熊本市交通局
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熊本市交通局(くまもとしこうつうきょく)は、熊本県熊本市で公共交通事業を行う熊本市の地方公営企業の一つで、市電(路面電車)と路線バスの運営を行っている。
局所在地は熊本県熊本市大江5丁目1番40号。
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[編集] 歴史
経営難により廃止となった熊本軽便鉄道に代わる市内交通として熊本市内に路面電車を建設する計画が民間により立ち上げられ、熊本市により実現した。
熊本市内には熊本市のほか、熊本電気軌道が運営する路面電車路線もあったが、1945年に熊本市は熊本電気軌道を買収した。
[編集] 年表
- 1921年(大正10年)11月16日 熊本電車株式会社を設立。
- 1923年(大正12年)4月13日 熊本電車は予定線の特許などの全権利義務を熊本市へ譲渡(のち解散)。
- 1924年(大正13年)8月1日 幹線熊本駅前~浄行寺町間および水前寺線水道町~水前寺間が開通。当初の事業者は熊本市電車部。
- 1926年(大正15年)5月11日 水道部と統合し電気水道局に改組。
- 1927年(昭和2年)11月23日 バス事業開始。
- 1928年(昭和3年)6月21日 水道局が分離し電気局に改組。
- 1928年(昭和3年)12月26日 黒髪線浄行寺町~子飼橋間が開通。
- 1929年(昭和4年)6月20日 春竹線辛島町~春竹駅前(のちの南熊本駅前)間および上熊本線辛島町~段山町間が開通。
- 1932年(昭和7年)12月28日 電気局局舎を大江町九品寺(現在地)に移転。
- 1935年(昭和10年)3月24日 上熊本線段山町~上熊本駅前間が開通。
- 1944年(昭和19年)6月1日 熊本市電気局を熊本市交通局に改称。
- 1945年(昭和20年)12月1日 熊本電気軌道を買収し、同社が保有していた百貫線田崎~百貫石間および川尻線河原町~川尻間を交通局の管理下に置く(百貫線は休止中のまま買収し、そのまま再開せず)。
- 1954年(昭和29年)10月1日 坪井線藤崎宮前~上熊本駅前間が開通。
- 1959年(昭和34年)12月24日 田崎線熊本駅前~田崎橋間が開通。
- 1965年(昭和40年)2月11日 休止中の百貫線を廃止。
- 1965年(昭和40年)2月21日 川尻線を廃止。
- 1970年(昭和45年)5月1日 坪井線および春竹線を廃止。
- 1972年(昭和47年)3月1日 幹線水道町~浄行寺町間および黒髪線を廃止。
- 1979年(昭和54年)5月3日 貸切バス事業を休止(廃止は同年8月1日)。
- 1996年(平成8年)7月13日 貸切事業免許を再取得し熊本競輪の無料バス輸送を開始。
- 2002年(平成14年)9月30日 車庫・検査設備を上熊本駅前へ移転(局舎は移転せず)。
- 2008年(平成20年)2月18日 局舎を敷地内の九州学院中学校・高等学校側に移転。
[編集] 熊本市電
[編集] 現有路線
路線数は5本、運転系統は2系統ある。洗馬橋~新町間のみ専用軌道であり、ほかは全路線併用軌道となっている。軌間は全線1435mm(廃止路線も1067mmの百貫線以外同じ)。
- 運転系統
-
- 2系統(田崎橋~熊本駅前~辛島町~水道町~水前寺公園~健軍町)
- 3系統(上熊本駅前~辛島町~水道町~水前寺公園~健軍町)
[編集] 廃止路線
- 幹線(水道町~浄行寺町)
- 黒髪線(浄行寺町~子飼橋)
- 坪井線(藤崎宮前~上熊本駅前)
- 春竹線(辛島町~南熊本駅前)
- 百貫線(百貫石~田崎)
- 川尻線(河原町~川尻町)
- 廃止系統(運行区間は廃止時点のもの)
-
- 1系統(田崎橋~熊本駅前~辛島町~水道町~子飼橋)
- 4系統(上熊本駅前~藤崎宮前~水道町~体育館前)
- 5系統(浄行寺町~水道町~水前寺公園~健軍町)
- 6系統(交通局前~水道町~辛島町~南熊本駅前)
- 7系統(河原町~川尻町)
[編集] 計画路線
熊本市運輸局では2002年1月に市電網拡大についての路線10案を発表した。この中には、熊本港や熊本空港方面への延伸、熊本電鉄との接続が含まれていた。
[編集] 健軍町方面延伸案
