ミス・サイゴン
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ミス・サイゴン(Miss Saigon)は、1991年4月11日に初演されたウエストエンド(ロンドン)ミュージカルである。
初演から9年9ヵ月後の2001年1月28日に4097回目で幕を閉じた。今日までに ミスサイゴンは日本、アメリカを含む多くの国々で上演されてきた。また、ブロードウェイではロングラン公演歴代9位に位置づいている。
目次 |
[編集] オリジナル・スタッフ
- 製作:キャメロン・マッキントッシュ
- 作曲:クロード=ミシェル・シェーンベルグ
- 作詞:リチャード・モリトビーJr.、アラン・ブーブリル
- 台本:アラン・ブーブリル、クロード=ミシェル・シェーンベルグ
- 演出:ニコラス・ハイトナー
[編集] 背景
作詞家のアラン・ブーブリルが、ベトナム人少女が元GI(アメリカ軍兵士)の父親の待つアメリカへ出発しようとしている写真を入手し、そこからアイデアを受けて創作された。ジャコモ・プッチーニ作イタリア・オペラ『蝶々夫人』とフランス戯曲『マダム・クリサスマム』をストーリーのベースにしている。
ベトナム戦争末期のサイゴンの売春バーで働くベトナム人少女キムとアメリカ大使館で軍属運転手を務めるクリスの悲恋が描かれている。
『レ・ミゼラブル』を製作したクロード=ミシェル・シェーンベルグとブーブリルのコンビの超大作として、ロンドンでは開幕前から話題が沸騰し、1989年にウエスト・エンドドルリーリーン劇場で開幕した。主演のキム役はレア・サロンガ、モニク・ウィルソンのフィリピン人女優が起用された。後に、森尚子が日本人女優初のウエストエンド主演を果たしている。
オリジナル・ロンドン・キャスト及びオリジナル・ブロードウェイ・キャストにおいて、狂言回しのエンジニア役にはジョナサン・プライスが配され好演しているが、アジア系俳優を配しなかったためかフランス系の私生児という設定となっている。その他、アジア系民族に対する偏見が強いとして、ニューヨーク公演時にアジア系俳優を中心とした俳優組合からボイコット寸前にまでなった経緯がある。
[編集] ストーリー
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
1975年4月、アメリカの支援する南ベトナムと、ソ連の支援する北ベトナム(ベトコン)の間ベトナム戦争は、終焉を迎えようとしていた。ベトナムの田舎娘だったキムは、17歳で家族を失い、家を焼かれ、首都サイゴンまで逃げてきた。そこで、フランス人とベトナム人の混血の通称エンジニアの経営する売春宿で働くことになった。最初のお客は、アメリカ兵のクリスだった。クリスは、戦争も何もかも嫌気がさしている状態だったが、戦友のジョンのおごりで、キムを買うことになった。キムとクリスは一晩だけの契りのはずだったが、お互いにひかれ愛し合い始めた。
南ベトナムは、ベトコンの侵攻におされていたが、アメリカは、ベトナムから撤退することを決意した。1975年4月30日、ついにサイゴン陥落。アメリカ軍は全面撤退する。クリスは、キムを連れてアメリカに帰ろうとし、全ての手続きを終えていたが、サイゴン陥落の日の混乱でついに、キムに会うことができず、一人で帰国することになった。アメリカに帰国後3年たったある日、クリスは、ベトナムに残してきたキムのことを気にかけながらも新しい生活を始めることを選び、エレンと結婚する。
キムには、13歳の時に親が決めた婚約者トゥイがいた。トゥイはベトコンに寝返り、新政府のもとで、高い地位にのしあがった。トゥイは執拗にキムを探し続け、ついに探しあてる。しかし、キムはトゥイとの結婚を拒みそして、クリスとの間にできた子供タムがいることを告げる。逆上したトゥイはタムを殺そうとした。キムはやむをえず、トゥイをクリスが残していった拳銃で撃った。キムはエンジニアとともに、バンコクに逃げる。
1978年9月、アトランタで、ベトナム帰還兵がベトナムに残してきた子供(ブイ・ドイ)の支援活動を行うための集会の場でジョンはクリスに、キムがバンコクで生きており、子供がいることを告げた。クリスは苦しむが、エレンとともにバンコクに行くことを決意する。バンコクのキャバレーで、キムはホステスとしてエンジニアは客引きとして働いていた。そこへキムを探しに来たジョンに会う。キムはジョンからクリスがバンコクに来ていることを知った。ジョンは結局、クリスに妻がいることを告げることができなかった。キムは早くクリスに会いたい一心で、クリスの泊まっているホテルに出向く。そこには、キムを探すためにクリスもジョンも外出しており、エレンだけがいた。そしてキムは、クリスに妻がいることを知る。
キムの夢はたった一つ。タムを自由の国アメリカに連れて行き、幸せな生活を送らせることであった。しかし自分がいては、タムもアメリカに行けないことを悟り、自ら命を絶つことを決意した。
[編集] 主な登場人物
- キム
