蛍光灯
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蛍光灯(けいこうとう)または蛍光ランプ (fluorescent lamp) 、蛍光管(けいこうかん)は、放電で発生する紫外線を蛍光体に当て可視光線に変換する光源である。「蛍光灯」と呼ぶ場合は蛍光灯器具をさすこともある。
最も広く使われているのは、電極をガラス管内に置き(内部電極型)、低圧水銀蒸気中のグロー放電による253.7 nm線を使うものである。
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[編集] 用途
- 天井照明
- シーリングやペンダントなどのタイプがある。72W以上の物はほとんどがインバーターの商品である。ワット数が低い物の場合は、磁気安定器式の器具も市場に出回っている。また、安定器式の製品でも電子スタータを採用し、グロー管がないものも多くなっている。
- スポット照明(電気スタンドなど)
- 電気スタンドはインバーター式が多い。
- 懐中電灯
- 乾電池の電流を昇圧し、携帯できる。
- 液晶パネルのバックライト
- 非常に細いタイプが使われている。
[編集] 歴史
1856年にドイツのガラス工(後に物理学者)であったハインリッヒ・ガイスラーによってつくられたガイスラー管は、蛍光灯の起源と考えられている。低圧の気体を封入したガラス管の中に二つの電極を置き、電極間に誘導コイルによって高電圧を加えると、放電による気体の発光が観測される。
1859年、フランスの物理学者、アレクサンドル・エドモン・ベクレルは、蛍光、燐光、放射能の研究の際に蛍光性ガスを管のなかに封入することを考案した。
1893年、シカゴ万国博覧会ではアメリカ・イリノイ州のパビリオンが、ニコラ・テスラによる蛍光灯を紹介した。
1894年、アメリカの発明家、ダニエル・マクファーレン・ムーアは、ムーアランプを発明した。このランプは市販用であり、彼の上司だったトーマス・エジソンが発明した白熱電球と販売を競う目的でつくられた。使われたガスは窒素と二酸化炭素であり、それぞれピンク色と白色の光を放ち、商業的にそこそこ成功した。
1901年、アメリカの電気技術者、ピーター・クーパー・ヒューイットは、水銀灯のデモンストレーションを行った。青緑色に光る水銀灯は、照明としての実用性は低かったが、現代の蛍光灯に非常に近かった。白熱電球よりも光の波長は短かかったが、効率は高かったため、写真撮影など特別な用途に使われた。
1926年、ドイツの発明家、エトムント・ゲルマーのグループは、管内の圧力を上げ、蛍光粉末で覆うことで、放たれた紫外線を均一な白い光に変換することを提案した。この発見によってゲルマーは一般に蛍光灯の発明者と認められた。
その後、アメリカの電機メーカーであるゼネラル・エレクトリックは、ゲルマーの特許を購入し、ジョージ・インマンの指導のもとで、1938年に蛍光灯を発売した。
1953年、東芝ライテックが日本で初めて環形蛍光ランプを製作した。ワット数は32Wで、米国ではすでに生産されていた。1955年には30W型が製作された。15型は1968年、9型は1982年に発売された。
1973年、日本で初めて電球色の蛍光ランプ(直管、Ra70)を日本電気シルバニアが製作した。同年には日立が環形の色温度3900Kの「電球色」蛍光ランプを製作している。
1979年、日本で初めて片側に反射用蛍光膜を塗った環形蛍光ランプ「リングパワー」を日立が製作した。現在も東芝が同種の製品を出している。
1989年、日本で初めて紫外線褪色シールによるランプ交換時期通知機能付き蛍光ランプ「ひかりの見張番」を日立が製作した。4000時間ほどで黄色のシールが透明になる。
1995年、世界で初めて残光形蛍光ランプ「ホタルック」を日本電気ホームエレクトロニクスが製作した。
