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1987年のF1世界選手権 - Wikipedia

1987年のF1世界選手権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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関係者

1987年のF1世界選手権は、FIAフォーミュラ1世界選手権の第38回大会である。ブラジルジャカレパグア・サーキットで開幕し、最終戦のオーストラリアアデレード市街地コースまで、全16戦で争われた。

目次

[編集] 概要

[編集] 「4強+1」

ダブルタイトルを獲得したウィリアムズFW11B・ ホンダ(ネルソン・ピケ車)
ダブルタイトルを獲得したウィリアムズFW11B・ ホンダ(ネルソン・ピケ車)

翌年にターボ世代最後のシーズンを迎える事もあり、レギュレーションによりターボ車は積載燃料が195リッター、FIAより支給、装着が義務づけられたポップオフバルブにより、ブーストは4バールに制限された。ターボ(過給)エンジン搭載車とNA(自然吸気)エンジン搭載車の双方が参戦したが、上位チームは全てターボエンジン搭載車で占められていた。ネルソン・ピケナイジェル・マンセルがドライブするウィリアムズ・ホンダが圧倒的な強さを見せたが、マクラーレン・TAGポルシェも3勝、ロータス・ホンダとフェラーリもそれぞれ2勝をあげた。なおベネトンは優勝こそならなかったものの、3位表彰台2回を獲得した。

[編集] ホンダエンジンの活躍

前年に安定したパフォーマンスを見せたホンダエンジン搭載車がこの年も強さを見せ、ウィリアムズとロータスの両チーム併せて11勝を挙げた他、イギリスGPでは初の1−2−3−4フィニッシュ(マンセル、ピケ、セナ中嶋)を達成する等、表彰台の常連となった。ウィリアムズは前年の傑作マシン、FW11を熟成させたFW11Bで9勝を挙げ、シーズンを圧倒。ピケとマンセルがチャンピオンを争う。ロータスはアクティブサスの熟成に手間取りながらもモナコ、デトロイトの公道コースで2勝を挙げた。

[編集] 中堅チーム

アロウズリジェブラバムなどの中堅チームも全てターボエンジンを搭載し、デレック・ワーウィックエディ・チーバールネ・アルヌーリカルド・パトレーゼなどの高い経験値を持つドライバーを擁した。上位チームがリタイアしたレース(第3戦ベルギーGP・第14戦メキシコGP)でブラバムが3位表彰台2回を獲得するも、シーズン全般的には3チームともに速さ、信頼性が不足しており、上位チームを脅かすまでには至らなかった(ブラバム:入賞3回・獲得ポイント数10 アロウズ:入賞6回・獲得ポイント11 リジェ:入賞1回・獲得ポイント1)

[編集] 自然吸気エンジン向けタイトル

なお、1987年の1年限りの実施であったものの、自然吸気エンジンを使用するチームとドライバーを対象とした別規定賞典として「ジム・クラーク・トロフィ」(ドライバー向け)と「コーリン・チャップマン・トロフィ」(コンストラクターズ向け)が制定されている。これは、1989年からの過給禁止レギュレーションへの準備段階として、先に自然吸気エンジンを使用するチームとドライバーへの救済措置であったが、翌年は両者の性能差が少なくなった為に実施されなかった。

なお、ジム・クラーク・トロフィは安定した走りで数回ポイント圏に食い込んだティレルジョナサン・パーマーが、コーリン・チャップマン・トロフィはマーチラルース・カルメルAGSなどとの戦いを制したティレルが獲得した。

