関水金属
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種類 | 株式会社 |
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本社所在地 | 161-0031 東京都新宿区西落合一丁目30番15号 |
設立 | 1957年(昭和32年)8月 (関水金属彫工舎) |
業種 | 製造業 |
事業内容 | 鉄道模型製造 |
代表者 | 加藤浩(2004年就任) |
資本金 | 3,600万円 |
売上高 | 30億5,100万円(2006年5月期) |
従業員数 | 116人 |
関係する人物 | 加藤佑治(創業者) |
外部リンク | http://www.katomodels.com |
株式会社関水金属(せきすいきんぞく、英称:Sekisui Kinzoku Co., Ltd.)は、KATOブランドの鉄道模型の製造元で、日本のNゲージ鉄道模型大手。線路や情景など関連製品も扱う総合メーカーである。
目次 |
[編集] 創業からNゲージ製造開始まで
加藤祐治は1957年8月、東京都文京区関口水道町に鉄道模型用金属部品工場を興し、この地にちなんで関水金属彫工舎と名づけた。メーカーの下命で台車枠などを生産し鉄道模型で使われるドロップフォージング部品の9割を生産するようになった。
加藤は1960年代初頭、普及型鉄道模型の量産を計画し小形スケールモデルの構想・開発に着手した。1964年にはNゲージ完成品分野への進出を正式に発表し、翌1965年国産初の本格的Nゲージ製品 C50 蒸気機関車とオハ31形客車を発売した。
C50は国産初のNゲージ製品であると同時に、正確なスケールを採用した世界初の本格的Nゲージ鉄道模型として欧米で高い評価を獲得した。小形模型製造に適したモーターやネジ等の部品がなく、工作機械も未整備だった黎明期に独自の設備と技術の自助努力によって模型を作り上げた。
[編集] 年譜
- 1957年(昭和32年)8月有限会社関水金属彫工舎創業
- 1963年(昭和38年)9mmゲージスケールモデルの開発を開始
- 1965年(昭和40年)国産初のNゲージC50 蒸気機関車・オハ31形客車発売
- 1966年(昭和41年)日本初のNゲージ国電103系、固定式線路発売
- 1967年(昭和42年)3月有限会社関水金属に改称
- 1968年(昭和43年)ニュルンベルクでカプラー規格の国際統一へ合意
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- ALCO PA-1発売
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- 1969年(昭和44年)カプラーをNMRAタイプ(X2F)からアーノルトタイプに統一
- 1975年(昭和50年)初代キハ82系発売
- 1977年(昭和52年)7月株式会社関水金属に改組
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- ホビーセンター開設
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- 1980年(昭和55年)営業部門、株式会社カトー独立
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- ユニトラック(Nゲージ)発売
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- 1986年(昭和61年)HOゲージ及び16番ゲージに進出する
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- 米国法人KATO USA操業開始
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- 1987年(昭和62年)KATO新ブランドロゴ制定
- 1989年(平成元年)フライホイール搭載のEF81、ユニトラックがグッドデザイン賞受賞
- 1997年(平成9年)鶴ヶ島に新金型工場竣工
- 2005年(平成17年)2代目キハ82系発売
- 2007年(平成19年)「KATO Nゲージ アーカイブス -鉄道模型3000両の世界-」発売