1999年、二重環形蛍光ランプ「ツインパルック」を松下が製作。(97年に発売開始との説明もある)
[編集] 構造
蛍光灯は、蛍光物質が塗布されたガラス管と、両端に取り付けられた、電極とで構成されている。電極は、コイル状のフィラメントにエミッター(電子放射性物質)を塗装したもので、これが両端に2本ずつ出ている4本の端子につながっている。ガラス管内には、放電しやすくするために2~4hpa(1気圧は約1013hpa)の圧力の封入ガス(アルゴンあるいは混合希ガス)と少量の水銀原子が封じ込まれている。
[編集] 点灯の仕組み
点灯の際、電極(陰極)に電流を流すと、加熱され、高温になったエミッター(電子放射性物質)から大量の電子が放出される。放出された電子は、もう片方の電極(陽極)に対して移動し、放電が始まる(通常は交流を流すため、陰極と陽極は同じ形状である)。放電により流れる電子は、ガラス管の中に封入されている、水銀原子と衝突する。衝突により水銀原子は、電子のエネルギーを受け、紫外線を発生させる。発生した紫外線は、ガラス管内に塗布されている蛍光物質に照射され、可視光線が発生する。
白熱灯と比べると同じ明るさでも消費電力を低く抑えられる。なお、消費したエネルギーの変換比率は、可視放射25%、赤外放射30%、紫外放射0.5%で、残りは熱損失となる。
白熱灯と違い、点灯には安定器(インバーター含む)が必要であるため、直接電圧を掛けただけでは使用不可能である。ただし、電球形蛍光灯では安定器を内蔵しているため、直接ソケットにさすだけでよい。
蛍光灯の点灯開始に当たってはフィラメントの加熱が必要なため、始動機構が必要である。
[編集] 始動方式
[編集] スタータ式
以下の3種類がある。この器具に使えるランプはFLとFCLである。
- 点灯管方式

電源を入れるだけで自動的に点灯するようにしたもの。蛍光管・安定器・点灯管(グロースイッチ)で構成される。一般家庭では最も普及している。スイッチを入れると点灯管が放電し、安定器に電流が流れる。電流は安定器から蛍光管のフィラメントに進み、そして点灯する。点灯にかかる時間は、従来型の点灯管を使用した場合は3秒程度と蛍光灯の中では遅い。点灯する際点灯管から「コトン」もしくは「コン・コン」など若干音が鳴る。電子点灯管に交換すると約0.6~1.2秒と通常よりも早く点灯する。安定器は小さい。この器具は省エネタイプのランプを除き、下記のラピッドスタート方式のランプを取り付けて使用することも可能。
- 手動スタート式
グロースタータの代わりに押しボタンスイッチを接続したものである。
- 電子スタータ方式
グローランプの代わりに電子点灯管を利用したもの。ほぼ瞬時に点灯する。当初から器具内蔵の場合と、別売り品をグローソケットに差し込む場合がある。
[編集] ラピッドスタート式
ラピッド(rapid)で「速い」の意。 この器具に使えるランプはFLRである。環形のラピッド式のものは稀。 点灯管が存在せず、磁気漏れ変圧器で始動する。点灯は即時。蛍光管は専用のものが必要で、普通のスターター式の蛍光灯より太い。
ビルや百貨店、駅や学校、会社などの公共施設はほとんどこの方式の蛍光灯を用いている。
安定器は大きい。ビルなどではビルメンテナンス要員が交換することが多いが重量が重いため交換には手間がかかる。特に直管110ワットになると安定器だけで3kg近い重さになるため2人以上の交換要員が必要になることも多い。 施設照明インバータ式(FLR管指定)もこの方式の発展で余熱用電源部、放電用電源部で構成されている
[編集] インバーター式
インバータ回路により始動する。高周波点灯のため発光回数が増えるのでワット数当たりの明るさは向上する。 機種によってFLランプ、FCLランプ、FLRランプ、FHCランプ、FHDランプ、FHGランプ、後述のHfランプのいずれかが使える。
