タバコ
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Nicotiana L. | ||||||||||||||||||
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タバコ | ||||||||||||||||||
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Tobacco | ||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||
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タバコ(たばこ)はナス科の一年草の亜熱帯性植物。葉の成分としてニコチンを含む。
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[編集] 分類
タバコはナス科タバコ属 (Nicotiana) の一年草である。タバコ属には約50の種が含まれるが、大規模に栽培されるものは N. tabacum と N. rustica の2種に限られる。N. tabacum はニコチン含有量が高いため、商業的に価値があるのはこちらである。N. rustica は寒さに強い。
栽培種として重要なのは強健性、葉の産出力、病気に対する抵抗性、細胞組織が持つ弾力性、香料との親和性である。このため約100の品種に分かれる。それらの品種を大別すると、火力乾燥を行い葉が黄色い状態で乾固させる黄色種、褐色になるまで空気乾燥を行うバーレー種、葉巻種およびオリエント種が主なものであり、その他、地域の喫煙文化と歴史的なかかわりを持つ地域固有品種も数多く、日本国内でこれらは在来種と呼ばれている。
日本では、ブライトエロー、バージニア、コーカー、MC, つくばなどの黄色種と、バーレー21、たいへい、みちのくなどのバーレー種が栽培されている。両切りタバコや刻みタバコの時代に主流を占めていた在来種は、現在、熊本県を中心とする九州山地一帯、福島県、栃木県、茨城県、徳島県で、5品種が僅かに栽培される程度である。
黄色種はバージニア・ブレンドと呼ばれるタイプの製品で、タバコの味や香りの主体となるものである。また、バーレー種は、アメリカン・ブレンドと呼ばれるタイプの製品で、香料を吸着保持してタバコのブランドイメージを作り出す重要な役割を担う。その他、特殊な加工を施した原料が、弾力性や香り、味を調和させるために使われている。
日本でのタバコの製造は日本たばこ産業 (JT) のみが行っており、葉タバコの栽培はたばこ事業法の定めによって、JTと契約した農家だけが原料用として栽培することができ、契約農家には種子が無償で配付される。またたばこ事業法は、原料として使用できないものを除き、農家が売り渡す葉タバコ全量の購入をJTに義務づけている。
なお、JTと栽培農家の契約では取引価格体系の違いによって、黄色種は第1黄色種から第4黄色種、バーレー種は第1バーレー種と第2バーレー種に区分されている。
[編集] 生物的特徴
タバコの種子の形状は回転楕円体である。質量は僅か50μg程。即ち、約2万粒を集めてようやく1gとなる。植物の種子が発芽するためには、適切な温度、湿度が必要である。また種によっては太陽光が当たらなければならない。タバコの種子は光を感知するため、発芽には太陽光が必要である。発芽温度は25度である。生育条件が適切である場合、種によって異なるが茎の高さ50cmから250cmまで成長する。茎は太く最大5cmに達する。
葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉タバコとして採取するのは約6割である。これは位置によってニコチンの含有量が異なるためである。日本国内では葉を5種類に区別し、上から上葉・本葉・合葉・中葉・下葉と呼ぶ。上葉は6%程度、下葉は1%程度のニコチンを含む。葉の長さは20cmから60cm、幅は10から30cm程度である。葉の表面には液を分泌する細胞があり、特有の臭気を帯びる。
なお、猛毒のニコチン(毒物および劇物取締法を参照)を含むため、タバコ農家や近隣住民、野生生物に健康被害を及ぼすことが報告されている。例として、乳牛の母乳の生産量低下、桑の衰弱によるカイコガの死滅に伴う養蚕業への被害などがある。人間にも、特異体臭や呼吸困難などの被害が時折見受けられる。
