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伊豆急行8000系電車 - Wikipedia

伊豆急行8000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

伊豆急行8000系電車
熱海駅に停車中の8000系(2007年7月22日撮影)
熱海駅に停車中の8000系(2007年7月22日撮影)
編成 2,3, 4両編成
起動加速度 2.0km/h/s
営業最高速度 100km/h
設計最高速度 120km/h
減速度 3.5km/h/s(常用最大)
4.5km/h/s(非常)
全長 20,000mm
全幅 2,800mm
全高 4,145mmまたは4,115mm
車両重量 30.8t(クハ8000形)~37.5t(クモハ8150形)
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
モーター出力 130kW
歯車比 85:16 (5.31)
駆動装置 中空軸平行カルダン駆動方式
制御装置 電動カム軸式抵抗制御+分巻界磁チョッパ制御
ブレーキ方式 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動
保安装置 ATS-Si, P
製造メーカー 東急車輛製造
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8000系電車(8000けいでんしゃ)は伊豆急行が保有する電車2005年平成17年)4月1日に営業運転を開始した。

目次

[編集] 導入の経緯

伊豆急行では、これまで通勤・通学輸送に東日本旅客鉄道(JR東日本)から購入した113系115系を改造して200系として使用していたが、元々老朽化していた車両であり、代替となる車両を必要としていた。

そこで、2004年(平成16年)より、親会社の東京急行電鉄(東急)から廃車となった8000系8500系1両を含む)を譲受し、順次改造・整備の上で導入することとなった。系列名はそのまま(※)に、形式名・車両番号を8001~に、「デハ」の呼称を「クモハ」「モハ」に振り直している。

[編集] 形式・編成

以下のように2種類の編成と5種類(後に1種類追加)の形式が用意された。

熱海伊東

2両編成(編成番号T11~)
  • クハ8050形(現・廃形式)
東急クハ8000形から改造された熱海・伊東向きの制御車電動発電機 (MG) や静止形インバータ (SIV) といった補機類を搭載していた。T11編成の8051のみ改造されたが、2006年3月に運転の安定性向上[1]のため次のクモハ8250形に再改造され消滅した。

雨天・積雪時などの空転滑走による遅延・立往生が減少し、運転上の問題が減少したことから、これ以後増備されたT12編成以降は当初からクモハ8250形に改造されている。

  • クモハ8250形
東急クハ8000形および伊豆急行クハ8050形から改造・再改造された熱海・伊東向きの制御電動車。モーター(電動機)とパンタグラフが増設され、クモハ8150形とユニットを組んで使用される。
  • クモハ8150形(※)
東急デハ8100形から改造された伊豆急下田向きの制御電動車。制御器やパンタグラフといった走行機器を搭載し、クモハ8250形とユニットを組んで使用される。
4両編成(編成番号T1~)
  • クハ8000形
東急クハ8000形から改造された制御車。熱海・伊東向きの車両はSIVを搭載し、8011~の車両番号が与えられている。
  • モハ8200形
東急デハ8100形の車体と東急デハ8200形の床下機器を組み合わせて改造された中間電動車。CP、SIVといった補機類とパンタグラフ、トイレを搭載し、モハ8100形とユニットを組んで使用される。
  • モハ8100形
東急デハ8100形から改造された中間電動車。制御器やパンタグラフといった走行機器を搭載し、モハ8200形とユニットを組んで使用される。
  • クハ8000形
東急クハ8000形から改造された制御車。伊豆急下田向きの車両はCPを搭載し、8001~の車両番号が与えられている。

伊豆急下田

  • ※種車に東急8500系のデハ8700形が1両存在するが、もともと設計上8000系とは同じグループのため、形状、性能ともにそれほど差異はなく、改造時に他車と同じクモハ8150形に編入された。
  • 東急デハ8100形を種車とする3形式は、東急時代の改造により、熱海寄りの貫通路に両開き扉が設置されている。なお、先頭部にも貫通扉を持つが、は装備されておらず、非常時以外の通り抜けには対応していない。