[編集] 安定器の種類
[編集] 磁気安定器
銅鉄安定器ともいう。通常、安定器式といえばこちらをさす。
始動方式は、スタータ式とラピッドスタート式がある。
[編集] 電子安定器
インバーターと呼ばれることが多い。
従来のスタータ管とラピッドスタート管が使用できる器具のほか、以下のHf方式の管が使用できる器具、新方式の管が使える器具がある。
- 高周波点灯方式 (Hf、FHF)
右の回路図の電子式安定器はグロースタート式と酷似した方法で点灯する コンデンサの充電電流が流れる時ランプ両端の電極が余熱され充電後電流が流れなく なると高周波コイルが共振現象で高電圧を生じ主放電へ至る 点灯管がなく、 交流の商用電源を整流回路で直流化した後インバータ装置でより高周波の交流電力に変換し、点灯する。 即時に点灯でき、高周波点灯により発光効率も上がり、ちらつきも少なく、また蛍光灯の寿命も大幅に伸びる。 安定器(回路)構成部品が小型のため、器具の小型化も可能。 器具からの騒音が小さい。一般に20kHz-50kHzの周波数が使用される。 点灯管方式と比べると明るいが、蛍光管の値段はそれと比べて高い。 最近はFL・FLR・FHFのランプを共通で使用できるものや100~240Vの範囲内の電圧で使用できるランプフリー・ボルトフリータイプの安定器も出回っている。なおこの安定器は周波数に関係なく使用可能である。
[編集] 蛍光ランプと蛍光灯器具の規格
- 例
- FL20SS・EX-D/18
これはナショナルのパルックday昼光色20ワット形直管の型番である。FLはスタータ式の直管を、20は20ワット形であることを、SSは直径28mmであることを、EXは三波長を、Dは昼光色(デイ)を、18は実際の消費電力を現している。
[編集] 形の種類
- 直管形蛍光灯 - 棒状の蛍光灯。
- FL(スタータ)
- 4型、6型、8型、10型、15型、20型、30型・・・
- FLR(ラピッドスタート)
- FHF(Hf、会社、学校などで多く使用されている)
- ネジレ形蛍光灯 - トルーライトなどの名前で販売されている。
- FL(スタータ)
- 環形蛍光灯 - 丸型、円形ともいう。ドーナツ状の蛍光灯。
- 従来型 - FCL(現在の家庭用では多く使用されている)
- 9型、15型、20型、30型、32型、40型
- スリムタイプ - FHC
- ツインタイプ - FHD
- スクエアタイプ - FHG
- 環形蛍光灯を総称して「サークライン」と呼ぶことがあるが、東芝ライテックの商標である。
- 従来型 - FCL(現在の家庭用では多く使用されている)
- 電球形蛍光灯 - EFA、EFD、EFG、CFL
- コンパクト形蛍光灯 - FPL、FDL、FML、FHT、FHP、FWL、FGL
[編集] 蛍光灯の点灯方式や省エネタイプ管の互換性
- ラピッドスタート管
- 基本的にすべての器具で物理的に取り付けられれば使用可能である。例外として省エネ管(36W)はグロー式器具に使うのは好ましくない。なぜならば、ラピッドスタートタイプの省エネ管は低電圧大電流で省エネにしているためである。
- なお、ラピッドスタート式の省エネ管をグロー式器具に取り付けると安定器に過電流が流れ最悪の場合安定器が焼損する。
- グロースタート管
- グロースタート式器具専用である。ラピッドスタート式器具に装着しても放電開始しないが、(稀に2灯式直列ラピッドスタート安定器の場合点灯することがある)非常に寿命が短くなるので注意する。
- 取り付け可能であれば以下のHfインバータ専用管の代替として使用可能である。グロースタートタイプの省エネ管は高電圧小電流の設計であるため低温での使用は不向きである。
- 高周波点灯専用管(Hf管)
