東急7600系電車
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東急7600系電車 | |
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編成 | 3両編成 |
起動加速度 | 3.2km/h/s |
営業最高速度 | 池上線85km/h 東急多摩川線80km/h |
設計最高速度 | 110km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常) |
編成定員 | 375(座席135)人または377(座席136)人 |
車両定員 | 先頭車122(座席44)人 中間車7680番台131(座席47)人 7673号133(座席48)人 |
全長 | 18,000mm |
全幅 | 2,744mm |
全高 | 4,100mm |
編成重量 | 95.6または95.5t |
車両重量 | 29.6~33.2t |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V (架空電車線方式) |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 110kW |
編成出力 | 880kW |
歯車比 | 6.07 |
駆動装置 | 中空軸平行カルダン駆動方式 |
台車 | 軸バネ式空気バネ台車 TS-831形・TS-839形 |
制御装置 | GTO-VVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ (改造当初は回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキ) |
保安装置 | 東急形ATS・TASC |
製造メーカー | 東急車輛製造 |
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東急7600系電車(とうきゅう7600けいでんしゃ)は、1986年(昭和61年)5月1日に営業運転を開始した東京急行電鉄の通勤形電車。7200系を改造した車両である。
目次 |
[編集] 改造の経緯
東急は7200系を大井町線から目蒲・池上両線に転用したが、その際編成構成をMT比1:1の6両編成から2:1の3両編成に変更したため、モーターのない制御車(クハ7500形)が余剰となり、逆にそれを動かすための電動車が不足した。そこで、余剰車を電装して新たな編成を組成し、車両を有効活用することになった。これが7600系である。
[編集] 改造点
電装品は7200系のものではなく、同時期に新造された9000系と同等の、最新の三相交流かご形誘導電動機とGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御装置が用意された。ただし、9000系の制御装置は日立製作所製で、1基で1両分4個の電動機を制御する「1C4M」方式であるのに対し、7600系の制御装置は東洋電機製造製で、1基で2両分8個の電動機を制御する「1C8M」方式とされた。
電動車化に伴い、台車は製造時より装備のバッド社製「パイオニアIII型」台車から、8000系などと同等の「TS-831型」に交換された。
屋根にも改造が加えられ、2両に1両の割合で集電用のパンタグラフが2基設置されるとともに、1両あたり4基の冷房装置搭載が行われた。その一方で車内は冷房風洞の設置を除いて大きな改造はなされなかった。
- 編成構成は以下の通り。
- デハ7600形
- クハ7500形から改造された制御電動車。静止形インバータ (SIV) と空気圧縮機 (CP) などの補機類を搭載し、デハ7650形とユニットを組んでいた。なお、クハ7500形時代から方向転換されていた。
- デハ7650形
- クハ7500形から改造された制御電動車。パンタグラフや主制御器などの走行機器を搭載し、デハ7600形とユニットを組んでいた。
※ただし、以上は改造当初のものであり、のちにさまざまな追加改造がなされることになる。
[編集] 歴史
当初6両が改造され、デハ7600形―デハ7650形の2両編成3本が組成された。このうち第1編成、第2編成は長津田検車区に配置され、未改造の7200系クハ7500形2両とMT比2:1の6両編成を組んで引き続き大井町線で、第3編成は雪が谷検車区奥沢班に配置され、7200系デハ7200形と全電動車の3両編成を組んで目蒲線で使用された。
- 1986年当時の編成は以下の通り
←大井町・目黒
- デハ7601-デハ7651>※クハ7503+デハ7602-デハ7652>※クハ7510
- ※デハ7255<デハ7603-デハ7653
- +は先頭車同士の連結部、<・>は中間に組み込まれる先頭車(例えば<7603-は目黒側に運転台がある先頭車)を示す。
- ※は7200系車両。
しかし、8090系の入線に伴う大井町線からの7200系の転用が進められると、第1編成、第2編成も1988年に編成を分割され、元々3両だった第3編成とともに池上線(配置車庫は雪が谷検車区)に転用されることになった。この時、第1編成、第2編成は主制御器の冗長化のために制御方式が「1C8M」方式から「1C4M」方式に変更され、ユニット制御から各車個別制御となった。
機器の改造を期に、同時期に改造されていた7700系との編成構成統一のため、電動車の位置が五反田側(大井町線での大井町側)2両から蒲田側2両に変更された。これにより、デハ7600形が電装解除され、番号はそのままに形式が「クハ7600形」に変更されるとともに、連結していたクハ7500形が電装されてデハ7650形に編入された。台車も両者で交換され、クハ7600形が「パイオニアIII型」付随台車、編入デハ7650形が「TS-831型」動力台車となった。なお、編入のデハ7650形はパンタグラフが設置されないなど、当初からのデハ7650形とは差異があるため、車両番号が10繰り上げられてデハ7661、デハ7662と付番された。
第1編成、第2編成は改造工事の途上、デハ7200形と第3編成と同様の3両編成を組んで目蒲線で運用された時期があった。また、この時期7200系とともに先頭車前面に赤帯が貼付された。7700系が改造種車の7000系と帯太さが変えられたのに対し、7600系は7200系と同じ太さとされた。
