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鶴見線 - Wikipedia

鶴見線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

鶴見線(つるみせん)は、以下の路線から構成される東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線幹線)である。

目次

[編集] 路線データ

路線図
路線図
  • 路線距離:総延長9.7kmで以下の3路線からなる。終点側の■で示した色は以前運行されていた103系電車方向幕の色である(写真を併せて参照)。
    • 東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者):
      • 鶴見駅~(赤)扇町駅 7.0km
      • 浅野駅~(青)海芝浦駅(海芝浦支線) 1.7km
      • 武蔵白石駅~(黄)大川駅(大川支線) 1.0km
        • 大川支線の正式な起点は武蔵白石駅だが、武蔵白石駅には大川支線のホームはなく、大川支線の列車は安善駅で分岐する。
    • 日本貨物鉄道第二種鉄道事業者):
      • 浅野駅~扇町駅(4.0km)
      • 浅野駅~新芝浦駅(0.9km)
      • 武蔵白石駅~大川駅(1.0km)
  • 軌間:1067mm
  • 複線区間:鶴見駅~浜川崎駅、浅野駅~新芝浦駅
    • このほか、浜川崎駅~扇町駅間は鶴見線の電車線と貨物線が並行する単線並列区間である。
  • 電化区間:全線(直流1500V)
鶴見行方向幕は地色が白
鶴見行方向幕は地色が白
弁天橋行も白
弁天橋行も白
扇町行は赤
扇町行は赤
武蔵白石行も赤
武蔵白石行も赤
海芝浦行は青
海芝浦行は青
大川行は黄色
大川行は黄色
鶴見線表示は白
鶴見線表示は白

[編集] 運行形態

[編集] 地域輸送

全列車が各駅停車で、ほぼ全列車が鶴見駅を発着する。ラインカラーは黄色である。

弁天橋駅以東の沿線は、安善駅の北側の一部を除くと、純然たる工業地帯であり、利用者はほとんどが工場の従業員である。そのため工場通勤客輸送に特化したダイヤが組まれており、朝夕に比べて昼間は利用者も少ない。列車数も鶴見~浅野間は昼間は20分間隔で朝夕は5~10分間隔、浅野~扇町・海芝浦間は昼間は20分~1時間間隔で朝夕は10~20分間隔で運転、と、かなり少ない。特に、大川支線の大川駅には日中(9~16時台)に1本も列車が来ない。

1994年12月のダイヤ改正でJR東日本の東京圏のほとんどの路線が「土曜ダイヤ」を「休日ダイヤ」と共通化した中、鶴見線では利用者の大半は工場への通勤客の輸送であるがために、2004年3月のダイヤ改正まで長らく「土曜ダイヤ」が残されていた。その後「休日ダイヤ」と共通化し、現在は後述の臨時列車で対応している。

海芝浦駅にある東芝京浜事業所が土曜・休日が出勤日となる際や平日昼間に終業する際に、通常の列車本数では不足するため、鶴見~海芝浦間に臨時に列車を増発することがある。これはファンの間では「東芝京浜事業所の通勤客のための臨時列車」という意味合いから「東芝臨」と呼ばれている。この臨時列車は時刻表には掲載されておらず、運行日近くになると各駅の時刻表付近に掲出される。ダイヤ上も臨時列車扱いになっており、103系までは列車番号に「臨」を掲げて運行されていた。

[編集] 改札業務

浜川崎駅に設置された出場用簡易Suica改札機
浜川崎駅に設置された出場用簡易Suica改札機

1971年に大幅な合理化が行われ、鶴見駅以外の各駅の出改札業務が全て無人化された。そのため、鶴見駅にはJRと他社私鉄の連絡改札口と同様の中間改札口が設けられており、同駅で乗り換えて鶴見線の各駅へ向かう場合の運賃精算は同駅で行う形となる。浜川崎駅南武支線に乗り換える場合は、降車駅で精算する。しかし、Suicaシステムの導入により各駅には簡易Suica改札機が設置されたため、当初Suicaイオカードで乗車した場合には鶴見駅の自動改札機のSuicaセンサーに触れないようにとの注意書きがあった。その自動改札機は後に修正が加えられ、Suicaセンサーにタッチしないと改札口が閉まるようになってしまったが、タッチした場合でも自動改札機の画面にはその地点での残額が表示されるだけで入出場などの情報は書き込まれないため、横浜~尻手間を鶴見線経由で乗車しても正しく計算・入出場できるようになっている。