- このランプは特に注意が必要である。間違えてラピッドスタート器具に装着すると異常に明るく点灯して過熱の危険がある(最悪安全機能が働き器具が使用不可となる)。
- グロースタート器具に装着しても特段危険ではないが温度や電圧変動により再始動を繰り返すのであまり適さない。逆にHf器具はランプフリー化が進みランプ指定がなくなりつつあるがHf管以外を使用した場合 インバータの定電力制御(32Wに自動制御される)により正規の明るさに達しなくなる。
[編集] 周波数による制限
蛍光灯は点灯に際し安定器が必要であるが適合周波数で使用しないとさまざまな問題が生じるので注意が必要である。 なお施設照明器具のシェアの大半を占める松下電工と東芝ライテックでは周波数区分が 容易に判る様に器具型番のシールと電線色を分けている
- 50Hz用
シールのメーカーマーク色、型番印刷が緑で電線色が黒-白
- 60HZ
マーク色が赤で電線色が茶-白
- 兼用器具
マークが青または黒で電線色が黒-白
なお建築基準法による非常灯は周波数区分に関わらず赤である
- 50Hz用の安定器を60Hzで使用
- ランプの明るさは暗くなる。また点灯しづらくなる。
- 60Hz用の安定器を50Hzで使用
- ランプの明るさは強くなる。ただし安定器内部のコイルを流れる電流が増加し、安定器自体が過熱する。そのまま使用を続けると出火する危険性もある。
これは安定器内部のコイルは周波数の高い交流ほど流しにくい性質を持つためである。このため一般の安定器を使用する器具を周波数の違う地域で使用する場合は安定器を交換しなければならない。
ただし前述のインバータ式安定器は日本国内であればどこでも使える。また子供用学習机の場合は周波数切り替えスイッチが取り付けられているものが多いためこれを切り替えることによりそのまま使用することが出来る。
[編集] 特殊な種類
- 高周波点灯専用形蛍光灯(Hf蛍光灯) - FHF、FHP、FHT
- 冷陰極形蛍光灯(冷陰極管) - CCFL
- 長時間残光形蛍光灯
- 光触媒膜付蛍光灯
- 合成樹脂皮膜付蛍光灯(飛散防止形など)
- 無電極蛍光灯
- 補虫器用蛍光灯
- 避虫用蛍光灯
- 小さな金属球入り
- 殺菌用蛍光灯(蛍光体がないため、厳密には蛍光灯と呼べない可能性がある)
- 希ガス蛍光ランプ - 水銀を使わない蛍光灯。
[編集] 光源色の種類
[編集] 色温度の種類
蛍光灯の色が、暖色系(低色温度)か寒色系(高色温度)かの数値であり、以下の5種類のいずれかに分類されることが多い。
- 昼光色(JISでは5700K~7100K。通常は6500K) - D
- 晴天の正午の日光の色である。
- 昼白色(JISでは4600K~5400K。通常は5000K) - N
- 晴天の正午をはさんだ時間帯の日光の色である。
- 白色(JISでは3900K~4500K。通常は4200K) - W
- 曇り空の日光の色である。
- 温白色(おんぱくしょく。JISでは3200K~3700K。通常は3500K) - WW
- 夕方の日光の色である。
- 電球色(JISでは2600K~3150K。通常2800K・3000K) - L
- 白熱電球の色(これ自体幅がある)である。
※()内は色温度。
これらの呼び名はあくまで基本的なものであり、各メーカーが独自に名前をつける場合もある。2500Kや5700Kや8000Kなど、上記5色の通常値以外の色温度の製品が増加しつつあり、それらは「ウォーム色」「クール色」「フレッシュ色」など、基本色とは異なる名称をつけて販売されているため、消費者は色温度を確認してから買うことが求められる。なお、白色の近辺にはあまり製品のバリエーションが存在しない。
上記は一般照明用のものであるが、これ以外にも栽培などの特殊用途向けの17000K(海の色)という物も存在する。
[編集] 演色性の種類
- 三波長発光形蛍光灯 - EX
