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ジェレミー・パウエル - Wikipedia

ジェレミー・パウエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ジェレミー・パウエル
Jeremy Robert Powell
福岡ソフトバンクホークス No.49
基本情報
国籍 アメリカ合衆国
出身地 カリフォルニア州ミラダ
生年月日 1976年6月18日(32歳)
身長
体重
196cm
104kg
選手情報
投球・打席 右投右打
守備位置 投手
プロ入り 1994年 4位
初出場 1998年MLB
2001年6月24日NPB
年俸 1億円(推定)
経歴
Template  ウィキプロジェクト 野球選手

ジェレミー・パウエルJeremy Robert Powell1976年6月18日 - )は、福岡ソフトバンクホークスに所属するプロ野球選手投手)。2005年の登録名は「JP」。

目次

[編集] プレースタイル

オーバーハンドのフォームと2m近い巨体からの角度のある直球ツーシームと縦に大きく割れるカーブが特徴。他に球種スライダーチェンジアップ。打者の左右問わずインコースに投げるのを恐れず、ストレートを内外に投げ分けて、カーブの緩急と落差で三振を取るのが基本的な投法。2006年シーズンからはストレートのほかツーシームシュート)を対右打者に、カットボールを対左打者に使い分けている。

軸である直球とカーブはいずれもストライクをとれる制球力があるが、右打者のインハイに直球を投げて、その後カーブやスライダーで腰を引かせて討ち取る、ケンカ投法的な投球が特徴。そのため死球が多く、乱闘寸前になることもしばしばある。2006年山崎武司に死球を与えた際、山崎は激怒し、指を2本示して2回目だぞとパウエルに詰め寄った。その際も「彼もプロ野球選手ならわかるだろ、これは避けれらないこと」と言って、まったく悪びれることはなかった。2008年度には3回目の死球を与えて乱闘騒ぎになったが、悪びれることなく「同じ相手から3本ホームラン打つこともあれば、3度死球を受けることもある、これがベースボールだろ。ヤマサキのような選手が威嚇すれば、次は内角に投げない投手もいるだろうが、私はそんなに甘くない」と語った。

スタミナも豊富な完投型の投手で、先発ローテーションの柱として中4・5日の間隔で回ることができるタフネスも持つ。怪我にも強く、2007年に膝を痛め手術するまでは毎年ローテーションに入りながら大きな故障はなかった。性格は激情型だが、「意気に感じて」投げるタイプである。外国人投手にはあまり見られない特徴と、外国人投手に良く見られる特徴の両方を併せもっていると言える。

[編集] 経歴

1994年、ハイランズ高からドラフト4巡目(全体112位)でモントリオール・エクスポズに指名され入団。1998年にメジャーデビュー。2000年のオフにサンディエゴ・パドレスに移籍した。

2001年、3Aポートランドでプレーした後、6月に大阪近鉄バファローズに入団。この年は4勝しか出来なかったもののローテーションを守り、リーグ優勝に貢献。9月29日ロッテ戦で日本シリーズのための練習として打席に立つと、送りバントが結果的に内野安打となったため、来日初打席初安打を記録している。

2002年には17勝10敗、182奪三振で最多勝最多奪三振最高勝率のタイトルを獲得、ベストナインにも選出された。この年はセ・リーグでもヤクルトスワローズケビン・ホッジスが17勝で最多勝となっており、セ・パ両リーグで外国人投手が最多勝に輝くという史上2度目の快挙に貢献した。

近鉄とオリックスの合併に伴い、2005年オリックス・バファローズでプレー、同時に仰木彬元監督からの勧めで登録名をJPに変更する。開幕前には川越英隆ケビン・バーン(ケビン)と共に先発三本柱として期待され、見事その期待に応えてチーム最多の14勝を挙げた。同年から始まったセ・パ交流戦では、5月11日巨人戦で交流戦における投手第1号本塁打を東京ドームバックスクリーン内海哲也投手から放った。シーズンオフ、オリックスとの残留交渉が難航し、12月2日に自由契約選手となる。12月15日、巨人入団が発表された。巨人ではニックネームによる登録を当時は認めていなかったため、再び登録名を本名に戻している。