タバコの花は茎の先端部分に群生する。形状は漏斗に似ており、端が五裂する。色は種類によって異なるが、栽培種ではピンク色のものが多い。果実1つ当り3000粒程度の種子を含む。
[編集] 栽培
葉タバコは種子から育てるのではなく、いったん苗を苗床で生産し、その後、移植することで栽培する。国内では種まきの時期は沖縄県の12月に始まり、順次北上して東北地方では2月となる。また日本国内での栽培体系では、苗床期間は親床と子床の2段階に区分され、親床で発芽した苗を間引きしながら3週間程度の後に、育苗ポット主体の子床に一本ずつ植え替える仮植(かしょく)作業を行う。畑への移植時期は沖縄の2月上旬に始まり、九州では3月、東北では5月が一般的である。
成長に伴い4月から6月に花芽が現れるが、開花直後に芯止めと呼ばれる摘芯作業を行い、花芽は摘み取られる。これはわき芽の除去とともに、原料として利用する葉の成熟にとっては欠かせない、重要な作業である。
芯止め作業と前後して最初の収穫作業が始まる。葉はニコチン成分の少ない下葉から上位の着位の葉に向かって成熟が進むため、成熟した順に葉の着位ごとに区分をして収穫してゆく。黄色種では本葉と上葉8から10枚程度を最後まで残して、十分に成熟が進んだ時点で一斉に収穫する、総がきという収穫作業が行われる。バーレー種でも同じように本葉と上葉を幹ごと刈り取り、乾燥室に吊り下げる幹干しと呼ばれる乾燥方法が行われている地域もあるが、高齢の農家にとっては作業強度上の問題があって、順次収穫・乾燥している場合も多い。
[編集] 生産量
[編集] 葉タバコ
FAOの統計によると、全世界の葉タバコの生産量は、635万トン(2002年)であり、全体の3割以上を中国1国で生産している。中国国内では、雲南省、貴州省、河南省、湖南省、四川省の順に生産が多い。雲南省の生産量は66万トンと、世界2位のブラジルよりも多い。
州別の生産量はアジア州が6割、南北アメリカ州がそれぞれ1割ずつ、ヨーロッパ州とアフリカ州が1割弱という比率になる。タバコで有名なキューバの生産量は3.2万トンと数量としては多くない。日本の生産量は約5万トン。主な産地は黄色種が南九州、バーレー種が北東北であり、2004年における生産量の上位は宮崎県、熊本県、岩手県、鹿児島県、青森県の順である。
- 中国 - 239万トン (37.7%)
- ブラジル - 65万トン (10.3%)
- インド - 58万トン (9.1%)
- アメリカ - 40万トン (6.4%)
- ジンバブエ - 17万トン (2.7%)
- トルコ
- インドネシア
- イタリア
- アルゼンチン
- ギリシャ
1991年時点の生産量は766万トンであり、約10年間で葉タバコの生産量が100万トン以上減少したことが分かる。当時の生産国を生産量順に並べると、中国、アメリカ、インド、ブラジル、トルコ、イタリア、ジンバブエ、ギリシャ、インドネシアとなる。最も生産が減少したのは中国の70万トン、次にアメリカの35万トン、トルコの10万トンが続く。上位10カ国のうち、生産が増加したのは、唯一ブラジルであり、約25万トン増えた。アルゼンチンも生産量が増加している。
[編集] 紙巻タバコ
国際連合の統計資料 (United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001) によると、2001年の全世界の紙巻タバコの生産本数は5兆4710億本である。葉タバコの最大生産国である中国が、紙巻タバコにおいてもシェア3割を超える最大の生産国となっている。
葉タバコの生産量と比較すると、アメリカ、ロシア、日本、北ヨーロッパ諸国が原料の輸入国であること、インドネシア、ギリシャ、トルコは農業生産と国内の加工業までが一貫していることが分かる。
- 中国 - 1兆7000億本 (31.1%)
- アメリカ - 5800億本 (10.6%)
- ロシア - 3740億本 (6.8%)
- 日本 - 2372億本 (4.3%)
- インドネシア - 2300億本 (4.2%)
- ドイツ
- トルコ
- イギリス
- オランダ
- ブラジル
[編集] 名称・語源
タバコの語源は、スペイン語やポルトガル語の "tabaco"である。
タバコ自身は15世紀にアメリカ大陸からヨーロッパに伝えられたものであるが、それ以前からスペインでは薬草類を "tabaco"と呼んでいた。しばしばアメリカ先住民の言葉が語源であると言われるが、それは誤りである。