- 全光束(明るさ)が高く、ある程度演色性もよいため、一般家庭を中心に普及している。なお、三波長かつ白色という蛍光管は珍しい。東芝のメロウ5は5色発光だが、三波長に分類される。なお食品展示用に四波長としたものもある。
- 高演色形蛍光灯
- AAとAAAがある。全光束は低いが、演色性が高いため、美術的にシビアな色彩処理が要求される場所で使用される。ほとんどが直管の製品。
- 一般型(普及型)蛍光灯
- 演色性、全光束とも低いが、安価であり、100円ショップで販売されることもある。
- その他
- カラー蛍光灯など
色彩に関する事業所や病院、美術・博物館向けに、各光源色に演色性を重視した設計の高演色形「SDL」や色評価用「EDL」がある(この場合の演色性とは「特殊演色評価数」、つまり原色を基準色とした見え方の忠実度を指す。これは通常用いられる、中間色を基準色とした「平均演色評価数」よりも達成が難しい)。
普通、蛍光ランプの光色としては価格的に安い一般型白色[W]・昼光色[D]のものが事務所などでは広く使われていたが、最近は住宅や店舗などを主体に三波長域発光型(電球色[EX-L]、昼白色[EX-N]、昼光色[EX-D]など)も普及している。また事務所などでは一般型の白色や昼光色に替って昼白色[N]が主流になりつつある。なかでも店舗照明においては色温度や演色性を含めた照明設計が購買意欲に大きく影響することが認識され、それを実現するためのさまざまな光色、配光性のランプ商品が用いられている。なお演色性は色温度ごとに決まっているため、演色性が最高でも色温度によって青く見えたり赤く見えたりする。
また、ランプの明るさ(効率)についても、その光色によって差異がある。最も明るいのは3波長発光型の昼白色・電球色であるが、3波長型でない一般型では白色[W]が最も明るい。昼光色系の場合、見た目には明るく(青白く)感じるが、実際には白色系に比べると10%前後暗くなるものの、実用上はあまり変わらない。自然光への忠実度(特殊演色評価数)を重視したタイプでは、一般照明用と比べて30~40%も暗い場合もある。
[編集] 明るさ
蛍光灯は、エネルギーを光に変える効率がよい。一般的には白熱電球の5倍の発光効率があるといわれる。白色発光ダイオードも高効率化が進んでいるが、現時点では蛍光灯の代替レベルの効率ではないといわれる。
ランプの明るさの単位は全光束・ルーメン(lm)である。これはランプから放射される、全ての方向の光の合計である。最新型の三波長のものでは、32W環形のランプは2640ルーメンに達している。なお、ランプに表示されている全光束の数値は、標準の試験用安定器を使用して測った場合の数値であるため、効率のよいインバーター器具で使用した場合、ランプ表示のルーメン値を大きく超えることがある(インバーターの性能がよいためであり、過負荷というわけではない)。蛍光ランプ自体の発光効率は、1980年代ごろからほとんど進歩していない(新方式のランプを除く)。
蛍光灯器具のエネルギー効率は、ルーメン/ワットであらわされる。これは器具によって大きく違い、一般的な28mm管の器具でも90lm/wぐらいのものから50lm/wぐらいのものまである。インバーター式の物は高効率で、磁気安定器式の物は低効率である。また、スリム管・スリムツイン管の場合は従来管よりも明るい。
器具のカバーも明るさに影響を及ぼす。和室用照明などの飾りがついているものや、分厚いプラスチック製のカバーは明るさを落とす。また経年変化による変色も明るさや色温度が変わる元になる。
調光機能付きの器具の場合、2灯式で片方が消灯するものや、点灯したまま明るさが変わるものがある。暗くした場合、省電力になるように設計されている製品もある。