2006年は開幕から先発ローテーションに入り、3試合連続完投勝利、その内はじめの2回は2連続完封を含む4連勝で4月の月間MVPを獲得。5月9日オリックスとの交流戦でも先発。8回4失点自責点3と好投し、古巣から勝利を挙げた。6月2日西武第4回戦東京ドームでは、高山久に頭部死球を与え、危険球退場となった。後半戦は勝ち星をのばせなかったが、2年連続で二桁勝利をあげた。

2007年キャンプ中に右の半月板を損傷し、アメリカに帰国して修復手術を受けた。フェニックスのトレーニング施設でリハビリを続け、5月28日に再来日。首脳陣の2軍投手の谷間先発起用、また本人の「完璧な状態に戻したい」という意向も重なり、1軍復帰はオールスター明けの7月28日広島戦にまでずれ込んだ(5回を投げて3失点。援護に恵まれず復帰を白星で飾ることはできなかった)。度々打ち込まれ手術の影響が心配された反面、広いナゴヤドームでは9イニングを1失点に抑え、9三振を奪っている(勝ち星は付かず)。結局レギュラーシーズンで勝ち星を挙げることはできず、来日後初の未勝利に終わった。11月29日デーモン・ホリンズジェレミー・ゴンザレス(GG)と共に、来季の契約を結ばないことを通告され、11月30日自由契約公示された。二重契約問題(下記参照)を経た後に2008年3月4日福岡ソフトバンクの支配下選手として公示された。

2008年、開幕には間に合わなかったが4月15日に二重契約問題の相手となったオリックス相手に登板し、6回を2本の本塁打の2失点に抑え勝利をおさめる。

[編集] 二重契約問題

2008年1月11日に古巣オリックス・バファローズが入団合意を発表。年俸約5,500万円(推定)+出来高払いの単年契約で、背番号は50番となり、メディカルチェックを経て近日中に正式契約を結ぶ予定だった[1]。それまでの球界の常識として「獲得を発表した選手には手を出さない」のが暗黙のマナーであったが、1月29日福岡ソフトバンクホークスが獲得の発表を行った[2]。これに対しオリックスは「問題がある」としてパシフィックリーグ連盟(以下パ・リーグ)に異議申し立てを行った[3]

オリックス側は「球界の暗黙の良識の根幹を揺るがす事態」であり、22日朝にファクスで送られた自署入りの契約書写しが契約合意の根拠と主張した[4][5]。球団本部長の中村勝広も「寝耳に水。契約の盲点を突かれた。パウエルは二重合意で、ソフトバンクは獲得を取り下げてほしい」とソフトバンク側の不当性を訴えた[6]

一方ソフトバンク側は「日本では統一契約書が正式な所属を決定付ける唯一のもの」と主張。署名・押印も済ませた統一契約書を持っていることを根拠とした[7]

オリックスの異議申し立てを受けてパ・リーグは1月30日に両チームから事情聴取を行い、その結果パ・リーグ会長の小池唯夫は「両球団とも正当な手続きを踏んでおり、二重契約である可能性が濃厚」との判断を示し、両球団で持ち帰り再検討するように指示した[8]。この判断に対しオリックス側は契約の有効性が認められたことから「前進した」と評価したものの、「こんなことがまかり通れば『外国人天国』になる」と懸念を示し[9]、ソフトバンク側は「オリックスよりも有効性は強い」との主張が認められない格好となったために戸惑いを見せた[10]

その後両球団での解決の進展が全く見出せなかったため、2月4日に小池はソフトバンクの支配下選手登録申請を認める見解を示し、両球団に勧告した。球界を混乱させたという点を重視し、申請の受理は6月23日以降として実質的に開幕からの3か月間の出場停止措置を取った(ただしオリックス側の合意があればそれ以前の受理も可能とした)。この勧告に対しオリックス側は「何の解決にもならない」と不満を示し、ソフトバンク側も受け入れる姿勢を見せたものの二重契約との印象を植え付けたとしてパ・リーグを批判した[11]