- 1989年当時の編成は以下の通り
←五反田
- *クハ7601-デハ7651>*デハ7661
- *クハ7602-デハ7652>*デハ7662
- ※デハ7255<デハ7603-デハ7653
- *が変化のあった車両。
第3編成は連結のデハ7200形が単独の電動車であったため、しばらくはそのままの編成構成で使用されていたが、1990年になってデハ7255が編成から外された上で制御器改造が行われた。この編成の改造手順は、デハ7603が電装解除されてクハ7600形となる所までは第1編成、第2編成と同様であったが、7200系アルミ試作車の検測車化改造に伴い、クハ7500形7500をデヤ7290とするための電装品捻出の必要があったためクハ7500形の電装は行われず、7200系デハ7400形(7402)がデハ7650形相当への機器交換の上で編成中間に連結された。 デハ7402は既に蒲田側にパンタグラフが設置されていたため、近接するデハ7653の五反田側パンタグラフが撤去された。なお、デハ7402は7600系初の中間車となったほか、改造後「7673」と番号が変更されたものの、登録上は「デハ7400形のデハ7673号」とされ、7200系に区分されたままとなっていた。また、この時期クハ7600形の台車が、全車とも「TS-831型」と同系の「TS-839型」付随台車へと交換されている。
- 1990年当時の編成は以下の通り
←五反田
- クハ7601-デハ7651>デハ7661
- クハ7602-デハ7652>デハ7662
- クハ7603-デハ7673-デハ7653
1994年、池上線のワンマン運転実施に備えて、対応工事と車両更新が実施された。運転台にワンマン機器、ホーム監視モニター、TASC、情報伝送装置が、車外にはスピーカーと自動放送装置が設置され、ハンドル方式がマスコンハンドルとブレーキハンドルが別個の「ツーハンドル式」から一体化した「ワンハンドルマスコン式」に、ブレーキ方式が回生ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ (HSC-R) から回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ (HRD-R) にそれぞれ変更された。また後にドア開閉スイッチは横押しボタン式に変更された。
車体では、第1編成、第2編成のデハ7651、デハ7652のデッドスペースとなっていた運転台が改造を受けないまま撤去され、跡地に車椅子スペースと座席が新設された。ただし、通称「ダイヤモンドカット」と呼ばれる角ばった前面形状が残され、灯具や側面乗務員扉も使用不能とされたまま存置(灯具は7602Fのみ後に撤去)された。この事から、同じく車椅子スペース設置改造を受けた第3編成のデハ7673と比べ、改造後も座席定員が1人分少なくなっている。改造後、これら3両は新規設定の「デハ7670形」と区分され、デハ7651、デハ7652は車体形状の違いから、番号が10繰り上げられてデハ7681、デハ7682と付番された。
また、内装は化粧板と床の張替え、袖仕切新設、座席は440mm幅の3-3-3人掛けに変更し、オレンジ・ブラウンの2色化、座席間の仕切新設とスタンションポールの設置、非常通報装置を対話式に変更などのリニューアルが行われ、7700系に準じた意匠となったほか、冷房風洞がラインフロー式(一本風洞)に、方向幕はLEDにそれぞれ交換、併せて側面表示器の新設、側窓のサッシレス化、妻窓の固定、前面ワイパーの増設といった改造が実施された。
以上の改造により、3編成9両分全車が7600系となるとともに、機能に変化が生じたため、対応の装備を持つアルミ車以外の7200系との連結は不可能になった。これ以降、7600系の増備は行われていない。塗装も7700系ワンマン対応車(当時)と同系統の、前面が「中央が黒・その両隣にL字形の赤帯」、側面が「ドア以外の低い位置に太めの赤帯」という塗装(通称「歌舞伎塗装」)に変更された。なお、デハ7651、デハ7652の側面乗務員扉部分は既に扉としての機能がなくなっているため、赤帯が入れられている。
- 1994年以降の編成は以下の通り
←五反田
- クハ7601-デハ7681>デハ7661
- クハ7602-デハ7682>デハ7662
- クハ7603-デハ7673-デハ7653
2000年、目蒲線が東西に分断され、東側の東急多摩川線区間の運用が雪が谷検車区受け持ちとなった。これにより、7700系および1000系全編成と運用が共通化され、再び多摩川駅まで入線するようになった。また、アルミ車以外の7200系は廃車となった。
- 2007年現在の編成構成は以下の通り。
↑五反田
- 第1編成、第2編成
- クハ7600形
- 1988年にデハ7600形から再改造された制御車。1988年にモーターが撤去され、SIV、CPなどの補機類のみを搭載する。
- デハ7670形(7680番台)
- デハ7650形から再改造された中間電動車。1988年にCPの追加、1994年に運転台の撤去と現番号への変更が行われた。
- デハ7650形(7660番台)
- 1988年にクハ7500形から改造された制御電動車。主制御器のみを搭載し、デハ7670形から給電を受ける。
- 第3編成
- クハ7600形
- 1990年にデハ7600形から再改造された制御車。第1編成、第2編成と同一。
- デハ7670形(7670番台)
- 1990年にデハ7400形から改造された中間電動車。パンタグラフ、主制御器、CPを搭載する。1994年まではデハ7400形に区分されていた。
- デハ7650形(7650番台)
- 制御電動車。2007年現在、唯一改造時の形式・番号で残る。1990年に五反田側のパンタグラフが撤去された。この編成はシングルアーム式のパンタグラフに交換されている。
↓蒲田
[編集] 今後
2007年2月12日からしばらくの間、池上線と多摩川線各駅に5000系をベースとした新型車両導入のポスターが掲示された。それによると、同年度から新型車両の導入を開始し、2011年(平成23年)度には両線に在籍する3両編成28本中19本がこの新形車両に置き換わるとしている。その後、この新型車両の形式称号は「7000系」に決定した。
[編集] 関連項目
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過去の車両 | |||||