男はつらいよ 寅次郎紅の花
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『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(おとこはつらいよ とらじろうくれないのはな)は、1995年12月23日に公開された日本映画。男はつらいよシリーズの最終作。渥美清の遺作になった。
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[編集] 作品概要
- この作品での寅次郎はほとんど動かず座っているシーンが多い。実はこの頃、寅次郎役の渥美清は肝臓の癌が肺にまで転移しており、主治医から前作と同様「もう出演は不可能」と診断されていたが無理を押して出演していた(主治医によると、今作に出演できたのは「奇跡に近い」とのことである)。
- 当初は最終作として制作された訳ではなく、この後にも2本作る予定だった。そのため本作のラストを見ても続くような雰囲気である(49作は「男はつらいよ 寅次郎 花へんろ」。登場人物、収録地は高知県。後年の山田監督のインタビューによれば「子供をおろしたのだが兄がその子の父親が寅さんではないかとういう風に疑い、それから寅さんがこの兄妹の後見人になる、また泉と満男を結婚させる」。公開は1996年12月28日と決まり、撮影を控えていたが渥美清の死去により幻になった。そこで渥美清への追憶映画として太宰久雄と関敬六を除く同じ登場人物で公開されるはずだった1996年12月28日に虹を掴む男が公開されている。
- 本作で満男が泉の結婚式を妨害し結果的に結婚が白紙になった次回作の「泉と満男の結婚」への伏線であると考えられる。
- また、本来予定されていた最終作ではマドンナ役に黒柳徹子を起用するはずだったと山田洋次は語っている。渥美清没後10年の命日を記念して掲載された2006年8月4日の北日本新聞のコラム「天地人」によると、ストーリーは「晩年は幼稚園の用務員になり、子供達と遊んでいるうちに死に、町の人が思い出のために地蔵を作るというもの」。タイトル、収録地、公開時期は不明だが「花遍路」の後だとすると1997年12月だった可能性が高い。
- 後年の出演者は「この時の渥美は演技するのにも苦しそうだった」と回想していることから相当渥美は体に無理をさせて出演していたことが伺える。
- 1996年8月4日に渥美が死去し続編の制作が不可能となったため、「男はつらいよ」は本作が事実上の最終作にあたる。
- リリー演じる浅丘ルリ子は具合の悪そうな渥美の姿を見て、「もしかしたらこれは最後の作品になるかもしれない」と思ったという。そのため山田監督に「最後の作品になるかもしれないから寅さんとリリーを結婚させてほしい」と頼んだと言うが、山田洋次は節目の50作までは製作したかったらしく、願いはかなえられなかった。
- 劇中のテレビで「阪神・淡路大震災」が起こったと紹介されているが本作が制作された年(1995年)の1月17日に実際に「阪神・淡路大震災」が起こっている。そのため町の様子はほぼその当時のものである。
- この神戸ロケは現地からの要請によるものだったが、地震の記憶も未だ生々しい被災地で喜劇映画を撮るというミスマッチに脚本を逡巡していた山田監督に一通のファンレターが届く。神戸市長田区でパンの製造・販売をする障害者の作業所を運営する石倉泰三・悦子夫妻が山田監督へ送った手紙から、山田監督は「寅さんなら、たまたま立ち寄った神戸でボランティアをしていても不思議ではない」と思い脚本を書き上げた。石倉夫妻の名は、そのままパン屋の店主の役名として生かされている。
- NHKが寅さんの素顔を撮影させてほしいと頼まれたとき、当初松竹は断るつもりだった。しかし渥美の承諾が得られた。その映像はNHKで放送されたTV「クローズアップ現代・寅さんの60日」、「渥美清の伝言」、「渥美清の肖像~知られざる肖像~」やビデオとして発売された「おーい、寅さん 最後の撮影現場日記」のシーンに使用された。
[編集] あらすじ
