スプートニクの恋人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
---|
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『スプートニクの恋人』(すぷーとにくのこいびと、Sputonik the sweetheart)は村上春樹の書き下ろし長編小説。1999年4月講談社より刊行され、後に講談社文庫にて文庫化された。
目次 |
[編集] 概要
この小説は村上自身が語るように、彼の文体の総決算として、あるいは総合的実験の場として一部機能している[要出典]。その結果、次回作の『海辺のカフカ』では、村上春樹としては、かなり新しい文体が登場することになった。
第11章、文中にゴシック体で出てくる「理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない」(文庫版、202頁)という言葉は村上の「世界認識の方法」(同頁)を表している。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
すみれはいささか変な女の子だった。話し方はいつも怒っているみたいだし、22歳にもなって化粧品一つ持っていなかったし、女の子らしい服もほとんど持っていなかった。それに、ジャック・ケルアックの小説に憧れてよりワイルドでクールで過剰になろうと髪の毛をくしゃくしゃにしたり、黒縁の伊達眼鏡をかけて睨む様にものを見たりした。
でも、「ぼく」はそんなすみれに恋をしていた。しかし、「ぼく」はすみれに自身の気持ちを伝えることがまったく出来なかった(「ぼく」曰く「すみれを目の前にすると、自分の感情を正当な意味を含む言葉に換えることができなくなる」そうだ)。それに、「ぼく」はすみれとの間に今のところ恋が存在しえないことを知っていた。なぜなら、すみれは恋をしたことがなかったし、恋をしたいと思ったこともなかった。(もしあったとしても、それは文学的好奇心からだろう)彼女には一般的な恋の根源となる何かが損なわれてしまっていた。「ぼく」はすみれに奇跡的に天啓的な変化が起きる事を願いながらとぼとぼと一応の生活をおくっていた。
ところが、すみれが22歳の春、彼女は突然恋をした。相手は17歳も年上で、しかも女性だった。ぼくが望むものかどうかはとりあえずとして、天啓はおりた。すみれの恋は生まれ、物語は始まる。
未知の恋はすべてを巻き込み、破壊し、失いながら進んでゆく。
[編集] 登場人物
- ぼく(K)
- この物語の主人公。12月9日生まれ。24歳。東京杉並区で生まれ、千葉の津田沼で育つ。東京都内の私立大学へ進学、歴史学を修めた後、小学校教師となる。すみれとは大学在籍中に知り合った。具体的な名前は本文中には記述されていないが、すみれの書いた文章中では「K」と記述されている。
- すみれ
- 11月7日生まれ。22歳。神奈川県茅ヶ崎生まれ。神奈川の公立高校卒業後、「ぼく」のいる大学へ進学するも、大学の雰囲気に失望し(後で『きゅうりのヘタ』と表現される)二年生のときに小説家になるために自主退学。以後、両親からの28歳までという期限付きの仕送りと、アルバイトで稼いだいくらかの収入を合わせて吉祥寺で一人暮らしをしている。ヘビースモーカーで煙草の銘柄はマルボロ。性格は「ぼく」に言わせると「救いがたいロマンチストで頑迷でシニカルで世間知らず」
- ミュウ
- 39歳。日本生まれの日本育ちだが、国籍は韓国籍。在日朝鮮人だと推測できる。ピアニストを志しフランスの音楽院に留学するが、ある事件がきっかけでピアノを弾かなくなる。父親の死亡をきっかけに帰国、家業の貿易会社を継ぐ。仕事のほとんどを夫と弟にまかせ、ワインの輸入、音楽関係のアレンジメントをしている。「ミュウ」は愛称で本名は本文中には記述されていない。愛車は12気筒の濃紺のジャガー。
- すみれの父
- 横浜市内で歯科医院を経営。美しい鼻をもつ好男子で横浜とその周辺に住む歯に何らかの障害を抱えた女性たちの間で神話的な人気を持つ。
- にんじん
- 本名は仁村晋一。僕が担任を務める教室の一生徒。顔が細長く、髪がちぢれていることから「にんじん」とあだ名されている。大人しくて、無口。彼が物語の終盤、ある事件を引き起こす。
- 「ガールフレンド」
- 「にんじん」の母親。僕と数回関係を持つ。夫は不動産屋経営。
[編集] 登場する主な文学作品
- ジャック・ケルアック『路上』『孤独な旅人』
- アレクサンドル・プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン』
[編集] その他の登場作品
映画
オペラ
[編集] 関連項目
|
|
---|---|
長編小説 | 風の歌を聴け - 1973年のピンボール - 羊をめぐる冒険 - 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド - ノルウェイの森 - ダンス・ダンス・ダンス - 国境の南、太陽の西 - ねじまき鳥クロニクル - スプートニクの恋人 - 海辺のカフカ - アフターダーク |
短編小説集 | 中国行きのスロウ・ボート - カンガルー日和 - 象工場のハッピーエンド - 螢・納屋を焼く・その他の短編 - 回転木馬のデッド・ヒート - パン屋再襲撃 - 夢で会いましょう - ランゲルハンス島の午後 - TVピープル - レキシントンの幽霊 - 夜のくもざる - 神の子どもたちはみな踊る - 東京奇譚集 |
エッセイ集 | 村上朝日堂 - 村上朝日堂の逆襲 - The Scrap 懐かしの一九八〇年代 - 日出る国の工場 - 村上朝日堂はいほー! - やがて哀しき外国語 - 使いみちのない風景 - うずまき猫のみつけかた - 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか - 若い読者のための短編小説案内 - Portrait in Jazz - 翻訳夜話 - Portrait in Jazz2 - 村上ラヂオ - 翻訳夜話2 サリンジャー戦記 - 意味がなければスイングはない - 走ることについて語るときに僕の語ること - 村上ソングズ |
対談 | ウォーク・ドント・ラン - 映画をめぐる冒険 - 村上春樹、河合隼雄に会いにいく |
ノンフィクション | アンダーグラウンド - 約束された場所で |
紀行 | 遠い太鼓 - 雨天炎天 - 辺境・近境 - もし僕らのことばがウィスキーであったなら - シドニー! - 東京するめクラブ |
写真集 | 波の絵、波の話 - PAPARAZZI |
絵本 | 羊男のクリスマス - ふわふわ - ふしぎな図書館 - またたび浴びたタマ |
カテゴリー | 村上春樹 - 小説 |