー『UCCコーヒー ミルク入り』を発売した。当時は瓶入りのコーヒー牛乳が外出先で購入できる一般的なコーヒー飲料であったが、缶コーヒーの登場によって人々は自由にコーヒー飲料を持ち歩くことができるようになった。ただし、UCCの缶コーヒーは、乳固形分の比率が高く乳飲料に該当する。コーヒー5g以上というコーヒー規格の缶コーヒーは、1972年に発売されたポッカレモン(当時)の『コーヒープレミアムタイプ』である。

1973年(昭和48年) コーヒーは温めても冷やしても飲まれることに目をつけたポッカは、冷却と加熱の切り替えが可能な、ホットアンドコールド式自動販売機を開発した。ホットアンドコールド式自動販売機の普及によって、夏の飲み物であった缶コーヒーは通年商品となり、市場は大きく拡大した。

1983年(昭和58年)には1億ケースを突破。

2001年(平成13年)頃から、300g前後のボトル缶が登場。

2003年(平成15年)頃から、190gの寸胴型ボトル缶が登場しており、主にプレミアム志向のコーヒーがやや高めの価格設定(1本140円前後)で販売されている。これらボトル缶は、缶に直接口をつけることに抵抗感のある女性向けに開発されたものである。また、リキャップが可能であり、190g寸胴型ボトルでは熱を通しにくいシュリンクを採用し、持ちやすさなどの工夫もなされている。徐々に各社の缶コーヒーはボトル缶へと移行しはじめている。

[編集] 「コーヒー」表示

1977年(昭和52年) 自販機の普及による販売競争激化に加え、一昨年前に発生したブラジル大霜害の影響で生豆価格が高騰していたことから、極端に低濃度の製品や代替物を使用した粗悪品が市場に流通してしまう恐れが生じた。このため業界団体は製造規約を制定、のちに公正取引委員会が正式に告示した『コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約』に基づき次の3種類に区分された。

製品内容量100グラム中の生豆使用量

コーヒー
5グラム以上
コーヒー飲料
2.5グラム以上5グラム未満
コーヒー入り清涼飲料
1グラム以上2.5グラム未満

喫茶店などで供されるコーヒーの場合、100グラム中の生豆使用量は約10グラム程度とされるため、濃度規格をもっと上げるべきだという意見も挙げられていた。しかし、飲用するシチュエーションが異なる缶コーヒーとレギュラーコーヒーを同列で比較するのは無理があるという観点から、当範囲内に収めるのが妥当という結論に至っている。また、複雑化を避けるため当初は2区分にとどめる予定であったが、低濃度の瓶入りコーヒーも対象に含まれることになり3区分へと範囲が拡げられることとなった。

[編集] その他の定義

  • 製品に乳固形分を3%以上を含むものは『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』に基づき「乳飲料」となる(『カフェ・オ・レ』『カフェ・ラッテ』『コーヒー牛乳』など)。
  • 糖類乳製品乳化された食用油脂を使用したものに「ブラック」と表示してはならない。ただし糖類のみを使用したものに限り「加糖」と併記することで「ブラック」と表示する事ができる。
  • 缶に「ミルク入り」などと表示する場合は、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上の成分を有する乳製品がコーヒー飲料の内容重量に対し5%以上使用されていなければならない。
  • ブルーマウンテン』のように特定種のコーヒー名を表記した場合は、他種のコーヒーを混合してはならない。
  • モカ・ブレンド』のように特定種のコーヒー名と混合した表記の場合は、その種のコーヒーを51%以上使用していなければならない。

[編集] 容器の種類

350g缶
清涼飲料水に比べ、コスト上の問題があるためか、コーヒーとしての350g缶はまれで、「コーヒー飲料」としてもごく少数にとどまる。
ロング缶
250g前後の細長い缶を使用したコーヒー。こちらも「コーヒー」は少なく、「コーヒー飲料」が主流となる。
ショート缶
190g前後の缶を使用したコーヒー。最も一般的なので、あえてショート缶とは呼ばれないことが多い。
デミタス缶
170g前後の缶を使用したコーヒー。但し、190g缶のデミタスもある。
ボトル缶
190g前後のショート缶に蓋をしたタイプのものと、300g前後の寸胴な形状をしたものがある。リキャップ缶とも呼ばれる。

[編集] 製造技術

缶内コーティング
缶コーヒーの開発初期、成分中のタンニンと鉄イオンの錯体反応によってミルクコーヒーが黒化変色する問題が発生した。多くのコーヒー原料供給メーカーは製缶技術のノウハウを持たなかったため試作段階で頓挫したが、上島珈琲は缶内を特殊コーティングすることによってこの問題を克服し缶コーヒーの発売に成功した。
微生物制御
自販機による加温販売に伴い、耐熱性細菌(C. thermocellum)による酸敗事故が多発。加熱殺菌による殺滅は実質不可能なため、研究の結果シュガーエステル(成分表記上は乳化剤)の添加による抑制がとられるようになった。

[編集] 主なメーカー

[編集] 世界の普及状況

缶コーヒーは日本などアジア独自のもので、欧米には普及していない。あっても日本でいう350ml相当の缶にミルク・糖分多めの商品が日系やアジア系のメーカーから数種発売されている程度である(※近年スターバックス社により缶入り、瓶入りのコーヒーが売られるようになった)。これは日本のように、屋外にも莫大な数の自動販売機(清涼飲料用)が設置されている国が世界的に類がなく、また「アイスコーヒー」という文化(欧米ではホットで飲むことが主流。但し、近年米国においてはスターバックスの成功により、都市部では定着している)があまり馴染みがないためでもある。アメリカでは、コーヒー豆をミルで挽いた粉状のもの(レギュラーコーヒー)を缶詰にしたものを「Can Coffee」と呼ぶ(⇒和製英語)。なお、米国において、缶紅茶は、ごく一般的な飲料として普及している。

[編集] 缶コレクター

日本には海外のビール缶コレクターズクラブ『Brewery Collectibles Club of America』のようなコーヒー缶コレクター団体は存在しない。しかし個人単位でコレクターは数多く存在し、Web上などでそのコレクションの一部を見る事ができる。しかし、希少な缶が高い金銭価値を持っていたとしても、それらが詳しく体系化されるような活動はあまり盛んではない。また、日本以外の国においてコーヒー缶コレクターが存在する可能性があるが、存在したとしてもごく少数にとどまると推測される。

[編集] 参考

この程度の普及状況の為、缶コーヒーの飲み方で日本人であるかどうか知られてしまう事がある。大韓航空機爆破事件の際の金賢姫は、派遣された日本の外交官が差し入れた熱い缶コーヒーを、息で「ふーふー」吹いてから飲もうとしたために正体を見破られた。本当に飲み慣れた日本人であれば熱くても吹くような習慣は乏しく、シチューなどの食べ方については定着していない欧米式マナー「吹かずに冷めるのを待つ」飲み方が、缶コーヒーについては逆に定着している。

[編集] 脚注

  1. ^ 串間努・久須美雅士 『ザ・飲みモノ大百科』 扶桑社、1998年 ISBN 978-4594024185
  2. ^ しまねがイチバン 『世界初の缶コーヒー』 三浦義武は作家であった故・三浦浩の実父にあたる人物で、司馬遼太郎小島政二郎のエッセイにおいて人柄に触れる記述が見られる。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

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