[編集] 概要
[編集] 製品の特徴
安定した走り装置を製造することに定評があり、耐久性能も高い。ショーティを除いて部品供給、ライセンス生産は行わない。モーターも自社製であるように、内製品率が高く模型制作へのこだわりは強い。
実物の印象をよく捉えた丁寧な作りこみの製品を発売している。製品はプラスティックに細密なモールド(彫刻)を施して形態を再現している。
一部の蒸気機関車モデルは1/140(正式な縮尺:1/150・9mm)ほどの大きさのオーバースケール製品が多い。キャブ(運転室)に内装できる小形モーターが存在しなかったためだったが、2002年に小形モーターを自社開発し実用化に成功した。しかし、火室内に収めたためにやはり少々オーバースケールとなっている[1]。
[編集] 経営状態
非常に良いと言われ、2001年~2005年度の収益は安定した伸びを示している。事業は鉄道模型に専業。輸出比率も高く事業の3割を占める。 最初の日本型Nゲージ鉄道模型をつくりあげた加藤祐治は経営から身を引き、2004年から息子の加藤浩を中心とする経営体制になった。2007年9月現在会社の執行役員は創業家の加藤家と国竹家で占められ、同族経営で知られている。
[編集] 生産設備
主な生産国は日本で、埼玉県に鶴ヶ島、坂戸の2工場を稼動させている。 1997年鶴ヶ島に新金形工場(施工者鹿島建設)が竣工し増産体制が整う。創業時から自社開発と自社製造に対するこだわりが強く、品質を維持し優れた製品や機構を他社に先駆けて生み出す原動力になっていたといわれる。
[編集] 車輌
もっとも開発に力が注がれている分野であり、製品は精密金型加工技術などが駆使されている。
[編集] ラインナップ
日本形Nゲージの嚆矢であるC50形蒸気機関車とオハ31系客車を発売して以後、新製品と再生産を織り交ぜながらラインナップを拡充してきた。カタログモデルだけでも国鉄時代から現在のJRまでの多岐に渡った製品群を持つ。ただし、私鉄の車両のラインナップはトミックスやマイクロエースと比べると少ない。
この他に過去に発売された限定品、鉄道会社からの受注生産モデルやカタログ落ちモデルが多数存在していて、コレクターの蒐集の対象となっている。なお、カタログモデルであっても、メーカー在庫切れの商品は次回生産まで約2年以上の長期間再生産を待つ必要がある。
基本的に自社開発部門で設計し、製造も一貫して行われる。カタログモデルには20年以上以前に設計された製品も多く存在している。
[編集] 特殊な装備
新機構の開発に意欲的で、付加価値の高い装備を施している。国内はもとより海外製品とも差別化を図っている。
- 振り子機構
- E351系「スーパーあずさ」で初採用。実車同様に曲線上で車体を内側に傾ける機構。ドイツフライシュマン社と方式が異なる。
- オープン・ノーズカプラー
- 新幹線車両の先頭部が左右に開いて連結器がせり出すまでの構造を再現したリアルな連結機構。ただし操作はレール上で行うことはできない。
- 運転台シースルー
- ライトユニットにLEDを採用し小型化して床板内収納式とし、電車の運転台と、客室部分との仕切りを再現した。TOMIX製レールバスなどでも採用されている機構。2005年冬発売の国鉄101系から採用開始。
- サスペンション機構
- 台車や車軸にばねによって加重を加えることで車輪踏面を線路に押さえつけて安定させ、脱線を防止し線路と車輪の接点を保持して安定した集電を行う機構。
- フライホイール
- モーター回転軸の慣性を保存し、動力車に無通電区間の踏破性能を与え安定した推進力を与える機構。走行に安定性が増しスロー走行が実現する。1989年国内で先陣を切って導入を開始し、2004年にすべての電気機関車とディーゼル機関車[2]で装備を完了した。さらに2005年から 電車とディーゼルカーで標準装備が進められている。
- コロ軸機構(HOゲージ)
- 車軸端の軸受け部分が実物同様、走行中に回転する機構
- ローフランジ車輪
- 模型として過大になりがちな車輪のフランジ(つば)形状の張り出しを従来の製品より低くして、より実感的な再現を狙ったが、線路敷設状態が悪いなどの条件下では従来より脱線しやすい。
- 最終的に最新の製品ではローフランジ車輪は採用されなくなり、代わりに厚みの薄い車輪が使われるようになった。
[編集] 制御機器