- ミス・サイゴンの主人公でベトナム人。田舎の村に住んでいたが、ベトコンに家族を殺され、家を焼かれ17才でサイゴンまで逃げてきた。サイゴンでは、エンジニアの経営する売春宿で働くことになる。
- エンジニア
- フランスとベトナムの混血児。サイゴンで売春宿を経営する。売春宿で知り合ったアメリカ兵の力を借りてアメリカへ行く事を夢見ている。「エンジニア」とはニックネームだが、何かの技術者という訳ではない。英語の engineer には、「うまく切り抜けていくやつ」というような意味がある。
- クリス
- アメリカ兵。何もかもが嫌になっている時に同僚のジョンに連れられ、気晴らしにエンジニアの経営する売春宿にやってくる。そこでキムと出会い、心惹かれる。サイゴン陥落でアメリカに帰国するが、国のために戦ったはずが、アメリカ国民からは冷ややかな目で見られつらい日々を送りながらも、新しい生活を送ることを決意しエレンと結婚する。しかし、3年後ジョンから、キムにクリスとの間に子供がおり、バンコクで暮らしていることを聞かされる。
- エレン
- クリスの妻。ベトナムから帰国したクリスと結婚するが、クリスの心に潜む闇の部分に立ち入ることができないでいた。クリスから、ベトナムにいた時にキムと知り合い、今はクリスとキムの子供がバンコクにいることを聞かされる。クリス・ジョンとともに、キムと子供のいるバンコクに旅立つ。
- ジョン
- クリスのベトナムでの戦友。クリスがキムに会うきっかけとなった売春宿へクリスを連れて行く。アメリカに帰国後は、ベトナム孤児となったアメリカ兵の子供を救出するための活動する。ベトナムから帰国して3年後、バンコクにキムとクリスとの子供がいることを知りクリスに伝える。
- トゥイ
- キムの従兄弟。13歳の時に、キムの両親がキムとの結婚を決める。トゥイはその後、敵のはずのベトコンに寝返る。サイゴン陥落後、人民委員補にまでなり、キムを執拗に追い続ける。サイゴン陥落3年後のキムを見つけるが、クリスとの子供タムがいることを告げられ、逆上して、タムを殺そうとする。
- ジジ
- エンジニアの経営する売春宿で働くコールガールの一人。その売春宿で「ミス・サイゴン」となる。
[編集] 曲目
NO. | 曲目 | 奏者 | 注 |
---|---|---|---|
1 | 序曲 | エンジニア、アンサンブル | |
2 | 火がついたサイゴン | エンジニア、ジョン、クリス、キム、アンサンブル | |
3 | 我が心の夢 | ジジ、キム、アンサブル | |
4 | バータリング・フォー・キム | エンジニア、ジョン | |
5 | キムとクリスのダンス | キム、クリス、エンジニア | |
6 | 神よ何故? | クリス | |
7 | この金は君のもの | クリス、キム | |
8 | サン・アンド・ムーン | クリス、キム | |
9 | ユニコーン | クリス、キム | |
10 | 電話 | クリス、ジョン | |
11 | 取引 | クリス、エンジニア | |
12 | ウェディング | キム、アンサンブル、クリス | |
13 | トゥイの侵入 | トゥイ、キム、クリス | |
14 | 世界が終わる夜のように〈1978年4月ホーチミン〉 | キム、クリス | |
15 | サイゴン陥落 | エンジニア、アンサンブル、トゥイ | |
16 | 今も信じてるわ | キム、エレン | |
17 | クークープリンセス | キム、エンジニア、トゥイ、アンサンブル | |
18 | トゥイの死 | キム、トゥイ、アンサンブル | |
19 | 生き延びたけりゃ | エンジニア | |
20 | キムとエンジニア | キム、エンジニア | |
21 | 命をあげよう | キム、アンサンブル | |
22 | オープニング | ||
23 | ブイ・ドイ | ジョン、アンサンブル | |
24 | 新しい事実(ポスト・ブイ・ドイ)〈1978年10月バンコク〉 | クリス、ジョン、エレン | |
25 | バンコク | エンジニア、アンサンブル | |
26 | プリーズ | ジョン、キム | |
27 | クリスはここに〈1975年4月サイゴン〉 | ジョン、キム、エンジニア、アンサンブル | |
28 | キムの悪夢パート1~トゥイの亡霊 | トゥイ | |
29 | キムの悪夢パート2~大使館 | クリス、キム、アンサンブル | |
29 | キムの悪夢パート3~大使館の門 | クリス、キム、アンサンブル | |
30 | キムとエレン | キム、エレン | |
31 | 今,彼女に会った | エレン | |
32 | エレンとクリス | エレン、クリス、ジョン | |
33 | ペーパー・ドラゴン | エンジニア、キム | |
34 | アメリカン・ドリーム | エンジニア、アンサンブル | |
35 | 私の小さな神 | キム、クリス | 後にラストシーンが改変されこの曲はなくなった。英語版CDと帝国劇場ライブ盤のみに収録されている。 |