[編集] 改造点

[編集] 機構

制御装置などは基本的に東急時代のままであるが、MT比、ATSと減速度の関係により、東急時代の運転最高速度110km/h、起動加速度3.3km/h/s(6M2T編成=MT比3:1の場合)から、最高速度が100km/h、起動加速度2.0km/h/sに抑えられている。なお、回生ブレーキは東急時代と同様単独車(現在は存在しない)は45km/h、ユニット車は22km/hで失効する。

クモハ8150形は東急8000系に制御電動車が存在しなかったために、走行機器付きの中間電動車・8100形に運転台を設置する事で用意された。増設された先頭部は上部の通過標識灯(急行灯)や側面のコルゲート板[2]はないものの、それ以外の形状はオリジナルの先頭車に準じた形状となっている。オリジナル車に残る通過表示灯は東急時代に使用が停止され、伊豆急行でも使用していないので、運行に支障はない。

クモハ8250形は当初制御車のクハ8050形に改造される予定であったことから、クハ8050形の消滅後に改造された車両もクモハ8150形と異なり、東急クハ8000形から改造されている。離線対策のためにパンタグラフが新設されたが、搭載スペースが考慮されていなかったために、最も運転台側の冷房機1基が撤去され、その跡地に設置されている。さらに、冷却能力の低下を補うために運転台上部に新品の小型冷房機が設置された関係で、干渉を防ぐためにパンタグラフ形状は折りたたんだ際の占有面積の小さい、シングルアーム式となった。伊豆急でのシングルアーム式パンタグラフの採用は、200系F3~8編成に次いで2例目である[3]

モハ8200形は短編成で運行するために離線対策として、パンタグラフを持つデハ8100形に東急デハ8200形の床下機器を移設して、東急デハ8200形相当のパンタグラフ付き車両に改造された。クモハ8250形も機構的にはモハ8200形に準じたものに改造されている。

これら一連の改造には、東急で他の8000系が解体された時に発生した部品が一部使用されている。

すべての先頭車は障害物対策で排障器(スカート)が、連結作業対策で電気連結器が設置された。排障器は東急9000系などと同じ形状である。

[編集] 接客設備

外観は車体外部の帯が東急の赤色に代わって、100系をイメージした濃淡2色の水色(ハワイアンブルー)[4]となった以外にはさほど変化がないものの、内部は徹底的にリニューアルされ、居住性が大幅に向上している。

  1. 海側(伊豆急下田に向かって左)の座席は車端部以外がクロスシートに変更された。西武鉄道10000系 (NRA) のリニューアル工事の際に不要となったものの再利用で、ボックス状に配置され回転やリクライニングは行えない。水平より約5°前傾した状態で設置されている。クロスシート部分のつり革はすべて撤去された一方で、持ち手とシート固定のためにパイプの増設、テーブル[5]の設置が行われた。
  2. 長距離の乗車を考慮し、モハ8200形の熱海寄りの車端部にトイレ洋式)が設置された。2両編成には設置されていない。
  3. バリアフリー対応として、モハ8200形のトイレの向かいのスペースを活用して車椅子スペースが設置された。やはり、2両編成への設置は見送られている。
  4. 乗車案内の向上とバリアフリー対応として、ドア上部に蛍光表示管式の旅客案内表示装置と開閉を知らせるチャイムが設置された。旅客案内表示装置は千鳥状配置で、1両あたり4基が設置されている。チャイムは高低2打点×3で、全体的に高めの設定になっている。

ロングシート部分は車両によって、東急時代の更新工事の有無で形状が異なっている。更新車はドア間の座席が仕切りで4人掛と3人掛に区分され、端部にも仕切りが設置されている。詳しくは東急8000系電車#更新の項目を参照。

車体側面の社章は2005年度入線車は東急時代の社章プレートの「TOKYU」部分に「IZUKYU」の文字を被せた状態で使用されていたが、2006年度入線車から新規作成されたものが設置されるようになり、2005年度入線車も交換がなされた。新しい社章プレートは東急と同デザインであるが、色が赤からオレンジとなった。

その他、運行面の改造として、ワンマン運転への対応や伊東線への乗入れ装備の追加[6]が行われている。なお、ワンマン運転時には前面貫通扉窓の上部に「ワンマン」の看板が取付けられる。一部の車両にはさらにレールへの塗油器も設置された。