2月5日にはパウエルが来日し記者会見を行い、二重契約はしておらずソフトバンクとの契約は正当だと主張。オリックスがフィジカルチェック後にチーム側に有利になるよう契約内容の変更を求めてきたとし、「不誠実で道義に反していた」と契約を破棄した理由を説明した[12]

結局この勧告でも解決には至らず、2月13日オリックスが「球界に悪しき前例を残さないため」としてコミッショナー代行・根来泰周あての提訴状を提出した[13]。この提訴を受けて根来は2月21日に小池が提示した勧告を提示を一旦白紙に戻すことを表明し、改めて判断を示すこととなった[14]。同日にはパウエルの代理人が会見し、オリックス側がパウエルにファクスした文書は統一契約書でサインが必要な1、4ページのみで2、3ページは提示すらされておらず「手続きには法的に非常に問題がある」と主張した[15]

根来は2月27日、両球団から提出された支配下選手登録申請をいずれも不承認とした上で、改めてパウエルと合意を取り付けた球団の申請を認めるようにパ・リーグ会長の小池に要請。小池もこれに従うこととなり、パウエルのソフトバンク入団が事実上確定した。根来は今回の事件を契機として外国人との契約についての対策を考慮するよう実行委員会に提案することを明らかにした[16]。ソフトバンクは実質的に主張を認めてもらえたとして勝訴と受け止め[17]、提訴が結果的にあだとなったオリックスは中村が「予想外、最悪の結末だ」と語ったものの、コミッショナー代行の判断ということもあり受け入れる姿勢を示した[18]

パ・リーグは前回の反省から支配下選手登録には統一契約書のほかにパウエル本人の意思確認文書が必要とし[19]、ソフトバンクが改めて申請を提出。3月4日支配下選手として公示され、正式に福岡ソフトバンクの所属となる。

[編集] エピソード

  • 2001年からの背番号25は、自身が来日したときの年齢に由来する。
  • 巨人移籍で登録名を本名に戻したが、巨人内でもJPと呼ばれることがあった。
  • 本人によると、持ち球の落差のあるカーブは少年時代でしか投げていなかったものだったが、プロ野球でその必要性を感じ、解禁したのだという。
  • ソフトバンクとオリックスの二重契約問題において、清原和博に「登録名は『オカネ』や」と批判された。

[編集] 年度別投手成績

[編集] メジャーリーグ

年度 チーム 背番
登板 先発 完投 完封 勝利 敗戦 セーブ 投球
被安
被本
塁打
与死
与四
奪三
失点 自責
防御
1998年 エクスポズ 49 7 6 0 0 1 5 0 25.0 27 5 4 11 14 25 22 7.92
1999年 17 17 0 0 4 8 0 97.0 113 14 8 44 44 60 51 4.73
2000年 11 4 0 0 0 3 0 26.0 35 6 0 9 19 27 23 7.96
通算成績 35 27 0 0 5 16 0 148.0 175 25 12 64 77 112 96 5.84

[編集] 日本プロ野球

年度 チーム



































2001年 近鉄 25 14 0 0 14 0 0 4 5 0 .444 365 80 84 10 40 6 52 0 1 51 44 4.95
2002年 32 5 0 27 4 3 17 10 0 .630 899 216.2 205 21 41 21 182 2 1 94 91 3.78
2003年 28 4 0 24 1 0 14 12 0 .538 822 196 192 22 63 10 165 1 2 92 90 4.13
2004年 24 6 0 18 0 0 8 8 0 .500 721 170.2 173 22 55 8 112 6 0 85 74 3.90
2005年 オリックス 28 5 0 23 2 0 14 12 0 .538 839 200 201 20 55 10 160 1 0 86 78 3.51
2006年 巨人 42 28 3 0 25 2 2 10 10 0 .500 783 187.1 196 9 31 11 131 4 2 77 69 3.31
2007年 7 0 0 7 0 0 0 2 0 .000 191 40.1 52 3 12 7 20 0 0 27 26 5.80
通算成績 161 23 0 138 9 5 67 59 0 .532 4620 1091 1103 107 297 73 822 14 6 512 472 3.89
  • 表中の太字はリーグ最高