[編集] 各国版プロダクション
各国版でミス・サイゴンが上演された国・都市は下記の通りである。(2007年8月現在)
- 1989年 ウエストエンド(ロンドン)
- 1991年 ブロードウェイ
- 1992年 日本
- 1993年 トロント、日本
- 1994年 ハンガリー、ロサンゼルス
- 1995年 シドニー、ドイツ
- 1996年 オランダ
- 1997年 デンマーク
- 2000年 フィリピン、ポーランド
- 2001年 イギリス(ツアー)
- 2004年 イギリス(ツアー)、日本
- 2005年 アメリカ(ツアー)
- 2006年 大韓民国
- 2007年 オーストラリア、ブルガリア、チェコ共和国、カナダ、フィンランド、ブラジル
- 2008年 日本
[編集] 日本公演
[編集] 日本版スタッフ
[編集] 概要
日本では東宝が製作権を入手し、1992年4月に帝国劇場で開幕した。コンピューター制御での大掛かりな舞台セットで、劇中に実物大のヘリコプターが登場するなど話題を呼んだ。
キム役には、当時アイドルであった本田美奈子と無名新人の入絵加奈子が当てられ、ともに好演し話題を呼んだ。また、本田美奈子がケガで降板している間はアンダーであった伊東恵里もキムを演じていた。
配役発表当時、エンジニア役はダブルキャストで市村正親と治田敦が配されていたが、治田はエンジニア役を演じることはなく、開幕からしばらくは市村が単独で演じていた。
開幕4ヶ月後の8月に笹野高史が同役に追加されている。504日間、745ステージ、観客数111万人という当時では空前の記録を残し1993年9月に閉幕した。
日本初演時、バンコクの歓楽街でポン引きに店に誘われる観光客は国籍不明(ただし、セリフでは「アーユーブリティッシュ?」と英国人を匂わせていた)だったが、再演時には他国同様、日本人のツアー客に変更されていた。
[編集] トラブル
- 2004年8月10日 プレビュー初日に装置故障のため、開演が20分遅れる。
- 2004年9月26日 ヘリコプター故障のため45分間一時中断。キャスト代表として筧利夫と帝劇劇場責任者から挨拶の後再開。
- 2004年9月14日 別所哲也右足の怪我よって休演。
- 2004年09月28日 怪我で休演していた別所哲也復帰。特別カーテンコールが行われる。
- 2004年10月22日 公演中「サン・アンド・ムーン」後に大使館&電話のセットが出ず、部屋も引っ込まずに一時中断。約40分の休憩後に再開するも、婚礼のセットの左右が付かない・バルコニーがはけない等のトラブルが起こり、そのまま公演中止となる。キャスト全員による挨拶と「命をあげよう」の大合唱が行われた。2004年公演最大最悪の事態。結果的に11月1日同キャストによる振り替え公演決定。
- 2004年11月12日 900回記念にも関わらず二幕の最初に「ブイ・ドイ」の映像が出ないトラブル発生。終演後特別カーテンコールの際、岡幸二郎が謝罪。
[編集] 日本人キャスト
[編集] 1992年-1993年(日本初演)
- ENGlNEER(エンジニア) - 市村正親、笹野高史、治田敦(開幕前に降板、アンサンブルのみで出演)
- KIM(キム) - 本田美奈子、入絵加奈子、(代役)伊東恵里
- CHRlS(クリス) - 岸田智史、安崎求、(代役)宮川浩
- JOHN(ジョン) - 園岡新太郎、今井清隆(アンサンブルとの交互出演)
- ELLEN(エレン) - 鈴木ほのか、岡田静、石富由美子
- THUY(トゥイ) - 山形ユキオ、山本あつし、留守晃(3名ともアンサンブルとの交互出演)
- GIGI(ジジ) - 岡田静、北村岳子、園山晴子
[編集] 2004年
- ENGlNEER(エンジニア) - 市村正親、筧利夫、橋本さとし、別所哲也
- KIM(キム) - 笹本玲奈、知念里奈、新妻聖子、松たか子
- CHRlS(クリス) - 石井一孝、井上芳雄、坂元健児、貴水博之(再演前に降板)
- JOHN(ジョン) - 石井一孝、今井清隆、岡幸二郎、坂元健児
- ELLEN(エレン) - ANZA、石川ちひろ、高橋由美子
- THUY(トゥイ) - 泉見洋平、tekkan、戸井勝海
- GIGI(ジジ) - 杵鞭麻衣、高島みほ、平澤由美
[編集] 2008年
- ENGlNEER(エンジニア) - 市村正親、筧利夫、橋本さとし、別所哲也
- KIM(キム) - 笹本玲奈、知念里奈、新妻聖子、ソニン
- CHRlS(クリス) - 井上芳雄、照井裕隆、原田優一、藤岡正明
- JOHN(ジョン) - 岡幸二郎、坂元健児、岸祐二
- ELLEN(エレン) - 浅野実奈子、シルビア・グラブ、鈴木ほのか、RiRiKA
- THUY(トゥイ) - 泉見洋平、石井一彰、神田恭平
- GIGI(ジジ) - 池谷祐子、桑原麻希、菅谷真理恵
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ミス・サイゴン(東宝のサイト)