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トヨタ・R36V - Wikipedia

トヨタ・R36V

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

R36Vは、トヨタ自動車1990年に投入したR32Vの改良型のエンジンである。ル・マン24時間レース世界スポーツプロトタイプカー選手権(WSPC)や全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)などへの参戦を目的とし、前TMGの会長である冨田努によって開発された。

目次

[編集] 1994年ル・マンの悲劇

1994年のル・マン24時間は、前年度までのSWCマシンの規定からLMP規定へと変わった。グループCカーが出走できるのは1993年限りであったが、規制を加えることにより、この年のル・マンにも生き残った。この年、前年のグループCカーは、フルフラットボトム、大幅なパワー規制(550PS)で「LMP1」と言うカテゴリーで生き残った。これが事実上、最後のCカーの出走できるレースである(厳密に言えば、この年の鈴鹿1000kmにもCカーが出走していた為、このレースが最後のCカーの出走できるレースであると言っていい)。この年トヨタはワークス参戦せず、トヨタ・94C-V(92C-V改良型)をサードから一台、トラストから一台の計2台をル・マンのプロトタイプクラスへと送り込む。このときの出力は、それまでのグループC仕様ではル・マン決勝で700馬力前後だったのに対し、リストリクター装着により550馬力前後となっていた。

前年、前々年のクラスウィナーであり、誰もが優勝候補最右翼と見た。 ところがここに大きなライバルが出現する。この年のル・マンには、名ばかりのGTとも呼ばれたある一台のマシンがサルテサーキットに姿を現す。それが、ダウアーポルシェである。前年からル・マンには市販車改造のGTクラスが復活したが、そのマシンの中身はグループCレーシングカーとしてそれまでル・マンに参戦していたポルシェ・962に、欧州の規定にあわせて保安部品をつけて公道を走行可能にしたという周囲の度肝を抜くマシンであった。これは、GT1のレギュレーションで、最低1台公道を走行可能なロードカーバージョンを生産すればよいという規定の抜け穴をうまく利用した結果によるものである。なぜ、この手法がとられたかというと、LMPクラスに比べてタイヤ幅は狭く、重量が1000kgとLMPクラスの900kgより不利な反面、リストリクター径がLMPクラスより大きくできるため馬力を出すことができ、ストレートが多いル・マンではLMPマシンより速いという有利であるということや燃料タンク容量が大きくなるなどの利点があったためといわれている。

レースは、予想通りこのGT1クラスのダウアーポルシェと、トヨタ・94C-Vの一騎打ちとなった。トラストは深夜にミッショントラブルで後退したが、サードはレースの3分の2はポルシェを抑え首位を快走していた。サードは燃えていた。チームの兆年の夢であったルマン制覇が現実のものとして捕らえることができたこともある。それ以上に長年チームを支え、この年F1にステップアップしながら、 サンマリノグランプリの予選の大事故で命を落としたローランド・ラッツェンバーガーの弔い合戦と言うこともあった。ところがレース終了まで残り2時間を切り、1991年マツダ・787Bに次ぐ日本車の優勝が見えたきた時、トラブルが起きた。

残り1時間半、首位を快走していたサードトヨタが突如ピットロード出口付近でストップした。ギアのシフトリンケージのトラブルである。そのままリタイヤかと思われたが、その際にドライバーを務めていたジェフ・クロスノフが、ミッションの中に手を突っ込み、無理矢理3速に固定して再びマシンを走らせ、なんとかスロー走行でピットまで戻り修復した。しかしその間に、二台のダウアーポルシェに先行されてしまった。その後エディ・アーバインファステストラップまで猛追し、ホームストレートで2位の#35ダウアーポルシェを抜き去るものの、そこで万事休す。結局、総合二位、クラス優勝という形で終わってしまう。サードの加藤眞代表にとっては1973年シグマ初参戦以来、最大のチャンスだった。1985年から始まったトヨタのル・マン参戦は九分九厘捕まえかけていた栄光を掴むことができないまま、ひとますここでピリオドが打たれた。

優勝を逃がしたとは言え、最後まで健闘したこの年のサードのトヨタ・94C-Vがル・マンの博物館で永久保存されることとなった。 時代を表わすように、メインスポンサー一色のバブル景気時代と異なり、多数の小口スポンサーのステッカーがボディを彩っている。

