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京急1000形電車 (2代) - Wikipedia

京急1000形電車 (2代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

京急1000形電車(2代)(金沢文庫駅~金沢八景駅間にて2007年7月5日撮影)
京急1000形電車(2代)
金沢文庫駅金沢八景駅間にて
2007年7月5日撮影)

京急1000形電車(けいきゅう1000がたでんしゃ)は、2002年平成14年)4月15日に営業運転を開始した京浜急行電鉄通勤形電車

旧1000形もまだ使用されている中で新規製造が続いていることから、この車両は新1000形N1000形と呼ばれることが多い(後述)。

目次

[編集] 概要

老朽化した旧1000形と700形の置き換えを目的に製造された。車体全長18m、片側3扉で座席は1次車から5次車までは客用扉間にはロングシートを、車端部にはクロスシートを採用したが、6次車では車端部もロングシートとされた。コンセプトは「人に優しい新1000形」であると京急の駅や車内に広告が掲示されている。

[編集] 外観

[編集] 1~5次車

  • 車体はアルミ合金製と車体し、塗装は同じ3扉車の3代目600形に類似する。
  • 先頭車の正面には、2100形と同様にワイパーカバーに形式名が打ち抜かれている。プリントではなく打ち抜きとなっているのは、連結作業時に運転台から前方下部が見えるようにする実用上の理由からである。なお、非常口には車両番号の下3桁が表示されている。
  • 2003年(平成15年)度製の2次車からは側面窓が黒い大型窓となり、種別・行先表示器英字を併記の上、行先表示器の字幕下地の色を白とした。この白地表示は1次車や2100形・1500形など他形式にも普及している。
  • 2005年(平成17年)度製の4次車からは、種別表示器がフルカラーLED、行先表示器が白色LED、運行番号表示器がオレンジ色LEDとなった。側面表示器は英字を表記するが、前面は英字表記を省略した。走行中にLED表示を消す制御は行わず、先頭車が連結面に入っている時も点灯する。

[編集] 6次車以降

  • 基本設計が変更され、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE231系E233系で採用された設計を変更した上で導入された。
  • 京急初のステンレス製車体とし、車体は無塗装であるが、窓周りを除き600形以来の赤地にクリーム色太帯でなく1500形以前の赤地に白細帯をベースとしたラッピングが施されている。
  • 前面のみ普通鋼製となっており、デザインも1~5次車のものをほぼ引き継いでいるが、非常扉にワイパーが設置され、ワイパーカバーを廃止した。また、従来ワイパーカバーに表記していた前面の形式表記は、スリット状から印刷数字とされた。
  • 雨樋・配管の埋め込みをなくして露出するようになった。
  • 京急では1967年(昭和42年)の700形1次車以来40年ぶりとなる高運転台構造で、運転台背後の座席を廃止したために先頭車の定員数が変更されている。

[編集] 内装

[編集] 1~5次車

1次車の車内
1次車の車内
  • 扉間がロングシート、車端部が補助いす付きのクロスシートである。
  • ロングシートには、家庭のソファーの座り心地を目指したバケットシートを使用した。
  • クロスシートと補助いすの構造は、3次車までは2100形と同じである。ただし、2100形とは違い、座席は固定され、クロスシートの座席を上げることはできない。
    3次車以降では補助いすが完全に収納されるタイプとなり、クロスシート本体の形状も変わった。
  • 両先頭車に車いすスペースを備える。
  • 京急の新製車両としては初めてドアチャイムを設置した(山側・海側と異なる。音色は都営5300形などと同じ)。
  • 京急の車両では初めて床面の主電動機点検蓋(トラップドア)を廃止した。
  • 号車間を仕切る貫通扉は、2次車までは1500形と同様、奇数号車の浦賀寄りにしか設置していなかったが、3次車以降は各号車の浦賀寄りに設置した。
  • 貫通扉は600形と同じく窓ガラスはワイドとしてドアチェッカーをなくし、扉を軽量化すると共に開閉操作を容易にした。