一方、浜川崎駅で南武支線と鶴見線を乗り継ぐ場合には簡易Suica改札機のセンサーに触れないようにとの注意書きが掲出してあり、万一触れてしまった場合は降車駅で駅員に申し出ることになる。

ちなみに、鶴見線全駅には近距離の自動券売機が設置されている。こちらではオレンジカードイオカードが利用できるほか、Suicaや相互利用可能なPASMOICOCATOICAへのチャージもできる。ただし、使える紙幣は1,000円紙幣のみである。

[編集] 貨物輸送

沿線が工場の並ぶ京浜工業地帯であるため、化学薬品や石油輸送が盛んである。現在は、扇町駅大川駅からの化学薬品輸送、扇町駅からの工場燃料用石炭輸送(三ヶ尻駅行)、安善駅からの在日米軍横田基地向け石油(ジェット燃料)輸送が行われている。 また、海芝浦支線は定期列車が運行されることはないが、新芝浦東芝向けの特大貨物輸送がまれに行われる。

[編集] 歴史

  • 1926年大正15年)3月10日 - 鶴見臨港鉄道 浜川崎~弁天橋間(2.2M≒3.54km)、大川支線分岐点~大川間(0.7M≒1.13km)が貨物線として開業。弁天橋駅、浅野駅、安善町駅、武蔵白石駅(初代)、大川駅開業。国鉄浜川崎駅に乗り入れ。
    • 4月10日 - 石油支線分岐点~石油間(0.6M≒0.97km)が開業。石油駅(後の浜安善駅)開業。
  • 1928年昭和3年)8月18日 - 浜川崎~扇町間(0.7M≒1.13km)が延伸開業。扇町駅開業。
  • 1929年(昭和4年)3月14日 - 浅野~浜川崎間に渡田駅開業。
  • 1930年(昭和5年)4月1日 - マイル表示からメートル表示に変更(弁天橋~扇町 2.9M→4.8km、石油支線分岐点~石油間 0.7M→1.0km、大川支線分岐点~大川間 0.7M→1.4km)。
    • 10月28日 - 全線電化。鶴見仮~弁天橋間 (2.0km) が延伸開業。鶴見仮~扇町間、安善通~石油間、安善通~大川間での旅客営業を開始。弁天橋駅、浅野駅、渡田駅、扇町駅、石油駅、大川駅で旅客営業開始。鶴見仮停車場、本山停留場、国道駅開業。石油支線・大川支線分岐点を駅に変更し安善通駅(現在の安善駅)開業。
    • 11月15日届出 - 武蔵白石駅(初代)廃止。
  • 1931年(昭和6年)2月1日 - 浜川崎~扇町間に海川崎停留場開業。
    • 3月20日 - 海川崎~扇町間に昭和停留場開業。
    • 5月30日届出 - 海川崎停留場を若尾停留場に改称。
    • 6月14日 - 鶴見仮停車場が移転 (+0.1km)。
    • 7月25日 - 武蔵白石停留場開業。大川駅への支線の起点を安善通駅から武蔵白石停留場に変更 (-0.6km)。
    • 8月15日 - 武蔵白石~渡田間に(臨)海水浴前停留場開業。
    • 12月8日 - 安善通~石油間に安善橋停留場開業。
  • 1932年(昭和7年)6月10日 - 芝浦製作所(現・東芝)の専用線を買収し、浅野~新芝浦間 (0.9km) が開業。末広停留場、新芝浦駅開業。
    • 6月15日届出 - (臨)海水浴前停留場通年化。
  • 1934年(昭和9年)12月23日 - 鶴見~鶴見仮間 (0.1km) が開業。国鉄鶴見駅に乗り入れ、鶴見仮停車場廃止。
  • 1935年(昭和10年)3月4日認可 - 末広停留場廃止。
    • 10月21日 - 海水浴前停留場臨時営業化。
