ノーベル賞
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ノーベル賞(スウェーデン語: Nobelpriset、ノルウェー語:Nobelprisen、英語: Nobel Prize)は、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年に始まった世界的な賞である。(1年に1回、毎年行われる)
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[編集] 部門
以上の6部門からなり、それぞれが世界的な権威を持つ。特に自然科学部門のノーベル物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の3部門における受賞は科学分野における最大級の栄誉であると考えられている。近年は遺伝子化学など、ノーベル医学・生理学賞とノーベル化学賞との境界が曖昧な分野が増えてきている。
[編集] 選考
選考は物理学賞、化学賞、経済学賞の3部門についてはスウェーデン科学アカデミーが、生理学・医学賞はカロリンスカ研究所が、平和賞はノルウェー国会が、文学賞はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行う。受賞者へはメダルと賞金が与えられる。
受賞者に与えられる賞金の原資は、ノーベルの遺産をその遺言に基づいてノーベル財団が運営している。しかし、経済学賞は1968年に設立され(1969年から授賞)、その原資はスウェーデン中央銀行の基金による。そのため、この賞は正式名称を「アルフレッド・ノーベルを記念した経済学におけるスウェーデン銀行賞」としており、厳密にはノーベル賞には含めない。
原則的にノーベル賞の選考過程は公表されていない。よって「ノーベル賞の候補」というものは公的には存在しないことになるが、「いつか受賞するだろう」と目される人物が各分野に存在するのも事実である。
[編集] 授賞式
授賞式がノーベルの命日である12月10日に、平和賞を除く5部門はストックホルム(スウェーデン)のコンサートホール、平和賞はオスロ(ノルウェー)の市庁舎で行われる(古くはオスロ大学の講堂で行われた)。ノーベル賞受賞者は受賞後にノーベル・レクチャーと呼ばれる記念講演を行うのが通例になっている。
その後、ノーベル賞受賞者はストックホルム大学やストックホルム経済大学などの大学の学生有志団体が毎年持ち回りで行うパーティーに出席し、そこで大学生らと希望する受賞者は更なる躍進を願って一斉に蛙跳びをするのが慣例となっている。
[編集] 科学史としてのノーベル賞
ノーベル賞、特に自然科学部門の賞はその性質として必然的に19世紀末以降の科学史をなぞるようになっている。その歴史は基本的には輝かしいものであるが、誤った業績への授与、あるいは人種差別なども行われていることから負の側面も少なからず存在している。
[編集] 自然科学分野におけるアジア人受賞者
前述のようにノーベル賞の自然科学分野における受賞者は欧米の研究者を中心としており、黄色人種であることを理由とされて受賞候補から外されるというような負の一面も存在していた[要出典]。非欧米人の受賞者は1930年にインド人のチャンドラセカール・ラマンが物理学賞を受賞したのをはじめ、日本人である湯川秀樹、朝永振一郎らがやはり物理学賞で受賞している。
[編集] 日本人の受賞
詳細は日本人のノーベル賞受賞者を参照
日本人としては、第1回から北里柴三郎や野口英世などが候補としてエントリーされていたが[要出典]、受賞はしなかった。北里にいたっては、共同研究者であったエミール・アドルフ・フォン・ベーリングが受賞したのに、抗毒素という研究内容を主導していた北里が受賞できないという逆転現象が起こっていた。これは後年に公開されたノーベル財団の資料[要出典]から、北里が黄色人種であったことが原因と判明している。
なお、実際の受賞は戦後の湯川秀樹が初めてとなった。このことは、戦後直後の日本国民に大いに自信を与えたという。 また、2007年現在、日本はアジア地域で最も多くの受賞者を輩出している。現時点での受賞者は、帝国大学とそれを母胎とする大学の出身者が多数を占め、白川英樹博士(東京工業大学)を加えると、全てが国立大学の卒業生となる。
氏名 | 受賞年 | 部門 | 理由等 |
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湯川秀樹 | 1949年 | 物理学賞 | 中間子の存在の予想。コロンビア大学在籍中に受賞。 |
朝永振一郎 | 1965年 | 物理学賞 | 量子電気力学分野での基礎的研究。 |
川端康成 | 1968年 | 文学賞 | 『雪国』『千羽鶴』『古都』等作品。 |
江崎玲於奈 | 1973年 | 物理学賞 | 半導体におけるトンネル効果の実験的発見。IBM在籍中に受賞。 |
佐藤栄作 | 1974年 | 平和賞 | 非核三原則の提唱 |
福井謙一 | 1981年 | 化学賞 | 化学反応過程の理論的研究。 |
利根川進 | 1987年 | 生理学・医学賞 | 多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明。MIT在籍中に受賞。 |