ある日、とらやの面々が何気なくテレビを見ていると、この年に起こった阪神淡路大震災におけるボランティアのドキュメンタリーが放送されていた。そして、そこになんとボランティアとして活躍する寅次郎の姿が。村山総理を村ちゃんなどと呼び、大活躍していた。その事で皆はビックリ仰天。そうしているうちに、満男が思いを寄せていた泉が訪ねてきた。なんと結婚するという話で満男に相談しに来たというのだが満男は気が動転し、素っ気ない態度を取り、そのまま別れる。しかし、昂った感情をどうにも抑える事が出来ず、泉の結婚式に現れ結婚式を目茶苦茶にしてしまう。失意の満男はそのまま奄美大島にやってきた。そこで偶然リリーと出会い、彼女の家に泊まることになるがそこにはなんとリリーと夫婦同然に暮らす寅次郎がいたのだ。満男は、しばらく奄美大島で漁師の手伝いなどで暮らしていた。しばらくすると、婚約解消した泉が満男の真意を確かめるためにやって来た。「どうしてあんな事をしたの?」と聞く泉に、「愛しているからだ」と不器用に伝える。その事で、泉は感激し満男にかけよる。その様子を、寅次郎とリリーは離れた場所で見ていた。リリーは涙ぐみ、その肩を抱いてやろうとする寅次郎だが上手く行かないのであった。そうしているうちに、寅次郎達は柴又へ帰郷。リリーは奄美大島へ帰ろうとした時、「寅さん、どこまで送っていただけるんですか?」とリリーが聞くと、寅次郎は「男が女を送るって場合はな、その女の玄関まで送るってことよ」と呟き、リリーは感激し、二人はそのまま連れ立って去って行くのであった。
[編集] キャッチコピー
- お兄ちゃん、いっしょになるならリリーさんしかいないのよ!
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- 車寅次郎:渥美清
- 諏訪さくら:倍賞千恵子
- リリー:浅丘ルリ子
- 諏訪満男:吉岡秀隆
- 及川泉:後藤久美子
- 車竜造(おいちゃん):下條正巳
- 車つね(おばちゃん):三崎千恵子
- 諏訪博:前田吟
- 桂梅太郎(社長):太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- ポンシュウ:関敬六
- 及川礼子:夏木マリ
- 箕作伸吉:笹野高史
- 政夫:神戸浩
- リリーの母:千石規子
- 船長:田中邦衛
- パン屋いしくら店主:宮川大助
- パン屋の妻:宮川花子
- 駅舎の男:桜井センリ
- タクシー運転手:犬塚弘
- 神戸の会長:芦屋雁之助
- 自転車の男:佐藤和弘
[編集] ロケ地
[編集] 記録
- 観客動員:170万人
- 興行収入:12億円
- 上映時間:107分
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1〜12作 | 男はつらいよ - 続・男はつらいよ - フーテンの寅 - 新・男はつらいよ - 望郷篇 - 純情篇 - 奮闘篇 - 寅次郎恋歌 - 柴又慕情 - 寅次郎夢枕 - 寅次郎忘れな草 - 私の寅さん |
13〜24作 | 寅次郎恋やつれ - 寅次郎子守唄 - 寅次郎相合い傘 - 葛飾立志篇 - 寅次郎夕焼け小焼け - 寅次郎純情詩集 - 寅次郎と殿様 - 寅次郎頑張れ! - 寅次郎わが道をゆく - 噂の寅次郎 - 翔んでる寅次郎 - 寅次郎春の夢 |
25〜36作 | 寅次郎ハイビスカスの花 - 寅次郎かもめ歌 - 浪花の恋の寅次郎 - 寅次郎紙風船 - 寅次郎あじさいの恋 - 花も嵐も寅次郎 - 旅と女と寅次郎 - 口笛を吹く寅次郎 - 夜霧にむせぶ寅次郎 - 寅次郎真実一路 - 寅次郎恋愛塾 - 柴又より愛をこめて |
37〜48作・特別編 | 幸福の青い鳥 - 知床慕情 - 寅次郎物語 - 寅次郎サラダ記念日 - 寅次郎心の旅路 - ぼくの伯父さん - 寅次郎の休日 - 寅次郎の告白 - 寅次郎の青春 - 寅次郎の縁談 - 拝啓車寅次郎様 - 寅次郎紅の花 - ハイビスカスの花 特別篇 |
関連項目 | 松竹 - 渥美清 - 山田洋次 - 柴又 - 柴又帝釈天 |