    • 12月1日 - 貨物支線 弁天橋~鶴見川口間 (1.2km) が開業。鶴見川口駅開業。
  • 1936年(昭和11年)3月17日認可 - 武蔵白石停留場を駅に格上げし武蔵白石駅(2代目)開業。
    • 7月16日認可 - (臨)海水浴前停留場を駅に格上げ。
    • 12月8日認可 - 工業学校前停留場(現在の鶴見小野駅)開業。
  • 1938年(昭和13年)12月25日 - 安善通~石油間の旅客営業廃止。安善橋停留場廃止。
  • 1940年(昭和15年)11月1日 - 支線 新芝浦~海芝浦間 (0.8km) が旅客線として延伸開業。海芝浦駅開業。
  • 1941年(昭和16年)6月25日認可 - (臨)海水浴前駅廃止。
  • 1942年(昭和17年)12月11日認可 - 本山停留場廃止。
  • 1943年(昭和18年)7月1日 - 戦時買収私鉄に指定され国有化、国鉄鶴見線となる。
    停留場を駅に格上げ。工業学校前停留場を鶴見小野駅に、安善通駅を安善駅に、石油駅を浜安善駅に改称。安善町駅、渡田駅、若尾停留場廃止。鶴見川口駅への支線の起点を浅野駅に変更 (+1.2km)。安善~浜安善間改キロ (+0.1km)。武蔵白石~大川間改キロ (+0.2km)。
  • 1948年(昭和23年)5月1日 - 架線電圧を600Vから1500Vに昇圧。
  • 1971年(昭和46年)3月1日 - 鶴見駅を除く全駅を無人化。
  • 1972年(昭和47年) - 72系が運行開始。
  • 1979年(昭和54年)12月4日 - 101系が運行開始。
  • 1980年(昭和55年) - 72系撤退。
  • 1982年(昭和57年)11月15日 - 貨物支線 浅野~鶴見川口間 (2.4km) が廃止(線路は側線扱いとして1986年10月31日まで存続)。鶴見川口駅廃止。浅野~新芝浦間の貨物営業廃止。
  • 1986年(昭和61年)11月1日 - 貨物支線 安善~浜安善間 (1.1km) が廃止(線路は現存)。浜安善駅廃止。浅野~安善間の貨物営業廃止。
  • 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により東日本旅客鉄道が継承。日本貨物鉄道が浅野~扇町間、浅野~新芝浦間、武蔵白石~大川間の第二種鉄道事業者となる。
  • 1990年平成2年)8月2日 - 103系が運行開始。
  • 1992年(平成4年) - 101系撤退。
  • 1996年(平成8年)3月15日 - 首都圏最後の旧型電車(クモハ12形)が運行終了。翌16日から大川支線の電車が武蔵白石駅通過となる。
  • 2004年(平成16年)8月25日 - 205系が運行開始。
  • 2005年(平成17年)12月17日 - 前日の鶴見小野駅での車両故障のため103系が運用から外れる(事実上の引退)。
  • 2006年(平成18年)3月17日 - 103系が(名目上)この日限りで運行終了。

[編集] 鶴見臨港鉄道

鶴見線の母体となった、鶴見臨港鉄道株式会社は戦時買収後もそのまま存続し、鶴見・川崎の埋め立て造成を行った東亜建設工業株式会社(旧浅野財閥系)の傍系企業として現存している。同社は鶴見駅西口駅ビル「ミナール」のほか、JRの線路に沿って川崎方面に向かって数ヶ所の不動産を管理・所有しているが、これはかつて路線を鶴見から先に延伸すべく確保した用地の名残である。