[編集] 6次車以降

  • 車端部の4人掛けクロスシートは5人掛けロングシートに変更され、京急では1993年(平成5年)製造の1500形の最終ロット以来14年ぶりのオールロングシート車となった。
  • 客用ドアの室内側を、ステンレス無塗装のものとして、E231系と同じく窓は京急で初めてのゴムによる接着式にした。
  • 運転台背後に非常用の折り畳み式梯子を格納。そのため仕切部分の窓が小型化されている。
  • 網棚や天井部の形状もJR東日本E231系と同等品を採用。そのためラインデリア整風板の形状も変更された。
  • 座席の袖仕切りと立席ポストの部分の仕切り板の色を変更。
  • 客室カーテンの色を青色に変更し、床の色を従来の明るい青色からグレー系とした。
  • 客室側窓は1~5次車では客用ドア部も含めて全て複層ガラスであったが、これらを単板ガラスとした。また、中央に桟のある2枚分割式に変更。なお一部の窓は一段下降式となっている。
  • 各車両間の貫通扉はE233系等の傾斜式に変更され、下にあったレールは端を除き省略した。
  • 制御機器類がドイツシーメンス社製ではなくなった(後述)ため、車内の製造ステッカーにあった「Powered by SIEMENS」の表記は省略された。

[編集] 性能

  • 最高速度は130km/h(営業運転では120km/h)。
  • 起動加速度は3.5km/h/s(0.97m/s2)、減速度は常用最大で4.0km/h/s(1.11m/s2)、非常減速度が4.5km/h/s(1.25m/s2)となっている。
  • MT比は2次車までが電動車 (M) : 付随車 (T) =1:1(8両編成は4M4T、4両編成は2M2T)、3次車以降はM:T=3:1(8両編成は6M2T、4両編成は3M1T)である。
  • 主電動機の1時間連続定格出力は1・2次車は190kW、3次車から5次車は125kW、6次車は155kWである。

[編集] 制御装置

  • 1・2次車では、2100形と同じくドイツ・シーメンス社製のGTO素子によるVVVFインバータ制御装置を採用した。電動空気圧縮機 (CP) は2100形と同じスクリュー式である。
  • 3~5次車では、同じシーメンス社製のVVVFインバータ制御装置を採用したが、使用素子はIGBTに変更された。これは1401号車に試験的にこのタイプの制御装置を搭載し各種試験が行われ、その後本格採用されたものである。同時に純電気ブレーキも搭載した。
  • 6次車以降の編成は、1500形インバータ改造車で採用されている三菱電機製のインバータ装置に変更された。この装置でも純電気ブレーキに対応している。磁励音東京地下鉄(東京メトロ)10000系と類似する。電動空気圧縮機 (CP) は600形と同じスクロール式に変更した。
  • 2次車までのGTO素子を搭載する車両は2100形と同様にシーメンス独特の音階による磁励音を主電動機およびインバータ装置から発する(京急イメージソングであるくるりの楽曲『赤い電車』にもこの音階が歌詞に含まれている)が、2100形とは若干異なる。鉄道車両・船舶の俗称も参照のこと。
  • 1・2次車の先頭車には、非常ブレーキ回生ブレーキ失効時にセラミックスの粒子を噴射して制動能力低下を防止するセラジェット(8両編成の第1編成は砂撒き装置)を搭載していたが、3次車以降ではMT比の変更に伴い廃止されている。

[編集] 編成

8両編成と4両編成の2種類があり、2両または4両が1ユニットを構成する。4両編成の第1・2編成が2両1ユニット、8両編成の第10編成が3両1ユニットである以外は4両1ユニットである。