大江健三郎 | 1994年 | 文学賞 | 『万延元年のフットボール』『燃え上がる緑の木』三部作等作品。 |
白川英樹 | 2000年 | 化学賞 | 導電性高分子の発見と発展。 |
野依良治 | 2001年 | 化学賞 | キラル触媒による不斉合成反応の研究。 |
小柴昌俊 | 2002年 | 物理学賞 | 天体物理学とくに宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献。 |
田中耕一 | 2002年 | 化学賞 | 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発。 |
なお、日本人がノーベル賞受賞に際して受け取った賞金は所得税法第9条13号ホに基づき非課税となる。
※日本の大学別(学部卒時点)受賞者数(自然科学賞)
[編集] エピソード
- 数学にノーベル賞が存在しないのは、ノーベルが知人の数学者を嫌っていたためなど諸説ある。数学での最高位の賞はフィールズ賞である。
- 設立当初は受賞者が欧米人が主だったので批判があった。
- スウェーデンから受賞者が多かったので批判があった。
- ノーベル賞は受賞資格に「本人が生存中」が条件だが、例外的に第2代国連事務総長ダグ・ハマーショルドは死後に平和賞を受賞している。
- これまでにノーベル賞の受賞を辞退した人は3人。サルトル、ボリス・パステルナーク、レ・ドゥク・トである。
- クリスティアーン・エイクマンがビタミンB1の発見によって生理学・医学賞を受賞しているが、エイクマンは米ぬかの中に脚気の治癒に効果のある栄養素(ビタミン)の存在を示唆したにすぎず、実際にその栄養素をオリザニン(ビタミンB1)として分離・抽出し発見したのは鈴木梅太郎である。
- ヨハネス・フィビゲルが寄生虫によるガン発生を唱えて生理学・医学賞を受賞しているが、同時期に刺激説を唱えていた山極勝三郎が受賞を逃している。後年、フィビゲルの説は限定的なものであるとして覆され、今日のガン研究はすべて山極の研究に拠っている。
- アントニオ・エガス・モニスのロボトミー手術による受賞はその技法に疑いがある。
- 文学賞は西側の文化や主張を取り入れた作品が多く受賞したので批判があった。
- 文学賞は歴史書や哲学書も受賞したことがあったが、イギリス元首相ウィンストン・チャーチルの「第二次世界大戦回顧録」の受賞が選考対象の定義をめぐって論争になり、これ以降純文学に限るとした。
- 平和賞は戦争を起こした当事者が受賞して批判になった。ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャー元米国務長官と北ベトナムのレ・ドゥク・ト元共産党書記がベトナム戦争終結を約したパリ協定の功労による平和賞を受賞したが、レ・ドゥク・トは受賞拒否して戦争も続いている。
- 平和賞は受賞した人の国から反発されることがよくある。その一例、ドイツのカール・フォン・オシエツキー、ソ連のアンドレイ・サハロフ、チベットのダライ・ラマ14世、ミャンマーのアウン・サン・スー・チーが有名。
[編集] 備考
- ノーベル賞を二度受賞した人
- マリ・キュリー(1903年に物理学賞、1911年に化学賞)
- ジョン・バーディーン(1956年と1972年に物理学賞)
- フレデリック・サンガー(1958年と1980年に化学賞)
- ライナス・ポーリング(1954年に化学賞、1962年に平和賞)
- ノーベル平和賞を二度受賞した団体
- 国際連合難民高等弁務官事務所(1954年と1981年)
- ノーベル平和賞を三度受賞した団体
- 赤十字国際委員会(1917年と1944年と1963年)
- 親子でノーベル賞を受賞した組
- 兄弟でノーベル賞を受賞した組
- 叔父の関係のノーベル賞を受賞した組
- 夫婦で共同受賞した組
- ピエール・キュリーとマリ・キュリー(1903年物理学賞)
- フレデリック・ジョリオ=キュリーとイレーヌ・ジョリオ=キュリー(1935年化学賞)
- カール・コリとゲルティー・コリ(1947年生理学・医学賞)
- 親子で共同受賞した組
- ヘンリー・ブラッグとローレンス・ブラッグ(1915年物理学賞)
- 最年少ノーベル賞受賞者
- ローレンス・ブラッグ1915年25歳で物理学賞受賞
- 最年長ノーベル賞受賞者
- ペイトン・ラウス1966年87歳で生理・医学賞受賞
- カール・フォン・フリッシュ1973年87歳で生理・医学賞受賞
- レイモンド・デービス2002年87歳で物理学賞受賞
- (受賞の決め手となる功績から)最短記録
- ヨハネス・ゲオルグ・ベドノルツとアレキサンダー・ミュラー酸化物高温超伝導体の発見の論文発表から約1年後の1987年に受賞
[編集] 関連項目
- ノーベル賞受賞者の一覧
- 国別のノーベル賞受賞者
- イグノーベル賞
- ノーベル財団
- アーベル賞
- フィールズ賞
- ルードヴィ・ノーベル賞
- w:Nobel laureates by university affiliation
[編集] 外部リンク
- Nobelprize.org (ノーベル賞の公式サイト) (英語)
- ノーベル賞 - A guide to the Nobel Prizes
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