火星 (エンジン)
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火星(かせい)は、第二次世界大戦期に三菱重工業が開発・製造した航空機用空冷星型エンジン。三菱が、本来大型機用として開発した金星が、出力不足で大型機には能力不足であるということが判明したため、金星をベースにしてさらに大排気量のエンジンを開発することとなり、昭和13年2月に開発に着手した。初号機は昭和13年9月に完成。その後各種の試験を経て、昭和14年には海軍に3基、陸軍に4基納入している。本エンジンの海軍での試作名称は十三試へ号、陸軍ではハ101と呼称された。大戦後期の陸海軍統合名称はハ32。昭和15年量産開始、この年は海軍に140基、陸軍に137基納入している。次いで昭和16年には水メタノール噴射装置を採用し高回転化、高ブースト化した性能向上型が登場し火星2X型として採用されるようになる。この性能向上型に関しては、陸軍ではハ111という名称が割り当てられたものの、陸軍では火星の18気筒版とも言えるハ104を採用したため、ハ111を搭載した陸軍機は生産されることは無かった。火星1X型/ハ101の製作時期は、昭和13~19年、製作基数は計7,332基。火星2X型/ハ111の製作時期は、昭和16~20年、製作基数は計8,569基であった。
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[編集] 主要諸元
[編集] 火星11型(ハ101相当)
- タイプ:空冷星型14気筒
- ボア×ストローク:150mm×170mm
- 排気量:42.1L
- 全長:1,575mm
- 全幅:1,340mm
- 乾燥重量:725 kg
- 燃料供給方式:キャブレター式
- 圧縮比:6.5
- 過給機:遠心式スーパーチャージャー1段2速
- 離昇馬力
- 1,530HP / 2,450RPM / ブースト+270mmhg
- 公称馬力
- 一速全開 1,410HP / 2,350RPM / ブースト+180mmhg (高度2,000m)
- 二速全開 1,340HP / 2,350RPM / ブースト+180mmhg (高度4,000m)
[編集] 火星15型
- 離昇馬力
- 1,460HP / 2,450RPM
- 公称馬力
- 一速全開 1,420HP / 2,350RPM (高度2,600m)
- 二速全開 1,300HP / 2,350RPM (高度6,000m)
[編集] 火星23型甲
- 全長:1,945mm
- 全幅:1,340mm
- 乾燥重量:860 kg
- 燃料供給方式:直接噴射式
- 圧縮比:6.5
- 過給機:遠心式スーパーチャージャー1段2速
- その他:水メタノール噴射装置、強制冷却ファン
- 離昇馬力
- 1,820HP / 2,600RPM / ブースト+450mmhg
- 公称馬力
- 一速全開 1,600HP / 2,500RPM / ブースト+300mmhg (高度1,300m)
- 二速全開 1,520HP / 2,500RPM / ブースト+300mmhg (高度4,100m)
[編集] 火星25型乙(ハ111相当)
- 乾燥重量:760 kg
- 離昇馬力
- 1,850HP / 2,600RPM
- 公称馬力
- 一速全開 1,680HP / 2,500RPM (高度2,100m)
- 二速全開 1,540HP / 2,500RPM (高度5,500m)
[編集] 主な搭載機
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 日本航空学術史編集委員会編 『日本航空学術史』
- 松岡久光 『三菱航空エンジン史』 三樹書房、2005年9月