[編集] 駅一覧・接続路線

表中の色は205系電車の行き先表示の色である。

駅名 営業キロ 本線 大川
支線
海芝浦
支線
接続路線 所在地
鶴見駅 0.0 東日本旅客鉄道:京浜東北線 神奈川県 横浜市鶴見区
国道駅 0.9  
鶴見小野駅 1.5  
弁天橋駅 2.4  
浅野駅 3.0 鶴見線海芝浦支線 分岐駅
新芝浦駅 3.9  
海芝浦駅 4.7  
安善駅 3.5   鶴見線大川支線 乗換駅
武蔵白石駅 4.1   鶴見線大川支線 分岐駅(乗り換えはできない) 川崎市川崎区
大川駅 5.1    
浜川崎駅 5.7     東日本旅客鉄道:南武線支線(南武支線)・東海道貨物線
昭和駅 6.4      
扇町駅 7.0      
  • ∥印は経由しない駅
  • |印の武蔵白石駅は、大川支線のホームがないため同線直通列車は通過する。

接続駅の鶴見・浜川崎を含む旅客扱い駅全駅が、JR長距離乗車券の特定都区市内の「横浜市内」エリアに属している。

[編集] 廃止区間

括弧内は起点からの営業キロ。

1982年廃止
浅野駅 (0.0km) - 鶴見川口駅 (2.4km)
1986年廃止
安善駅 (0.0km) - 浜安善駅 (1.0km)

[編集] 廃駅

廃止区間にある駅を除く。

  • 本線(カッコ内は鶴見駅起点の営業キロ)
    • 本山停留場 - 1942年廃止、鶴見~国道間 (0.5km)
    • (貨)安善町駅 - 1943年廃止、安善~武蔵白石間 (3.8km)
    • (貨)武蔵白石駅 - 1930年廃止、安善~現・武蔵白石間 (4.4km)
    • (臨)海水浴前駅 - 1941年廃止、武蔵白石~浜川崎間 (4.7km)
    • 渡田駅 - 1943年廃止、武蔵白石~浜川崎間(5.2km、現・浜川崎駅鶴見線ホーム)
    • 若尾停留場 - 1943年廃止、浜川崎~昭和間 (6.0km)
  • 海芝浦支線
    • 末広停留場 - 1935年廃止、浅野~新芝浦間(浅野駅起点 0.2km)
  • 石油支線
    • 安善橋停留場 - 1938年廃止、安善~浜安善間(安善駅起点 0.4km)

[編集] 過去の接続路線

[編集] 備考

  • 浅野~安善間はJRで最も営業キロの短い駅間 (0.5km) の一つである(JR東日本の山手線京浜東北線西日暮里~日暮里間とJR西日本の境線博労町~富士見町間の営業キロも0.5km)。
  • 鶴見駅と国道駅の間にある東海道線を跨ぐ鉄橋の手前にホーム跡があり、これが廃止となった本山駅の跡である。ホーム跡の高架下は旧鶴見臨港鉄道のバス事業を源流の一つとする川崎鶴見臨港バスの車庫として利用されており、横断距離が長いことで有名な総持寺踏切もある。
  • 鶴見川口駅への支線は、浅野駅を出ると鶴見小野駅まで本線と並走し、同駅隣でスイッチバックを行い南方へ至る線形となっていた。

[編集] 駅名について

鶴見臨港鉄道の開業当時、この路線は埋立地上にあり、沿線には地名が存在しなかった。このため、鶴見線の駅のほとんどは、実業家などの名前や周辺地区から取られた名前が付けられている。

鶴見小野は地元大地主の小野信行、浅野は浅野財閥の創設者で、鶴見臨港鉄道の設立者でもある浅野総一郎、安善は安田財閥次郎、武蔵白石は日本鋼管(現・JFEスチール)の白石元治郎、大川は製紙王の大川平三郎から取ったものである。扇町も浅野家の家紋の扇に因む。

また、国道15号が近くを走るから「国道」、昭和電工扇町工場が近くにあるから「昭和」、石油精製所の近くにあったことから「石油(後の浜安善)」、曹洞宗の大本山である総持寺の近くにあったことから「本山(廃駅)」など、あまりにそのままな命名がされた例もある。