8両編成の車種は、第1~5編成が浦賀方からMuc - Tpu - Tu - Mu - Ms - Ts - Tps - Msc、第6~9編成がMuc - Tpu - Mu - Mu - Ms - Ms - Tps - Msc、第10編成がM2uc - M1u - Tu - M1' - M2' - Ts - M1s - M2scである。4両編成は第1・2編成がMuc1-Tpu1-Tps1-Msc1、第3・4編成がMuc1-T-Tp-Msc1、第5編成以降がMuc1-M-Tp-Msc1である。表記中のpはパンタグラフ搭載、uは浦賀方、sは品川方、cは運転台を意味する。

制御装置は電動車に各1台、パンタグラフはシングルアーム式のものがTp車に2基(4両編成の第1・2編成は各1基搭載し、1基を準備工事としている)搭載する。蓄電池は4両編成の第3~12編成はTまたはMに、それ以外はTpに搭載する。補助電源用静止形インバータ (SIV) はTp車に、スクリュー式の空気圧縮機は両端の電動車(Muc・Msc)に搭載する。

ステンレス車は、パンタグラフはM1に2基、M1'に1基(品川寄りに)搭載する。制御装置はM1系に各2台、スクロール式の空気圧縮機はTに、蓄電池とSIVはM2cに搭載する。

車両番号は、車種に関わらず8両編成が浦賀寄りから1001-1002-1003-1004-1005-1006-1007-1008とされ、第2編成は1009~1016、第3編成は1017~1024というように編成を通した連番で付番されている。4両編成については、百の位を4として、1401~1404、1405~1408、1409~1412のように8両編成と同様の連番で付番されている。

4両編成の先頭車排障器(スカート)裏の連結器の下部にはスピーカーを設置しており、他の車両と連結している時にそのスピーカーから転落防止のための注意放送が流れる(小田急電鉄3000形3次車以降と同様のもの)。

[編集] 1次車

京急N1000形1次車(4両固定、1401~1404)
京急N1000形1次車
(4両固定、1401~1404)
  • 8両編成(3本):1001~1008・1009~1016・1017~1024
  • 4両編成(2本):1401~1404・1405~1408

2002年2~6月に落成した。客室側窓に緑色に着色された複層ガラスを採用しており、客室側窓にはセンターピラーが取り付けられている。8両編成1本と4両編成1本を6両編成2本に組み替えることが可能である。

1401号車は試験的に前面・側面の行先・種別表示器をフルカラーLEDとしていた。以前は前面・側面ともに英字も表示していたが、2005年3月下旬頃に前面については日本語表示のみとした。その後2006年2月頃に従来の幕式に戻され、同年4月に白地幕に変更した。前述したが、このフルカラーLEDは4次車以降の車両から本格採用した(残りの黒幕車は、1017編成のみ)。 また、これも前述したが、この車両は試験的にIGBT素子のVVVFインバータ制御装置を搭載しており、これは3次車以降で本格的に採用されている。この装置についても同月に元のGTO素子のものに戻された。

[編集] 2次車

京急N1000形2次車(8両固定、1025~1032)
京急N1000形2次車
(8両固定、1025~1032)
  • 8両編成(2本):1025~1032・1033~1040
  • 4両編成(2本):1409~1412・1413~1416

2003年5~7月に落成した。前述したが、種別・行先表示器が白地に黒文字のタイプとなり、ローマ字表記が加わった。 客室側窓のセンターピラーを廃止し、通勤車としては最大級の幅をもつ黒色UVカット1枚ガラスとされた。また6両編成への組成変更を考慮しない構造になり、4両編成のパンタグラフの取付位置を変更した。 8両編成は、2004年12月の羽田空港第2ターミナル開業を記念して、スカイブルーをベースに、三崎口・羽田空港寄り4両(第2ターミナル)に全日本空輸 (ANA) 機を、品川寄り4両(第1ターミナル)に日本航空 (JAL) 機を配したラッピング電車として運転された。車内は長井秀和を起用した広告で統一された。