[編集] 運用

伊豆急行所属の他の車両同様に、伊東線熱海駅伊東駅伊豆急下田駅間で運用される。

[編集] 編成表

←熱海・伊東   →伊豆急下田
編成番号 4号車 3号車 2号車 1号車 導入日 備考
T11 ――――― ――――― クモハ8251
(クハ8035)
クモハ8151
(デハ8155)
2005年1月31日 クモハ8251は伊豆急行クハ8051からの再改造車。
T12 ――――― ――――― クモハ8252
クハ8049
クモハ8152
(デハ8723)
2006年3月31日 元試作改造車[7]
クモハ8252は簡易更新車。座席仕切りがない。
クモハ8152は元東急8500系。
3両編成化に伴う組み換えによって消滅。
T13 ――――― ――――― クモハ8253
クハ8021
クモハ8153
デハ8121
2006年12月16日
T14 ――――― ――――― クモハ8254
(クハ8033)
クモハ8154
デハ8122
2006年12月16日
T15 ――――― ――――― クモハ8255
クハ8025
クモハ8155
デハ8125
2006年12月16日
T16 ――――― ――――― クモハ8256
クハ8031
クモハ8156
デハ8132
2007年
T1 クハ8011
クハ8011
モハ8201
デハ8112
モハ8101
デハ8111
クハ8001
クハ8012
2005年1月31日
T2 クハ8012
クハ8029
モハ8202
デハ8130
モハ8102
デハ8129
クハ8002
クハ8030
2005年1月31日
T3 クハ8013
クハ8043
モハ8203
デハ8151
モハ8103
デハ8150
クハ8003
クハ8044
2006年3月31日
T4 クハ8014
(クハ8037)
モハ8204
(デハ8153)
モハ8104
(デハ8157)
クハ8004
(クハ8034)
2006年3月31日 モハ8104は軽量ステンレス車。
他車より重量が軽い。
T5 クハ8015
クハ8023
モハ8205
デハ8124
モハ8105
デハ8123
クハ8005
クハ8024
2006年12月16日
T6 クハ8016
クハ8013
モハ8206
デハ8114
モハ8106
デハ8113
クハ8006
クハ8014
2007年
T7 クハ8017
クハ8015
モハ8207
デハ8116
モハ8107
デハ8115
クハ8007
クハ8016
2007年
  • 下段カッコ内は東急時代の車号。更新工事を受けている車両はこの書体で区別した。
  • 青色は「トランバガテル」ラッピング電車。紺色ベースに花と細い帯をあしらった塗装となっている[8]

[編集] 投入計画

8000系は最終的に50両が導入される予定で、伊豆急行では200系の全車と2100系「リゾート21」1~3次車の置換えを計画している。

交通新聞社刊行の雑誌『鉄道ダイヤ情報』2007年12月号掲載の記事において、投入計画を3両編成(全編成トイレ付き)×15本に変更するとの記述があったが、この時点ではどのような編成になるのか、すでに導入済みの編成をどのように組み替えるのか、どのような改造をするのかなどについては言及されていなかった。

その後、2008年に実際に3両に組成変更した編成が登場した。種車の関係上2タイプの組み合わせがあり、ここでは編成番号に合わせてA・B編成と区分する。

熱海伊東

A編成(編成番号TA1~)
  • クハ8000形
元・4両編成の熱海・伊東側に連結されていた制御車である。
  • モハ8200形
元・4両編成の3両目に連結されていた中間電動車、トイレを搭載する。
  • クモハ8150形
元・2両編成の伊豆急下田側に連結されていた制御電動車である。
B編成(編成番号TB1~)
  • クモハ8250形
元・2両編成の熱海・伊東側に連結されていた制御電動車である。
  • モハ8100形
元・4両編成の2両目に連結されていた中間電動車である。
  • クハ8000形
元・4両編成の伊豆急下田側に連結されていた制御車、3両編成化にあたってトイレが追設されている。

伊豆急下田


 