[編集] 車両

[編集] 旅客列車

弁天橋駅構内に車庫の鶴見線営業所がある。かつては弁天橋電車区(南テシ)と称していたが、1988年に車両配置は中原電車区に統合された。

205系1100番台(弁天橋駅にて2004年12月23日撮影)
205系1100番台(弁天橋駅にて2004年12月23日撮影)
  • 205系0・1100番台 …3両編成9本(27両)
    • 鶴見駅発電車の行先LED表示は103系時代の色分けを踏襲しているが、使用できる色の制限から一部が変更されている。
    • 2007年から、鶴見駅および国道駅では、時刻表の行き先表示の文字の色もこれらに準じている。
      • 橙色 - 各方向からの鶴見行き
    • 2006年末から、ドアの下部に「ひらくドアにちゅうい」のステッカーを順次貼付している。

[編集] かつて使用された車両

※ここでは国有化以後の車両を挙げる。鶴見臨港鉄道時代からの車両については鶴見臨港鉄道の電車を参照。なおこのうちの1両が1951年銚子電気鉄道へ移籍し、「デハ301」として在籍している(現在は架線点検車として使用)。

  • 11・50系(17m車体を持つ戦前形国電と呼ばれた車両で、本線では1972年12月まで、クモハ12形は1996年3月まで使用された)
    • クモハ12形(前記17m戦前形車両に運転室を増設して1両編成で運転できるように改造された車両)
      • 大川支線はかつて武蔵白石~大川間の区間運転であり、武蔵白石駅の大川支線ホームは急カーブの線形に沿って設置されていたため、20m車が入線すると車体がホームに干渉するので、本線系統の17m戦前車両廃止後もクモハ12形が2両残った。首都圏最後の旧型電車で1日交代で1両編成で使用されてファンに人気が高かったが、その後の車両老朽化もあり、(入線可能な)17m級車両を製作し本車を置き換える案も検討されたが、武蔵白石駅の大川支線ホームそのものを撤去して通過扱いとすることで20m車である103系の入線を可能とすることになり、1996年3月に103系に置き換えられた。なお、クモハ12形は国鉄末期からの一時期(1985年1994年頃)に昼間や休日の閑散時間帯に1両編成で鶴見~海芝浦間と鶴見~大川間で使用されたこともあった。この2両は東京総合車両センター(旧・大井工場)で保存され、毎年夏の工場一般公開時に公開されることがある。
  • 72系(1972年~1980年1月まで)
  • 101系(1980年~1992年5月まで)
    • この車両から方向幕の色分けがされるようになった。
  • 103系(1990年8月2日~2006年3月17日)
    • 最後に残っていたT1編成は、実際には2005年12月16日の鶴見小野駅での故障のため翌17日以降は運用から外れ、それ以降は営業に入ることなく、2006年4月26日に廃車回送された。

[編集] 貨物列車

全線が電化されているが、非電化の側線で入換作業を行うために一部区間はディーゼル機関車が牽引する。

[編集] 沿線風景

[編集] 本線〔鶴見~扇町〕

鶴見駅は、鶴見線がかつて鶴見臨港鉄道という私鉄であった名残が色濃く残る。鶴見線は、京浜東北線が発着する地平ホームではなく、西口側高架ホームに発着する。頭端式ホームで、乗換改札側から3・4番線と付番されている。また、鶴見線に乗車するには乗換改札を通過する必要があり、乗越精算はここで行う必要がある。もともとは私鉄であったゆえの乗換改札であったが、国鉄時代の昭和46年(1971年)に経営合理化の一環として鶴見駅を除く鶴見線全駅が無人化されたことから、ここで検札を行う必要が生じたため、そのまま残っているものである。列車は、朝ラッシュ時の一部列車を除き、乗換改札側の3番線に発着する。

鶴見駅を発車すると、しばらくの間は高架上を走行する。間もなく右手に曹洞宗の大本山総持寺が現れると、線路中央に旧本山前駅のホーム跡の遺構が現れる。左にカーブし横須賀線京浜東北線東海道本線東海道貨物線京浜急行線をトラス橋でオーバークロスし、国道15号第一京浜)を跨いだところで国道駅に到着する。

国道駅は、高架上の2面2線の相対式ホームの駅である。高架下は戦前の駅開業当時の雰囲気がそのまま残っている貴重な場所であるため、映画・テレビドラマのロケに数多く使用されている。また、当駅では、列車の到着時にホーム下のスピーカーから踏切警報音が流され、乗客に注意喚起を行っている。昭和50年代にはすでにこのようになっており、なぜ踏切警報音なのかは不明である。国道駅を発車するとすぐに鶴見川を渡り、右カーブで高架から地上に降りたところで鶴見小野駅に到着する。