[編集] タイトル・表彰・記録

[編集] 個人記録

  • 初登板・勝利:2001年6月24日・対ダイエー15回戦・大阪ドーム
  • 初完投勝利・完封:2002年6月1日・対オリックス9回戦・大阪ドーム
  • 毎回14奪三振:2005年4月15日・対西武3回戦・スカイマークスタジアム

[編集] 背番号

[編集] 脚注

  1. ^ http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/headlines/20080111-00000031-kyodo_sp-spo.html
  2. ^ ジェレミーパウエル投手 獲得のお知らせ(福岡ソフトバンクホークスのプレスリリース)
  3. ^ 時事ドットコム (2008-01-29). "オリックス、連盟に異議申し立て=パウエル問題で-ソフトバンク側は正当性主張" 2008年1月29日閲覧.
  4. ^ 毎日新聞 (2008-01-30). "パウエル獲得:オリックス「リーグ会長の裁定求める」" 2008年3月4日閲覧.
  5. ^ ただし、野球協約では正式契約は球団側が本人と対面して結ぶことが必要で、厳密には仮契約となる。
  6. ^ 毎日新聞 (2008-01-30). "パウエル獲得:ソフトバンクの発表にオリックスが異議" 2008年3月4日閲覧.
  7. ^ 毎日新聞 (2008-01-30). "パウエル獲得:ソフトバンク「統一契約書が所属決める」" 2008年3月4日閲覧.
  8. ^ 毎日新聞 (2008-01-31). "パウエル契約問題:パ側は「二重契約濃厚」…両球団に聴取]" 2008年3月4日閲覧.
  9. ^ 毎日新聞 (2008-01-31). "パウエル契約問題:「前進」も「一歩も引けぬ」…オ軍" 2008年3月4日閲覧.
  10. ^ 毎日新聞 (2008-01-31). "パウエル契約問題:SBも戸惑う…「原本あり有効性強い」" 2008年3月4日閲覧.
  11. ^ 毎日新聞 (2008-02-05). "パウエル投手:6月23日以降ソフトバンクに パ会長勧告" 2008年3月4日閲覧.
  12. ^ 毎日新聞 (2008-02-06). "パウエル問題:本人が会見「二重契約はしていない」" 2008年3月4日閲覧.
  13. ^ 毎日新聞 (2008-02-14). "プロ野球:パウエル契約問題 オリックス、コミッショナー代行に提訴状" 2008年3月4日閲覧.
  14. ^ 毎日新聞 (2008-02-21). "パウエル問題:小池会長の勧告を白紙に…根来代行明らかに" 2008年3月4日閲覧.
  15. ^ 毎日新聞 (2008-02-21). "パウエル問題:本人の代理人「オリックスは不当」と強調" 2008年3月4日閲覧.
  16. ^ 毎日新聞 (2008-02-27). "パウエル:ソフトバンク入団確実に 二重契約問題が決着" 2008年3月4日閲覧.
  17. ^ 毎日新聞 (2008-02-27). "パウエル:「一日も早くチームに」ソフトバンクの竹内氏" 2008年3月4日閲覧.
  18. ^ 毎日新聞 (2008-02-27). "パウエル:「最悪の結末だ」オリックス・中村本部長" 2008年3月4日閲覧.(毎日新聞)3月4日閲覧
  19. ^ 毎日新聞 (2008-02-27). "パウエル:契約書だけでなく意思確認文書も パ事務局長" 2008年3月4日閲覧.

[編集] 関連項目


先代:
松坂大輔
パ・リーグ最多勝投手
2002年
次代:
斉藤和巳
先代:
松坂大輔
パ・リーグ最多奪三振
2002年
次代:
松坂大輔
先代:
今岡誠
下柳剛
セ・リーグ月間MVP(投手)
2006年4月
濱中治(野手)
次代:
A.リグス
川上憲伸


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