[編集] 1994年鈴鹿1000km

その後「本当の」グループCカー最後のレースが鈴鹿サーキットで行われた。鈴鹿1000km(この年からポッカが冠スポンサーになり、名称も「インターナショナルポッカ1000km」に)である。当初ル・マン優勝のダウアーポルシェが来日し、ル・マンの激闘の再現になるはずだったが、直前に来日が急遽キャンセル。サードの94C-Vはライバル不在のまま孤高のレースを展開していたが、トラブルでリタイヤ。有終の美を飾れなかった。これが1982年鈴鹿1000km(トムス童夢・セリカCが出走)以来のトヨタ、そして日本の最後のグループCカーレースであった。

[編集] 再びル・マンへ

1995年、サードとトラストはスープラのGT1仕様でル・マン参戦を継続することとなった。しかし、トラストはテスト中のクラッシュで、(シード権があったのだが)ル・マン参戦を断念。サードはマクラーレンF1などを相手にするには明らかなポテンシャル不足でこの年は総合14位、翌1996年もリタイアという惨憺たる結果であった。サードはトヨタのセミワークス活動とは別に、MR2をベースにしたオリジナルGT1マシンであるMC8(セルシオ用V8搭載)での参戦も1995年から開始したが、 目だった成績を残せないまま、1997年には予備予選落ち、この年限りでルマン参戦を中断した。

そこで、トヨタはワークスとしてル・マンでの総合優勝を狙うために、1998年に「GT1」と言いながらどう見てもグループCカーにしか見えないTS020(GT-one)を新規開発をし、その心臓部に1994年、あと一歩で栄光を掴めなかったR36Vの改良型であるR36V-Rエンジンを搭載してル・マンに登場し、TMG(トヨタ・チームヨーロッパ(TTE))からのエントリーと言う形でワークス活動を再開した。

ここまであからさまなCカーもどきの「GT1」ことTS020は強烈であり、それをあの堅実なトヨタがと言う点でさらに衝撃的であった。 トヨタGT-oneは懸念されていたミッショントラブルが多発、ミッション交換でその場をしのいで後退してもその圧倒的速さで首位奪還、とデッドヒートを繰り返しデビューレースでありながら他を圧倒、ティエリー・ブーツェンらのドライブする29号車が残り1時間半の時点で首位を維持し、ル・マンでの数々の不運に見まわれたトヨタにもついに女神が微笑むと思われたが、残り1時間でまたもミッションを壊しコース上でストップ、リタイヤとなってしまう(トヨタ勢で唯一の完走車だった27号車は総合9位)。

翌1999年にはLMGTPクラスで参戦、1インチ小さくなったタイヤと燃料タンク容量が10リッター削減された規定に合わせて細部をリファインした改良型を投入。前年の不運があったとは言え、その圧倒した速さから5つのワークスチームの中で誰もが本命視していた。予選はポール獲得、決勝でも快調に3台のマシンは周回を重ねるが、タイヤバーストや駆動系トラブル、クラッシュ等により本命と言われていた1号車・2号車が深夜のうちに脱落する予想外の展開。残ったバックアップ役の日本人組(片山右京/鈴木利男/土屋圭市)がドライブする3号車にチームの総力を注ぎ、残り1時間の時点でBMW V12 LMRに次ぐ2位。片山が終盤ファステストラップの連続で追い詰め、BMW V12 LMRに22秒差まで猛追するが、その後不運にも328km/hの速度でタイヤが突如バースト。スピンすることなく体勢を立て直しピットまで戻るが、この時点でまたしても栄光を逃がしてしまった(日本人トリオの2位は前年の星野一義鈴木亜久里影山正彦日産・R390(32号車)の3位を上回る最高位)。トヨタはこの年限りでル・マンから撤退し3年後の2002年よりF1に参戦。結局1度も総合優勝を獲得できないままサルテを去ることとなった。

[編集] スペック

R36V
  • エンジン形式:V型8気筒
  • バンク角:90度
  • 総排気量:-
  • ボアxストローク:86×77mm
  • 最大出力:800PS以上(リストリクター装着で550PS)
  • 最大トルク:-
  • 圧縮比:8.5
  • クランクシャフト高:135mm(91年型より115mm)
  • ターボチャージャー:トヨタ製CT26RT型(ツインエントリー式)
  • マネージメントシステム:日本電装製EFI-D
  • 重量:200kg
R36V-R
  • エンジン形式:V型8気筒
  • バンク角:90度
  • 総排気量:-
  • ボアxストローク:86×77mm
  • 最大出力:630PS以上
  • 最大トルク:65Kg・m以上
  • 圧縮比:9.0
  • ターボチャージャー:ギャレット製


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