新幹線961形電車
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新幹線961形電車(しんかんせん961がたでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が1973年(昭和48年)に全国新幹線網対応車両として開発した6両編成の試作電車。
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[編集] 編成の特徴
編成構成は電源周波数50/60Hz対応の6M(全車電動車)で、ボディはアルミ合金製でボディマウント構造を採用し、新幹線で初めて客室窓がすべて小型構造となった。主電動機の定格出力は951形を上回る275kWに増強し、東北新幹線などでの走行を想定して雪切室が設置された。運転台には車上ミニコンピューターシステム(通称:ATOMIC)を搭載し、またキャラクタディスプレイ(CRT方式・文字情報装置)で情報が運転士にリアルタイムで伝達される。ATOMICは自動列車運転装置(ATO)とほぼ同じ構造で指定された速度での定速走行や自動停車などができたが、本格採用には至らず、車両モニタ装置のベースとなった。将来的には、電気軌道総合試験車(ドクターイエロー)への改造も想定されていたが実現しなかった。
多方面への分割・併合を前提として先頭車両のスカート(排障器)上部に連結器を常備する設計となっていた。この結果、光前頭内部は連結器を格納しないために空洞となり、蛍光灯が内蔵されて1000形試作車以来の「実際に光る光前頭」を装備した形式となった。
[編集] 室内設備
1・2・6号車は通常車両(2号車のみ腰掛設置)、3号車は当時新幹線としては初の(営業用では0系の36形が最初)食堂車、4号車は長距離列車での運用を想定した寝台車の設計で、特別個室が3室(それぞれ作りが異なる)と一人用寝台個室や普通の二段寝台が設置されている。食堂車は36形のベースとなり、個室寝台は24系客車のオロネ25形とも共通する点が見受けられる。5号車には内装がなく、側面に幅4mの開口部を設け、車両の剛性と乗り心地との関係を調べるため、わざと剛性を低下させ、様々な補強材を入れて耐久試験を行った。
[編集] 試験運用
完成後、山陽新幹線岡山~博多間での試験走行が行われた。ただし、工事の遅れと労使問題から、当初予定した内容の試験を十分実施するには至らなかった。1979年(昭和54年)に小山試験線(現・東北新幹線小山駅付近)での試験走行を行うべく浜松工場で必要な機器やスノープラウ(1号車のみ)を設置の上、東京都品川区大井の車両基地(現・東京第二車両所)から栃木県小山市の小山試験線管理所(現・小山新幹線車両センター)へ陸送された。なお塗装は、廃車まで0系に準じた白地に青いラインのままだった。
小山試験線での試験走行中、当時の電車の世界最高速度記録の319km/hを記録している。東北新幹線の開業後、同時期に小山試験線で試験走行をしていた962形は電気軌道総合試験車の925形10番台(S1編成)に改造されたが、961形は改造されることなくそのまま仙台総合車両所(現・新幹線総合車両センター)に留置されていた。
その後行われた速度向上試験には925形10番台が使用され(ただし3台車構造の921形軌道試験車を編成から外した)、961形はその出番がないまま1990年(平成2年)に廃車された。
東海道・山陽と東北の両系統の新幹線を走行した車両としては、他に軌道試験車921-1があるだけで、珍しい経歴を持つ車両である。
[編集] 現状
2007年現在、1・6号車の両先頭車が新幹線総合車両センターに保存されており、200系に準じた白地に緑色のラインに塗装されている。また、961形が319km/hを達成した際に作成した記念プレートは、東京都国分寺市の「ひかりプラザ」内にある951形を利用した新幹線資料館の中に保存されている。
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現行路線 |
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整備新幹線 | 北海道新幹線・東北新幹線・北陸新幹線・九州新幹線 | ||||
基本計画線 | 北海道新幹線・北海道南回り新幹線・羽越新幹線・奥羽新幹線・中央新幹線・北陸・中京新幹線・山陰新幹線・中国横断新幹線・四国新幹線・四国横断新幹線・東九州新幹線・九州横断新幹線 | ||||
未成線 | 成田新幹線 | ||||
現行列車 | はやて・やまびこ・なすの・とき・たにがわ・あさま のぞみ・ひかり(ひかりレールスター)・こだま・つばめ 新幹線直行特急:つばさ・こまち |
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廃止列車 | あさひ・あおば | ||||
営業用車両 | 0系・100系・200系・300系・400系・500系・700系・N700系・800系・E1系・E2系・E3系・E4系 | ||||
試験用車両 | 1000形・951形・961形・962形・STAR21・WIN350・300X・FASTECH 360 S・FASTECH 360 Z・軌間可変電車 | ||||
事業用車両 | 911形・912形・ドクターイエロー・East i | ||||
車両形式・記号 | 車両形式・編成記号 | ||||
車両基地・車両工場 |
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元となる計画 | 日本の改軌論争・東海道新線・弾丸列車 |