伊豆急行線
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伊豆急行線(いずきゅうこうせん)は、静岡県伊東市の伊東駅から下田市の伊豆急下田駅までを結ぶ、伊豆急行の鉄道路線。
目次 |
[編集] 路線データ
- 路線距離:45.7km
- 軌間:1067mm
- 駅数:16駅(両端を含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:全線(直流1500V・架空電車線方式)
- 閉塞方式:単線自動閉塞式
- 保安装置:ATS-Si(JR東日本のATS-SNと互換性あり)
- 車両基地所在駅:伊豆高原駅
全線Suicaおよびパスネット、PASMOの使用ができない。列車の車内放送では、伊東・伊豆急下田など、主な駅の発車・到着放送において、その旨が乗客に伝えられる(伊豆急線内でのSuica(スイカ)・PASMO(パスモ)の利用について)。
[編集] 運転概況
開業当時より優等列車の多くは、伊東駅で接続している伊東線を経由して東海道本線と直通している。普通列車も、朝晩は後述するワンマン運転を行っているものの、日中は伊東線の熱海まで直通運転する列車が多い。また、東京からの普通列車がグリーン車を連結しており、それに合わせる必要があったことと、別荘地を走るため需要が見込めることから、かつては伊豆急行でもグリーン車を保有し、自社の普通列車にも連結していた。のちに特別車両の「ロイヤルボックス」を連結するようになったが、現在では東京へ乗り入れる特急「リゾート踊り子」以外の自社列車にはグリーン車やロイヤルボックスなどの特別車両の連結はしていない。JR伊東線の熱海駅~伊東駅間の伊豆急に乗り入れない普通列車にも、伊豆急の車両が使用されることがある。
本数としては昼間時間で1時間に2本程度。
[編集] ワンマン運転
早朝・夜間には8000系電車を使用したワンマン運転が行われている。
ほとんどの場合は運転士以外にもう1人乗務員が乗務しており、乗車券の発券や集札を担当している。このため8000系電車には自動放送装置は設置されているものの、運賃箱や整理券発行機は設置されていない。ドア扱いは全て運転士が担当し、もう1人の乗務員はドア扱いを行わない。
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
伊豆急行線の近年の輸送実績を下表に記す。輸送量は減少している。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 輸送密度 人/km・1日 |
貨物輸送量 万t/年度 |
特 記 事 項 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
通勤定期 | 通学定期 | 定 期 外 | 合 計 | ||||
1975年(昭和50年) | 135.1 | 100.1 | 760.8 | 996.0 | 14,114 | 1.6 | |
1976年(昭和51年) | 129.7 | 105.8 | 682.7 | 918.2 | 12,437 | 1.6 | |
1977年(昭和52年) | 124.3 | 111.5 | 645.3 | 881.2 | 11,658 | 1.0 | |
1978年(昭和53年) | 118.9 | 109.5 | 600.2 | 828.7 | 10,573 | 0.6 | |
1979年(昭和54年) | 121.7 | 110.5 | 619.7 | 852.0 | 11,190 | 0.8 | |
1980年(昭和55年) | 120.8 | 110.2 | 547.2 | 778.2 | 9,851 | 0.2 | |
1981年(昭和56年) | 120.0 | 109.9 | 566.4 | 796.4 | 10,093 | 0.0 | |
1982年(昭和57年) | 118.8 | 104.7 | 560.8 | 784.4 | 9,926 | 0.0 | |
1983年(昭和58年) | 113.8 | 119.1 | 553.6 | 786.5 | 9,794 | 0.0 | |
1984年(昭和59年) | 112.2 | 139.0 | 558.8 | 809.9 | 10,015 | 0.0 | |
1985年(昭和60年) | 109.7 | 154.1 | 587.5 | 851.3 | 10,615 | 0.0 | |
1986年(昭和61年) | 106.4 | 154.8 | 619.8 | 881.0 | 11,041 | 0.0 | |
1987年(昭和62年) | 105.3 | 142.6 | 636.7 | 884.6 | 11,037 | 0.0 | |
1988年(昭和63年) | 110.2 | 150.6 | 652.2 | 913.0 | 11,376 | 0.0 | |
1989年(平成元年) | 109.6 | 151.6 | 623.9 | 885.1 | 11,093 | 0.0 | |
1990年(平成2年) | 114.5 | 147.5 | 722.1 | 984.1 | 12,847 | 0.0 | |
