天山 (艦上攻撃機)
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天山(てんざん)は、日本海軍が九七式艦上攻撃機の後継機として、中島飛行機に開発させた艦上攻撃機である。主に、艦艇攻撃用の雷撃機として開発・運用された。制式採用は1943年(昭和18年)8月。設計主務者は松村健一。
機体略番は「B6N」。連合軍によるコードネームは「Jill」である。
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[編集] 開発
[編集] 試行錯誤
1939年10月、本機(B6N:14試艦上攻撃機)設計にあたり海軍から出された要求性能は、
- 最大速度450km/h以上
- 雷撃状態における航続距離3,400km以上
という当時の航空技術から見て極めて達成困難なものだった。この過酷な要求を実現する為、中島飛行機は当時開発中だった大出力を誇る自社エンジン『護』を搭載する事とした。搭載エンジンについては三菱製の火星を押す動きもあったが、中島では性能向上の余地が大きいことと自社製でなので改修しやすいことを理由に『護』エンジン搭載を強く希望した。大出力エンジンに合わせ、機体のサイズも大型のものとなったので、航空母艦に搭載する際の利便性を考慮し、垂直尾翼の傾斜角を前傾させ(着陸姿勢での)全長を短くするよう工夫した。プロペラは日本最初の全金属製4翅プロペラであった。また、翼面荷重増加に対応すべくファウラーフラップを採用したり、航続距離を伸ばす為にセミインテグラルタンクを採用するなど、海軍側の要求をクリアする為に様々な工夫がなされた。
こうして、ようやく完成した試作機は1942年3月に初飛行したが、試験飛行の結果、大馬力エンジンによる回転トルクが大きく飛行姿勢が安定しなかった上離着陸滑走中に機首を振るという艦上機としては致命的ともいえる問題が発覚し、垂直尾翼の取り付け角度を機軸に対し左に傾ける改善がされた。また、護エンジンは振動が大きく故障も多発した。その後増加試作機が海軍に引き渡され、テストの結果を踏まえて様々な改修が行われた。また九七式艦上攻撃機の後継機の配備が急務だった海軍の事情もあり、制式作用前に護エンジン搭載型の生産を開始することになった。本機の制式採用は1943年8月30日で、この時には 護エンジン搭載型(天山11型)の生産は終了していた。
[編集] エンジンの換装
部隊配備後『護』エンジンの信頼性が低い事が報告され、海軍は『護』から三菱製の『火星25型』への換装を決定。 元々海軍も本機のエンジンに『火星25型』を考慮したが、信頼性に欠けるがやや馬力に勝る『護』発動機による開発(中島側の提案)を受け入れた。とする説と当時、中島飛行機では、『栄』『誉』エンジンの増産要請で手一杯であり、生産に多少余力のある三菱重工業 発動機製作所製のエンジン採用したとの説もある。
『護』エンジン搭載タイプは『天山11型』とされ、初期の少量生産にとどまった。主力生産されたのは、『火星25型』エンジンが搭載された『天山12型』である。『天山12型』のバリエーションとしては、後上方旋回機銃を13mm機銃に換装した『天山12型甲』がある。この『天山12型甲』には、3機に1機の割合で、空6号機上電探が搭載された。
[編集] 下方銃座
天山には、日本機としては珍しい下方銃座が備えられていた。偶然だが、天山が実戦に投入された時のアメリカ海軍主力雷撃機TBF/TBM アベンジャーも同様に下方銃座を備えていた。しかし、下方銃座の実戦での有効性は疑問視されていた。
[編集] 実戦における活躍
九七艦攻の後継機として優秀な本機であったが、開発から実戦配備初期にかけ数々の問題が生じ開発は難航。また前例を見ない大型艦上機であり母艦側での対応(着艦制動装置の改修・発艦促進用ロケットの導入)等に時間を要した為に、登場時期が遅れた。
ライバルと言える「TBFアベンジャー」に比べ開発年次の優位性もあり、「速度・航続距離」で多少優れていた反面、当時の日本機に共通する防弾設備の脆弱性や運用環境には雲泥の差があり、配備後は熟練搭乗員の不足と、米軍の高性能レーダーと連動した優れた防空システム、「VT信管(近接信管)」を用いた精度の高い対空射撃と相俟って大きな損害を出した。
「天山」の実戦初参加は、1943年のブーゲンビル島沖航空戦で、この時は、ラバウル基地から出撃している。以後、翌1944年2月17日~18日の米軍高速空母機動部隊のトラック島空襲に対する反撃や同年6月~7月のマリアナ諸島攻防戦にも参加した。
一方、空母機動部隊(第三艦隊→第一機動艦隊)の各空母に搭載された「天山」は、1944年6月19日~20日にかけてのマリアナ沖海戦が、本格的な初陣であった。