蛍光灯は周囲温度によって明るさが変わる。寒冷時はランプが温まるまで暗いし、密閉型器具などであまりにも高温になる場合も照度低下と劣化が起きる。また、ホタルックなどの残光形ランプは、低温時は残光が暗くなる。
[編集] 寿命
蛍光ランプの寿命は、種類により異なるが、およそ6000~15000時間である。
蛍光ランプが点灯しなくなり寿命を迎える原因は、ランプ点灯中に起こる、電極に塗布された電子放出性物質(主にタングステン酸バリウム等)の蒸発、飛散による消耗が主となる。蛍光ランプは始動時にもっとも負荷がかかり、グロースターター(点灯管方式。後述)の場合、一回の点灯で約1時間寿命が縮むため、頻繁に点滅させる用途には向かず、より長時間点灯する場所に向く。
- 蛍光ランプ大手の松下電器は同社ランプ総合カタログにおいて、消灯時間おおむね数分程度を境に、連続点灯による電力消費の損失が、消灯して再始動することによるランプ寿命の損失を上回る(つまり点灯が不必要な時間が数分を超える場合は消灯・再点灯した方がランプ寿命を考えても経済的である)としている。
なお、後述の高周波点灯方式では、電子機器で制御することによって始動時の電熱予熱を最適化し、従来方式に比べ不点となる寿命の大幅向上を実現した(先に述べた「再始動することによるランプ寿命損失」が減少することを意味する)。
直管は、一般にワット数が大きいほど定格寿命が長い。よって、器具が選べる場合は20ワット管2本のタイプより40ワット管1本のタイプを選択することにより、交換の手間を減らすことができる。
蛍光灯器具によってもランプ寿命は変わり、良質な設計の器具であれば長持ちしたり、その逆のことが起きたりもする。グローとインバーターによる差のほか、メーカー間の差もある。
また、点灯することができても輝度は次第に低下するため、JIS規格では輝度が当初の70%に低下した時点も寿命としている。ただし、蛍光灯は点灯後に徐々に明るくなるため、数分待ってから計る必要がある。
輝度が低下する原因としては、水銀蒸気がガラス中のナトリウムと反応して黒色の付着物となること、ガラスが紫外線を吸収して透明でなくなること、などがある。
[編集] 外見の変化
- アノードスポット
- エンドバンド
- 内面導電性被膜(EC黒化・黄変)
- 電極付近の水銀付着による黒ずみ
- ガラス管中央付近の水銀付着による黒化現象
[編集] 器具の寿命
蛍光灯照明器具の寿命については消費者にはあまり認知されていないが、安定器がおよそ8年~10年、それ以外の部分についてはおよそ15年が目安とされている。
ただし一般家庭向けの製品では安定器のみを交換することは想定されていないため、器具全体の買い替えとなるケースがほとんどである。オフィス向けのものでは安定器のみを交換できる場合が多いが、一般家庭向け、オフィス向けともに設計寿命を超えて使用されることが多く、20年を超えて使用されることも珍しくない。
古くなった安定器は、「ジー」という雑音を発することがある。また最近の安定器は安全装置が内蔵されているため、寿命がくるとコイルやヒューズが切れて電流を遮断するため発煙・発火の恐れはほとんどない。安全装置のない古いタイプの安定器をいつまでも使い続けると過熱して発煙・発火することもある。 なお、1972年までの業務用・施設用の蛍光灯器具や水銀灯器具、低圧ナトリウム灯器具には、安定器にPCBが使われており、学校の蛍光灯器具が破裂してPCBが児童にかかった事故があった。[1]
シーリングライトなどの蛍光ランプが直接見えない構造の器具の場合は、光を透過するプラスチックが蛍光ランプから出る紫外線によって劣化し、黄色く変色することがある。こうなると照度は低下し、効率が悪くなる。現在は変色しにくく透過率が高いカバーが、メーカーによってクリーンアクリルなどと名づけられて採用されることが多い。
[編集] 廃棄