2004年1月の熊本日日新聞において、熊本市が策定中の江津湖観光活性化計画の一環として、市電の延伸を検討していると報じられた。この計画は2002年の路線10案には含まれていない。総事業費は約10億円。報道によれば、2007年度の着工、2008年度中の開業を考えているなど、最も実現性の高い計画であった。概要は以下のようなものである。
- 健軍線の動植物園前電停から分岐し、市有の水前寺江津湖公園(庄口公園)の東側に単線を敷設、動植物園正門まで800メートル延伸する。
- 公園の南側と終点の動植物園正門前の2箇所に交換設備つき電停を設置する。
- 動植物園の第一駐車場(330台収容)はパークアンドライド駐車場として活用する。
- 公園北側には現在の大江車両基地に代わる12両収容の車庫を設ける。
続いて同年9月には、路線10案の中にある健軍町から東部への延伸と自衛隊方面の新設の2案が追加された。こちらの事業費は60億から70億円と見込まれたが、市有地が少ないため、道路拡幅による用地取得が鍵となっている。
しかし、庄口公園方面の延伸については、同年度の予算によって調査をした結果、採算性が見込めないことと、湖の水質に悪影響を与える可能性があることから、12月に計画の中止を発表した。東部・自衛隊方面延伸についても、その後の進展は無い。
[編集] 熊本電鉄接続案
一方、熊本電気鉄道は2004年7月に藤崎宮前駅と市電の接続計画を発表した。電鉄全線を市電に合わせて改軌した上でLRT化、国道3号のバスレーンに軌道を敷設して市電に接続、熊本駅方面へ直通させるもの。総事業費は100億円以上と見込まれ、電鉄では負担しきれないことから、公的支援を要請した。また、受け入れられない場合は2008年3月に鉄道事業を廃止するとして、自治体側を強く牽制していた。
電鉄は2005年10月に計画を市に譲り渡し、その後熊本市は熊本県と合志市と共同で、電鉄案(電鉄から熊本市に譲渡した)のほかにも、市電を藤崎宮前まで延長して電鉄と同一ホーム乗り換えを行うという形も含めて検討することとし、委員会を設けて事業計画の策定を行うことを2007年3月に決定した。これを受けて熊本電鉄側では廃止案を撤回している。
[編集] 現有車両
[編集] 過去の形式
- 10形
- 50形(初代)
- 60形
- 70形
- 80形
- 120形
- 130形
- 170形(→長崎電気軌道600形)
- 380形・390形・400形(もと大阪市電901形)
- 1000形(同上、ワンマンカー)
- 1050形(旧150形、ワンマンカー)
[編集] 日本初
- 路面電車として日本初の冷房装置付き車両(1200形1202・1208に改造で設置、1978年8月2日運用開始)
- 営業用車両として日本初のVVVFインバータ制御車両(1982年、8200形)
- 日本初の超低床路面電車(1997年、9700形)
- 軌道を樹脂で固定し、騒音と振動を軽減する「インファンド工法」を日本で初めて採用。(上熊本駅前電停付近。その後、辛島町交差点と2系統・3系統分岐点にも採用)
[編集] 運賃
- 市電全線おとな150円、こども80円の均一運賃(2007年10月12日改定)。
[編集] 全線廃止計画
熊本市電は2007年現在5路線2系統が存続しているが、かつては全線を廃止する計画があった。熊本市電は1960年代頃から他都市の路面電車と同じく採算悪化に悩まされ、5路線2系統を残して廃止された。さらに5路線2系統についても1980年前後をめどに廃止し、熊本市は市電の運行から撤退する予定であった。
かつては、廃止後モノレールを建設する構想もあったが、市民から存続を求める声が上がったことや、オイルショックによる車社会依存の見直し等により、熊本市議会の決議などもあり全廃計画は立ち消えとなった。
[編集] バス事業
現在は基本的に路線バスのみの運営となっており、3ヶ所に営業拠点を設け、熊本市内各地に路線を持つ。ただし、熊本競輪場への無料バスを運行しているため、貸切免許も保有する。熊本市外には路線を持っていない。
かつては各路線ごとに異なる動物のイラストを描いた路線番号板を車両前面に掲出していたが、1996年4月1日に系統番号の使用が開始されたため中止している。現在は、番号を表示せず単に動物のイラストを描いただけの板を前面に掲出している。