[編集] 参戦チーム・ドライバー

チーム シャシー エンジン タイヤ ドライバー
イギリスマクラーレン MP4/3 TAGP01(V6ターボ)(ポルシェ) G 1.フランスアラン・プロスト
2.スウェーデンステファン・ヨハンソン 
イギリスティレル DG016 フォードDFZ(V8) G 3.イギリスジョナサン・パーマー
4.フランスフィリップ・ストレイフ
イギリスウィリアムズ FW11B ホンダRA167E(V6ターボ) G 5.イギリスナイジェル・マンセル
(5.)イタリアリカルド・パトレーゼ
6.ブラジルネルソン・ピケ 
イギリスブラバム BT56 BMWM12/13(直4ターボ) G 7.イタリアリカルド・パトレーゼ
(7.)イタリアステファノ・モデナ
8.イタリアアンドレア・デ・チェザリス
ドイツザクスピード ZK871 ザクスピード871(直4ターボ) G 9.イギリスマーティン・ブランドル
10.ドイツクリスチャン・ダナー
イギリスロータス 99T ホンダRA167E(V6ターボ) G 11.日本中嶋悟
12.ブラジルアイルトン・セナ
フランスAGS JH22 フォードDFZ(V8) G 14.フランスパスカル・ファブル
(14.)ブラジルロベルト・モレノ
イギリスマーチ 87P,871 フォードDFZ(V8) G 16.イタリアイワン・カペリ
イギリスアロウズ A10 メガトロン(BMW)M12/13(直4ターボ) G 17.イギリスデレック・ワーウィック
18.アメリカエディ・チーバー
イタリアベネトン B187 フォードGBA(V6ターボ) G 19.イタリアテオ・ファビ
20.ベルギーティエリー・ブーツェン
イタリアオゼッラ FA1F,FA1G,FA1H アルファ・ロメオ890T(V8ターボ) G 21.イタリアアレックス・カフィ
22.イタリアガブリエル・タルキーニ
(22.)スイスフランコ・フォリーニ
イタリアミナルディ M186B,M187 モトーリ・モデルニ615-90(V6ターボ) G 23.スペインアドリアン・カンポス
24.イタリアアレッサンドロ・ナニーニ
フランスリジェ JS29B,JS29C メガトロン(BMW)M12/13(直4ターボ) G 25.フランスルネ・アルヌー
26.イタリアピエルカルロ・ギンザーニ
イタリアフェラーリ F187 フェラーリTipo033D(V6ターボ) G 27.イタリアミケーレ・アルボレート
28.オーストリアゲルハルト・ベルガー
フランスローラ LC87 フォードDFZ(V8) G 29.フランスヤニック・ダルマス
30.フランスフィリップ・アリオー
イタリアコローニ FC187 フォードDFZ(V8) G 32.イタリアニコラ・ラリーニ

[編集] 開催地及び勝者

  開催日 GP名 開催サーキット 勝者 チーム 結果
1 4月12日 ブラジルブラジルグランプリ ジャカレパグア・サーキット アラン・プロスト マクラーレン・TAG 詳細
2 5月3日 サンマリノサンマリノグランプリ イモラ ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
3 5月17日 ベルギーベルギーグランプリ スパ・フランコルシャン アラン・プロスト マクラーレン・TAG 詳細
4 5月31日 モナコモナコグランプリ モンテカルロ アイルトン・セナ ロータス・ホンダ 詳細
5 6月21日 アメリカアメリカグランプリ デトロイト アイルトン・セナ ロータス・ホンダ 詳細
6 7月5日 フランスフランスグランプリ ポール・リカール ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
7 7月12日 イギリスイギリスグランプリ シルバーストン ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
8 7月26日 ドイツドイツグランプリ ホッケンハイム ネルソン・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 詳細
9 8月9日 ハンガリーハンガリーグランプリ ハンガロリンク ネルソン・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 詳細
10 8月16日 オーストリアオーストリアグランプリ エステルライヒリンク ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
11 9月6日 イタリアイタリアグランプリ モンツァ ネルソン・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 詳細
12 9月20日 ポルトガルポルトガルグランプリ エストリル アラン・プロスト マクラーレン・TAG 詳細
13 9月27日 スペインスペイングランプリ ヘレス ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
14 10月18日 メキシコメキシコグランプリ メキシコシティ ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 詳細
15 11月1日 日本日本グランプリ 鈴鹿 ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 詳細
16 11月15日 オーストラリアオーストラリアグランプリ アデレード ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 詳細