1991年(平成3年) | 116.7 | 136.6 | 748.1 | 1001.4 | 12,855 | 0.0 | |
1992年(平成4年) | 123.8 | 122.3 | 704.8 | 950.9 | 12,426 | 0.0 | |
1993年(平成5年) | 127.9 | 121.3 | 643.7 | 892.9 | 11,428 | 0.0 | |
1994年(平成6年) | 123.7 | 113.5 | 624.8 | 862.0 | 11,087 | 0.0 | |
1995年(平成7年) | 118.7 | 106.7 | 572.8 | 798.2 | 10,056 | 0.0 | |
1996年(平成8年) | 116.7 | 107.1 | 574.7 | 798.5 | 10,073 | 0.0 | |
1997年(平成9年) | 112.1 | 99.0 | 522.7 | 733.8 | 9,225 | 0.0 | |
1998年(平成10年) | 104.3 | 91.8 | 503.9 | 700.0 | 8,828 | 0.0 | |
1999年(平成11年) | 94.8 | 86.4 | 494.7 | 675.9 | 8,485 | 0.0 | |
2000年(平成12年) | 89.8 | 79.2 | 459.9 | 628.9 | 7,899 | 0.0 | |
2001年(平成13年) | 83.5 | 76.0 | 459.7 | 619.2 | 7,944 | 0.0 | |
2002年(平成14年) | 77.9 | 65.7 | 434.6 | 578.2 | 7,502 | 0.0 | |
2003年(平成15年) | 75.4 | 59.1 | 431.5 | 565.5 | 7,326 | 0.0 | |
2004年(平成16年) | 74.9 | 55.4 | 417.1 | 547.4 | 6,974 | 0.0 | |
2005年(平成17年) | |||||||
2006年(平成18年) | |||||||
2007年(平成19年) |
[編集] 収入実績
伊豆急行線の近年の収入実績を下表に記す。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 貨物運輸 収入 千円/年度 |
運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通勤定期 | 通学定期 | 定 期 外 | 手小荷物 | 合 計 | ||||
1975年(昭和50年) | 162,204 | ←←←← | 2,629,486 | 21,834 | 2,813,524 | 17,195 | 215,884 | 3,046,603 |
1976年(昭和51年) | 190,534 | ←←←← | 2,676,383 | 25,380 | 2,892,297 | 18,499 | 217,197 | 3,127,993 |
1977年(昭和52年) | 192,685 | ←←←← | 2,550,387 | 25,853 | 2,768,925 | 16,060 | 230,078 | 3,015,064 |
1978年(昭和53年) | 233,308 | ←←←← | 2,860,902 | 25,427 | 3,119,637 | 12,819 | 238,047 | 3,370,504 |
1979年(昭和54年) | 241,703 | ←←←← | 3,144,999 | 25,822 | 3,412,525 | 18,198 | 273,296 | 3,704,014 |
1980年(昭和55年) | 275,575 | ←←←← | 3,119,333 | 19,828 | 3,139,161 | 6,692 | 281,394 | 3,702,823 |
1981年(昭和56年) | 274,423 | ←←←← | 3,240,807 | 12,629 | 3,527,859 | 0 | 306,290 | 3,834,150 |
1982年(昭和57年) | 288,315 | ←←←← | 3,641,443 | 8,866 | 3,938,623 | 0 | 344,370 | 4,282,994 |
1983年(昭和58年) | 303,609 | ←←←← | 3,598,409 | 5,359 | 3,907,377 | 0 | 432,947 | 4,340,324 |
1984年(昭和59年) | 343,167 | ←←←← | 3,946,959 | 3,459 | 4,293,585 | 0 | 462,971 | 4,756,557 |
1985年(昭和60年) | 366,149 | ←←←← | 4,201,337 | 2,160 | 4,569,646 | 0 | 482,635 | 5,052,281 |
1986年(昭和61年) | 359,008 | ←←←← | 4,418,472 | 2,805 | 4,780,285 | 0 | 516,103 | 5,296,388 |