鶴見小野駅も2面2線の相対式ホームである。鶴見小野駅までは住宅街であるため、時間帯にかかわらず利用者は相応にある。また、近隣に市立鶴見工業高校があるため、朝・夕のラッシュ時には学生の利用も多く見られる。なお、朝ラッシュの下り・夕ラッシュの上り以外は、当駅を境に大きな輸送段差が生じている。鶴見小野駅を発車し、首都高速横羽線産業道路の高架下をくぐり、左にカーブすると、弁天橋駅に到着する。

弁天橋駅は、1面2線の島式ホームで構成されている。構内北側の鶴見小野駅方には、鶴見線乗務員が所属し、運用車両が常駐する鶴見線営業所(旧弁天橋電車区)が所在する。そのため、運転士・車掌の交代も原則として当駅で行われる。また、朝ラッシュ後・夕ラッシュ前や始発・終電時には上り・下りともに当駅着発の列車が運転されている。そして、ここから先は工場地帯の中を走っていくこととなる。駅南側は旭硝子京浜工場・ユニバーサル造船京浜事業所などがあり、朝夕は、これらの工場への通勤客で賑うが、それ以外の時間帯は閑散としている。弁天橋駅を発車すると、右側にかつての鶴見川口への支線・旭硝子への入換線の広大な跡地を眺めながら、浅野駅に到着する。

浅野駅は、本線と海芝浦支線との分岐駅である。扇町・大川方面の列車は1・2番線の島式ホームに発着するが、海芝浦方面の列車は浅野駅の手前の弁天橋駅寄りの渡り線を渡って、3・4番線の相対式ホームに発着する。JFEエンジニアリング鶴見事業所の最寄駅であり、朝・夕のラッシュ時は多数の乗客が乗降するが、それ以外の時間帯は閑散としている。浅野駅を発車し旭運河を渡ると、間もなく安善駅に到着する。浅野~安善間がJRで最も駅間の短い区間(0.5Km)の一つ。あっという間に到着する。

旭運河(鶴見線) 浅野~安善間
旭運河(鶴見線) 浅野~安善間

安善駅は、現在本線と大川支線の事実上の分岐駅となっている。ホームは1面2線の島式ホーム。線路自体は、隣の武蔵白石駅で分岐しているが、大川支線への20m級電車の入線に伴い、武蔵白石駅構内の大川支線用ホームが撤去されたことから武蔵白石駅を通過することとなったためである。後続に大川行列車がある場合には、大川行はこの駅で乗り換えるよう車内アナウンスがある。また、平成16年(2004年)3月までは安善駅近くに県立寛政高校があったため、朝ラッシュ時や夕ラッシュには学生の姿も見られたが、現在は県立平安高校と統合され、県立鶴見総合高校となり旧平安高校跡地に移転したため、学生は、鶴見小野駅を過ぎた後唯一広がっている駅前の住宅地から通っている学生を若干見かけるのみである。駅構内は、貨物の取扱があるため入換線が広がっており、米軍燃料輸送用のタンク車がよく停まっている。安善駅を発車すると、横浜市鶴見区川崎市川崎区の境になってる運河の鉄橋を越え、すぐに武蔵白石駅に到着する。安善~武蔵白石間も浅野~安善間に次ぎ短い区間(0.6km)である。

武蔵白石駅は、2面2線の相対式ホームとなる。大川支線との分岐駅であるが、1996年(平成8年)年に1面2線の大川支線用ホームが廃止され、大川駅方面は安善駅と武蔵白石駅の間にある渡り線を渡って直接大川支線に入線するため、大川方面の列車は停車しなくなった。なお、1日に朝1本・夕1本のみ当駅発着の列車がある。駅北側に富士電機システムズの川崎工場、駅南側に日本鋳造の本社工場があるため、当駅も鶴見線他駅同様、朝夕は大変混雑するが、それ以外は閑散としている。駅前には民家が数件あり、かつて1軒だけ立喰そばやパン・雑貨を販売する店があったが、現在は閉店している。武蔵白石駅を発車し、右にJFEスチール渡田地区の工場を眺めながら、右に緩やかにカーブしていくと、上を川崎貨物駅へ向かう貨物線が越してゆき、間もなく浜川崎駅に到着する。