[編集] 3次車

京急N1000形3次車(8両固定、1041~1048)
京急N1000形3次車
(8両固定、1041~1048)
  • 8両編成(2本):1041~1048・1049~1056
  • 4両編成(2本):1417~1420・1421~1424

2005年1~3月に落成した。MT比を変更した他、IGBT素子によるVVVFインバータ制御装置を本格的に導入した。この編成より種別・行先表示器の書体は太文字となった。これにより、遠くから見ても、種別・行先の表示が鮮明になった(後に交換されている1次車も太字)。 また、クロスシートの形状が600形に似たタイプであり、火災対策強化としてラインデリア整風板の形状はアルミ製白色塗装に変更され、また貫通扉は各車両に増設された。車内にある車椅子スペースのマークは600形と同じくプレート式に変更と消火器のカバーの形状は埋め込みから出っ張って目立つようになった。

[編集] 4次車

京急N1000形4次車(4両固定、1425~1428)
京急N1000形4次車
(4両固定、1425~1428)
  • 8両編成(1本):1057~1064
  • 4両編成(4本):1425~1428・1429~1432・1433~1436・1437~1440

2005年7~8月に落成した。前述したが、種別表示器・行先表示器・運行番号表示器をLED式に変更した。乗り入れ先の東京都交通局都営地下鉄5300形で採用した既存の3色LEDではなく、東急5000系列と同じくフルカラーLEDを採用した。ただし消灯する機能はなく常時点灯である。

[編集] 5次車

京急N1000形5次車(4両固定、1441~1444)
京急N1000形5次車
(4両固定、1441~1444)
  • 8両編成(1本):1065~1072
  • 4両編成(2本):1441~1444・1445~1448

2006年11月に落成した。4次車との変更点はなく製造時期の違いにより区分された。

[編集] 6次車

京急N1000形6次車(8両固定、1073~1080)
京急N1000形6次車
(8両固定、1073~1080)
  • 8両編成(1本):1073~1080

2007年(平成19年)3月に落成した。前述したように、京急で初めてステンレス車体を採用した。

[編集] 7次車

京急N1000形7次車(8両固定、1089~1096)
京急N1000形7次車
(8両固定、1089~1096)
  • 8両編成(2本):1081~1088・1089~1096

2008年(平成20年)1月~2月に落成した。6次車とほぼ同等の仕様であるが、JR東日本E531系などと同様に客用ドアの室内側の戸当たり部分に黄色のマーキングテープが貼付されている。また、貫通扉は6次車と同じく傾斜式であるが隙間をなくすためゴムを装着し、貫通扉の下の端にあったレールは廃止されている。

[編集] 在籍数

2008年3月現在は、8両編成12本(96両)と4両編成12本(48両)の計144両が在籍する。2006年度は8両編成2本と4両編成2本が落成した。2007年度は24両製造予定とされていたが、このうち1081編成が2008年1月に落成・東急車輛を出場し、試運転の後、同月末に営業運転を開始した。また、1089編成も同時期に落成、同年2月初めに東急車輛を出場し、試運転の後、同月中ごろに営業運転を開始した。1081・1089の両編成は、営業運転初日から、都心方面直通運用にも入っている。2008年度は32両製造予定。

  • 8両編成の行先表示器:黒地幕1本・白地幕6本・LED式はアルミ製2本・ステンレス製3本
  • 4両編成の行先表示器:白地幕6本・LED式6本

[編集] 運用

  • 8両編成は主に快特等の優等列車に使用され、6次車も含めて都営浅草線京成線北総線への乗り入れ運用が中心となっているが、京成線高砂以遠の京成佐倉までも稀に運用される場合がある。
  • 4両編成は優等列車の付属編成や普通列車に使用されている。また、4両編成同士を複数連結させた8両編成(12両編成もある)は優等列車としても使用される。
  • 2100形、600形、1500形、2000形とも連結可能で、実際に連結の運用もある。
  • 2008年1月7日には大師線に初めて入線し、終日運用されていた。

[編集] 関連商品

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