1987年(昭和62年) | 193,305 | 160,364 | 4,545,357 | 3,988 | 4,903,014 | 0 | 526,863 | 5,429,877 |
1988年(昭和63年) | 209,153 | 173,718 | 4,827,378 | 4,578 | 5,214,827 | 0 | 545,778 | 5,760,605 |
1989年(平成元年) | 218,755 | 176,557 | 4,956,400 | 3,400 | 5,355,112 | 0 | 519,732 | 5,874,844 |
1990年(平成2年) | 228,615 | 170,275 | 6,067,508 | 4,539 | 6,470,937 | 0 | 623,860 | 7,094,797 |
1991年(平成3年) | 231,783 | 158,818 | 6,167,801 | 4,411 | 6,562,813 | 0 | 641,062 | 7,203,875 |
1992年(平成4年) | 283,680 | 167,002 | 6,432,755 | 4,329 | 6,887,766 | 0 | 685,917 | 7,573,683 |
1993年(平成5年) | 302,990 | 167,184 | 5,874,981 | 3,216 | 6,348,371 | 0 | 724,984 | 7,073,355 |
1994年(平成6年) | 295,366 | 157,331 | 5,704,811 | 3,042 | 6,160,550 | 0 | 732,447 | 6,892,997 |
1995年(平成7年) | 282,056 | 148,990 | 5,164,243 | 2,838 | 5,598,127 | 0 | 739,753 | 6,337,880 |
1996年(平成8年) | 278,261 | 145,287 | 5,172,782 | 2,746 | 5,599,076 | 0 | 725,633 | 6,324,709 |
1997年(平成9年) | 302,142 | 154,895 | 5,162,161 | 2,687 | 5,621,885 | 0 | 704,736 | 6,326,621 |
1998年(平成10年) | 286,007 | 143,001 | 4,951,986 | 2,527 | 5,383,521 | 0 | 684,776 | 6,068,297 |
1999年(平成11年) | 258,988 | 134,264 | 4,802,241 | 2,427 | 5,197,820 | 0 | 700,341 | 5,898,261 |
2000年(平成12年) | 240,934 | 123,727 | 4,459,307 | 2,459 | 4,826,427 | 0 | 833,281 | 5,659,708 |
2001年(平成13年) | 223,570 | 118,205 | 4,439,412 | 2,420 | 4,783,607 | 0 | 795,600 | 5,579,207 |
2002年(平成14年) | 213,441 | 104,081 | 4,182,852 | 2,409 | 4,502,783 | 0 | 797,396 | 5,300,179 |
2003年(平成15年) | 204,463 | 93,724 | 4,130,160 | 2,281 | 4,430,628 | 0 | 802,543 | 5,233,171 |
2004年(平成16年) | ||||||||
2005年(平成17年) | ||||||||
2006年(平成18年) | ||||||||
2007年(平成19年) |
[編集] 駅一覧
「踊り子」「スーパービュー踊り子」「リゾート踊り子」の停車駅についてはこちらを参照(線内での臨時停車もあり)。
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
伊東線熱海駅まで直通運転 | ||||
伊東駅 | 0.0 | 東日本旅客鉄道:伊東線(直通運転) | 静岡県 | 伊東市 |
南伊東駅 | 2.0 | |||
川奈駅 | 6.1 | |||
富戸駅 | 11.5 | |||
城ヶ崎海岸駅 | 13.9 | |||
伊豆高原駅 | 15.9 | |||
伊豆大川駅 | 20.9 | 賀茂郡東伊豆町 | ||
伊豆北川駅 | 22.9 | |||
伊豆熱川駅 | 24.3 | |||
片瀬白田駅 | 26.1 | |||
伊豆稲取駅 | 30.3 | |||
今井浜海岸駅 | 34.2 | 賀茂郡河津町 | ||
河津駅 | 35.3 | |||
稲梓駅 | 40.7 | 下田市 | ||
蓮台寺駅 | 43.4 | |||
伊豆急下田駅 | 45.7 |
ほとんどの駅が一線スルー化されている。 なお、「伊豆」を冠する駅名(例:伊豆稲取)が多いのは、開業当時に国鉄と連絡運輸を行っていた東海自動車のバス駅やバス停(例:稲取)と区別するためである。