[編集] 結果

ウィリアムズ・ホンダとマクラーレン・TAG、フェラーリ、ロータス・ホンダの4強が常にトップ争いを見せたが、シーズン全般をみると中盤で連勝したウィリアムズ・ホンダのネルソン・ピケとナイジェル・マンセルのほぼ一騎打ちという様相を見せた。最終的に日本GPにドライバーズタイトル争いが持ち越されたものの、日本GP予選におけるクラッシュでマンセルが欠場となった為に、ピケの3度目(1981年1983年)のドライバーズタイトルが確定した。

[編集] トピック

  • 中嶋悟がロータス・ホンダより日本人初のフル参戦を行なったことや、1977年以来10年ぶりに鈴鹿サーキットで日本GPが開催されたことに併せてフジテレビジョンにより全戦テレビ中継が行なわれたことから、バブル景気に沸く日本において「F1ブーム」が始まることとなった。
  • ロータス・ホンダが史上初の本格的なアクティブサスペンションを実戦に投入したが、熟成不足により誤作動などのトラブルが多発したことでこの年限りで使用を中止した。
  • また、ロータス・ホンダの中嶋悟のマシンにはシーズンを通じて車載カメラがテスト的に搭載された。
  • イギリスGPでは、前年以上の活躍を見せたホンダエンジン使用チームのウィリアムズとロータスが1位から4位までを独占するという快挙を達成した。優勝したのはウィリアムズに乗り地元出身でもあるナイジェル・マンセルで、2位は同じくウィリアムズのネルソン・ピケ、3位はロータスのアイルトン・セナ、4位がロータスの中嶋悟であった。マクラーレン・ポルシェのアラン・プロストは電気系のトラブルでリタイアするなど、多くのドライバーが、マシントラブルでリタイヤした。中嶋は2周遅れながら4位に入賞し、ホンダの1・2・3・4フィニッシュの一端を担った。中嶋はシルバーストーンでのレース経験があった為、それまでとは違う「序盤から飛ばして燃費のことは後で考える(本人談)」作戦を採った為、終盤ペースダウンを強いられた。「レース終盤で燃料セーブのためにペースを落としトップのネルソン・ピケに抜かせたことで2周遅れにならなければ、燃料が足りずフィニッシュライン300m手前で止まってしまい完走できなかっただろう」と当時のホンダ監督である桜井淑敏が述べている。
マクラーレンMP4/3・TAGポルシェ(アラン・プロスト車)
マクラーレンMP4/3・TAGポルシェ(アラン・プロスト車)
  • GPの予選中に鹿が侵入し、ステファン・ヨハンソンが運転するマクラーレンTAGポルシェと衝突する事故が発生。さらに翌日の決勝スタート直後には、ホームストレートの狭さによる多重クラッシュが立て続けに2回発生し、共に赤旗再スタート。3度目のスタートでようやくレースが始まった。一連の事態を重要視したFIAは、翌年以降、安全性の問題からオーストリアGPをキャンセルする事となった。
  • イタリアグランプリ期間中、ホンダは翌1988年のエンジン供給先はロータスとマクラーレンとなることを発表した。ウィリアムズとの契約は、1年を残して打ち切られることとなった[1]
  • 日本GPの予選中にマンセルがクラッシュにより負傷しレース出場ができなくなった為に、自動的にピケの優勝が決定することとなった。
  • 日本のアパレル企業のレイトンハウスが、マーチF1チームのメインスポンサーとなった。なお同社はその後マーチを買収することになる。
  • ブラバムチームがこの年の最終戦を最後に、1989年の開幕戦までの1シーズン活動停止した。
  • アラン・プロストが第12戦ポルトガルGPでシーズン3勝目となる通算28勝目をマーク。当時ジャッキー・スチュワートが持っていた最多勝記録(27勝)を更新した。

[編集] 脚注

  1. ^ 「フジテレビオフィシャルF1イヤーブック」 ISBN 4-594-00191-2


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