しかし、いずれの航空戦でも、アメリカ海軍艦艇の強力且つ効果的な対空防御網により、壊滅的な打撃を受け、いくつかの例外を除けば、これといった戦果を挙げることはできなかった。
機動部隊の各空母に搭載された「天山」は、1944年10月のレイテ沖海戦でも、小沢治三郎中将指揮する囮艦隊の瑞鶴以下計4隻の空母から出撃しているが、その任務は、主に索敵偵察や爆装した零戦(いわゆる戦闘爆撃機)による攻撃隊の誘導機としての役割が中心であった。
一方、陸上基地航空隊の「天山」は、マリアナ諸島攻防戦後、台湾沖航空戦やレイテ沖海戦以降のフィリピン攻防戦などに参加したことにより、稼動数を大幅に減らした。このような状況から「天山」を使用した航空作戦は、次第に夜間雷撃(または、薄暮雷撃や黎明雷撃)が中心となっていく。
大戦末期の1945年の九州沖航空戦や沖縄戦(菊水作戦)においては、「天山」は、3機に1機の割合で機上電探を搭載していたことから、主として、九州の陸上基地からの米軍の高速空母機動部隊や輸送船団などに対する夜間雷撃に使用されたが、上述のように米軍側のレーダーやVT信管を使用した強力な対空防御砲火、レーダー搭載の夜間戦闘機(F6F-5N “ヘルキャット”)などを駆使した迎撃態勢により、稼動可能な機体数と搭乗員の損失があまりにも多く、目ぼしい戦果も見られなかった。それでも、終戦の3日前の1945年8月12日の夜半に、九州・鹿児島県の串良基地から出撃した第五航空艦隊指揮下の第931海軍航空隊・攻撃第251飛行隊所属の「天山」4機のうちの1機が、沖縄の中城湾に停泊していたアメリカ海軍の戦艦ペンシルバニアを夜間雷撃で大破させる、と云うような戦果も挙げている。
また、フィリピン攻防戦や硫黄島の戦い(硫黄島攻防戦)、沖縄戦(菊水作戦)では、零戦や艦上爆撃機「彗星」などと比較すると遥かに少ない数ながらも、特攻機として投入された機体もある。特に、硫黄島の戦いにおいて、1945年2月21日に硫黄島沖の米軍艦隊に対する特攻攻撃を行なった神風特別攻撃隊第二御盾隊には、第三航空艦隊指揮下の第601海軍航空隊所属の「天山」8機が投入されている。このうち、半数の4機は800㎏爆弾を搭載して特攻攻撃を敢行したが、残る半数の4機は航空魚雷を搭載しており、米軍艦艇に雷撃を敢行したのちに体当たり攻撃を敢行している(いわゆる雷撃特攻)。 この時、爆装「天山」4機のうちの1機は、800㎏爆弾1発を空母サラトガに投下、飛行甲板に命中させて大穴を開け大破させた(爆弾を命中させた「天山」は、その後、サラトガに体当たりしようとする直前に撃墜された)。
[編集] 主要諸元
※データは天山12型 (B6N2)
- 乗員:3
- 形態:低翼単発
- 全幅:14.89m
- 全長:10.89m
- 全高: 3.80m
- 主翼面積:37.2㎡
- 発動機:三菱『火星25型』1,850馬力
- プロペラ:V.D.M定速3翅
- 全備重量:5,200㎏
- 最高速度:482km/時
- 航続距離:1750km
- 実用上昇限度:9040m
- 上昇率:3000/5'34"
- 武装:7.92mm機銃×1(後上方旋回機銃)・7.7mm機銃×1(後下方旋回機銃)・爆弾800㎏まで又は魚雷×1
- 天山12型甲は、後上方旋回機銃を13mm機銃に、後下方旋回機銃を7.92mm機銃に換装して火力を増強。3機に1機の割合で、空6号機上電探を装備。アンテナ素子を胴体後部、ならびに主翼前縁部に搭載した
- 生産機数:1266機 (11・12型合計)
- 製作会社:中島飛行機
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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艦上攻撃機 | 一〇式 - B1M - B2M - B3Y - B4Y - B5M/B5N - B6N - B7A |
艦上偵察機 | C1M - C2N - C3N - C4A - C5M - C6N |
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水上偵察機 | モ式小型 - モ式大型 - 横廠式ロ号 - ハンザ式 - 二式 - E1Y - E2N - E3A - E4N - E5Y/E5K - E6Y - E7K - E8N - E9W - E10A/E10K - E11A/E11K - E12 - E13A - E14Y - E15K - E16A |
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