なお、熊本市営バスの路線では、SUNQパスが当初は利用できなかったものの2006年10月1日から利用できるようになった。また、同日から熊本城周遊バスの運行が九州産交バスへ移管された。
熊本市営バスでは、民間との競合路線の民間会社への移譲を進めている。2004年6月1日の川尻帯山線の交通センター以南を皮切りに、2008年4月1日までに、川尻(国道)線、池田大窪線(一部)、野口健軍線(一部)、御幸木部線、高平団地線、画図線、楠城西線(一部除く)の移譲が順次行われた。さらに、本山車庫を「面的移譲」として、本山車庫に所属する路線をすべて移譲する計画も持ち上がっている。
[編集] 営業所
- 小峯営業所 - 熊本市月出5丁目2番35号
- 上熊本営業所 - 熊本市上熊本3丁目15番61号
- 本山車庫 - 熊本市本山2丁目9番23号
[編集] 車両概説
塗装は従来からのツーステップ車は緑色と白色のツートンカラーで、リフト付きバスとワンステップバスがこれに赤帯を加えた塗装、ノンステップバスは黄緑色・白色・橙色の3色で前面窓下に赤帯を加えた塗装である。
メーカーは国内大型4メーカー全社を使用している。1995年までは西日本車体工業製車体を架装した車両を中心に導入していたが、その後は車両のワンステップ・ノンステップ化により、純正車体での購入がほとんどとなっている。また、ノンステップバスの購入開始と同時に並行して都営バスから中古車を購入している。
1997年10月からノンステップバスを投入している。九州では大分バスに次ぎ2番目のノンステップバス導入事業者となっている。
[編集] 路線
2008年4月1日現在の路線番号及び路線名に基づいて記す。
番号 | 路線名 | イラスト | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 第1環状線 | ゾウ | |
2 | (欠番) | (ウシ) | 旧・第2環状線。八王寺環状線と子飼渡瀬線に分割 |
3 | 池田京町線 | ツバメ | 旧・池田大窪線。2005年4月に大窪方面の系統を民間移譲 |
4 | 小峯京塚線 | ライオン | |
5 | 帯山線 | ハト | 旧・川尻帯山線。2004年6月に川尻町方面の系統を民間移譲 |
6 | 島崎保田窪線 | シカ | |
7 | (欠番) | (イヌ) | 旧・子飼長嶺線 |
8 | 大江城西線 | ワニ | 旧・楠城西線。2008年4月に城西校方面の系統を除き民間移譲 |
9 | 流通団地線 | ウマ | |
10 | 秋津健軍線 | パンダ | 旧・野口健軍線。2005年4月に春日校経由の系統を民間移譲 |
11 | (欠番) | (ワシ) | 旧・御幸木部線。2007年4月に民間移譲 |
12 | 花園柿原線 | タヌキ | |
13 | (欠番) | (サル) | 旧・川尻(国道)線。2005年4月に民間移譲 |
14 | (欠番) | (トラ) | 旧・画図線。2008年4月に民間移譲 |
15 | 池田健軍線 | カンガルー | |
16 | 健軍長嶺線 | リス | |
17 | (欠番) | (インコ) | 旧・川尻土河原線 |
18 | 東町団地線 | クジラ | |
19 | 中央環状線 | キリン | |
20 | 昭和町線 | ダチョウ | |
21 | (欠番) | (ネズミ) | 旧・高平団地線。2007年7月に民間移譲 |
22 | 熊本駅県庁線 | ネコ | |
23 | 上熊本線 | ペンギン | |
24 | 長溝団地線 | ウサギ | |
25 | 上熊本車庫線 | (ニワトリ) | 現在はイラストなし(他路線のイラストのまま運行されることが多い) |
26 | (欠番) | (ミミズク) | 旧・川尻県庁線 |
27 | 本山車庫線 | (なし) | イラストなし |
28 | 八王寺環状線 | サイ | |
29 | 子飼渡瀬線 | ハクチョウ | |
30 | (欠番) | (なし) | 旧・熊本城周遊バス。2006年10月に民間移譲 |
31 | 熊本駅長嶺線 | イノシシ | |
32 | 渡鹿長嶺線 | カメ |
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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