←熱海・伊東   →伊豆急下田
編成番号 3号車 2号車 1号車 種車
TA4 クハ8014
モハ8204
クモハ8156
T4編成・T14編成
TB4 クモハ8254
モハ8104
クハ8004
T4編成・T14編成
TA6 クハ8016 モハ8206 クモハ8156 T6編成・T16編成
TB6 クモハ8256 モハ8106 クハ8006 T6編成・T16編成
TA7 クハ8017 モハ8207 クモハ8152 T7編成・T12編成
TB7 クモハ8252 モハ8107 クハ8007 T7編成・T12編成

[編集] その他

  • 1990年代後半に100系の老朽取替えに際し、代替車両の候補としてまず東急8000系が挙がった。しかし当時8000系に廃車予定はなく、当時計画されていた、車内サービスを維持するための片側2扉に改造しての導入ではJRとの直通運転に適していないとのことで、JRより提示された113系および115系を200系として導入した経緯がある。
  • 東急は伊豆急行との提携で2005年7月に東横線横浜高速鉄道みなとみらい線臨時急行伊豆のなつ号」を運転した。この時使用された8000系8007Fは車体外部が伊豆急行8000系と同一カラーに変更されたが、運転終了後は伊豆急行ではなく、そのままの帯色でインドネシアジャカルタ首都圏のKRLジャボタベックを運営するPT. Kereta Api社へ売却された。また、翌2006年の同月から再び田園都市線東京地下鉄(東京メトロ)半蔵門線東武鉄道伊勢崎線日光線で「伊豆のなつ」号が運行されているが、こちらは東急8500系8614Fが伊豆急行8000系と同一の帯色に変更されたものである。ただし8500系の前面形状は8000系と異なるため、前面帯の処理も異なっている。

[編集] 鉄道模型

クロスポイントからNゲージ鉄道模型塗装済キットが商品化されている。2両編成は入線当初のT11編成がモデルになっているが、クモハ8150形についても他の先頭車のボディが流用されているため、実物とは異なる。

バンダイからはBトレインショーティーが商品化されている。パーツ類は東急8000系の流用のためクモハ8250形、クモハ8150形の設定がないほか、モハ8200形のトイレ部分の表現も省略されている。なお、ともに2008年時点では入手困難となっている。

[編集] 脚注

  1. ^ 本系列のMT比は(M(電動車)とT(付随車)の比率)は1:1と東急時代より付随車が多く、伊豆急行は電動機に流す電流の量である「限流値」をさらに下げることで東急時代(2M2T編成で2.4km/h/s)よりも起動加速度を落とす計画であった。

    4両編成は先頭車が制御車であることから元々空転しにくく、低速時にはユニットの2両で主電動機を直列接続に、高速時には並列接続とする直並列制御のため対応できていた。

    しかし、2両編成はユニットを組む電動車が存在しなかったため永久直列制御とされた。この方式では抵抗制御段数が永久直列13段と少ないことから加速電流・加速力の変動幅が大きいため、多発する空転が問題となっていた。特に直列制御で起きた空転はノッチを切らない限り治まらない。

    これを改善するため、編成相手のクハ8050形を電装し、クモハ8150形とユニットを組ませて直並列制御とすることになった。同時に限流値を更に下げている。

  2. ^ 多数の凹凸 = リブを持つプレス加工された補強用板材。技術の進歩により1990年代以降に落成したステンレス車両での採用例は少ない。
  3. ^ 200系に搭載されたシングルアームパンタグラフは、JR東日本在籍時に中央本線の雪害対策として菱形パンタグラフから交換されたものである。
  4. ^ 100系は2002年営業運転終了。ステンレス地に映えさせるためか、本系列の帯色は同系列と比べると濃い色になっている。
  5. ^ 200系、2100系の解体発生品である。
  6. ^ JR東日本のATS-P形列車番号設定器などが設置された。
  7. ^ 譲渡開始前に長津田車両工場で2両編成化の試作・サンプル品として先行改造されていたもので、長津田検車区に2年ほど留置され続けた後、塗装変更やクハ8050形の電装などの追加改造が行なわれて、導入を決めた伊豆急行に入線したという経緯がある。
  8. ^ 2007年3月まで運転されていた先代「トランバガテル」編成(200系F5・F6編成)の代替として投入されたもので、沿線の賀茂郡河津町にあるバラ園河津バガテル公園」をPRするもの。

[編集] 外部リンク

[編集] 関連項目


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