蛍光灯には水銀を含むガスが封入されているため、割って埋め立て処分するなどの方法では、割った際にガスが環境中に放出されたり、最終処分場が水銀で汚染されてしまうなどの問題がある。そのため、水銀を回収できる専用のリサイクル施設(例:イトムカ鉱山を参照)に処理を委託する方法がとられつつあり、環境マネジメントシステム ISO 14000 の認証を取得している企業などではこちらの方法が一般的である。
米国では廃棄蛍光ランプは専門の業者が回収を行い、この際、割らずに回収することと定められている。割れた蛍光灯を回収する場合には高額な回収費用が請求される。回収された廃棄蛍光ランプは専門の設備により口金金属部、管状部に丁寧に分割され、中の水銀は銅キャニスターに回収される。残りの部材はアルミ、電極、ガラス、蛍光体へと分別され、完全リサイクルされる体制が確立されている。 また、北ヨーロッパでは、廃棄蛍光灯の総量を減らすため、蛍光灯の長寿命化への取り組みが盛んである。
一方、日本では、一般家庭から廃棄される蛍光灯は、一部の自治体が回収を行っているものの、現在でも多くの地方自治体が燃えないごみに出すように定めており、環境意識の高まりとともに改善を求める声があがっている。
なお、自治体が回収を行っていない地域であっても、一部の家電量販店や電器店・ホームセンターなどが「蛍光管回収協力店」として店頭で回収している場合があり、個人で持ち込むことができる。
[編集] 過去の蛍光灯
過去の蛍光灯は現在の蛍光灯に比べ太かった。
太さは38mmで、型番のワット数を表す数字の後にSが付かない、またはSが1つのみだった。細い蛍光灯が一般的になった当時は、新しい蛍光灯に換えたときに、古い蛍光灯が太いため新しい蛍光灯の箱に入らないという問題も起こった。
なお、通常の器具の場合、太さの異なる蛍光灯に交換しても問題ないが、一部の密閉器具(防水型など)の場合、例えばFL20を使用する器具で太さの異なるFL20SS/18を使用した場合、発熱量が増え危険であるため、この器具では必ずFL20を使用しなければならない。但し、旧型の蛍光灯の専用器具は現在はあまり見かけないが、個人で営んでいる電器屋では、売れ残りで旧型の太い蛍光灯が残っている場合がわずかながらある(だいたい処分してしまう店が多いので、希少である)。またメーカーによってはSのないタイプをまだ製造している場合がある。
現在の蛍光管の直径は普通のタイプが32.5mm、省エネタイプは28mmである。省電力設計のランプは、頻繁な点滅や温度変化に弱いといわれる。
[編集] 主な蛍光灯ブランド
- パルックシリーズ(パルック・パルックプレミア)、ツインパルック、フルホワイト(昼白色)・ハイライト(白色、昼光色)、パルックボールプレミア・パルックボールスパイラル(電球型蛍光灯)(松下電器産業)
- メロウシリーズ(メロウZ PRiDE・メロウ5・メロウホワイト(昼白色)・メロウルック・メロウライン)、ネオライン・ワットブライター(白色、昼光色)・ネオボールシリーズ(ネオボールZ・ネオボールZ ReaL)(電球型蛍光灯)(東芝ライテック)
- きらりUV、ハイルミック(明るい輪・あかりん棒)・ハイホワイト(昼白色)・サンライン(白色、昼光色)(日立製作所)
- ルピカ・ルミクリスタル(昼白色)・ネオルミスーパー(白色、昼光色)(三菱オスラム)
- フレッシュルック5(三洋電機)
- ライフルック・ホタルックシリーズ(ホタルック・ホタルックα)・サンホワイト5(昼白色)・ライフライン(白色、昼光色)・ライフラインII(白色、昼光色、ラピッドスタート専用)・ビタミンDay(NECライティング)
- アイライン(岩崎電気)
[編集] 言葉
現在では死語であるが、嘗ては反応の鈍い人のことを揶揄して「蛍光灯」と言った。これは、昔の蛍光灯は全てグロースタート式だったため、「蛍光灯=スイッチを入れてもすぐに点灯しない」という事に由来する。