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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド - Wikipedia

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文学
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(せかいのおわりとはーどぼいるど・わんだーらんど)は村上春樹の4作目の長編小説。1985年、第21回谷崎潤一郎賞受賞。

目次

[編集] 概要

1985年(昭和60年)に新潮社から刊行され、後に新潮文庫として上下巻で文庫化された。また『村上春樹全作品 1979~1989〈4〉』に収録され、このとき若干の修正が加えられている。村上にとっては最初の書き下ろし長編小説であり、以後、長編は『ねじまき鳥クロニクル』を除き、すべて書きおろしの形で刊行されることとなる。また外国語訳された二冊目の小説であり、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』と並ぶ長編である。

作品は「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章に分かれており、世界を異にする一人称視点(「僕」と 「私」)からの叙述が、章ごとに交互に入れ替わりながら、パラレルに進行する。但し、厳密な意味でのパラレルとは言えない(『海辺のカフカ』の同時間軸とは異なる)。『ノルウェイの森』(単行本)のあとがきの中で、村上はこの小説を自伝的な小説であると位置づけている。

また「世界の終り」は『文學界』(1980年9月号)に発表された中篇小説『街と、その不確かな壁』に基づいているが、主人公の選択する結末はまったく逆のものとなっている。

なお漫画家の安倍吉俊はこの作品に非常に影響を受けたとされ、『灰羽連盟』において非常に多くの類似点が見られる。

2002年時点で、単行本・文庫本を合わせて162万部が発行されている。


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


[編集] ストーリー

[編集] 世界の終り

「世界の終り」は、一角獣が生息し「壁」に囲まれた街、「世界の終り」に入ることとなった「僕」が「街」の持つ謎と「街」が生まれた理由を捜し求める物語。外界から隔絶され、「心」を持たないが故に安らかな日々を送る「街」の人々の中で、「影」を引き剥がされるとともに記憶のほとんどを失った「僕」は葛藤する。「僕」は図書館の夢読みとして働きつつ、影の依頼で街の地図を作り、図書館の女の子や発電所の管理人などと話をし、街の謎に迫っていく。管理人からもらった手風琴によって忘却していた「唄」を取り戻した僕は、街が自らの心の生み出したものであることを悟る。地図からみつけた脱出路をとおってともに「本来の世界」へ戻ろうと誘う影に対し、自ら生み出した街の人々に対する責任を引き受け、女の子とふたりで森に住むことを決意した「僕」は、別れを告げ、「世界の終り」にひとり残る。時間軸的には『ハードボイルド・ワンダーランド』の「私」がシャフリングを行ったのと同時に(すなわち、「私」の思考システムが「第三の思考システム」に切り換わったのと同時に)『世界の終わり』のストーリーが始まるものと思われる。

[編集] 登場人物

  • 僕:「世界の終り」における主人公。「外の世界」から追われ、「街」に入った後、「図書館」で「夢読み」として働くことになる。「影」を引き剥がされた際、「外の世界」の記憶の殆どを失う。「街」で唯一「心」を有する。
  • 影:主人公の影。「街」に入る際に「門番」によって「僕」から引き剥がされる。主人公の記憶の殆どを所持しているが、うまく使うことができない。
  • 門番:「街」の入口を管理する。膨大な数のナイフを所持している。
  • 大佐:「僕」の隣人の退役軍人。「街」で唯一チェスに強い関心を示す。
  • 図書館の女の子:「図書館」の司書。「図書館」で「古い夢」を読む「僕」を補佐する。「街」の他の人々と同様、「心」を持たないが…
  • 発電所の管理人:「街」で唯一の発電所を管理する。不完全ながら「心」を有しており、その所為で「街」には入れないが、森に追いやられることもない。
  • 獣:「街」に生息する一角獣。

[編集] ハードボイルド・ワンダーランド

「ハードボイルド・ワンダーランド」は、近未来と思われる世界で暗号を取り扱う「計算士」として活躍する「私」が、自らに仕掛けられた「装置」の謎を捜し求める物語である。半官半民の「計算士」の組織「システム」とそれに敵対する「記号士」組織「ファクトリー」は、暗号の作成と解読の技術を交互に塀立て競争の様に争っている。「計算士」である「私」は、暗号処理の中でも最高度の「シャフリング」を使いこなせる存在であるが、その「シャフリング」システムを用いた仕事の依頼をある老博士から受けたことによって、状況は一変する。

[編集] 登場人物

  • 私:「ハードボイルド・ワンダーランド」における主人公。人間の潜在意識を利用した数値変換術「シャフリング」を使用できる、限られた「計算士」の内の一人。古い映画文学音楽を愛好する。
  • 老博士:人間の口蓋に関する研究を行っている。滝の裏に研究所を持ち、話し方が特徴的。計算士である「私」に「シャフリング」の依頼を行う。
  • 太った娘:博士の孫娘。「私」曰く、理想的な太った体型。ピンク色の衣服を好む。射撃乗馬など特技は多いが常識に疎い部分も多い。
  • リファレンス係の女の子:調べもののため「私」が訪れた図書館のリファレンス係の女の子。髪が長く、スレンダーであるが胃拡張であり、「私」曰く、「機関銃で納屋をなぎ倒すような」食欲の持ち主。夫と死別している。
  • 大男:「私」の家に訪れる謎の二人組みの内の一人。元プロレスラー。
  • ちび:「私」の家に訪れる謎の二人組みの内の一人。大男の面倒を見ている。二人は「システム」にも「ファクトリー」にも属さない第3の勢力に属すると主人公は予測するが、実際はファクトリー側の人間。
  • やみくろ:地下に生きるもの。汚水を飲み、腐ったもののみを食べる。
  • ポリス レゲェ・タクシーの運転手:泥だらけの「私」と太った娘をタクシーに乗せてくれた。

[編集] その他

ハードボイルド・ワンダーランドの挿絵にはボブ・ディランが描かれている。またこの作品の重要な場面に何度かディランの歌が登場している。

[編集] 登場する主な文学作品

[編集] 単行本、文庫本


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