従来からの直流12V制御に加え、新しい鉄道模型の制御方式として世界標準であるDCCを採用している。この方面で先進する米国Digitrax社と輸入代理店契約を結び、自社線路システム向けに入門用コントローラーD101を投入した。車載デコーダー(受信機)は長らく輸入に頼っていたが、独自にワンタッチ装着可能な製品を開発し、搭載に必要な分解を最小限度におさえた車両製品の開発と従来品の改修に注力している。2006年以降欧州向け製品は現地規格NEM適合済み。
伝統ある直流12V制御方式では、パワーパック、新コントローラーシステム(定電圧直流電源)に加え、リアルな質感を備えレバー操作で計器類が連動する運転台形コントローラーを発売している。
- ジャンプポート
従来の自社直流制御コントローラーをDCCコントローラーに接続させる仕組みで、デジタルコントローラーD101(DCS50K)に装備される。直流電流を変換して制御信号として認識させるシステムのこと。
- サウンド制御
サウンドデコーダーを内装した車両は走行スピードに応じてエンジン回転ピッチ音などを変化させながらリアルに走行する。スロットルからの指示によって、汽笛、警笛、連結音、きしみ音などを自由に鳴らすことのできる世界標準のシステム。[3]
[編集] レイアウト用品
レイアウトづくりのためのシステム商品を自社ブランドで展開する。また、海外提携各社のレイアウト用品を自社パッケージブランド化し幅広く投入している。
日本形は鉄道シリーズのほか住宅など一般情景用品も扱う。1970年代の鉄道施設や町並みを再現する「ローカルストラクチャーシリーズ」を展開し、蒸気機関車運転施設に強み。「ジオタウン」はプレート上に町並みを再現したシリーズで駅前施設のほか、レストランや商業ビル、公共施設など幅広い。郵便自動車や人形などのアクセサリーに独自性がある。
- レイアウト用材料
樹木や草地、地面、ユニトラック用バラストを自社展開。ウッドランドシーニックスなど世界的な有名メーカと多く提携を結び、米国、ドイツなどレイアウト普及国の製品を多く取り入れている。
[編集] 販売形態
2007年にインターネットによる通信販売を開始した。また、自社ホームページで一般向けの在庫状況を確認できる。
[編集] ホビーセンター
ショールームをかねた直営店で現在は東京と大阪に2店舗をもつ。顧客との対面窓口としての性格も強く、故障修理をはじめアフターサービスに強い。 販売では模型車輌、特にASSYパーツ(アッシーパーツ)と呼ばれるHO/Nゲージ、工場組み立て部品の品揃えに絶大な強みを持つ。輸入レイアウト用品、ストラクチャーの取り扱いも豊富である。ショールームフロアでは歴代製品を展示し、運転用レイアウトが設置される。ホビーセンター開設以前は高田馬場にショールームが有ったがホビーセンター開設に伴い廃止された。
- KATO CUSTOMSHOP
近年、DCCの取り扱いを本格化していることに関連してホビーセンター内に KATO CUSTOMSHOP を併設。パーツやシールの取り付けを有償で受け付けるほか、DCC導入の相談や加工サービスを提供している。
[編集] 海外展開
米国現地法人KATO USA(KATO U.S.A.,Inc. 在シカゴ)を配置。米国での強いブランド力を生かして、機関車、貨車、客車の他、関連製品を幅広く展開し北米向け輸出を強化している。2004年には、アメリカ鉄道黄金時代を代表する旅客列車カリフォルニア・ゼファーを発売した。
欧州市場では、現地メーカーからの受注生産という形態で車輌を発売。2006年にアジア進出第1弾として台湾新幹線車輌の生産を発表した。
- 自社開発の新規技術を、海外向け製品に先行投入する事例が多く、数年間の検討の後、日本型へ標準機構として採用されるケースが多い。
- 国内ではホビーセンターのほか、外国形模型取扱店で入手できる。
[編集] その他
- 印刷物
- KATO鉄道模型総合カタログ (不定期発行だが2008年版より1年ごとに発行予定)
- KATO NEWS (季刊、年4回発行)
- KATO鉄道模型レイアウトガイド
- ユニトラックレイアウトプラン集(Nゲージ)
- 広告
- 雑誌
- 交通機関
[編集] エピソード
- 初期のNゲージ用リレーラーは、1964年から1965年にかけて「ソニー・マイクロトレーン」の名で9mmゲージ鉄道模型の製品化を模索したSONYの金型を計画の中止後に譲り受けて利用した製品である。