浜川崎駅は、1面2線の島式ホーム。南武線浜川崎支線との乗換駅であるが、乗換には一度改札を出て、道路を挟んだ反対側にある南武線の浜川崎駅に行く必要がある。当駅は、JFEスチール渡田地区の正門側にあるため、跨線橋の出口と反対側にはJFEスチールの社員専用改札があり、朝ラッシュ時のみJFEの社員によって開けられる。当然であるが、JFEスチールの入構証がないと改札は通れない。浜川崎駅を発車すると、旅客線は単線となり左から貨物線が寄ってくる。そのため、見かけ上は複線のように見えるが、実際は貨物線と旅客線が単線で並行している形である。JFEスチールの工場を右に眺め、緩やかに右カーブを取り、南渡田運河を渡ると昭和駅に到着する。

南渡田運河(鶴見線) 浜川崎~昭和間
南渡田運河(鶴見線) 浜川崎~昭和間

昭和駅は、1面1線のみの駅である。昭和電工川崎事業所の正門脇にあり、ここから駅名が取られた。利用者は、昭和電工をはじめとする周辺工場の勤務者であるが、川崎駅からの路線バスの方が本数も多く(朝夕6分間隔/昼間10分間隔)便もよいことから利用者はあまり多くない。昭和駅を発車すると緩やかに右カーブを進み、目の前に貨物ヤードが広がってくると、終点の扇町駅に到着する。

扇町駅は、1面1線の行き止まり駅である。その先には貨物ヤードが広がり、三井埠頭や昭和電工の工場からの車扱の貨物列車が仕立てられている。昭和駅同様、川崎駅からの路線バスの方が便がよいため、利用者はあまり多くない。

[編集] 海芝浦支線〔浅野~海芝浦〕

海芝浦支線発着の列車は、浅野駅手前の弁天橋駅寄りの渡り線を渡って、3・4番線の相対式ホームに発着する。この駅も大川支線の旧武蔵白石駅ホーム同様、右カーブの途中にホームがあり、車両とホームの間に大きな隙間ができる箇所がある。ただし、東芝京浜事業所本工場への特大貨物輸送があるため、古くから20m車でも十分通過できるように作られている。なお、海芝浦駅行の列車であっても、鶴見から乗ってきた乗客の多くがここで下車する。浅野駅を発車し、東芝京浜事業所への道路を横断した後、旭運河沿いをしばらくまっすぐ走ると、新芝浦駅に到着する。

新芝浦駅は、2面2線の相対式ホームを持つ。複線区間はここまでとなる。駅正面が、東芝京浜事業所の正門であり、外訪者は基本的にここで下車することとなる。川崎鶴見臨港バスが路線バスを川崎駅から朝1本・夕1本のみ運行しているのみであるため、従業員の多くは、鶴見線を利用する。新芝浦駅を発車すると、東芝京浜事業所の敷地内に入った後、単線となる。旭運河沿いを南下、京浜運河にぶつかったところで大きく右にカーブし、間もなく終点の海芝浦駅に到着する。

海芝浦駅は、東芝京浜事業所の中にある1面1線の行き止まり駅。東芝の敷地内であるため、東芝関係者以外は改札を出ることはできない。また、ホームの向こう側は京浜運河に面しており、天気のよい休日にはホームから釣糸をたらす姿も見受けられるが、風の強い日などは車両にまで波しぶきがかかることもある。 最近、東芝の計らいにより、線路の延長上に「海芝公園」が作られ、一般に開放されている。正面に昭和シェル石油の油槽所、東京ガス扇島工場、首都高速道路湾岸線鶴見つばさ橋などが見えるため、非常に眺めがよく、特に夜間の眺めは格別である。 なお、最終電車(海芝浦駅発平日22:29/土休日20:55)を逃すと、帰る手段がなくなるため、要注意である。