スペイン語の "tabaco" は、古いアラビア語で薬草の一種を示す "tabaq" という言葉が語源であるとみられている。
この単語が、フランス語では "tabac"、ドイツ語では "Tabak"、英語では "tobacco" となった。日本ではポルトガル語の音に近い「タバコ」として広まった。漢字の当て字としては「多巴古」、「佗波古」、「多葉粉」、「莨」などが用いられる事があるが、「煙草」と書かれる事が最も多い。
なお、山口県の一部地域には「煙草谷」(たばこだに)という姓が存在する。山口県周南市には「煙草谷商店」という店もある。
[編集] 日本への伝来
日本では天正年間(1573年~1592年)にスペインの船が持ち込み、薬として売り始めたのが最初とされる。その後死の原因になるとして禁止令が出されるなどした。日本で最初にタバコを吸った女性は淀殿であると伝えられている[要出典]。
[編集] タバコ製品
喫煙に用いられるもののほか、以下のような製品が知られる。
[編集] 噛みタバコ
噛みタバコは直接タバコの葉を含む混合物を噛むことにより風味を楽しむものであり、タバコの楽しみ方としては最も古い方法である。北米大陸のネイティブアメリカンは、ライムの葉とともに用いていたとされている。
タバコの葉と石灰などを共に口に含み使用し、唾液は飲み込まず排出する。西部劇などで見られる痰壷は、これを吐き出すためのものである。現在ではタバコの葉と石灰の組み合わせのほかにさまざまなハーブなどを組み合わせたものや、子供向けの甘味料と香料を多く含んだグトゥカー、ハーブだけで構成されたパーンと呼ばれる物も存在する。
かつては世界的に噛みタバコの使用は一般的であったが、近年では公共の場でつばを吐くという行為が疫病の原因の一つとなされることや、反社会的である、不衛生であるという理由などで、徐々に紙巻きタバコに需要が変化していった。
また、口の粘膜から直接ニコチンや有害物質を吸収してしまうため、噛みタバコが一般的に販売されている国(特にインドなど)では口腔がんの大きな原因の一つとして問題視されつつある。
日本国内においては噛みタバコは日本人の舌に合わないためか普及しなかった。現在はガムタイプのファイアーブレイクのみが販売されている。
[編集] 嗅ぎタバコ
嗅ぎタバコとは、着火せずに薫りを楽しむタバコである。タバコの粉末を鼻孔の粘膜などから摂取する。嗅ぎタバコ、嗅ぎタバコを摂取する行為は「スナッフ」と呼ばれる。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによるムーミン・シリーズに登場する有名なスナフキンの名もスナッフに由来している。煙を嗜む喫煙としてのタバコよりもその歴史は古い。大きく下記3種類に分類されるが、日本においてはあまり普及していない。基本的に5g~10g程度のケースなどに入れられて販売されており、細かな粉末を鼻からそれを吸引するスニッフ)。手の甲の親指、人差し指の付け根のくぼみに適量(一つまみほど)のスナッフを載せ、鼻から吸引するのが一般的な嗅ぎタバコの摂取法である。あるいは親指と人差し指で粉末をつまみ、吸引する。いずれにせよ喫煙タバコとは異なり手、鼻、頬などにタバコの粉末が残りやすいことに加え、「粉末を鼻から吸引する」という行為は大きな誤解を受けやすい行為であるため注意が必要である。 電車内や映画館でも吸うことができるタバコであり、公共の場所での喫煙禁止が進んでいる昨今において「煙も出ない、人に迷惑をかけることがないタバコ」であるとその普及を予測する者もいる[要出典]。
- スコットランド嗅ぎタバコ (Scotch Snuff) - 乾燥したタバコの粉末とメンソールを混合し、鼻から吸引する。
- アメリカ嗅ぎタバコ (American snuff) - 甘い味付けと辛い味付けの2者が主流で、湿った粉末様で、歯茎に塗布する。
- 北欧嗅ぎタバコ (snoose) - 良く煉られ、口紅や玉のような形状を持ち、鼻下や鼻孔内に塗布する。
[編集] タバコ屑
タバコの葉の屑は、窒素1%、リン酸1%、カリウム5%程度を含み肥料として使われることがある。園芸店やホームセンターで「たばこくず肥料」などの商品名で扱われ、普通に購入可能である。 ただし養蚕においては桑の施肥中にタバコ屑が加えられると桑にニコチンが残りカイコの飼育に悪影響が出る可能性が富山県告示第244号「肥料取締法第21条の規定に基づく肥料の施用上の注意等の表示命令について」などに示されている。