城ヶ崎海岸駅から、伊豆高原駅へと、一駅で「海岸駅」から「高原駅」に上り下りする路線であるが膨大な標高差を上り下りしている訳ではなく伊豆高原自体の標高が大して高くない。
[編集] 使用車両
[編集] 現在の使用車両
- 200系電車:主に普通列車に使用。
- 2100系電車:「リゾート21」の愛称がある。特急「リゾート踊り子」及び普通列車に使用。また、最終増備編成のR-5編成については、「アルファ・リゾート21」と名称・外観・車内仕様が異なる。
- 8000系電車:主に普通列車に使用。この電車よりワンマン対応。
[編集] 過去の使用車両
[編集] 旅客用
- 100系電車:現在事業用車両として両運転台車である「クモハ103」が1両残る。
- 1000系電車
- 東急デハ3600形・クハ3670形電車(東急3000系電車):借用車。1961年から1964年まで。
- 東急7000系電車:借用車。1962~1966年の夏期のみ。
- 東急7200系電車:借用車。1967~1968年の夏期のみ。
- このうち東急7000系・7200系は夏期の輸送力増強のため、夏期の新造車を東急車輛製造から直接伊豆急に搬入したもので、各シーズンの終わりに東急へ返却されている。
[編集] 貨物用
- ED2511:現在、東京急行電鉄長津田工場入換機関車(ED301)。社内では「電関(でんかん)」と呼ばれた。
- ワフ11、ワフ12:有蓋貨車。1971年廃車
- ワフ21、ワフ22:有蓋貨車。1981年廃車
- ト31、ト32:無蓋貨車。1974年廃車
[編集] 乗り入れ車両
[編集] 現在の定期乗り入れ車両
- JR東日本
- 185系電車:特急「踊り子」用
- 251系電車:特急「スーパービュー踊り子」専用
[編集] 過去の定期乗り入れ車両
臨時列車でも夏の海水浴臨時列車などで定期的に入線したものも含む
- 32・40系電車:111系投入までの普通電車。
- 111・113系電車:普通電車。2002年11月30日まで
- 80系電車:準急「伊豆」、準急「おくいず」
- 157系電車:急行「伊豆」、特急「あまぎ」
- 451系・453系電車:急行「常磐伊豆」
- 155系電車:急行「伊豆」、急行「おくいず」
- 165系電車:急行「パノラマ東伊豆」(「パノラマエクスプレスアルプス」使用 1995年夏のみ運転)
- 167系電車:急行「伊豆」、快速「伊豆マリン」「伊豆マリン新宿」「伊豆いでゆ」など
- 183系電車:特急「あまぎ」、特急「踊り子」など・現在でも団体臨時列車として頻繁に入線する。
- EF58形・EF65形機関車+14系客車:客車特急「踊り子」(座席車使用)、特急「サロンエクスプレス踊り子」(サロンエクスプレス東京使用)
- EF58形機関車+スロ81系和式客車:特急「お座敷踊り子」
[編集] お召し列車
下田に須崎御用邸があるため私鉄では珍しくお召し列車が乗り入れる。最近は特急「踊り子」「スーパービュー踊り子」のグリーン車に乗車されるため、クロ157形や一号編成を使用した純粋なお召し列車は乗り入れていない。
一方、1973年6月5日と1975年3月12日には、御料車に100系グリーン車、サロ182号を使用したお召し列車が伊豆高原~伊豆急下田間に運転されたこともある。
また、お召し列車にも使用されるE655系が2007年11月8・9日に伊豆急下田まで試運転を行った。
[編集] 車窓風景
海沿いを走る、というイメージが強いが、実際に海が見える区間は半分程度である。これは伊豆半島特有の山が海までせり出す地形のために、トンネルを多用しなければならなかったためである。また、箱根山戦争の余波(伊豆戦争とも呼ばれる)により西武系の企業に海沿いの土地(現在の下田プリンスホテル付近など)を押さえられてしまい、河津~伊豆急下田間で山側へルート変更をしなければならなかったことも影響している。
- 川奈~富戸間
- 海抜100m超の位置から海を見下ろすことができる。眼下には川奈岬、川奈ホテルゴルフコースが広がる。
- 片瀬白田~伊豆稲取間
- 波打ち際近くを走る、伊豆急の車窓を代表する区間。「リゾート21」に乗車すると、視界いっぱいに海が広がる。車内放送で伊豆七島の案内が流されることもある。
[編集] 参考文献
- 割谷英雄「伊豆急30周年ものがたり」
- 交友社『鉄道ファン』1992年2月号 No.370 p43~p54
- 割谷英雄「伊豆急40年の歴史をふり返って」
- 交友社『鉄道ファン』2001年1月号 No.477 p86~p93
- 鈴木文彦・久保田敦「地方鉄道レポート14 リゾート輸送の転機に立つ 伊豆急行のあゆみと現状」
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2005年6月号 No.464 p72~p81
- 小口喜生「伊豆急100系―名車“ハワイアンブルーの100系”走り続けた40年―」
- 宮田道一・杉山裕治「伊豆急100形―誕生からラストランへ―」
- ネコ・パブリッシング『RM library 34』
- 静岡新聞社編集局「静岡県鉄道物語」
- 森 信勝「静岡県鉄道興亡史」