[編集] 大川支線〔武蔵白石(安善)~大川〕

大川支線の線路自体は、安善駅の隣の武蔵白石駅で分岐しているが、大川支線への20m級電車の入線に伴い、1996年(平成8年)に武蔵白石駅構内の大川支線用ホームが撤去されたことから、大川支線の列車は武蔵白石駅を通過、安善駅が事実上の分岐駅となっており、運賃計算でも浜川崎方面から大川駅までの場合、武蔵白石駅と安善駅の間は運賃計算のためのキロ数に含めない事になっている。安善駅を発車すると、安善駅と武蔵白石駅の間にある渡り線を渡って直接大川支線に入線する。

武蔵白石駅は、大川支線との本来の分岐駅であるが、前述の通り大川支線用ホームが廃止されたため、大川方面の列車は停車しなくなった。武蔵白石駅を大きく右にカーブしながら通過し、右に日本鋳造本社工場を眺めながら直進、白石運河を越えると、間もなく終点大川駅に到着する。

大川駅は、1面1線の行き止まり式のホームのみの駅である。駅正面は三菱化工機の本社、周辺は日清製粉鶴見工場、昭和電工川崎事業所、大川工業団地などの工場が取り囲み、民家や商店は存在しない。駅構内は、昭和電工の車扱貨物があるため、タンク車が停まっていることが多いが、大川支線自体は、平日朝5往復・夕6往復/土休日朝2往復・夕1往復しか運行されないため、朝夕はそれなりに乗客がいるものの、昼間は貨物の扱いがないときは、人気のない閑散とした状態となる。周辺工場へも川崎駅からの川崎鶴見臨港バスの路線バスが昼間でも毎時2本の運行が確保され、大川支線より始発は早く、終発が遅いため、鶴見線利用者よりもバス利用者の方が多い。

[編集] その他

[編集] 鶴見線を題材にしたテレビ番組

横浜市鶴見区のケーブルテレビ局「YOUテレビ」で放送されているドキュメント番組『横浜ミストリー』の中で、鶴見線の歴史や魅力をリポートする「鶴見線物語」というシリーズが2005年4月からの1ヶ月間放映された。なお、1991年テレビ東京でも旅番組『列車でいい旅』の中で同じシリーズが放映されている。

[編集] 鶴見線と文学作品

歌人・土屋文明の歌集『山谷集』に「鶴見臨港鉄道」と題する連作が収められている。1933年の作品。

  • 貨物船入り来る運河の先になほ電車の走る埋立地見ゆ

などの一連の作品が、これまでの日本にはなかった巨大工場地帯の実相を捉えようとしている。

また、紀行作家・宮脇俊三が著書において取り上げ(『時刻表2万キロ』第2章など)、都会でありながらローカル線に似た特異な路線として描写している。宮脇の著書以来、この路線を旅行目的で訪れる旅客が増えたという。

笙野頼子芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」は、主人公が夢の導きで海芝浦駅まで行く話であり、主人公はその帰途に浅野駅で下車して沖縄料理を食べに行く。

[編集] 鶴見線フリー乗車券

1980年に73系の引退・101系の投入を記念して発売されたフリー切符。大人200円・小人100円、発売日当日のみ有効、鶴見線全線と南武線浜川崎支線のみ乗降自由、発売駅は鶴見駅浜川崎駅川崎新町駅尻手駅のみであった。

[編集] 鶴見線を舞台にしたゲーム

lightが2007年に発売したPCゲームソフト『潮風の消える海に』で、主人公達が活動するのが鶴見線だった。そのため、ゲーム内での背景CGに海芝浦駅国道駅浅野駅など鶴見線の駅が登場する。また、OPで海芝浦を発車する205系電車、会話の中で浜川崎安善なども登場している。

電車でGO!プロフェッショナル2』において本線が収録され103系で運転できる。車両図鑑ではクモハ12形や南武支線用の101系が見られる。103系実車の加速度は2.2km/h/sで、マスコンは4ノッチ最大だが、電車でGO!では3.5km/h/sくらいに設定され、5ノッチ仕様になっている。

[編集] 関連項目



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